兄弟の相互関係における経済の守り方
カノン「ムウ!!通らせてもらうぞ。」
ムウ「またサガと喧嘩したのですか。」
カノン「ああ。」
ムウ「どうせまた碌でも無いことが原因なのでしょう？」
カノン「あいつが細かすぎるのだ。」
ムウ「それで？今日は帰ってくるつもりなのですか？」
カノン「帰る気はない！」
ムウ「良かった。静かに安眠できそうですね。ですが物を壊して帰ってくるのだけはやめてくださいね。お金が勿体ありませんから。」
カノン「分かったよ。」
カノンは怒気を振りまきながら白羊宮を通っていった。ムウはおもむろにパソコンを起動させ、聖域の帳簿を覗いた。帳簿は事件報告書や病症録報告書とは違い、パソコンの中で行われている。改ざんなど、不正行為を防止するためである。教皇であるサガが作成しており、聖域に届けられる請求書をもとに入力している。勿論帳簿には実に何重ものプロテクトをかけ、サガにしか開けられないようにしてあるがミスの無い様に請求書は全て保管してあるらしい。ムウのしている事は実はハッカーで、何重もかけてあるプロテクトを見事にすり抜け、最高機密の帳簿を見ているのだ。そんな事が行われているとはサガは当然の事、帳簿がどこにあるか分からない他の人間が知るわけが無い。
ムウ「先月もサガと喧嘩して双児宮を壊してますね。そして鬱憤を晴らすために大酒飲んで、ああ、しかも店を壊してますね。請求が百万。この日も喧嘩してシュラとデスマスクで飲みに行って、飲酒料金が三十万ですか。聖域の支出の七割はカノンが関係してますね。アフロディーテのバラの肥料半年分四万など可愛いものですね。」
犯罪行為にも関わらず、帳簿をめくるムウ。
ムウ「アテナの所為でお金に無頓着になっているのか、野放しですね。このままではグラード財団が傾きかねません。この帳簿を見る限り、サガ＋喧嘩＝大酒のみ→散財のようですから、その＋の部分を切ってしまえば＝にはなりませんね。しかし私は兄弟がいないのでどうして喧嘩になるのか分かりませんね。どうしましょうか・・・・・・」
貴鬼「ムウ様、どうかしたの？」
ムウ「貴鬼。」
貴鬼「何か悩み？」
ムウ「いえ、そうではありません。貴鬼、聖闘士で兄弟がいる人を知ってますか？」
貴鬼「まず、星矢でしょ。瞬でしょアイオリアでしょ？ちょっと違うけどアスガルドのお姉さんたちと双子の人達でしょ。そのくらいかな。」
ムウ「その人を交えて話し合いでもしましょうか。公聴会風にして他の皆さんにも見てもらいましょう。さて、それを知らせなくては。」
小宇宙を使って、黄金は勿論アスガルドのヒルダ達にまでその事を通告したのだった。
星矢「ムウもご苦労な事だよな。」
瞬「サガとカノンの仲を良くしたいだなんて偉いよね。」
アイオリア「表向きはそうだろうな、間違いなく。」
今回参加する星矢、瞬、アイオリア。残念ながらアスガルドのヒルダとフレア、シドバドは猛吹雪のため飛行機が欠航してしまい来れなかった。
デスマスク「何考えてるんだか。」
シュラ「サガとカノンが仲悪いのはしょうがないだろう。」
紫龍「仲が悪くていいことなんて一つもないぞ。」
ミロ「仲が良い事はいいことだ。」
氷河「ミロとカミュは仲が良いものな。」
シャカ「このような戯事をするとは何か企んでいる証。この行動の背後には絶対お金という言葉がある。決して善意でしていない。いつかみかえりがある。」
アルデバラン「まあ、いいではないか。兄弟仲良くなれる糸口が見つかれば。」
