未来への道程

ここは冥界である。本来ならばコキュートス逝きとなるのだろうが、これだけの非常識人が集まると、おとなしく氷漬けになってくれず、冥界の運営に支障が生じてしまった為、『暴れない・壊さない・抜け出さない』を条件に、冥界のはずれに、聖闘士用の施設を建て、全員そこで生活していた。

暇を持て余している旧黄金は、下界に通じるテレビ（ラダマンティスが用意した）を見ながら余生（？）を過ごしていた。

童虎「玄武よ・・・なんて立派だったんじゃ・・・！！」
シオン「ほら、これで涙を拭け」
童虎「ありがとうのぅ、シオン・・・！！」
ムウ「いや、なかなか清々しい男でしたね。アイオリアに知性が帯びたらあんな感じでしょうか？」
アイオリア「何が言いたい、お前」
アフロディーテ「あの天地崩滅斬の威力すごかったね。肩からバッサリだもんね。シュラ、どう思う？」
シュラ「剣といえば、俺という発想は止めろ。まぁ、なかなかの威力じゃないか？筋肉の収縮で、刃を止められるなんてまだまだだと思うけどな」
デスマスク「真剣白羽取りやられたお前が言うセリフじゃねえだろ」
シュラ「うっ・・・」
デスマスク「五老峰関係で脱がなかったのは、あいつだけだな。龍峰でさえ、背中晒してるんだぞ。すっごくわざとらしく。」
童虎「次の天秤は龍峰じゃな。背中に龍が昇ったからの・・・！」
ムウ「もしかして、現役の紫龍飛び越えて、龍峰が天秤になるってことは・・・！？」
童虎「ありえるかもしれん。ドラゴンは紫龍が継げばいい」
デスマスク「順序メチャクチャだろ。どんなアップダウンだよ。龍峰が天秤継いだら、ドラゴンの後継者はどうすんだよ」

童虎「大丈夫！！！もう１人２人家族が増えると思うから！！男女の双子とか希望！！」

シオン「・・・・・お前はバカか」
ムウ「それにしても、玄武なんて弟子がいたなんて知りませんでしたよ」
童虎「わし、意外と弟子に逃げられてるからのぅ！！王虎とか！！しかも、両方死んでしもうた！！」
シオン「自慢できないぞ、それ」
童虎「カミュよりはマシじゃろ。カミュは原作で、逃げられてるぞ」
ミロ「あ～、アイザックな。あれは可哀相だったよな」
童虎「いやいや。アイザックでなくて」
ミロ「ああ、水晶聖闘士か！」
童虎「アニメオリジナルじゃろ、それは」
ミロ「・・・・・・んじゃ、誰だ？」
童虎「氷河がシベリアに来た時アイザックが言ってたじゃろ。『ここの修行は厳しくて、すぐ人がいなくなっちゃうんだ』って２～３年、２人っきりだったと」
ミロ「え、本当か、カミュ」
カミュ「ああ。どんな名前だったかも思い出せん」
童虎「なんとなく、カミュの弟子はアイザックと氷河という風になってるが、その影にン万という弟子がいた！！それらが全員逃げた！！そう思えば、わしはまだマシじゃ」
カミュ「あの・・・お言葉ですが、ン万とは弟子候補はとっておりません。１日１人弟子をとり、即日逃げたとしても、１年で３６５人が限界です」
童虎「さて、玄武を迎えに行ってやろうかのう。わしのことわかるかのう」

シオン「確実にわからんだろ。お前のツラ、完璧に若返ってるだろうが」

童虎「そうじゃった。あやつの回想、ジジィじゃったもんな。やれやれ、まず、師匠だと分かってもらうところから始めねばいかんのか」
デスマスク「直情型だもんなー、見てる限り。こっちにとばっちりがこないようにしてくださいね」
童虎「できる限りがんばるわい。では、行ってくるぞ」

