ソロデビュー

イオ「さて、前回黄金三人を表紙にし、おまけでポスターを発行し、書店に並べたところ、今回は二百四十万部も売れました。印税も大幅に入り、寄付はとうとう一千万を超えました。」
バイアン「そりゃあ、凄いな。」
カーサ「テティスに負けないな。」
イオ「負けてるよ。」
アイザック「彼女の曲、オリコンにまた入ってたぞ。おかげでテティスの氷像を注文する客が多くて困るぜ。」
バイアン「そっちの売れ行きも好調なんだな。」
アイザック「おかげさまでな。こちらの寄付は少ないが三百七十万くらいだ。常連は黄金だな。カミュも週に一度は買いにくるしな。流石に小さな小物サイズだが。あの爪長にとめられてるのだろう。」
イオ「ファンからのプレゼントも留まる所を知りません。」
バイアン「そうだよな。特にマユとかエスメラルダとか凄いもんな。」
イオ「人間、欲望は果てしなくあるものです。よって、こう儲かると・・・・」
カーサ「寄付を止めたくなったか？」
イオ「そんなわけはない！そんな考えは持ってはいない。そんなポセイドン様を裏切るような行為は。」
バイアン「お前に裏切りはありえなかったな。」
カーサ「カノンならありえたがな。」
イオ「ここにいない奴の悪口を言っても始まらない。奴はもともとアテナの聖闘士だった。それを理解すれば別にどうと言う事ではない。根は別に悪い奴じゃないしな。」
アイザック「ドライだな。」
バイアン「イオ、それで？今回会議を開いたのは何の目的だ？」
カーサ「本会議は来月だっただろう？」
イオ「今日わざわざ会議を開いたのは、ソロデビューについて話し合いたいと思っていたのだ。」
海闘士「ソロデビュー!?」
バイアン「ソロデビューとはどういう事だ？」
イオ「そのまんまだ。」
アイザック「アイドルじゃあないんだぞ、モデルは。」
バイアン「芸能界にのり込むきか？」
カーサ「それは無理だ。うちには公開できない大きな秘密がある。」
イオ「分かっている。」
カーサ「分かってるって、何を考えてる？」
イオ「御覧の通り、カメラマンの私から言わせてもらうと、うちのモデルにはファンにばらつきがある。」
バイアン「それは知ってる。前に調べた。」
イオ「特に人気があるのはエスメラルダやマユなど女性陣だ。」
カーサ「そうだな。」
イオ「この女性陣をたった一誌だけに留めておくのは惜しいと考えたのだ。」
バイアン「なら、本誌はどうなるんだ？ガラクタの集まりか？」
カーサ「タコのように手を広げると自滅すると言うぞ。」
イオ「私もそれを不安に思い、クリシュナに相談した。」
アイザック「で？なんと言っていた。」
イオ「クリシュナは言っていた。別誌の方に写真は載せるなと。」
カーサ「載せなきゃ写真集じゃないじゃないか。」
イオ「説明が足りなかったな。写真は少量にし、他のページには書下ろしなどを載せたファンの為の雑誌を作れと。」
バイアン「今巷で発売中の聖闘士の雑誌と同じようなものか。」
カーサ「しかし、それなら本誌も読んでもらえるな。流石クリシュナ。目の付け所が違う。」
イオ「で、どうだろうか。女性陣のソロデビューについて。」
バイアン「いいんじゃないか？」
カーサ「まあ、異議なし。」
アイザック「許すとしよう。」
イオ「良かった。では、ソロデビュー化に向けての会議に移るとする。女性陣マユ、ウェヌス、エスメラルダ、ローズについてだが。」
アイザック「ちょい待った。もしかして、そのセットも俺が作るのか？」
イオ「勿論だ。」
アイザック「それは無茶だ。そりゃ材料費はタダだし、すぐ溶けるから場所には困らないしクリスタルっぽいからいいとしても、俺は仕事もあるんだぞ。ただでさえガンダムサイズの注文があるうえ、面倒くさいSLGのヒロインまでやってくる始末だ。そんなに沢山作れない。」
イオ「その点についても話したいとは思っていた。」
アイザック「話してもらわなきゃ困る。」
イオ「アイザックも氷工房を開いているので、あまり迷惑をかけたくはない。」
バイアン「ならば、発売日を遅くするしかないな。」
イオ「そうなると、年に一冊くらいしかだせないのではないか。」
カーサ「そうなるだろうな。俺だって書下ろしとかするのを四人分じゃ神経が磨り減る。」
イオ「年一冊のペースではファンが飽きたりしないだろうか。」
アイザック「飽きたりはしないと思うけどな。この状況を見るに。」
イオ「いや、ファンは飽きっぽいというのが常だ。世の中は無常なのだ。」
アイザック「そうか？」
バイアン「イオも立派なカメラマンになったな。」
カーサ「クリシュナに勝るとも劣らないな。」
イオ「どうすればいいだろうか。」
バイアン「普通に作っていけば良いんじゃないのか？」
カーサ「今だって不定期販売じゃないか。」
イオ「安心感がない。」
バイアン「なら、季節に合わせて発行というのはどうだ？」
イオ「季節に合わせて？」
バイアン「四季にあやかって春に一冊、夏に一冊、秋に一冊、冬に一冊というふうに発行していけば、ファンはその時期が来るごとに思い出してくれる。」
イオ「それはいい。それだったらずっと覚えててくれる可能性がある。」
