海闘士の奉仕
カノン「ただいまー、サガ。」
サガ「おかえりカノン。何してたんだ？」
カノン「買い物。」
サガ「何買ったんだ？この間も漫画やら何やら買っていただろう。請求書がしっかりとまわって来たぞ。無論カードで払っておいたがな。」
カノン「そうか。」
そう言って、カノンはカノンの戸棚に何か閉まった。そして、どこかへ出かけようとする。
サガ「おい、どこへ行くんだ？」
カノン「ちょっとした野暮用だ。渡したいものがあってな。」
サガ「夕食までには帰ってくるんだぞ。」
カノン「分かった。」
カノンは袋を抱えたまま、双児宮をでた。
サガ「それにしても、カノンの奴何買ったんだ？いつもなら何の漫画だか言うのに。」
サガは気になって、カノンの戸棚を開けた。
サガ「遊び道具でいっぱいだな。えっと、今日買ったのは・・・これか。」
カノンが今日買ってきたものはCDだった。
サガ「ん？この女、知ってるな。誰だっけ？・・・・・・・あっ、テティスだ。」
化粧もしているし、戦士ならけして纏わない美しいドレスを着ているが、このCDの歌手はテティスだった。
サガ「確か、この女はカノンの部下の海闘士だった筈。何故、海闘士がこんなものを・・・・・ん？これは何だ？」
サガは奥にある透明な小物を見つけた。
サガ「冷たい。カノンの奴、こんなものまで買っているのか。意外にもロマンチックなものがある。ん？これ、説明がきか？何か書いてある。何々・・・『氷工房クラーケン』だと？そういえば、アフロディーテからの請求書によくこの店名があったっけ。『絶対に溶けない氷で小物をお作りいたします。大きいものから小さいものまで自由に御注文承ります。ご必要ならば、ネットでのみ販売していますので下記の通りに連絡ください。責任持って品物をお届けいたします。店主アイザック』だと!?アイザックといえば、カミュの弟子でキグナスの兄弟子で、クラーケンの海将軍だったはず。どうして芸術のようなものを。で、これは何だ？」
もう一つ、ズラッと羅列された雑誌を見つけた。その中の一冊を手に取る。
サガ「これは・・・・写真集。このモデル、アンドロメダにそっくりだな。髪の色以外そっくりだ。他人の空似とは思えないな。このモデル名は・・・カーサだと!?それに次のページに写ってる男はバイアンではないか。カメラマンはイオだと!?随分あるということは少なからず人気があると言う事か。知らなかったが。それにしても海闘士の奴ら、一体何を考えてるんだ。何か、企んでいるのだろうか。そうであったら早急に手を打たねばならん。ただちに黄金聖闘士に召集をかけよう。この物も持っていったほうが良いな。」
サガは写真集やCDを持つと教皇の間へ向かい、テレパシーで全員に召集をかけた。
サガ「すまないな、もう夕食を取っている人もいたと思うが。」
ミロ「別にいいさ、たいした食事じゃないし。」
ムウ「で、どのような理由で召集をかけたのですか？」
サガ「まずはこれを見て欲しいのだ。」
サガは先ほどカノンの戸棚から拝借した品をテーブルの前に並べた。
シュラ「ああ、この本は知ってるぞ。飲み屋の親父がこの娘の大ファンでさ、発売日にはいつも買ってるそうだ。」
デスマスク「そういえばそうだな。飲み屋の親父の嫁さんと娘さんはこの男が気に入ってるって親父がいってたっけ。」
アフロディーテ「それにこの小物は私の気に入りの工房で製作したものだな。私も十個ほど作ってもらった。本当に溶けない氷で庭にも飾ってあるし、戸棚にも飾ってある。クリスタルとはまた違った感じで良いのだ。」
アルデバラン「このCDは知ってるぞ。俺も持っている。綺麗な歌声でな、四オクターブまででるからあだ名がマーメイドと呼ばれてるんだ。」
サガ「お前ら・・・・・この存在に気づいていたのか？」
シュラ「そうだけど。サガは真面目人間だからな、善のほうだったら。」
サガ「お前らそれでも聖闘士か！こいつらは全員海闘士だぞ！」
シュラ「そういえば・・・・」
デスマスク「そうだったな。」
アフロディーテ「こんな美しい物を作るから敵が製作したのだとは気づかなかった。」