傍聴をする黄金聖闘士と紫龍と氷河。お菓子をバリバリ食べながら、気楽に見ている。
ムウ「本日はお集まりくださいましてありがとうございます。今日は、仲の悪いサガとカノンの仲をどのようにしたら修復できるのか？という事について話したいと思います。」
瞬「サガとカノンが仲良くなれるなら喜んで。」
シャカ「アンドロメダの奴、本気で奴が善意でやっていると信じている。」
アフロディーテ「奴が人を信じなくなったら本当に地上は終わるぞ。」
アイオリア「ムウ。嫌味か？」
ムウ「何がです？」
アイオリア「兄さんはお前らに半殺しにさせられたんだぞ。俺が兄さんの記憶を鮮明に持っていると思うか？」
ムウ「私よりは記憶を持っているでしょう。さて、先ほどの抗議は風の囁きと言う事で話をちゃっちゃとすすめましょう。」
シュラ「サガとカノンの仲より、ムウとアイオリアの仲を修復させる方が先決なのではないか？」
シャカ「経済的に得なことがないのだろう。」
ムウ「では、まず兄弟を好きですか？」
瞬「好きですよ。」
星矢「勿論。」
アイオリア「嫌いなはずがない。」
デスマスク「この時点でサガ達と違うよな。」
アフロディーテ「嫌い嫌いの一点張りだろうな。」
紫龍「嫌いなら一緒に住んではいないだろう。単に素直じゃないだけではないのか？」
シュラ「まあ、カノンはそうかもな。あいつ酔いが頂点に達すると泣き上戸になるから。」
紫龍「泣きが入るくらいならもう少し接し方を考えれば良いのに。」
ムウ「ではどこが好きですか？」
瞬「優しくて、男らしいところ。」
星矢「すっげえ優しくてあたたかいところ。」
アイオリア「誠実で優しかったところ。」
氷河「アイオリアだけ過去形なのが哀れだな。」
デスマスク「やっぱ優しいってのが好きなのか？」
シュラ「そうじゃないか？」
シャカ「あのフェニックスに優しさがあるとは思えないが。」
紫龍「優しさにもいろいろあるさ。」
カミュ「サガはカノンに優しいか？」
ミロ「ありゃ過保護だ。自立させないから喧嘩になるんだよ。」
アフロディーテ「君もカミュに対して考えたほうが良いぞ。」
ムウ「では、無理難題を言われたらどうしますか？」
瞬「勿論努力するよ。兄さんが意地悪で言うわけないし、できるとこ見て欲しいもの。」
星矢「俺は姉さん探し以上に無理難題ってないからな。それに比べたら他の事なんて全然平気だ。」
アイオリア「俺、無理難題なんて言ってもらえない。」
ミロ「青銅の二人はよっぽど信頼してるんだな。普通あんなこと言うか？」
紫龍「二人とも長い間離れ離れだったからな。」
氷河「星矢が今まで闘ってたのも姉さんに会いたいという根本があればこそだ。」
カミュ「サガとカノンだって離れ離れだったのにこの差はなんだ？」
ミロ「離れ離れになった原因が問題だろ。恨みの念を十三年も持ちつづけてたみたいだからな。」
紫龍「だからあそこまで屈折しちゃったのか。」
ムウ「じゃあ、兄弟じゃなかったらって考えたことありますか？」
瞬「どうしてそんな事考えなくちゃいけないの？僕、兄さんの弟で本当によかったって思うよ。」
星矢「俺だってそうさ。姉さんの本当の弟でよかったって思うよ。」
アイオリア「俺は少しあるかも・・・・・逆賊の弟と言われつづけて兄さんと兄弟じゃなければと思ったことが・・・・」
シュラ「随分嫌な思いをさせてしまったな。」
