Money・DNA

ある晴れた日、十二宮に一枚の葉書が届いた。端を黒枠で囲んだ人生で最後の花道。葬式の招待状である。




今回天へ召されたのは・・・・・アリエスのムウだった。

サガ「一体どうしてこんなことに・・・・」
アイオリア「突いても切っても死なないあいつがどうして・・・・」
デスマスク「財産どうすんだ？全部貴鬼にやることになるのかな。」
シュラ「不謹慎だぞ！」
デスマスク「だってそうだろうがよ。貴鬼は弟子だけど血は繋がってないだろ？遺書残してなかったら、財産は国のもの、つーことは聖域のものになるんじゃないか？」
サガ「・・・・それはうれしいかも。」
アイオリア「お前ら最低だ！人の命を金勘定するなんて！男ではない、人間として認めん！」
そうこうしているうちに、白羊宮がやってくる。線香の香りがしてくる。受付の人が見えてくる。お悔やみの言葉を考えながら受付に行った。


ムウ「みなさん、早いですね。大変うれしいですよ。」

受付にいたのは、なんと死んだはずの男であった。
サガ「な、なな、なんでお前がここに！！」
アイオリア「まさか、ハーデスの軍門に下って！？」
シュラ「それならば俺が介錯をして、もう一度あの世に返してやる。」
ミロ「だああああ！ムウ〜〜〜〜！？」
後続のミロが驚きの声と滝の涙を零した。
ミロ「ムウ！生き返ったのか！うれしいぞ！」
カミュ「バカ。死人が生き返ることなどあるわけないだろ。例外を除いて。多分これは幽霊だ。」
ミロ「足あるじゃん。」
カミュ「お前は日本人か。ヨーロッパの幽霊は足があるのだ。」
シャカ「よほど金に未練があるのか。自分の葬式の日に復活するなんてな。早くあの世に行きたまえ。どうせ、冥界でもやることはたいして変わらん。楽しく金勘定したまえ。」
アルデバラン「そんな非道な男ではあるまい。恐らく、一人残される貴鬼が心配ででてきたのだ。そうだろう？」
アフロディーテ「そういえば喪主は誰なんだ？貴鬼にはできまい。」
ムウ「私です。」


はあ？


ムウ「だって、私、死んでませんから。」


なにぃ！！


死んでないのに葬式を行うバカがどこにいるか。

デスマスク「生きてるって、葬式の葉書来たぞ。」
ムウ「ええ、送りました。」
アルデバラン「ムウの葬式じゃないのか？プリントミスか？」
ムウ「これは私の生前葬です。」


何それ。

ムウ「死ぬ前に葬式をするんです。そのまんまですね。」

バカはここにいた。

シュラ「・・・・・不治の病で余命幾ばくないのか？」
ムウ「まさか、まったくもって健康ですよ。」
サガ「・・・・・・じゃあ何故？」
ムウ「葬式は貴鬼がだしてくれるでしょうけど、死んだ後香典を手に入れても、それは私の懐に入らないじゃないですか。立派なのだしてほしいとは露ほどにも思いませんしね。どうせろくな死に方しないんですから。よくて五体満足。悪けりゃ消滅ですからね。知人友人も戦いで死んだりするんです。知り合いが全員いるうちにてっとりばやくやってしまおうと思いまして。」





・・・・・・・沈黙。


ムウ「さあ、私の葬式を始めましょう！」



ぽくぽくと木魚の音が聞こえる。もちろんテープでとった偽物であり、座布団の上には誰もいない。棺桶は山で木を切って作りましたといわんばかりの作り。骨壷はいかにも１００円ショップやそこらに売ってそうな壷。えっらくチープな葬式である。

