今宵限りのお芝居

星矢「よっしゃーあがった！」
瞬「僕、またビリだ。」
氷河「借金地獄だな。」
紫龍「次の目的地はハワイだ。」
四人は桃電Xをやっていた。目的地出雲に辿りついた星矢が現在ニ位。紫龍は一位。氷河は三位。ボンビーを連れて歩く事が最早趣味になっている瞬は氷河に三十億もの差をつけてビリであった。
星矢「瞬、ご愁傷様。」
瞬「本当だよ。何で１２３しか出ないのかな。僕、いい加減ボンビーとさよならしたい。」
紫龍「そうこうしているうちにまた変化だぞ！」
瞬「ええ!?」
ボンビーががたがたと動いている。そして・・・・
瞬「うわー!!またキングになったー！」
最早涙目。キングになったのならば、ロボットでぶっ倒すか、元に戻るまで耐えなくてはいけない。瞬はヤマトザムライすら持っていない。つまりむこう三ヶ月はキングボンビーの餌食。ボンビラス星行きの借金の特急便。グラード財団すら傾きかねない悪魔である。本当に過酷な資本主義ゲームである。
星矢「ボンビラス星に行っといで。その間にゴールするから。」
瞬「そんな星大嫌いだ!!!!」
自暴自棄になりながら、瞬がサイコロを動かす。また１でめでたくマイナス駅到着した。マイナススロットルがまわる。瞬がスロットルを押した時
辰巳「お前ら!!」
辰巳がやってきて、ブチッとコンセントを抜いてしまった。
瞬「た・・・助かった・・・・」
星矢「辰巳！何するんだよ！折角あがったのに！」
紫龍「これで俺達にもチャンスが巡ってきたな。」
辰巳「お前らゲームなどしてお嬢様に申し訳ないと思わんのか！」
氷河「自由な時間にゲームをして何が悪い。」
辰巳「お嬢様が床に臥していらっしゃるのに、お見舞いも無いのか！」
星矢「え、沙織さん具合悪いのか？」
辰巳「少しは気づけ！お嬢様は風邪で寝こんでいらっしゃるのだ。」
紫龍「それは知らなかった。昨日会った時は元気だったのに。」
辰巳「瞬。お前に用がある。」
瞬「僕ですか？」
星矢「俺達は？」
辰巳「お嬢様が瞬を呼べと。お前らは桃電でも赤電でも何でもやってろ。」
星矢「今中断させたくせに・・・・・」
瞬「沙織さんが僕に用って何でしょう。」
辰巳「とにかく、お嬢様が呼んでるんだ。さっさと行け。」
瞬「はい。星矢！僕の勝手に動かしたら承知しないからね。」
星矢「分かってる分かってる。お前に手が負えないような話だったら俺達も手伝うから安心しろよ。」
瞬「ありがとう。」
辰巳「それと、お前らもお嬢様の見舞いには行けよ。世話になってる身なんだからな。」
紫龍「分かっているさ。」
瞬は辰巳と一緒に居間を出ていった。
星矢「さ、始めようぜ。」
紫龍「あと、一時間な。夕食の準備もしたいし、沙織さんの見舞いもしたいしな。」
星矢「分かってるって。見舞いに花でも買っていこうか。」
氷河「どんなのを？」
紫龍「チューリップあたりがいいんじゃないか？旬だし。」
星矢「じゃ、五時に花屋で花買って、沙織さんの見舞いな。さ、再開するぞ。」
星矢がコンセントを指し直す。
紫龍「瞬のはどうするんだ？」
氷河「今よりも状況が悪くなったら本気で泣くぞ。」
星矢「コンピューターにすればいい。」
紫龍「何にするんだ？」
星矢「えんまでなら文句ないだろう。」
紫龍「奴は冬でもマイナスに突っ込むぞ・・・・・」
不安に思いながらも瞬をえんまに変えて桃電Xは再開されたのだった。