アルデバラン「言っとくが、俺は初対面だ。ソレントしか知らない」
サガ「アルデバランは聖域にいたから気づかなかったのは許せるとして、私達はあの世から見物していただろう。忘れたのか！」
シュラ「敵にこんな美しい娘はいなかったと思うが。」
サガ「それはカーサの変身した姿だ。誰だかは知らないけどな。」
デスマスク「あの実は醜い野郎か。俺、実はアンドロメダ似の娘を気に入ってたんだけどな。」
シュラ「俺もだ。」
サガ「お前ら聖闘士失格だ。」
ムウ「まあまあサガ落ち着いて。私も今まで海闘士がこんな物を作っていたなんて知らなかったのですから。」
シャカ「君はこんな物に財産を費やすほどできた人間ではあるまい。」
ムウ「単に興味がないだけです。そこまで守銭奴じゃありません。」
シャカ「確かに。この方法で財産を増やそうとは考えてなかったみたいだからな。」
ムウ「馬鹿にしないでください。」
アイオリア「俺も知らなかった。CDも写真集も興味がないから。」
ミロ「アイオリアは真面目一本だもんな。落ちたその時が危ないがな。」
カミュ「そうか、アイザックが・・・・私も買おう。アイザックの為になるのなら。」
ミロ「師匠バカは抑えて抑えて。買うのはカミュでも払ってるのはアテナだからな。本当に財団を揺らぎかねないから抑えておけ。」
サガ「私もカノンの戸棚を覗くまでその存在を知らなかったから、私も同罪と言う事にして、これをどう考える？」
シュラ「やはり、金儲けをしてると考える。」
サガ「もっと深く考えてくれ。」
ムウ「もういちど、世界を支配しようとしていると考えて欲しいのですか？」
サガ「流石ムウ。思慮深いのは黄金一だ。で、これからどうする？」
ミロ「当然問いただす。」
シュラ「ぶちのめしにいくの間違いじゃないのか？」
デスマスク「殴り込みでもいいと思うが。」
カミュ「クールに徹しろと言ってきたがアイザックを倒す事ができるだろうか。」
ミロ「俺がしてやるから安心しろ。」
アイオリア「ポセイドンは封印されているのに何故再び動き始めたのだ？」
シャカ「自分たちの力で支配しようとでも考えているのではないのか？ほらサガの分身は神をも操ろうとした大悪党ではないか。」
サガ「あまり弟のいない前で陰口を言わないでくれ。ここに一人身内がいるので。」
シャカ「事実を言ったまでだ。」
ムウ「しかし、シャカの言う事もあながち間違いではないかもしれませんね。世の中金。金さえあれば、何でも動かせますからね。」
シャカ「君が言うと酷く納得できる面があるな。」
ムウ「ありがとうございます。」
アイオリア「しかし、金だけでこの世を支配できるか？」
ムウ「できます。世界を揺るがすほどの金があれば、独裁する事など容易いことです。」
シャカ「例えば、君なら何を思いつく？」
ムウ「そうですね、世界中の水という水を買い取り、池の水は底抜けしてぶち壊し、川は塞き止め、滝は地面をぶち割って滝の存在を消し、ダムを買い取るかぶち壊し、地上の人間から水を奪ってしまうのです。このところ温暖化で北極南極の氷も溶けていると聞きますし、海の水位はあがるでしょう。土地は減りますし、海の水は人間には適しません。前回は水でうめつくす方法を取りましたが、今回は水を奪う事で、地上を制圧してしまうという方法です。水はメインブレドウィナに収め、倒さないと、水は地上には戻らないという方法でどうです？これなら神はいりませんよ。」
ミロ「随分庶民的だが怖い。」
シャカ「流石だな。君、独裁する側に回ったら凄い計画を思いつくのではないのかい？」
アルデバラン「今更だが、味方で良かった。」
シュラ「昔は敵だったんだがな。」
サガ「もしも、行き過ぎとはいえ、そのような計画を立てていたら大変だ。今からのりこみたいと思うのだが、どう思う？」
カミュ「いかなければいけないだろう。」
アイオリア「フル装備で行くか。天秤座のクロスがないのは少し痛手だが。」
ムウ「老師は五老峰にいるのですから仕方ないでしょう。」