アイオリア「それにしても・・・兄さんって、いつ星矢にアトミックサンダーボルトなんて授けたんだ？」
アイオロス「俺もビックリした。世間に忘れられてる存在だと思ってたよ、アトミックサンダーボルトなんて！！」
シュラ「・・・教えてないのか？星矢に」
アイオロス「当たり前だろ。俺が死んだ時、星矢は腹の中だぞ。教えられるはずもない。アイオリアに継がせようと思ったら、なんでかオリジナルにメタモルフォーゼしてたし」
アイオリア「すまん、当時、技名が長すぎて覚えられなくて・・・ちょっとくらいアレンジしてもいいかなーって思ったらああなった」
アフロディーテ「もしかして、星矢はアイオロスの生まれ変わりだったりして」
デスマスク「それいい！！顔、なんとなく似てるし！！」
サガ「アイオロス、なんか、顔が暗いけど、どうかしたのか？」
アイオロス「俺・・・・・英雄通り越して神に近い扱いになってないか？」
アイオリア「それは仕方ないんじゃないか？兄さんは、アテナを助け、今日の基礎の基礎を築いた人なんだし」
アイオロス「俺のしたことは、『アテナを助けて城戸光政に預けただけ』だぞ。それだけ。無様に死んで、このザマだ。みんな、何か勘違いしてないか？」
アフロディーテ「聖闘士として、アテナを守り死んだっていうところに感動してるんじゃない？いいことでしょう」
アイオロス「あそこまで、俺崇拝はおかしいだろ。みんな、俺を知ってる人間がいないからって美化しすぎじゃないか？俺がどんな人間だったかって知ってるのか？」
アイオリア「実の弟に対して、『死んで償え！』って言うような人だったな。光牙みたいな軟弱な男に、そんなこと言ったら、メンタル潰れるだろうな」

ムウ「光牙より、エデンでしょう。星矢が空気読まない発言するから、またも大泣きですよ。あれは、車田涙とは認められません」

アイオロス「俺という人格なんてどうでもよくて、射手座のアイオロスは素晴らしい聖闘士だったというのが完全一人歩きしてヤバイ」
サガ「別にいいんじゃないか？星矢はアイオロスの意志を継いで、アテナを守ろうとしてるし。若干、アテナしか見えてなくて視野狭窄起こしてるけど」
アイオロス「俺のことを神格化しすぎて、誤った考えを起こす奴がでてくるのが恐いんだ」
デスマスク「ああ。あのイオニアみたいな奴か？シュラ、お前の師匠だろ。」
シュラ「・・・・・コメントは控えさせてくれ」
アフロディーテ「アイオロスを妄信して、アテナを倒そうってする奴が現れるってこと？」
ムウ「うーん、それはどうでしょう・・・。射手座はアテナを命を賭けて守る者っていう意識が浸透してますからね・・・。ここでひよって、星矢がアテナを裏切らない限りはそうはならないと思いますよ」
アイオロス「俺は、サガが心配なんだ」
サガ「私か？」
アイオロス「お前の名を悪用しそうな輩がいつか現れそうでな」
サガ「アイオロスを殺して反逆者に仕立てた挙句、アテナを殺して、地上を我が物にしようとしたのは事実だろう？そのことに対しては、私は目を背けるつもりはないぞ」
アイオロス「ああ。お前の名前は聖闘士の歴史からは消えることはないだろう。お前を黒歴史として処分するには、消さなくてはいけない人間の名が多すぎるからな」
アフロディーテ「そうだよね。アイオロス自体、サガがどうかしないと表舞台に出られないもんね。すぐ死ぬから、表舞台って言い方は合ってるかわからないけど」
アイオロス「それに、アテナはお優しい方だから、サガの存在を消して、全てをなかったことにするなんてことはないだろう」
アイオリア「俺たちの歴史がそのまま残ることが問題なのか？」
アイオロス「俺という光が、今、あまりにも強すぎる。そうすると、必ず、影もできる。アテナという存在に疑問を抱いた時、射手座に信用が置けなくなった時・・・恐らく、そいつはサガの存在に辿り着く」
デスマスク「そいつがサガに辿り着いたらどうなるっていうんだ」
アイオロス「サガは簒奪しようとしたものの、政治自体は１３年間問題なく行われていた。サガは実績をあげていることになる。アテナや俺に不信を抱いている場合、それらは、魅力の１つになる」
アイオリア「そうすると・・・どうなるんだ？」
アイオロス「優秀な人間がくだらぬ神を倒して、よりよい世界にしようと企ててもいいと考える筈だ。前例がなければ、まだ踏みとどまるかもしれん。だが、サガがいることで、そいつはサガを崇拝することで、自分を正当化しようとするんだ。サガが俺を殺そうとし、そして敗北して黒歴史扱いされていることも、魅惑的に感じるはずだ。自分がサガのなしえなかったことをしてやろうと、心酔するんだ」
アフロディーテ「サガを知らないからこそ、自分の信じたいところだけ信じ、増幅させる。恐ろしい事だね」
デスマスク「アイオロスにも同じことが言えるけどな」
シュラ「でも、サガは、ハーデスと戦うときに真の聖闘士として戦っただろう。そこを読めば・・・」
アイオロス「人は、信じたいところだけ信じる。それから外れたところは、意図的に考えないか、自分の都合のいいように解釈する」
シュラ「・・・・なるほど・・・！」
アイオロス「だから、サガ。俺は、お前の名が悪用されないか心配なんだ」
サガ「私は別に気にしないけどな。私が犯罪者なのは変わらない事だしな」
アイオロス「お前の名前が誰かに利用されて、踏みにじられるのが許せないんだ。勝手に心酔して、お前に汚名を着せるような奴が現れたら、まっさきに殺してやる」
サガ「おいおいおい。何物騒なこと言ってるんだ。それに、お前魂だけだろ」
アイオロス「ふっ、俺が何度人馬宮から聖衣を飛ばしたと思ってるんだ。遠隔操作はお手の物だｖｖ」
サガ「笑っていえることか、それ」