アフロディーテ「間接的に責任はあるけれど、本質的な責任はサガにある。シュラが気にすることはない。」
紫龍「サガとカノンは兄弟じゃなかったらって思ったことあるのかな。」
アルデバラン「さあな。悪巧みにかけてはピカイチの二人だし、十三年間カノンはサガを見返そうと思ってたみたいだしな。兄弟じゃなかったらなんて思ったこともないんじゃないか？」
シュラ「このところは酒を飲みながらサガの文句ばかり言ってるぞ。この間は、勝手に貴重な漫画を捨てたといって口論になったそうだ。」
紫龍「・・・・くだらない。」
ムウ「じゃあ、何欲しいっていうのは？」
瞬「そうだね・・・・・たまには帰ってきて欲しいな。ずっと帰ってきてくれないんだもん。」
星矢「俺が何かすると思い出し笑いするのはやめて欲しいな。姉さん俺の弱み知ってるからそれやられると怖いんだよ。」
アイオリア「盆にくらいは帰ってきて欲しい。帰ってきてもらえるようにわざわざ仏教に宗教かえたんだ。」
ミロ「アイオリアが凄く不憫だ。」
シャカ「このところ仏教について聞きまわっていたがその為だったのか。」
紫龍「星矢って、城戸邸に来る前はどんな奴だったんだろうな。」
氷河「ガキ大将じゃないか？」
カミュ「氷河はどんな奴だったんだ？」
氷河「俺ですか？俺は城戸邸に来る前は、マーマと一緒に暮らしてましたよ。マーマの手伝いをしていました。」
カミュ「ほう・・・・」
途端に部屋の気温が低くなる。推定マイナス百度。
ミロ「たったそれだけのことで凍気を振りまくな！子供が母親といる事ぐらい普通だ。」
氷河「マーマは父親のこと良く話してくれて、さぞかし立派な人だと思っていたんだがな。」
紫龍「現実に全部砕かれたか。」
氷河「あの頃に戻りたいものだ。フウ・・・・」
ため息をついた氷河だった。
ムウ「じゃあ、嫌いなところは？」
瞬「やっぱり帰ってきてくれないところかな。」
星矢「まあ、強いて言えば記憶喪失だったところかな。」
アイオリア「兄さんが死んだ事。」
アルデバラン「アイオリアの傷口に塩でもすりこんでいるかのような質問だな。」
アフロディーテ「悪意はないと思うがね。」
シャカ「悪意のなさそうにするのが奴だ。」
瞬「ちょっと待って、もう一つあった。」
ムウ「なんですか？一輝に文句ですか？」
瞬「いいえ、星矢に。星矢、この間部屋覗いたらまたゴミだらけじゃない。」
星矢「そうか？」
瞬「そうだよ。何あのお菓子のゴミ。飽きもせず食べてたみたいじゃない。」
星矢「瞬、そのお菓子の袋知らないか？」
瞬「捨てたよ、全部！」
星矢「捨てた？」
瞬「そうだよ、僕が全部捨てたよ！」
星矢「何てことするんだ！」
珍しく大声で反論してきて瞬は思わず目を見開いた。
瞬「ゴミを捨てて何が悪いの。」
星矢「あれはゴミじゃなくて応募の袋だったんだ。あのお菓子の袋十個一口で抽選で千名にオリジナルブレスレットが当るから頑張って集めてたのに。五口もできてたんだぞ。」
瞬「知らないよ、そんなの。そんなに大事な物なら大事に保管してなきゃ駄目じゃない。」
星矢「瞬が勝手に部屋を掃除するのが悪いんじゃないか！自分の部屋は自分で掃除するよ！」
瞬「してないじゃない！実際は。ちゃんと掃除してよ！漫画は本棚に並べて、ジュースやお菓子はゴミ箱に捨てて。分別もして！」
星矢「ほっとけよ。俺の部屋のことで干渉するなよ！俺の部屋勝手に弄くるなよ！迷惑なんだよ。」
瞬「な・・・・んで、僕がそんな風に言われなきゃいけないの・・・？」
