ナチュラルフェイス+α
イオ「オルフェとテティスの写真集を作る？」
青銅達の悪夢の仕事をこなし、三日三晩、疲れで寝こんだ後飛び込んできたのは、芸能部マネージャーのクリシュナの依頼だった。
イオ「構わないが、どうしたんだ？」
クリシュナ「CDの売上げも上々、PVもテレビで取り上げられるほどの人気。YOUTOBEで、無断配信も後をたたん」
イオ「それ、ダメだろ」
クリシュナ「ネット上のデータの連鎖を断ち切ることは、ゴールデンランスで紫龍を切り刻むことより難しいんだ」
イオ「・・・・・その例えもどうかと。聖闘士はネット廃人以下なのか？」
バイアン「オルフェとテティスの写真集ってことはモデルの出番はなさそうだな。ヘアメイクだったら任せてくれ」
アイザック「セットは必要だよな。予算出るのか？出るなら氷じゃなくて、サテンのカーテンとか、ネコ足の木製テーブルセットとか使いたいぞ」
カーサ「俺、一応、人以外に変身できるから、なんか必要だったら変身してやるよ」
なんか、もうお前ら海闘士じゃないだろ的な感じさえしている。
手に職っていいよね。
クリシュナ「ありがとう。場所は海界で頼む。たまには里帰りしたいとテティスも言ってるから」
イオ「ふふふふ・・・腕が鳴るな！！バイアン、超強力マムシリポDEX用意しておいてくれ！！」
高笑いをするイオの横で、
バイアン「カーサ、撮影終了後用に、最強リラックス永眠GOを用意しておいてくれ」
カーサ「・・・りょーかい」
密談を交わす姿があるのだった。
テティス「久しぶりです、海将軍の皆様〜！」
テティスがにこやかな顔でやってくる。久しぶりの紅一点の帰還に、海将軍たちも顔が自然とほころぶ。
バイアン「お帰り、テティス。地上は辛くないかい？」
テティス「大丈夫です！！地上の人間が魚ばっかり食いやがることには本当デストラップコーラルをお見舞いしてやりたいくらいですが！ぶっちゃけ、クジラを食べるのダメって言うんだったら、サカナ食うのもやめろって言いたいです！生まれ変わったら、絶対クジラになります！」
カーサ「・・・生まれ変わったら、人間になりたい・・・じゃねえの？また魚類で生まれるんか？」
アイザック「いや、クジラは一応哺乳類だ。人類に近づいてはいるよ」
他愛無い会話を繰り広げる彼らを少し遠くで見ていたオルフェが口を開いた。
オルフェ「ふうん、ここが海界か。話には聞いていたがなかなか庶民的だな」
イオ「失礼な！！貴様、自分が選ばれし戦士だからって、侮辱するつもりか！」
カーサ「確かに寄せ集め極まりない集団ではあるけどな。修行もろくにしてないし」
アイザック「俺はしたから！本当ならキグナスの聖闘士は俺だから！」
バイアン「・・・アヒル座の聖衣を着たアイザックか・・・微妙だな」
アイザック「そう言うな。デザインじゃないだろ、聖闘士っていうのは」
カーサ「まぁな・・・本当だったらアンドロメダ座が一輝で、フェニックス座が瞬になってた可能性もあるしな・・・。今の運命でよかったって思うぜ」
バイアン「確か、君は瞬や星矢と交友があるんだったな」
オルフェ「そうだな。あの２人には真理を教えてもらったよ。２人のおかげで僕は聖闘士の心を取り戻した」
カーサ「泣かせるじゃねえか」
イオ「・・・逆を言えば、裏切者の分子を長いこと平気なツラして抱えてたハーデスってすごくないか？」
バイアン「カノンも同じことしてないか？」
アイザック「いや、でも、カノンの場合は『最初から利用するつもり』だったわけで、オルフェの立場がポセイドンになるんじゃないか？ポセイドン、復活する予定じゃなかったのに復活させられた挙句、騙されて、聖戦する羽目になってたし」