どどどどおおおおおおおおおおおおおおん！！

ミロ「うわっ、なんだ！？」
カミュ「多分、老師だな・・・。玄武が、老師を受け入れられなくて技を放ったんだろう」
デスマスク「おい、暴れない・壊さない・抜け出さないが約束だぜ～？ラダマンティスにめちゃくちゃ怒られるぞ」
アイオロス「これからもどんどん死ぬんだろうなぁ・・・。死ぬなとは言わんが、自分の命を大事にして欲しいなぁ」
サガ「お前が言えた義理か」
アイオロス「自分がうっかり死んじゃったから、言えるんだって！」
シュラ「・・・殺されかけたのに、うっかりって言えるあなたが本当にすごい・・・」
アイオロス「ここに来て、俺という現実に幻滅したらどうしよう・・・！俺、自分を偽るの苦手だし・・・！とりあえず、玄武に呆れられないようにせねば・・・！お前ら、フォロー頼むな！！」

先代、先々代と呼ばれるようになってきた自分たち。
思いは引き継がれていくが、願望や理想、希望も一緒に重ねられていく。
素の真実のまま、紡いでいくのは、ほぼ不可能だろう。
だから、どうか願うだけだ。
何かに頼らず、言い訳をせず、自分の道は自分で切り拓いて欲しいと。

あとがき
紫龍が再登場しそうなので、登場しちまう前にアップしちゃおうって考えです（笑）ほら、天秤座のくだり！！紫龍、着ちゃいそうだよね、天秤をさ！！玄武以外の新黄金もバカスカ死んでますが、まぁ、そこはそれで。その辺の交流は、また違うギャグでやりたいね。ギャグできるかな？そろそろイケる？

ていうか、射手座があまりにも神格化されすぎてるので、それで大丈夫なのかな～と思って書いてみました。書きたかったメインは後半です。

死んだ当人からしたら、そんなに崇めて欲しくないんじゃないかなあとか思ってたりします。

まさか・・・星矢がアトミックサンダーボルトを出すとはね・・・。予想しなかったであります～！

BY　MUTUMI