瞬の声が上ずった。一瞬ひく星矢だがB型の星矢は歯止めがきかない。
星矢「俺の部屋を俺がどうしようと勝手だろ？何でそんな事まで干渉する必要があるんだよ。瞬は瞬の部屋を綺麗にしてれば良いんだ。俺の部屋にまで口だしすることはないんだよ！」
瞬「僕は・・・・ただ部屋を綺麗にして欲しいだけなのに・・・・」
星矢「それが迷惑なんだよ！俺はあの部屋が気に入ってるんだ。皆が皆片付いてるのが好きなんだと思わないでくれ。」
紫龍「あいつ・・・・お菓子を捨てられて思考が多分停止してるぞ。完全にキレてる。いつもならあんな反抗しない。」
氷河「バカじゃないからな。だが今は段々何を言ってるのか分からなくなってるな。」
アフロディーテ「喧嘩の内容、まるで綺麗好きな母親がズボラな息子に言ってるみたいだな。」
瞬「星矢、今までそんなに僕を疎ましく思ってたの？」
星矢「ああ！兄弟だからって頼みもしないのに自分の部屋を片付けて、うるさく片付けろって言って、やかましいったらないぜ。ちょっと早く生まれたからって兄貴面するな！本当に有難迷惑なんだよ」
瞬「・・・・・嫌い。嫌い嫌い星矢なんてだいっっっきらい！」
アフロディーテ「おお！アンドロメダがついに嫌い発言を。私に続いて二人目だ。私の場合、完全に態度で示されたが。」
シャカ「新鮮だな。」
シュラ「おい、先刻兄弟って言ってたけど？」
紫龍「それが？」
シュラ「あいつらは友達だろう？」
氷河「兄弟だぞ。」
デスマスク「アテナを守るという意味での兄弟だろ？」
氷河「いや、肉体的な意味の兄弟だ。」
シュラ「二人には兄弟がいるだろ。四人兄弟なのか？」
紫龍「半分あってて半分間違ってるな。」
デスマスク「何があってて何が間違ってるんだ？」
紫龍「星矢と星華さんは本当の姉弟で瞬と一輝の兄弟は、本当の兄弟。そして、お互い半分血が繋がってる、という兄弟なんだ。」
アフロディーテ「複雑で良く分からないが。」
紫龍「そうだな。星矢姉弟は同母同父の姉弟で瞬兄弟は同母同父の兄弟。そして星矢姉弟と瞬兄弟は異母同父の兄弟なんだ。」
アフロディーテ「ああ、それなら分かる・・・・ってなんと言う事なんだ！アンドロメダは一輝のみならず、星矢とも兄弟!?」
デスマスク「どんな父親だ。どっちかを捨てて再婚したのか？」
氷河「違う。結婚なんてしていない。どちらも恐らく未婚だ。マーマが未婚だったからな。」
紫龍「俺は母親が分からないが、恐らく未婚だったろうな。」
アルデバラン「なんという奴だ。最低だな。人間の風上にも置けない。」
デスマスク「何で、氷河のマーマと紫龍の母親を持ち出すんだ？全然関係ねえだろうが。」
紫龍「その最低の血が、俺達にも流れてるんだ。」
シュラ「ブハッ。」
シュラはジュースを吹き出した。雫がポタポタ垂れた。
シュラ「何だと!?」
紫龍「俺も星矢達と兄弟。異母兄弟なんだ。」
氷河「俺もだ。つまり、一輝とも星華さんとも兄弟って事だな。」
ミロ「俺とカミュは知ってる。」
ムウ「私と老師もご存知ですよ。」
シュラ「俺は知らなかった。お前ら、どういう兄弟なんだ。どうしてそんなに兄弟が・・・・」
氷河「色情狂がどういう考えでこうしたかったのか知らんが、完全無計画に作ったんだ。まあ、聖闘士養成のためとは言っていたが。」
デスマスク「いいじゃないか。」
紫龍「それだったら嬉しいのだが、残念だが、俺達は沙織さんより年上なんだぞ。本来なら十三歳以下じゃなきゃいけないんだ。」
