全日本大和撫子杯開催！〜予選編〜

由梨「と、いうわけなんです。」
沙織「・・・・・・今年もその季節なんですか。今年はどんな方がでるのでしょうね。」
由梨「今年はですね・・・・・・・・なんですよ。」
沙織「なんですって!?」
由梨「あら、不思議なくらいじゃないですか。」
沙織「ど、どうして・・・・・・」
由梨「ほら、この間私のファッションショーに出席されたでしょう？それを見て、決めたそうですよ。一目ぼれ？な感じですわね。フフ。」
沙織「辞退は・・・・・・」
由梨「できませんわ。もしでないとなると、相当圧力かけてきますわよ。」
沙織「ですよね。」
由梨「是非優勝してもらいたいですね〜」


ちんと電話をきった。


沙織「・・・・・・・・どおしよ。」
本気で悩む沙織であった。



星矢「おっやつおやつ〜〜ｖｖｖ」
瞬「今日はチーズケーキだよ。」

星矢「おおおお!!瞬愛してるぜ〜〜」

テーブルに置かれた一ホールのチーズケーキを見て小躍りする星矢。

紫龍「昨日も、シフォンケーキだって聞いて踊ってなかったか？」
氷河「一昨日のワッフルでも、その前のオレンジゼリーでも言ってたな。」
瞬「そんなに僕のおやつを好きでいてくれるなら嬉しいよ。」

さくさくとチーズケーキを切り分ける。

星矢「それじゃ、いっただっきまーす！」

マッハでチーズケーキを食べ始める。

紫龍「いつもながら良く食うな。」
氷河「まあ、美味いからな。」
瞬「これだけ食べてもらえると、チーズケーキも、僕も嬉しいよ。」
瞬もぱくんとチーズケーキを含む。
沙織「こんにちは・・・・・・」
星矢「や！沙織さん！丁度良いぜ！おやつ一緒に食べよ！瞬の作ったチーズケーキだぜ。」
沙織「まあ、チーズケーキ。頂きます。」
瞬「どうぞｖｖ」
沙織にも、チーズケーキを一切れ差し出す。フォークを上品に使って口に運ぶ。

もにゅもにゅ。ごっくん。

瞬「どうですか？」
沙織「美味しいです。瞬のおやつは世界に出しても恥ずかしくないですね。」
瞬「そんな！」
紫龍「ところで、沙織さん、何か用があったのでは？」
沙織「ええ、そうなのです。瞬、お願いがあります。」
瞬「何ですか？」
沙織「来週の土曜日、開いてますか？」
瞬「開いてますよ。ボディーガードですか？」
沙織「まあ、そんな感じです。」
星矢「へえ〜〜、どんなお仕事なの？今回。」
沙織「お仕事ではないんですけどね。全日本大和撫子大会の招待状が届いたのです。」
氷河「全日本大和撫子大会？何ですか？それ。」

沙織「簡単に言うと、財閥のお嬢様の中で誰が一番大和撫子かな？って大会です。」

星矢「面白そうだね。財界ってそんなことやるんだ。」
紫龍「沙織さんは参加されないのですか？」
沙織「ええ。」
瞬「沙織さんならエントリーされてもおかしくないのに。」
沙織「東京都代表は他の方がエントリーされたのですよ。東京都選抜者の方が、ある方を見て凄く気に入ったそうなのですよ。」
星矢「へえ〜〜どんな人なんだろう。沙織さんより綺麗？」


沙織「・・・・・・・・・。」



紫龍「星矢！女性にそういう事を聞くもんじゃない。」
星矢「あ・・・・・・ご、ごめんよ沙織さん。」
沙織「あ、いえいえ。別に気にしてませんよ。」
瞬「それじゃ、来週の土曜日ですね？分かりました。」
星矢「頑張ってこいよ瞬。」
瞬「うん。」
ニッコリと瞬が微笑んだ。ひくっと引きつった笑いを沙織がした。


そして、その土曜日がやってきた。

瞬「・・・・・・・・・・・・」
車の中で瞬はずっと黙りこくっている。
沙織「瞬・・・・・あの・・・・・」
瞬「怒ってないですよ。平気です。沙織さんの気にする事ではないですから。」
沙織「あの、でも・・・ごめんなさい。」
瞬「大丈夫ですよ。」
沙織「・・・・・・・・・・・」
リムジンが駐車場に止まった。二人のお嬢様から車から降りる。