ミロ「俺、食事中だったから、食べるか片付けてくるかしたいんだけど。」
サガ「随分余裕ある発言だな。しかし、腹が減っては戦はできぬともいうからな。全員食事をしてからのりこむとしよう。」
ムウ「そうしましょうか。」
全員駆け足で自分の宮に戻り、とりあえず食事をした。
サガ「ここから跳びこむのか。」
シュラ「死にゃしないだろう。」
アフロディーテ「しかし、こうしてみるとまるで心中でもするみたいだな。」
ムウ「冗談じゃありませんよ。男同士で心中など死んでも御免です。」
シャカ「それに、自分が死んでは香典がもらえないからな。どうせなら香典を受け取る側にまわりたいだろう？」
ムウ「仏教のことなんか分かりませんよ。それにどうしても私を守銭奴にしたてあげたいみたいですね。」
シャカ「そうだと思うのだが。」
ムウ「ふざけないでくださいね。」
シャカ「本気だがな。」
サガ「やめろ、きりがないじゃないか。」
ミロ「そうだ。早く跳びこむぞ。」
カミュ「もし、本当に世界征服するのであったら、私がアイザックに引導を渡さなければいけない。これがアテナの為とはいえ、かなり辛いものがあるな。」
ミロ「クールに徹するんだろ？」
カミュ「そうだが、あの世は寂しいぞ。」
ミロ「そうなのか？」
カミュ「まだ皆がいたから、紛らわす事ができたがミロがいなければつまらん。」
ミロ「今は側にいるからいいじゃないか。」
カミュ「そうだけどな、友人が側にいないのは寂しかったぞ。アイザックに友達はいないのだろうか。」
ミロ「強いて言うなら海闘士達か。」
カミュ「友人と離れ離れにするのか・・・・」
ミロ「落ちつけ、これが俺達の使命なんだぞ。」
カミュ「分かっている。」
ムウ「早く、跳びこみますよ！」
黄金達はスニオン岬から跳んだ。
イオ「いいぞ、カーサ。」
カーサ「そう？」
海底ではイオがカーサの写真を撮っていた。
バイアン「本当にエスメラルダは写真写りが良いな。」
イオ「私の技術が良いといってくれ。カーサ、次は座ってくれ。」
バイアン「この間はどのくらい売れた？」
イオ「十万部くらいかな。印税もバッチリ入ったぞ。カーサ、次はこのベール使ってくれ。」
カーサ「こんなんでどうかな。」
イオ「ばっちし。すっごくいいよ。」
カーサ「本当？この女に変身できて良かったな。」
イオ「アンドロメダと全然変わらないけどな。」
カーサ「こっちは本物の女の子だから、もっと株があがるよ。ただ一つ心配なのは、フェニックスにばれないかなと思う事なんだけど。」
イオ「アンドロメダとエスメラルダは他人なのにまるで双子のようにそっくりではないか。世界を探せばそっくりな人間はいるものさ。」
カーサ「そうだけど。」
イオ「おーい、アイザック、次のセットはできてるか？」
アイザック「できてるぞ。俺も忙しいのだからあまり大きな物を頼まないでくれ。」
アイザックが指差す。そこには氷でできた教会ができていた。
アイザック「生憎、これは二三日で溶けてしまうのでな、気をつけてくれよ。」
バイアン「流石アイザックだな。すばらしいセットだ。大道具係はいらないな。」
アイザック「誉めてくれてありがとう。俺も、こんな物を造る日が来るとは思わなかった。」
バイアン「氷工房の売れ行きはどうだ？」
アイザック「好調だ。材料はタダだからそのまま儲けが出る。ほれ、カーサ、オプションの花だ。」
カーサ「綺麗。わざわざ作ってくれたの？」
アイザック「注文されたバラの氷細工なんだが、余計に作ってしまってな。しょうがないのでお前にやろうかと思ったのだが。」
カーサ「ありがとう、アイザック。」
アイザック「本当は男なのに、女の姿で礼を言われると喜んで良いのか良く分からんな。」
イオ「カーサ、バイアン、次は着替えてくれ。ウェディング調の服を用意したから。」
バイアン「分かった。」
カーサ「はーい。」
イオが服を渡す。
イオ「テティスが送ってきた新作だ。苦労したそうだ、テーマに合うの服をみつけるの。」
カーサ「だけど綺麗だね。テティスセンスある♪」
バイアン「確かに。」