イオ「でも、そのおかげで俺はポセイドン様に選ばれ、この地に降り立つことができた！！その点だけはカノンに感謝している！！」
クリシュナ「確かに、ポセイドン様のお力がなければ我々は出会うこともできていない。ミクシィでだって探せてたかどうか・・・。本当に小田和正の歌詞を借りるわけではないが、『あの日あの時あの場所で、カノンが幽閉されてなかったら、我々は今も見知らぬまま』だろうからな」
テティス「私もです！！こうして、人型になれなかったら、もしかしたら、皆さんの腹の中だったかもしれません〜〜！！」
アイザック「テティス！！俺は死んでも、お前を食べたりはしないぜ！！」
カーサ「大丈夫だ！俺はもともとサカナ嫌い！肉しか食べた事ないぜ〜！」
バイアン「好き嫌いを偉そうに言うんじゃない、でも、私もメイプルシロップが主食だ〜！」
オルフェ「・・・なんでこんなに涙もろいんだ？」
思い切り顔面アップでボロボロ泣いた自分を差し置いて、クールにツッコミをいれるオルフェであった。
イオ「は〜い、気を取り直して写真集撮影始めるぞ〜」
感動の再会を果たし、はれぼったくなった目をメイクで隠して撮影に臨む。
バイアン「じゃ、まずこれ着て」
オルフェ「これ、本気か？」
テティス「・・・・・これって下着・・・じゃあ・・・？」
イオ「無論だ。超有名なデザイナーに依頼した、可憐で繊細で清楚感溢れる下着だ」
オルフェ「何考えてるんだ！破廉恥な写真集にするつもりか！」
イオ「何をバカな！貴様、ヘビーローテーションを知らんのか！」
オルフェ「・・・それは知ってるが・・・」
イオ「あれは全部、下着だ！！下着なのにいやらしさをまるで感じない！」
テティス「た、確かにそうですが・・・」
イオ「あの写真を撮ったのは、日本でも高名なカメラマンだぞ！私も負けてられない！」
オルフェ「君、本職は海闘士だろ？」
オルフェ自身間違っているが、海闘士は職業ではない。
が、イオも気づくはずもない。
イオ「だからなんだ！カメラマンやりながら、映画監督やってたりする人もいるんだ！どっちが大事なんて関係ない！！」
オルフェ「・・・ボクもこれくらい思い切れば人生楽だっただろうか・・・」
テティス「でも・・・男女で下着は・・・やっぱり問題があるんじゃ・・・」
イオ「・・・それもそうか。じゃあ、オルフェは女装してもらうことにしよう」
オルフェ「それ、更に問題ないか！？」
イオ「そうか？君は女顔だし、むしろ映える方だろう。声なんか写真には載らないし、問題ないだろう」
オルフェ「男が女装して下着着ることが大問題だと思うが」
イオ「加工しておくから大丈夫」
オルフェ「それ、根本的な解決になってない」
バイアン「下着はダメか・・・。じゃ、ネグリジェで」
オルフェ「・・・それもどうかと」
バイアン「ネグリジェならいやらしさは半減するぞ！！ヒラヒラしててかわいいし、ネグリジェ着て外を出歩く人だっているんだから平気だ」
オルフェ「それはどこぞの朱美さんか？」
バイアン「はは、古い日本の漫画をよく知ってるな。しかし、現代の日本人の話だ」
カーサ「最近、妖精ロリータファッションの流行はネグリジェの重ね着なんだってさ！」
オルフェ「寝巻きを重ね着して外を歩くのか・・・？」
アイザック「シベリアでやったら即凍死だけどな・・・。ヒートテック十枚重ねるくらいで丁度いいんじゃないか？俺も買った」
オルフェ「・・・いつでもどこでも寝られるようにか？」