二人？




瞬「沙織さん、もうそんなすまなそうな顔するの止めてください。」
沙織「だって申し訳なくて。」
瞬「沙織さんの所為じゃないですから。僕ご指名で、しかもキャンセル不可なら仕方ないですよ。」


そう。全日本大和撫子大会、東京都代表は瞬なのであった。

瞬「まさか、僕が指名されるなんて。」
沙織「私も月島さんから聞かされた時は本当に本当に凄くすっごくびっくりしたのですよ。」
瞬「口を噤んだのも何となく分かりましたよ。」
沙織「本当の女性なら素直に言えるのですけれども、相手が女装した男では・・・・ね。どこか哀しくて。」

女性ならばまだしも男性になんて、哀しくなるだろう。

沙織「瞬、すぐ負けなさい。」
瞬「負けて良いのですか？」
沙織「出場義務はありますが、勝つ義務まではありません。」
瞬「そうですか、良かった。」
沙織「これ以上瞬の女装を表にさらすわけに行きません。予選で落ちて帰りましょう。」
瞬「予選があるのですか？」
沙織「ええ。全ての都道府県から一人ずつエントリーされますが、それでは多過ぎですから。絞りこむのですよ。五人くらいですね。」
瞬「何をするんでしょう。」
沙織「さあ。私にもそこまでは・・・・・・ま、とにかく瞬、頑張らずにいきましょう。」
瞬「はい。」


死んでも予選は通りなさいとか、ちょっとプレッシャーかけてきなさいとか、女ならではのドロドロがひしめいている中、なんとも安心する会話である。


スタッフ「それでは会場に移動しますので、出場者はこちらに来てください」
瞬「じゃあ、いってきます」
沙織「いってらっしゃい。がんばらないでね」

沙織達は観覧席へと向かうため、ばらばらになる。流石全国からの出場となると人数もかなりのもので、なかなか進まなかった。

子供「え〜んえ〜ん」

エレベーターホール前で泣いている少女がいる。審査に遅れるわけにいかないと、誰もが素通りしていく。

瞬「・・・・大丈夫？」

足を止めたのは、大会になんら執着の無い瞬であった。

子供「お母さんとはぐれちゃったの」
瞬「そうか、それは悲しいね。僕がお母さんを探してあげるよ」

すっと手を差し出す。子供は驚いたような顔をすると、屈託の無い笑顔で瞬の手を握った。

瞬「ようし、じゃあ、まずはお母さんを呼び出してもらおうか。とりあえずフロントに行こうか」
子供「うん」

フロントは、南側入口にある。瞬は出場者達とまったく反対の方へ歩き出すのだった。

瞬「もしもし、この子、迷子みたいなんですけど・・・」
フロント「あらあら。お名前は何て言うのかな？」
子供「日ノ本ヤマト」
フロント「お母さんの名前は？」
子供「ナデシコ」
フロント「あらあら、日ノ本さんのお子様なのね。お母様なら、先ほど私に訪ねに参りました。別室でお待ちいただいております」

すっと地図を渡す。

フロント「こちらにいらっしゃいますので、どうぞお連れになってください」
瞬「あ、はい！ありがとうございます！よかったね、ヤマト君！」
ヤマト「うん！」
フロント「がんばってくださいね！」
瞬「あ、はい・・・がんばります」

何を？

ヤマト「おっと、やべえ！お姉ちゃん、急がないと遅れちゃう！」
瞬「うん、そうだね」

何に？

フロント「それでは、また来月お会いしましょう」

ヒラヒラと営業スマイルで二人を送る。首をかしげながらも、ペコリと頭を下げ、地図を頼りに歩き出す瞬だった。

瞬「あれ・・・変だな・・・」

てくてく歩きながら更に首をひねる。

瞬「別室って言うけど、なんていうか・・・この地図って大ホールの地図じゃない？」
ヤマト「俺、子供だからわかんな〜い！」
瞬「むぅ・・・ヤマト君ってすごくお金持ちのお坊ちゃんなのかな？」
ヤマト「お姉ちゃんほどじゃないと思うな〜」