イオ「日本で有名なブランドを買ったそうだ。確かアルテミスだと言っていたな。」
カーサ「高いだろうな。」
イオ「でも、こんなものでも使わないと売れなかったのだからしょうがないじゃないか。鱗衣で売れるほど、世間も甘くない。」
バイアン「そうだけどさ。・・・・・・そうだ、今度から私が作るよ。」
カーサ「大丈夫？」
バイアン「平気。モデルを維持するの結構楽だし。それに衣装にお金かけられないし、結構サイズあわせるの大変だろう？エスメラルダは特に。だから私がサイズを測ってそれで作るよ。それならテーマも楽に決められるし。」
イオ「なら頼むか。」
バイアン「ミシンや服飾七つ道具は経費で買って良いか？」
イオ「うん。」
カノン「おーい。」
バイアン「あ、カノン。」
カノン「やってるな、皆。」
バイアン「どうしたんだ？」
カノン「これを届けに来たんだ。」
カノンがそう言って見せたのは、今月のオリコンヒットチャートだった。
カノン「今月のテティスの評判はどうだったか知らせに来たんだ。」
イオ「ありがとう。」
カノン「ついでにお前らのも載ってるぞ。写真集ヒットチャート。」
バイアン「どうなってる？」
カノン「自分で見てみろ。」
カノンがオリコンヒットチャートを渡す。パラパラとページを捲る。
バイアン「凄い、テティス。」
イオ「私達なんかより十倍は稼いでいるな。」
カーサ「CD百万枚突破か。」
カノン「テティスの才能も勿論そうだけど、マネージャーがいいというのもあるだろう。マネージャーがクリシュナだからな。真面目だし、人目を引くし。」
カーサ「モヒカンだしね。そりゃ人目を引くよ。」
バイアン「私達もヒットチャートの中にちゃんと入ってるじゃないか。」
イオ「小泉純一郎ってのも入ってるけどな。エスメラルダと比べるとそんな奴のドコが良いのやらって思うぜ。」
バイアン「うちの看板娘とどっかのくだらんじじいを比べるな。ランクが全然違うだろう。」
カーサ「バイアンだってうちの看板息子でしょ。カッコイイって批評に書いてあるよ。」
アイザック「看板といっても二人しかいないのだから当然だがな。」
カノン「そういう突込みをするな。」
イオ「そうだ。私達はアイザックと違って、技で生きていけないのだから。」
カーサ「私は技で生きているけどね。」
バイアン「お前は技でしか生きていけないだろう。」
カーサ「まあね、自分で言うのもなんだけど、自分の器量が良いなどとは思ってないから。」
カノン「俺は何もしてないが、お前らの物、ちゃんと買ってるからな。趣味ではないがアイザックのもちゃんと買ったし、カーサ達の写真集も全部買ってるぞ。テティスのも買った。今日発売のCDも勿論買った。」
アイザック「注文率百パーセント女だというのにわざわざ買ったのか。」
カノン「俺も七将軍の一人だったからな。」
カーサ「さりげなく、過去形を使ったね。」
イオ「まあ、ハーデスの時あれだけ頑張ったのだからこれからアテナの聖闘士として生きるのも仕方のないことだろう。」
バイアン「アテナの力か知らないが、俺達まで生きかえったのだからな。」
？？「だから、また世界を支配しようなどと考えているのか！」
イオ「誰だ！」
サガ「アテナを守る聖闘士、黄金聖闘士がやってきた。お前らの悪事、カノンから全て聞いたぞ。」
カノン「いつ、誰が話した！」
イオ「話したのか？カノン。」
カノン「そんなわけなかろう。こうなるのが分かっていたから、サガには一言も話してはいない。いや、酔ったときに話したかも。」
サガ「これが証拠だ！。」
サガがバサッと証拠の品を出す。
カノン「サガ！これは俺が内緒で買ったテティスのCD達ではないか！しかも今日買ったCD。サガ、俺の戸棚を勝手に見たな！」
サガ「ああ、見させてもらった。」
カノン「俺、話してないじゃないか！信じてくれ、バイアン、イオ、カーサ、アイザック。」
イオ「分かっている。前回はだましぬかれたが、今回はサガの証言がはっきり言っているからな。」
カノン「ありがとう、イオ。」
サガ「カノン、私は悲しいぞ。また悪への道に走ったな。」