カーサ「だったら、マユは春だな。」
バイアン「そうだな。平安女にはサクラが似合う。サクラにはマユだな。」
カーサ「夏なんだが・・・・俺達は水着を全然撮った事がない。」
イオ「そりゃなあ。マユやウェヌスは本当は男だしな。」
カーサ「なら、エスメラルダは夏にしておいた方が好都合なのではないか？」
イオ「それはいいかもしれない。ファンレターに水着を撮ってくれと言われても撮れなかったら意味がないからな。」
カーサ「秋はどうする？」
バイアン「ウェヌスとローズか・・・・」
アイザック「ウェヌスは秋がお似合いだ。」
イオ「なんでだ？」
アイザック「ウェヌスとはローマ神話のヴィーナスと同じだ。ローマ神話のヴィーナスは菜園の守護女神。秋は食べ物が美味い。よって秋はウェヌスだ。」
イオ「なかなか哲学的だな。なら残りのローズは冬だな。」
アイザック「季節が合わない気がするがいいだろう。」
イオ「年四回の発行に加え、本誌の発行。金はあるか？」
バイアン「そのくらいの金は確保してある。」
カーサ「なかったら、アイザックの方の金を使えばいい。」
アイザック「俺は金融会社じゃないからな。」
イオ「それでは内容についてだが。」
カーサ「書き下ろしだろ？自分についてとか書けば良いだろ？」
イオ「そうだが、他に人を惹きつける何かはないだろうか。」
バイアン「例えば？」
イオ「どうしても買わなくちゃいけない気にするコーナーとか。」
カーサ「漫画は無理だぞ。そんな才能は持ち合わせちゃいない。」
イオ「そんなのは邪道だ。」
バイアン「恋愛相談所とかは？」
カーサ「恋愛ねえ。エスメラルダは良いかもしれないけど、黄金がねぇ。」
イオ「恋愛なんぞやったこともないのか。」
カーサ「そうなんだ。大切な人って言ってもその三人からは全然分からん。だけど、普通の悩み相談だったらローズならできるかもな。奴は沢山信者をもっている。一刀両断、即決のアドバイスは人を惹きつけるだろう。」
バイアン「マユもできるんじゃないか？そっちは優しくアドバイスしそうだ。」
アイザック「料理講座とかは？」
カーサ「それはウェヌスにとってはいいかもしれないな。奴はバラ料理が得意だ。」
アイザック「バラ料理？なんだそりゃ。」
カーサ「バラの花弁などを使った料理だ。あまりみた事がないから使えるんじゃないか？」
イオ「読者応募のコーナーはもっとないか？自分が載ってるかみたくなって買う奴は少なくないぞ。」
バイアン「なら、ファンレターコーナーはどうだ。」
カーサ「どういうものだ？」
バイアン「ネタを決めて、その内容で心に響いた物を載せ、その葉書を更に点数化し、一番点数を取ったものがモデルと文通できる・・・というものだ。」
カーサ「できるか？年一回なのに。」
バイアン「無茶か。」
イオ「案は悪くないんだが、年一回だからな。年一回しか対戦ができないぞ。」
バイアン「よし、これならどうだ？モデルを十二分の一カットにして、それをおまけにする。十二年買ってやっと大きなポスターになるというのは。」
アイザック「飽きは来ないか？」
バイアン「だったら、太ももとか脹脛から始めて、六年目あたりには顔か胸がくるようなすれば、ガッチリ食いつく。それにファンは一度集めたら全部集めなくては気がすまなくなる。全体が完成しても、あと一こま足らなかったら絶対に買う。」
アイザック「それなら買ってもらえるかもな。」
イオ「それはいい案だな。」
バイアン「マニアのつぼを擽るだろう？」
イオ「大体は決まったな。あとは、四人の個性を考え、個人のコーナーを作ればいい。マユは俳句、短歌コーナーとかな。」
カーサ「分かった。」
イオ「あいつらの考えはカーサにしか分からん。とりあえず、奴らができる事を書いて提出してくれないか？」
カーサ「大変だぞ。」
イオ「ゆっくりでいい。そっちは急がない。」
カーサ「頑張るよ。」
イオ「では、今日の会議は終了だ。ゆっくり休んでくれ。カーサ、来月の会議の時にコンセプトを聞かせてくれよ。」
カーサ「努力する。」
段々出版社のようになっている海底の海闘士達。話し方がもはや素人の域ではない。今度からソロデビューを果たす黄金＋エスメラルダ。次の写真集はどのようになるのか。人々に、購読者代表飲み屋の家族やシュラ、デスマスクなどに気に入られるのだろうか。


あとがき
とうとう黄金＋エスメラルダはソロデビューです。人気があるので、個人でも立派にやっていけるでしょう。それにしても、本当に段々プロらしくなってきました。会議も本格的で、イオが編集長みたいです。海底のモデル達には誰にもいえない重大な秘密を抱えているので、芸能界デビューは絶対にできないでしょう。できるとしてもそれはエスメラルダだけで、他は即黄金にばれてまた冥界行きになるでしょうし。とりあえず、写真集の中で活躍してもらいましょう。今回の裏シナリオ。テティスの新しいCDはオリコンの一位にまた入りました。都合よすぎかもしれませんが、テティスの才能とクリシュナの手腕のおかげです。ちなみに、テティスは作詞も手がけています。その為、金は相当入って来ています。

　　　　　　　　　　BY　　MUTUMI