アフロディーテ「なんでだ？アテナより年上じゃいけないのか？」
氷河「凄く関係するんだ、この年齢ってのが。」
デスマスク「で、父親って誰なんだよ。」
氷河「城戸光政だ。」
黄金「城戸光政!?」
シュラ「アテナの爺さんじゃないか！」
シャカ「狼に肉を差し出すような計らいをするとは。アイオロスの目は節穴だな。」
紫龍「だから、沙織さんを引きとる前に俺達が生まれるという事に疑問があってな。」
氷河「城戸光政の考えは一生分からん。」
デスマスク「アテナは大丈夫なのか？そんな環境で！」
ムウ「城戸光政翁もアテナを引き取ってからは、他の女性に現をぬかしてはいなかったようですよ。」
シュラ「抜かしてたら困るわ！」
デスマスク「で、六人兄弟なのか？」
紫龍「知ってるだけで百人だな。」
アルデバラン「百人!?」
氷河「城戸邸に最初に集められた数だ。だが今現在生存を確認してるのは日本の青銅聖闘士の十人だ。」
紫龍「星華さんがいるから十一人だ。」
シュラ「日本の青銅が全員兄弟・・・・・」
カミュ「青銅の才能しかない格下が氷河と兄弟なんて認めたくなかったな。」
氷河「兄弟といっても半分だけですからそう悲観しなくてもいいと思いますよ、カミュ。それに俺はロシア人とのハーフです。血筋が全然違います。」
アフロディーテ「美しいアンドロメダと醜いヒドラが兄弟・・・・そんなの嫌だ。」
ムウ「お年玉が大変ですね。一人千円だとしても一万円ですか。」
シャカ「君には苦痛だろう。しかし札一枚ぽっきりとはいかにも君らしい。」
ムウ「あなたなんかにはあげませんよ。」
シャカ「君に施しを受けるほど私も落ちぶれていない。」
アイオリア「盛りあがってるとこ悪いが、この二人を何とかしてくれないか？俺の手には負えない。」
紫龍「うっかりしてた。早くとめなくては。」
サッと立ちあがる紫龍と氷河。瞬と星矢のもとに向かう。二人ともピリピリして爆発しそうな雰囲気だった。
紫龍「残念だったな、星矢。」
星矢「残念なんてもんじゃないぜ。紫龍はスナック菓子あまり食べないから知らないだろうけど、あのお菓子人気で探すの大変なんだぞ。」
紫龍「そうなのか。」
星矢「ああ。あのブレスレットも銀と黒の銀河スタイルでオマケで金のラメで好きな星座入れてくれるんだぜ。」
紫龍「それはかっこいいな。」
星矢「だから集めてたのにまた一からやり直しだ。ったく最低だぜ。」
紫龍「あ、そうだ星矢、お前が買ってたお菓子ってプリズムスナックか？」
星矢「そう。あれ全部捨てるだなんて苦労が水の泡だ。頑張って集めたのに。で、それがどうかしたか？」
紫龍「それだったら俺が保管しているぞ。」
星矢「何？」
紫龍「瞬がゴミ箱に突っ込んでたのを見て、星矢が似たようなの集めてたからいるのだったらあげようと思って保管してたんだ。あれはお前のか。」
星矢「本当か？」
紫龍「本当だ。だから後で俺の部屋にこい。」
星矢「サンキュ、紫龍！良かった。」
怒りが瞬時に消える。怒りの源がなくなったのならば、怒りがなくなるのは当然。
氷河（流石紫龍。星矢の名調教師っていうか、わざわざゴミ箱からだして保管しておく紫龍の考えが凄い）
星矢「瞬、先刻は御免な。」
そう言って肩に触れようと星矢が手を伸ばした時パシッと瞬が星矢の手をはねのけた。絶対零度に達するほどの冷たい態度。黄金も息を呑む。