ミロ「折角、味方だと思っていたのに見損なったぞ。」
ムウ「今回は、全員出動できましたからね。あなた達の負けですよ。」
アイオリア「前回も負けたけどな。兄さんの助けがなくともお前らなど倒して見せる。」
カミュ「アイザック・・・・」
バイアン「ちょっ、お前ら何考えてる？」
シャカ「ムウの計画のようにしたいと思っているのだろう？」
イオ「何をだ？」
アルデバラン「地上の水を全て奪い、征服しようと考えているのだろう？」
シュラ「メインブレドウィナなど俺のエクスカリバーで粉々にしてやるからな。」
デスマスク「手っ取り早く、黄泉平坂に飛ばしてぶっ殺せば一件落着ではないか。」
アイオリア「ライトニング・・・・」
カーサ「あのう、私達をじっくりと見ていただけませんか？」
アイザック「勝手に戦闘開始にしないでくれ。俺が作った芸術が全てぶち壊しだ。」
そう、カーサ、バイアンは鱗衣とは呼べないスタイルだし、イオはカメラを首に吊り下げ、カメラ道具を脇に置いているし、アイザックはエプロンをつけている。
サガ「これがお前らの新生鱗衣か？」
イオ「んなわけないだろう。これは俺達の仕事だ！」
アフロディーテ「そこにある教会は見事だ。誰が作ったのだ？」
アイザック「俺だ。こんなにでかいのを作るのは久し振りだ。この間、バラの氷像を作ってくれと頼まれた時以来だ。」
アフロディーテ「それを依頼したのは私だ。見事だったぞ。」
アイザック「そうか。随分値が張ったが大丈夫だったか？」
アフロディーテ「無論だ。」
シュラ「美人だな、生でみれるとは思わなかった。」
カーサ「それはどうも。エスメラルダの姿を借りたカーサです。」
デスマスク「近くで見ると、アンドロメダそっくりだな。」
カーサ「フェニックスの大事な人です。」
シャカ「奴の趣味は心底アンドロメダなのだな。」
ムウ「あなた達、世間話をしに来たのではありませんよ。」
サガ「そうだ。海闘士よ、何を考えてるのだ？」
イオ「そこのムウが考えた作戦なんぞ、考え付いた事もない。」
アイザック「作戦はすべてカノンが考えていたからな。」
サガ「やはりカノン！お前が今回も犯人・・・」
カノン「違うって。」
サガ「ならば何故黙っていた。後ろめたいものがあるのではないのか？」
カノン「こうやってやってきそうだったから話すのが嫌だったんだ！第一、イオ達がやっていること分かっているのか？」
サガ「世界征服ではないのか？」
カノン「違う！むしろ逆だ。」
サガ「逆？」
カノン「この間、宴を開いてもらった時に話したのだ。」
イオ「ソレント、恵まれない子供への活動はどうだ？」
ソレント「海の中では全然知りませんでした。世界にはまだまだ沢山の可哀相な子供たちがいます。」
バイアン「そうなのか。」
ソレント「食べ物すらろくにないのですよ。」
カーサ「それは気の毒な。俺達は海の底で暮らしていたから食べ物には困らなかったな。」
イオ「太陽とは恐ろしいものだな。」
テティス「しかし、太陽がなければ生きて行けませんよ。このまま発言を続けると悪人の発言になってしまうのでこの発言をいたします。」
カノン「アテナの聖闘士は思慮深いのが一名程いるが、他は突っ走るタイプの人間が多いからな。青銅などもそうだな。」
カーサ「ソレントの笛は人々を幸せにしてるか？」
ソレント「どうでしょう。一時の幸せはあっても、すぐに不幸がやってくるかと思うと私の笛もたいした存在ではありませんね。」
テティス「いえ、セイレーン様の笛はすばらしいですわ。」
カーサ「そうさ、それにポセイドン様のために今も働いているしな。」
ソレント「それはそうですが・・・・」
イオ「それにくらべ、私達は安穏と海底でくらしている。同じ海闘士として少々情けないものがある。」
バイアン「そういえば、先刻のテティスの歌声、凄く良かったな。」
テティス「そんなことは・・・」
カーサ「いや、まるで人魚のような歌声だったぞ。」
アイザック「鱗衣がマーメイドなのだから当然といえば当然だが。」