しかし、金には貪欲であった。
ムウ「デスマスク！あなた香典が２００ドラクマだなんて、私をなんだと思ってるんですか！」
デスマスク「都合のいい修理屋。」
ムウ「あなたのを修理するためにどれだけの労力をかけたとお思いですか。私が２００ドラクマの価値だなんて、死者に対する冒涜です。もっとだしなさい。」
デスマスク「じゃあ１０００。」
ムウ「最低３００００からです。それ以外は受け付けません。」
デスマスク「仮にも死人が文句言うなよ。」
ムウ「アイオリア！あなたは私が死ぬのを喜んでるんですか！なんですか！香典袋じゃなくて祝儀袋じゃないですか！金額はまあいいですけど、あなた、私が死んでまで嫌がらせをするなんて最低ですね！」
アイオリア「それは悪かったが・・・・死んでないだろお前。」
ムウ「ミロ・・・・祝儀袋の上に中身がごま塩ってどういうことですか。筋肉バカと違って許せる節がありますけど、ごま塩はないんじゃないですか？」
ミロ「しまった！間違えた！」
ムウ「あなたらしいですねえ、実に。まあいいです。許してあげましょう。」
サガ「これは・・・・私からだ。」
ムウ「さすが教皇を務めるだけありますね。金額大変立派です。うれしいですね。この点に関してはアイオロスより教皇に向いてますよ。彼は筋肉バカと同じで礼儀に疎かったですから。」
サガ「よろこんでいいものなんだろうか・・・・なんか礼儀しか勝ってないといわれてる気がする。」
アルデバラン「すまない、俺は１００００ドラクマだ。」
ムウ「アルデバランはそんなものだと思ってました。あなたは会社員に例えるなら、誠実でまじめだけど出世できないタイプですから。見栄とか虚栄心というものを持ち合わせていませんから、これで十分です。限界ですよね。」
アルデバラン「さりげにバカにされた気がするな。」
カミュ「・・・・・・これは私からだ。」
ムウ「おや、サガよりも多い金額ではありませんか。そんなに私が死んだのを悲しんでくれるのですね？」
カミュ「いや、別にそうではない。ミロがどうせアホなことをしでかすと思い、二人分のせたのだ。」
ムウ「無駄な用意かと一見見えますが、すばらしい推測ですね。」
カミュ「さすがにごま塩を持ってくるとは思わなかったがな。」
ムウ「よほど金がなかったんですか？全部小銭とは・・・・」
シュラ「あまりに急なことでな・・・・まことにあいすまん。」
ムウ「あなた、一見思慮深そうに見えて実は短絡的思考の持ち主ですからね。らしいといえばらしいですよ。これだけ小銭があるほうがすごいですよ。」
シュラ「小銭貯金をしてるものでな。」
ムウ「はは、シャカ、あなたは持ってきてくれなかったのですか？」
シャカ「私の顔が香典だ。是非私の顔を拝んで涅槃にいってもらいたかった。」
ムウ「そんなものいりませんよ。」
シャカ「本当に金が命の君だな。インドでは私の顔を見て幸せだと言った者までいた。」
ムウ「よっぽど不幸なんですね。こんな人格のいかれた人間に救いを求めるなどとは。」
シャカ「少なくとも君に救いは求めまい。なんたって金の亡者だからな。」
ムウ「ここは葬式ですよ！」
シャカ「だからなんだ！」


ムウ「死んだ人に向かって罵詈雑言なんてしていいと思うんですか！」



貴様が言うな！！！



そんなこんなで金勘定が全ての中核、ムウの生前葬だった。
葬式を終えた帰り道―――――
サガ「・・・・こんな葬式にでたの初めてだ。」
デスマスク「あんな葬式、出会う方が珍しいって。」
ミロ「でもいいじゃん！ムウ死んでなかったしさ！」
カミュ「そういうプラス思考がお前のいいところだな。ただ、今度本当の葬式にはごま塩は持っていくなよ。」
ミロ「うん。間違えない。もし間違えたとしてもすき焼きふりかけにする。」
カミュ「そういうことじゃない。」
アイオリア「自分の命すら金勘定するなんて・・・・恐ろしいやつだ、ムウ。」
アルデバラン「そういえば、貴鬼の姿が見えなかったが、どうしたんだ？」
シャカ「こんな金に汚い姿を見せたくないから星の子学園に預けてきたそうだよ。」
サガ「なら、やらなきゃいいのに・・・・・」
シャカ「しかたあるまい。アリエスのDNAには金儲けという遺伝子が組み込まれているのだ。」
アルデバラン「ということは、前教皇もやったのか？」
シャカ「どうもそうらしい。というか、アリエスの伝統らしいぞ。」
サガ「伝統か・・・・すごいな。」
シャカ「ムウが言うところによると、前教皇の生前葬の時は八十八人全員からせしめて別荘が建ったらしいぞ。」
アイオリア「・・・・・すごすぎる。」



金一族アリエス。
まさに黄金の羊の名前そのままである。



あとがき
金勘定に命を賭けているムウ様。こんなムウ様他ではみられないでしょう。一体どこまでアリエスを金儲け一族にしたてあげるのか。作者ながらドキドキです。普通のかっこいいムウ様は他のサイト様で目の保養♪

BY　　MUTUMI