バイアン「それじゃ面倒くさがりにも程があるだろう。どれだけ日本は治安がいいんだ。ただ、ファッションとしてヒラヒラしてて、柔らかい布地はネグリジェ以外にないらしい」
オルフェ「・・・理解不能だ・・・」
カーサ「ま、感性の違いってやつだな。お前も感性が合わない奴っているだろ？」
オルフェ「それはとても理解できる！！」
カーサ「・・・そこまで自信まんまんに断言せんでも」
オルフェ「そうか・・・ラダマンティスのような奴らだと思えば、納得できる。そうだったのか。なんだか、目から鱗だ」
バイアン「じゃあ、ネグリジェOKってことで」
オルフェ「それとこれとは話が別だ！！！」
いつまで経っても平行線な彼らなのだった。
イオ「いつまで経ってもらちがあかん！！ここは・・・！！」
オルフェ「ここは！？」
イオ「酒でも飲んで親睦を深めよう！」
オルフェ「なにぃ！！」
イオ「酒ならいっぱい買ってある！ウォッカもワインもブランデーもビールも！」
オルフェ「僕、未成年なんだが！！」
イオ「大丈夫、俺もだ！」
オルフェ「大丈夫になってない！！」
バイアン「まぁまぁ、無礼講ってことでいいだろ。どうせ、海界じゃ記者もやってこない」
カーサ「俺は飲むぞ〜〜！！」
テティス「え、私もですか？」
クリシュナ「カクテルでも作ってやろう。何がいい？」
テティス「え、クリシュナ様がカクテル！！飲みたいです！！じゃあ、ピンクレディーで！！」
クリシュナ「わかった。UFOの振りつきでやってやろう」
アイザック「マジ！！？あれ踊れるの？見たい見たい！！」
オルフェ「・・・やっぱり庶民的だ」
コップに大量の酒が注がれるのをみながら、呟くオルフェ。
気付けに一口、含んだ。少し苦いが意外とイケる。
こうして、写真集撮影会という名の宴会は盛り上がっていくのだった。
オルフェ「・・・・・・やられた・・・・」
テティス「さっすが、イオ様・・・！！」
後日、出版された写真集にオルフェは額に手を当て、テティスはパァッと顔を輝かせる。
タイトル『素顔』と称された写真集の中身はまさに、あの宴会での様子だった。
クリシュナ「ふむ・・・２人の自然な様子が実に豊かに写っているな」
オルフェ「・・・もう必要ないって起きぬけに言われた時に気づくべきだった」
テティス「こんな風に笑ってるオルフェさん、初めて見ました」
オルフェ「ユリティースと居る時とはまた違う顔だけどな」
クリシュナ「でもまた、この顔ももう一面の君だろう。これならきっと売れる」
ペラッと最後のページをめくる。
オルフェ「・・・・・ブッ！！」
テティス「まぁ・・・！！」
クリシュナ「・・・・・おや・・・」
オルフェ「何をしているんだ！！これは！！誰が着せたんだ！！」
クリシュナ「さぁ・・・俺も記憶になくて・・・」
テティス「でも、お似合いですよ〜！！眠りの森の美女みたいで」
そこには
ブランデーの瓶を枕にして、頬を紅くして眠りこけてるオルフェが、
純白のネグリジェを重ね着している写真がデカデカと載っているのだった。
幸か不幸か、写真集の売上げは、かのアイドル写真集を上回るほどだったと言う・・・。
あとがき
世界平和維持活動シリーズです〜ｖ今回は、海闘士とオルフェという組み合わせにしてみました。元々接点がないだけに、二人称とかが難しいんですが、なかなか楽しかったです！オルフェって使い捨て（ごめん！）の白銀の中では良いポジションにいると思います。あのセミロングの髪も好きなのです！だから、きっとネグリジェも似合うよ！！フェアリーロリータの話はズム○タで見たので使ってみました。楽しんで頂ければ幸いです★
BY MUTUMI