クリシュナ「なあ、それを商売にしてはどうだろう。」
海闘士「商売!?」
クリシュナ「そうだ。芸能界にのりこんで、テティスの歌声を売るのだ。」
テティス「そんな大それた事、私にできませんよクリュサオル様。」
イオ「当って砕けろという言葉もある。できる筈だテティス。」
テティス「スキュラ様まで。」
カーサ「売れれば、金になる。それを赤十字団体とかに寄付すれば立派にポセイドン様のお役に立っているではないか。」
テティス「そうですか？」
カーサ「そうだ。落ちぶれたって別に構わん。その時は別の方法をとれば良い。」
テティス「ですが私はどうしたら良いのか分からないです。」
クリシュナ「心配するな。私がマネージャーをする。」
テティス「クリュサオル様が？」
クリシュナ「いいだしっぺだし、販売戦略には自信がある。お前を悪くはさせない。お前らも何かしろ。」
イオ「何をしようか。」
クリシュナ「まずアイザック。お前は凍気を使って、小物などを作れ。絶対に溶けないと銘うてば興味はでるし、何より本当の事だろう。ネットだけの販売にすれば海底でも十分やっていける。」
アイザック「なるほど。」
クリシュナ「カーサだが、君は器量が良くない。」
カーサ「悪かったな。」
クリシュナ「君はリュムナデスなのだから、変身能力があるはずだ。それを使って美人な少女に変化できないか？」
カーサ「いままで変身した中で一番の美人は・・・・」
イオ「私的にはアンドロメダだな。」
テティス「アンドロメダは男ですよ。」
イオ「だが、美人だと思うぞ。」
カーサ「いるぞ、アンドロメダ似で女が。」
イオ「誰だ？」
カーサ「エスメラルダだ。もうこの世にはいないらしいがフェニックスの一番大事な人だ。」
バイアン「死んでいるのなら問題はないな。」
クリシュナ「そいつに変化して写真集を作ろう。」
カーサ「写真集!?」
クリシュナ「きっと売れる。材料費が少々かかるが何とかなるだろう。どうせだからバイアンも一緒だ。」
バイアン「私もか？」
クリシュナ「美形だからな。イオは二人の専属カメラマンになれ。」
イオ「私がか？」
クリシュナ「何とかなるだろう。持ち技が六つもあるのはお前だけだ。お前ならカメラマンにくらいなれるだろう。」
イオ「わかった。努力してみよう。」
カノン「俺はどうすれば良い？」
バイアン「私達が作った物を買ってくれ。そうすれば協力していることになる。」
カノン「わかった。絶対に買おう。」
テティス「一つ不安な事が・・・」
バイアン「なんだテティス。」
テティス「アテナの聖闘士に気づかれないでしょうか。」
カノン「大丈夫だ。俺は絶対に言わないし、そんな芸術に興味のない奴らばっかりだ。例え気づいたとしても、七将軍のことを知るのは全然いない。」
ソレント「確かにそうだ。」
カノン「それに、皆単細胞だからその物を楽しんでいる可能性がある！」
カーサ「それはありえるな。」
カノン「もし、のりこんできたら、俺が守る。それで良いだろう？」
テティス「それならいいです。それでは来週から私は地上に向かいます。」
クリシュナ「私達がいなくともしっかりやれよ。」
イオ「分かってるさ。地上にいるポセイドン様のお役に立つためにな。」
カノン「そう言うわけだ。」
イオ「よって、世界征服など考えてはいない。」
サガ「それが確かなら平和の役に立っているな。」
カーサ「分かってくれた？」
ムウ「あなた達が平和の為に働くなんて考えもしてませんでした。」
イオ「これでもポセイドン様に忠誠を誓っているのだ。ポセイドン様が地球の平和の為に働いているのだから、俺達が働くのは当然だろう。」
カーサ「イオは一番忠誠心に厚い海闘士だものね。」
バイアン「これでも既に百万近く寄付をしているのだ。文句はあるまい。」
シュラ「どうやって百万も稼いだんだ？」
アイザック「俺達の能力を生かしたのさ。カミュ、一つ買っていきませんか？」
カミュ「ひとつといわず、何個でも買うぞ。」
アイザック「それはありがたい。どのようなサイズにしますか？」
カミュ「どれが一番大きい？」
