プラトニックに隠して

クリシュナ「困った・・・・・」
オルフェ「困ったねえ。あ、チェックです。」
テティス「困ったわねえ。じゃ、キングはここに逃げるっと。」
クリシュナ「ってお前ら全然困ってないだろうがーーーー！！」
怒号が部屋に響き渡る。オルフェとテティスは持っていたチェスの駒を持ったままにこやかに言った。
オルフェ「困ってますよ。テティスがなかなか強くて勝てなくて。ねえ。」
テティス「ええ。オルフェの読みが深くてなかなか裏がかけなくて。」
クリシュナ「そんなことはどうでもいい！お前らMHK主催音楽歌謡祭にでられないってこと理解してるのか！」
オルフェ「すごく理解してますよ。ルーク頂きです。」
テティス「ひっかかりましたね。これでチェックです。」
オルフェ「・・・参りました。ふう、これで五十戦二十六敗です。で、クリシュナさん、話はなんでしたっけ。」

ゴールデンランスで切り刻んでやろうか。

オルフェ「というのは、冗談としてMHK主催音楽歌謡祭にでられないことに何か問題があるんですか？」
クリシュナ「一流のミュージシャンのみが選ばれるというこれに選ばれないということは二流であると証明されたようなものなんだぞ。」
オルフェ「ということは、僕らは二流なんですよ。まあ、ある意味納得ですよね。なんたって僕らは音楽で戦闘するんですよ。音楽は芸術じゃなくてパンチやキックと同じなんです。G線爪弾くだけで人ぶっ殺せるなんて、普通の人間にはできやしません。いや、G線でしか殺せないって時点で聖闘士として欠陥があるんですが。音楽をまともに聴いてくれる友人に恵まれませんでした。聴いてもらおうと思ってもいつもなぜか闘技場でバトルになって。ユリティースに逢うまでのン年間は・・・そりゃもう一人で「世界の中心で愛を叫ぶ」状態だったっていうか・・・それにくらべると冥界は外観はさすがにおどろおどろしいですけど、音楽を芸術とみてくれる人がいたのでよかったですね。ただ、音波を鼓膜の手前で跳ね返すっていう知人もいましたけど。まるで僕に欠陥があるみたいですね。本当になんで常識じゃ考えられないやり方で技を破るんでしょう。芸術的センスを理解できない連中を同志に持つ僕の音楽がテロリズムでもそれはしょうがないでしょう。」
クリシュナ「・・・・よっぽど何かたまってたのか？」
温厚で素直でおしゃべりではないはずのオルフェがにこやかな瞳で嫌味まじりでベラベラ語るその姿に背筋が寒くなったクリシュナであった。
テティス「それは災難だったけれど、一般常識外を相手に努力していたのなら、一般人ごとき軽く落とせるんじゃない？この間の曲が８週連続オリコン１位だったもの。あれ？変ね。それだけ売れてるのにどうして選ばれなかったのかしら。」
クリシュナ「今頃気づくな・・・・。」

こいつらといると意外と疲れる・・・・。

テティス「選考員って誰ですかクリシュナ様。」
クリシュナ「音楽業界のボス、妹歯さんだ。」
オルフェ「僕たち妹歯さんの機嫌を損ねるようなことしたかな。」
テティス「あ、あれかも。セクハラしてきたからちょっとはたいたつもりが全治二週間の大怪我になっちゃったの！」
オルフェ「いや、それは僕が奥さんを食事に誘って許してくれるようお願いしておいたから大丈夫だと思う。やっぱり娘さんの家に遊びに行ったことに心証を害しているんじゃないかな。」
テティス「深夜ならまだしもお昼に行ったんでしょ？あれかもしれない。妹歯さんの息子が私に貢いでて10代の少年じゃ買えないようなのを贈ってくれるの。お父さんにお金せびって、それで私のことを・・・・・」
オルフェ「それは関係ないんじゃないかなあ。お手伝いさんの話だと息子さんって株をやってて大もうけしてるって言うし。奥さんに貢がせてる僕の方に問題があると思うよ。成熟した大人だけあって貢ぎ方も半端じゃないし・・・毎回よくしてくれるから今度またお礼に食事にでも誘おうと思うんだ。」
クリシュナ「・・・お前ら１つの家庭を完全に手玉にとってるな。」
テティスでタコ殴った後オルフェで甘い夢をみせて、完全なアメとムチ状態である。渦中の妹歯さんの気持ちを考えると２人を落としたのも十分納得がいく。これだけ翻弄されながら、２人の本命がまったくもって別ということを思うと本気で泣けてくる。しかもこの２人無自覚ホスト＆ホステスだから始末が悪い。忙しさにかまけてこいつらの私生活を知らなかったが、この時間をポセイドン様が与えてくれたありがたい時間として２人を指導することにした。
クリシュナ「お前らもう少しアイドルらしい振る舞いをしたらどうだ。」
オルフェ「そんなこと言っても僕は聖闘士ですし。」