瞬「沙織さん、大丈夫ですか？」
沙織の部屋は女らしく、桃色や白色で統一されている。
沙織「瞬、良く来てくれました。」
瞬「大丈夫ですか？具合は。」
沙織「そんなに熱も高くはありませんし、そう心配しなくて良いですよ。ヒュギさんも後三時間もすれば到着するそうですから。」
瞬「後で、紫龍達も見舞いに来るといってましたよ。」
沙織「そうですか。別に来なくても良いのに。」
瞬「え、でも辰巳が・・・・・・」
沙織「辰巳、あなたまた言わなくて良いこと吹き込みましたね？」
辰巳「いえ、お嬢様が寝こんでいらっしゃるのに、見舞いも無いなんて。使用人は全員知っているのに。」
沙織「わざと知らせなかったのですよ。余計な心配をさせてはいけないと思って。」
辰巳「すみませんお嬢様。」
沙織「良いですよ、別に。見舞いをされて嬉しくないわけはありませんから。」
瞬「僕に用って何ですか？料理が食べられませんか？」
沙織「そうではありません。」
瞬「それでは？」
沙織「あなたの気に障ること間違い無しなのですが・・・・・」
瞬「そんなに重大な事ですか？」
沙織「そうなのですよ。本当に申し訳無いのですがパーティに出席してくれませんか？」
瞬「護衛ですか？」
沙織「違います。」
瞬「何なんですか？」
沙織「本当に迷惑ばかりかけて申し訳無いのですが、女装してパーティに出席して欲しいのです」
瞬「もしかして月島さんのですか？それだったらしょうがないですし良いですよ？」
沙織「そうではありません。まあ、月島さんもいるかもしれませんが。」
瞬「え、月島さんのパーティじゃなくて何故・・・・？」
沙織「今日、日本の財閥が集まるパーティがあるのです。今年もうまくいくように皆で宴を楽しむものです。」
瞬「新年会みたいですね。」
沙織「出席者は日本中の名士の方々ばかりです。勿論グラード財団もその中の一つです。ですので、私が欠席となると、他の財団の方々とヒビが入ってしまうかもしれません。ですので・・・・・」
瞬「代わりに出席しろと？でも何で女装・・・・それに何で僕・・・？」
辰巳「瞬なんかを身代わりにしなくても私が立派にその役目を果たしますよ。」
沙織「あなたは私になれません。そんなごつい身体で誤魔化せるとお思いですか？」
瞬「女装ってもしかして・・・・」
沙織「そうです。代理ではなく、私として出席して欲しいのです！」
サーっと瞬の顔が青ざめた。
瞬「女装をして、沙織さんのフリをしろと？」
沙織「そう言う事です。傷つきましたか？ごめんなさい。」

瞬「いえ、そう言う事より、そんな大それた事をやらなきゃいけないという事で不安が・・・・・」

沙織「ですが、やってもらいたいのです。」
辰巳「瞬は容姿や体つきはそりゃお嬢様みたいですが、声はどうするんです？お嬢様のような聡明で気品のあるソプラノと瞬の泣き虫のテノールじゃ一発でばれますよ。」
瞬「何か、かばわれてるのかけなされてるのか分からないや・・・・」
沙織「大丈夫です。こんな日の為にグラード科学研究所の麻森博士に頼んで、超小型変声器を作ってもらいました。大丈夫です。」
瞬「僕、財団の知り合いって月島さんしかいないんですが・・・・」
沙織「適当に相槌を打っていれば大丈夫です。服やかつらは用意しました。ごめんなさい瞬。これが普通のパーティだったら欠席するのですが、本当に大切なパーティなのです。」
瞬「分かりました。これで断ったら弱ってる体に鞭打って出席するおつもりでしょう？それでこじらせて肺炎にでもなったら僕が嫌です。」
沙織「ありがとう、本当に優しいですね、瞬。」
辰巳「一度やれば人間ふっきれるものだよな。」
沙織「あなたがそれを言う必要はないのですよ。瞬は無理に引きうけてくれているのですから。」
辰巳「は、はあ。」
沙織「瞬が困らない様に、サポートしてあげるのですよ。」
辰巳「分かりました。」
沙織「場所はわかってますね、辰巳。」
辰巳「はい、お嬢様。」
沙織「服を隣の部屋において置きました。着替えたら出発してください。」
瞬「分かりました・・・・」
沙織「本当にごめんなさい。誰にも言いませんから。」
瞬「そうしてくれるとありがたいです。」
沙織「絶対に私と瞬だけの秘密にします。安心してください。」
瞬「沙織さんははやく元気になってくださいね。」
沙織を困らせない様に微笑むと瞬は部屋をでた。
瞬（何か、月島さんの女装の時よりも疲れそうだな・・・・星矢達に相談して助けてもらいたいけれど、こればっかりは僕にしか出来ないし。）
用意されたドレスを着ながらも自分の行く末を思うと不安になる瞬なのだった。

あとがき
瞬女装シリーズ第二弾。今度は沙織さんに変身します。瞬は容姿が女の子っぽいから沙織さんにもなれるでしょう。もしかすると瞬の方が美人かもしれない。沙織さんより瞬の方が性格良さそうだから。今回の裏シナリオ。その何故沙織さんが熱をだしたか。それはガウンを羽織らずに、テレビで洋画を見てたからです。内容はラブロマンスです。
BY　　　MUTUMI