アイザック「教会サイズが一番ですがこれは特別ですので商品化はちょっと・・」
カミュ「そうか。アイザック、氷河の氷像は作れるか？」
アイザック「可能です。」
カミュ「それを頼む。」
アイザック「ひきうけました。氷河の氷像をお作りいたします。」
カミュ「値段の方は？」
アイザック「特別サービスで二十五万九千八百ルーブルになります。」
カミュ「買った。」
ミロ「おい、値段を考えろ！」
カミュ「考えている。それで買うと言っているのだ。」
アイザック「あなたにもお作りしましょうか。」
ミロ「俺は要らない。」
アイザック「必要ならば、一割引でお作りいたします。」
バイアン「俺達の誤解が解けたなら、帰ってくれ。」
カーサ「そこにいられると私達を倒すのではないかという圧迫感があるから。」
デスマスク「それなら帰るか。」
シュラ「そうだな。誤解だった見たいだし。次回の写真集を楽しみにしてるし。」
イオ「なあ、お前ら暇か？」
ムウ「私達の役目は悪人退治ですので。」
イオ「暇ですといいたいのだな。」
カーサ「何を考えてるの？」
イオ「お前らも撮影したいなあと今思って。」
黄金「何!?」
イオ「全員、いやそこのでかい大男を抜けば皆美形だし、特別に写して写真集にのせようかなと思って。」
サガ「何を言うのだ？冗談か？」
イオ「本気だ。どうせならこれからモデルとしてうちで活躍しないか？生憎ギャラはすべて寄付という感じになっているが。」
ムウ「そんなに聖域を開けとくわけにもいきませんし。」
アイオリア「そんなものに現を抜かすわけにもいかないしな。」
イオ「皆そうか？」
こっくりと頷く。
イオ「それならばしょうがない。諦めるが、やりたくなったら海底に来てくれ。天候に関係なく撮影しているので中止は殆どない。」
アルデバラン「俺はモデルには向かないとはっきりと言われたのか。」
ムウ「身長はクリアしたようですが、なによりも容姿がよくありませんからね。」
ムウ、かなりの毒舌発言。はっきりと言うな。
イオ「次の写真集、買ってくれな。」
シュラ「勿論だ。」
アフロディーテ「アイザック。また注文するぞ。」
アイザック「ガンダムサイズだけはやめてくれよ。この教会は特別なんだ。」
アフロディーテ「分かっている。」
シャカ「無駄に時間を過ごしてしまったな。」
サガ「だが、彼らが悪事をしようとしてなくて良かったではないか。」
ムウ「それはそうですね。」
カミュ「機会があったらまた海底に行くからな。」
ミロ「俺もついていく。どんな事をするか分からないからな。今日の氷河の氷像は特別だぞ。」
サガ「邪魔をして悪かった。それじゃあな。カノン、夕食までには帰ってこいよ。」
カノン「ああ、もうしばらくしたら帰るよ。」
黄金聖闘士達は、地上へと帰っていった。
バイアン「やっぱりのりこんできたな。」
カーサ「でも、これでおおっぴらに活動できるわね。」
イオ「おい、カーサ、黄金に変化できるか？」
カーサ「勿論。」
イオ「変化してニューモデルとして登場させよう。」
カーサ「いいの？」
イオ「やらんとは言ったが、載りたくないからやらんとは言ってない。つまり使っても構わない。」
カーサ「確かに。二人だけで乗り切っていくのも不安だなって思ってた。」
イオ「だろ？」
バイアン「私としては、平安眉とがいいかな。大人しそうだ。」
カーサ「全部男よ。いいの？」
イオ「数人は女で売り出す。」
カーサ「ならば変化してみよう・・・・・・・・これでどうですか？」
イオ「おお、平安眉そっくりだ。」
カーサ「これで撮影をするのですか？」
イオ「とりあえずやってみようか。あと、目の下にほくろがある奴と、写真集購読者に黄泉平坂男と、体育系の男と目を瞑った男と、サガとカミュと爪長を撮りたい。」
アイザック「悪いがカミュはやめて欲しい。カミュが写真集にのるなど気持ちが悪い。」
カーサ「カミュはアイザックの知り合いですからね、何か思うところもあるでしょう。イオ、カミュはやめませんか。」
イオ「しょうがないな。とりあえず、モデル名を決めなくては。全員カーサってのもおかしいからな。」