瞬「僕、そこまで星矢にいわれるなんて思わなかった。」
星矢「それは、大事なものが捨てられたからであって・・・・」
瞬「でも本音なんでしょ。そんなに嫌がられてるなんて今まで思わなかった。だから、家をでる。」
氷河「家をでるってどこに行くんだ！」
瞬「星矢の目に見えないところ。いっそ冥界に行っちゃおうかなって。僕ハーデスだし、沙織さんの役に立てるように冥界を統率するよ。」
星矢「待て！行っちゃ駄目だ。」
瞬「僕がいなくても紫龍が何とかしてくれるよ。大丈夫。」
氷河「お前がいなきゃつまらない！」
星矢「そうだ。つい我を忘れてあんなこと言ったけど、瞬がいてくれなきゃ話全然あわないし、楽しくない！」
瞬「やかましくて嫌いなんでしょ？」
星矢「嫌いとは言っていない。ただ・・・・・」
瞬「ただ？」
星矢「なんと言ったら良いんだか・・・・」
紫龍「俺は星矢の言いたい事が分かるぞ。星矢は自分の部屋が他人の部屋みたいになるのが嫌なんだろう？」
星矢「そう！そう言いたい。瞬って完璧に髪の毛一本すら床に残さないくらい綺麗に掃除するから凄く居心地悪くて。」
瞬「だって、綺麗にしたほうが快適に過ごせると思ったから。」
星矢「綺麗過ぎて、俺に合わないだけなんだ。だけど、部屋を綺麗にしてくれる事は嫌じゃないんだ。」
瞬「そうなの？先刻の台詞は？」
星矢「あれは頭に血が上って、言っちゃったんだ。ただストレスをぶつけたかっただけなんだよ。」
瞬「本音じゃないの？」
星矢「違う！帰ったら俺部屋掃除するから手伝って。いつもどんな風に掃除してるのか少しは見習おうかなって思う。」
瞬「本当に？」
星矢「本当。」
瞬「・・・・じゃあ喜んで。星矢、嫌いなんて言って御免ね。」
星矢「俺だって悪かったさ。瞬は好意でやってくれてたのにな。」
瞬「ううん。僕、星矢が思ってる事全然知らなくて勝手にでしゃばって。僕の勝手だったのに僕がやってること、やって欲しいこと全然分かってくれてなかったからついあんな酷い事。」
星矢「瞬に迷惑かけてたのはこっちの方だぜ。これからは頑張るから。」
瞬「フフッ。三日坊主の台詞でも嬉しいや。僕、星矢の事嫌いじゃないからね。」
機嫌が直ったのかニコッと笑う。紫龍と氷河はホッとため息をついた。
氷河「瞬が嫌う人間なんて人間のクズしかいないだろ。」
紫龍「部屋はクズでも人間性はそこまで落ちちゃいないからな。」
アフロディーテ「じゃあアンドロメダにあそこまで嫌われ憎まれた私は人間のクズか？」
ムウ「クズに黄金聖闘士などつとまりませんよ。」
デスマスク「じゃあ、聖衣に見放された俺は本当のクズか？」
ムウ「今度は見放されないようにしてくださいね。私の技術の所為にされちゃたまりませんから。」
シャカ「君は職に見放されないように気をつけろよ。」
ムウ「私の技術が未熟だとおっしゃいたいのですか？」
シャカ「聖衣修復には最低限の材料しか使わないだろ。壊れやすいんじゃないか？」
ムウ「失礼な。ちゃんと修復するだけの材料は使ってます。」
シャカ「材料が二流品だったとしたら？」
ムウ「そんな事はしませんよ。そんな事したらかえって損しますからね。」
シャカ「なるほどな。」
ムウ「納得されるとかえってむかつきますが、まあいいでしょう。いいデータがとれました。本物の兄弟喧嘩も見れましたしね。」
瞬「別にあなたの為にしたわけじゃなくて単なる偶然なんだけど。」