聖闘士だってそんな振る舞いはしないだろ。

クリシュナ「じゃ、人として慎みを持て。」
テティス「私魚ですから人の常識がわかりません。」

リアル過ぎてつっこめねえ。

オルフェ「まあまあ、いいじゃないですか。僕達が何かして得することなんか別にないでしょう。」
クリシュナ「マスコミ関係者が大いに得するぞ。」
オルフェ「じゃあテティスと熱愛関係にあると報じておきましょうよ。」
クリシュナ「はあ！？」
オルフェ「他のタレントとうんたらかんたらってことになるより、テティスとなっておいた方が後腐れなくて楽じゃないですか。」
クリシュナ「楽って・・・・」
オルフェ「熱愛関係にあるとすれば後はもうこっちのもの。誰と歩いてたり話していても単なる友達と思われます。」
クリシュナ「不倫とか浮気とかスキャンダルになるかもしれんぞ。」
オルフェ「そうしたら、そこは当然公然の前でこの世でテティスが一番と言えばいいじゃないですか。」
クリシュナ「お前、自分の心を騙せるほど捻じ曲がった人間ではないだろうが。」
オルフェ「僕の一番愛しい人はあの世にいるんですから、別にユリティースを裏切っちゃいませんよ。」
クリシュナ「しかし・・・・テティスは嫌だろう？」
テティス「私もその方が楽だからいいです。」
クリシュナ「何故！？」
テティス「私のジュリアン様に対するお気持ちが世間に露呈しては、ジュリアン様にご迷惑がかかります。私はそっと忍んでおればそれでいいのです。オルフェと熱愛関係になれば、私の真の思いは誰にも知られることはありませんからとてもいい話だと思います。」
クリシュナ「お前ら、それでも10代か？」
オルフェ「聖闘士の10代は常人の2倍だと思ってくれれば。世の中には15歳にして三十路の風格の人もいますしね。」
テティス「むしろ、歳を重ねれば重ねるほど幼稚になっていきますよ。」

それってあからさまカノンのことだろ・・・・。

オルフェ「お互いに都合がいいんです。善は急げ。やってしまいましょうよ。」
クリシュナ「しかし・・・・・」
オルフェ「テティスもそうですが、ユリティースの存在に気づかれる方がヤバイんですよ。もしユリティースについて尋ねられたら僕はどうやって質問をかわせばいいんです？」
それまであくまでも軽く冗談のような口ぶりだったのが、顔も神妙になり声にも重みがあった。

・・・・へえ。こいつ真剣にユリティースに惚れてるんだ。

あまりにも明るく言うものだからよくわからなかった。
クリシュナ「わかった。お前らの熱愛報道、承知した。」
テティス「ありがとうございます！クリュサオル様！」
指導するつもりが、妙なことになってしまった。しかし、決めた以上徹底的にするのがクリシュナの性格である。
クリシュナ「よし！やるなら思いっきりやるぞ！マスコミを総動員して発表した後、ニューシングル発売をやってやる！忙しくなるからな！お前ら2人当分寝かさないぞ！」
オルフェ　テティス「はい！」
クリシュナ「それじゃ仕事取りに行ってくるから、お前らはファックスでラブラブ文書を送りつけろ！MHK主催音楽歌謡祭の話題をかっさらうくらいいくからな！」

師匠も走る12月、プロダクションクリュサオルの奔走はこれから本番を迎える。


あとがき
90000番のキリ番ゲッターさん美桜さんのご希望で、世界平和維持活動シリーズの芸能部を描きました。美桜様楽しんでいただけましたでしょうか。遅くなってすみませんでした！本編ではまったく話題にでておらず、いつか書こうと思っていたのでとても楽しく書かせていただきました。オルフェばっかり喋っちゃってますね。そんで結構イヤミが利いてらっしゃる・・・確かに筋肉バカばっかりの聖域より芸術に理解がある冥界の方がオルフェにはあっているような気がします。どこかひょうひょうとしたオルフェですね。ユリティースに完全にお熱なので彼女以外はまったく目に入らないようです。時間があるならオルフェとユリティースの物語も書いてみたいなあ。

BY　　MUTUMI