カーサ「こいつは眉が平安だからマユでいいのではないでしょうか。」
アイザック「目の下にほくろのある奴の名はアフロディーテだ。」
バイアン「いや、本名は不味いだろう。ローマ神話のウェヌスに変えよう。」
イオ「なら、写真集購読者はどうする？」
カーサ「確か、エクスカリバーがどうとか言ってましたね。ならばカリバーでいいのでは？」
アイザック「黄泉平坂男はタルタロスでいいだろう。」
イオ「体育系はどうするか・・・・特徴がない。」
アイザック「先刻ライトニングとか言っていたから頭を取ってライトでいいだろう。」
カノン「サガも撮るのか？」
イオ「やめて欲しいか？」
カノン「少し。自分と同じ顔の人間が写真集にのるのはちょっと考えるものがある。まして真面目人間のサガがどう考えるか。」
イオ「しょうがないな。目を瞑った男はぜひ女性として売りたい。美人だからな。」
カーサ「それでは、ローズはどうです？情熱的なバラは女性の代名詞って感じがしませんか？」
バイアン「なるほどな。最後爪長はどうする？」
アイザック「そうだな。カミュと親しそうだったから、サルトルでいいだろう。ちょいと縁起が悪いが。」
イオ「それじゃあ、全部決定な。今度の写真集は百万部を目指すぞ！」
海闘士「おー！」
そして、三ヶ月後・・・・・
飲み屋の親父「今日発売の写真集見たかい？」
シュラ「まだだけど。」
飲み屋の親父「びっくりしたよ、いつからモデルになったんだい？」
デスマスク「なんだと？」
飲み屋の親父「ほら、載ってるよ。」
デスマスク「本当だ・・・・お前、海底にあれから行ったか？」
シュラ「行くわけあるか！それよりみろ、ムウとアフロディーテとシャカが女として載ってるぞ。」
デスマスク「本当だ。」
飲み屋の親父「うちの女房も娘も気に入ってね、ますますファンになったそうだよ。」
シュラ「カノン、これはどう言う事だ？」
カノン「こういう事だ。」
シュラ「説明になってない。」
カノン「世界平和を守るための無料奉仕だと思えば良いだろう。」
デスマスク「ムウとか怒るぞ。しかも名前がマユじゃな。」
カノン「大丈夫だ。ムウはそんなもの買いっこないから。」
シュラ「あいつら勝手に俺らを使いやがって。」
デスマスク「パソコンで加工したのか知らんが俺とシュラが写ってるな。」
シュラ「二人共同一人物だとは思わねえだろうな。」
カノン「結構綺麗に写ってるじゃないか。」
シュラ「それは嬉しいけどよ。」
飲み屋の親父「発売初日で既に五十万部売れたそうだよ。」
カノン「先月で五百万も寄付した。」
デスマスク「すげーな。寄付してなかったら億万長者じゃないか。」
飲み屋の親父「テティスもオリコンでずっと一位をキープしてるからね。凄いよ本当に。」
シュラ「いっそ、芸能プロダクションにしちゃえばどうだろう。」
デスマスク「こんなに売れるなら、俺達が写真集作れば良かったな。」
シュラ「クリシュナの発想は凄いな。ムウ以上だぜ。」
海闘士の奉仕活動。一番派手な世界平和維持活動である。今回の写真集は、全部で百三十万部売れたそうだ。ただいま海底で、次の写真集を作るべく活動を開始中である。
あとがき
海闘士のこれからを書いてみました。ポセイドンがいない今、海闘士がやるべき事は殆どゼロ。それにも関わらず、ソレントだけはジュリアンと旅をしている。それでは七将軍の意味がないということで、他の人達も世界平和維持活動に乗り出しました。一番の稼ぎ頭はテティスです。一番稼いでないのはクリシュナとソレントですが、それなりに全員忙しい毎日を過ごしています。聖闘士が争いをおさえることで地上を守ってるのならば、海闘士は寄付する事で地上を守っているようです。当然、海での争いがあるのならば、とめますが。海と地。両方が頑張って地球を守っているのですね。今回の裏シナリオ。アイザックが作った氷河の氷像は宝瓶宮のすみに飾ってあります。美化せずとも美しい氷河の姿が毎日見られて、カミュは機嫌が良いです。
BY MUTUMI