迷子のヤマトもすっかり涙が乾いている。お母さんの場所がわかったからと言って、昨今の子供はこんなにからっとしているだろうか。

瞬「ねえ、君、もしかして、黒づくめの男達に薬飲まされたこととかってある？」
ヤマト「は！？あるわけないじゃん！！」
瞬「だよねぇ」
ヤマト「お姉ちゃん！ほら、あそこあそこ！」

ヤマトの指先には、ホールへの入口の扉があった。

瞬「あ、よかった〜。これでお母さんに会えるね。よかったね」
ヤマト「ああ。ありがとう、お姉ちゃん」
瞬「よし、じゃあ開けるよ」
ヤマト「ああ、ちょっと待って」

ヤマトはごそごそとポケットを探ると櫛を取り出した。

ヤマト「ちょっと、俺に目線あわせてくれよ」
瞬「あ、うん」

膝を折ってヤマトの視線にあわせてあげる。ヤマトは櫛を使うと瞬の髪を梳いてやった。

ヤマト「これでよし！お披露目するのに髪がざんばらじゃあ情けないもんな！」
瞬「え、ああ、そうだよね。お母さんにお会いするならちゃんとした格好がいいもんね」
ヤマト「姉ちゃん、やっぱ、本気でわかってないんだね」
瞬「・・・・・・？」
ヤマト「おめでとう、お姉ちゃん！！」

ギギッと扉を開ける。まばゆい光が溢れ出す、そのホールへ一歩踏みだした。

司会「全日本大和撫子杯、予選通過者だ〜〜！！」
瞬「・・・・・・・・え？」
司会「おめでとう！！最後の五人目だよ！！」
瞬「・・・・・・・・は？」
ヤマト「もう、鈍いなあ。お姉ちゃんが全日本大和撫子杯の予選に通過したんだよ！」




瞬「ええええええええええっ！！」


司会「全日本大和撫子杯は、外見だけでなく内面も重視するんだ！！だから、会場での審査は振り落とすためのトラップ！ホテル内に仕掛けられた本当の抜け道を見つけ出せた者だけが受かるシステムになってるんだ！！」
ヤマト「そ！！俺も抜け道の１つ。コンテストより迷子を優先させた優しい女性への抜け道さ。ちなみに、あのフロントの人もグルだから」
瞬「グル・・・？」
ヤマト「そ！つーか、ホテルの従業員み〜んな、全日本大和撫子杯に協力してくれてるんだ。お姉ちゃん、マジで気付いてないんだもん。でもま、そーゆー性格だから僕を助けてくれようとしてくれたんだろうけどな」
瞬「ははは・・・なるほどね」

いろいろ感じていた違和感はコレだったのか。

しかし



どうしよう・・・！


司会「さあ、見事内面の煌きをみせてくれた五人は来月の本選に出場してもらうぞ〜！会場はここだ！！今度はいろいろ技術を披露してもらうぞ！！」
ヤマト「がんばってくれよ！姉ちゃん！！」
瞬「そ、そうだね・・・がんばるよ」


あははと力なく笑う瞬と、観覧席で顔を真っ青にさせている城戸沙織なのだった。


由梨「おめでとうございます！！瞬さんなら、きっとトラップにひっかからないと信じていました！」
瞬「うん・・・今はこの心優しさが憎たらしいよ」
沙織「あなたのお兄さんは、ありえないくらいに見捨てますもんね。あなたのこと以外」
由梨「次の本選もがんばってくださいね！私、応援してますから！」
瞬「沙織さん、今なら聖戦起こしてくれて構いませんからね。もう一度ハーデス戦やりません？」
沙織「私もちょっと、やれたらやりたいなんて不謹慎なこと思ってしまいました」

落ちるつもりだったのに、受かってしまったアンドロメダ瞬。
来月、全日本大和撫子杯本選に参加する。
丁度良く聖戦になるか！？



あとがき
キリリク141414のニアピン賞をホーリーナイト様にさしあげました！ホーリーナイト様のリクエストは瞬の女装シリーズの新作！！世界平和維持活動シリーズでは、ありましたが、瞬の女装シリーズでは初めてですね〜。なので、気合いれて書かせていただきました！とりあえず予選編です！本選編もまた書きます！楽しんでいただければ幸いです★（瞬と沙織はそれどころじゃなさそうですが・・・）


ＢＹ　　ＭＵＴＵＭＩ