ムウ「よいデータでしたよ。内容を把握すると、喧嘩の原因がサガとカノンと似ていることに気づきました。そして、先ほどのデータも踏まえて考えた結果・・・・・」
ミロ「結果どう分かったんだ？」
ムウ「サガはカノンを甘やかしすぎで過保護。カノンを弟として完全に見ている。心配でしょうがないので細かいところまで干渉しなきゃ気がおさまらない。カノンはサガを対等の立場で見ている。なので干渉されるのが嫌い。ですが自堕落なのでサガに面倒を見てもらっているということ。お互いに気持ちが空回りしているということですね。」
星矢「おお！見事だ。」
瞬「流石ムウ。それで解決策は？」
ムウ「カノンを教育すればいいという判断ですが。」
カミュ「誰がやるんだ？あのバカを教育できるほど忍耐のある奴がいるか？」
ムウ「恐らく聖域にはいないでしょう。ですが、五老峰ならなんとかなるでしょう。」
紫龍「五老峰に？」
ムウ「ええ。あそこは気候も良いし、入門するのには良いでしょう。自給自足の生活ですから、いやでも自分がなんとかしなくちゃいけませんしね。それに老師には逆らえません。」
紫龍「それはいいかもしれない。メリハリをつけるのには最適だな。春麗に楽をさせられるか心配だが・・・・多分大丈夫だろう。」
ムウ「紫龍のＯＫもでましたし、無事解決ですね。」
ミロ「大丈夫か？」
ムウ「大丈夫でしょう。白が黒に染まりやすいといっても、流石に染まらないでしょう。きっと黒が漂白されて戻ってきますよ。そうすればサガは細かく言わなくなるでしょうし、喧嘩も減るでしょう。これで、お金を無駄にしないですみますね。」
瞬「え？お金って？」
シャカ「やはりな。私のカンは正しかった。」
ムウ「皆さん、今日は有難うございました。今日はこれで解散となります。私はこれから今すぐカノンをとっ捕まえて五老峰に幽閉しに行ってきます。」
アルデバラン「自由くらいは与えてやれよ。」
ムウ「いりませんよ自由なんて。知ってます？彼一人で聖域の支出の七割を使っているのですよ。」
ミロ「七割？」
ムウ「ええ。ですから、多少きつくてもその性格が直るまで五老峰にいてもらいます。それでは急ぎますから。」
ムウはテレポーテーションしていった。
ミロ「ムウはどの辺まで聖域の経済を把握しているのだろう。」
シャカ「全てだろう。ご苦労だったな、青銅達。どこかの金の亡者が迷惑をかけたようだな。即刻帰り給え。」
瞬「こちらこそ、醜い喧嘩を見せてしまって迷惑をかけました。サガとカノン仲良くなれると良いですね。」
星矢「じゃあ帰ろうか。」
紫龍「そうだな。星矢の部屋掃除するんだろう？一日で終わると良いな。」
氷河「俺も手伝ってやるよ。」
瞬「じゃあ、さようなら黄金聖闘士。」
青銅は仲良く帰っていった。青銅をまきこんだムウ主催の座談会は終了した。経済を守るために彼はこれからも頑張るだろう。ムウがお金のためだけに今回のことを計画した事は、黄金しか知らない。
あとがき
ムウの守銭奴シリーズ第二弾。ムウが聖域の出費を避けるため会議を開きました。星矢と瞬の喧嘩が途中でありましたが、それもデータの一部として有効に活用されたのでよいとしましょう。ムウは教皇の片腕になるのがピッタリだと思います。教皇は仕切り好きのサガに任せるとして、経済担当にムウを据えれば、聖域は安泰だと思います。今回の裏シナリオ。丁度その頃サガはロドリオ村にやってきていました。ムウの企みが知らされたのはその日の夕方でした。
BY MUTUMI