カメラマンも走る！！

カメラマンも走る！！

イオ「お正月特大号を作る」
海将軍「はぁ！？」
師匠も走り回るという年の暮れ、海将軍一のワーカーホリック、別名仕事バカのイオの一言にみんなすっとんきょうな声をあげた。
イオ「お正月はコンビニや牛丼屋以外しまってしまう。それでは暇で暇でしょうがない。やることないなら本でも読むか・・・とこう来る。私達の仕事はなんだ？写真集製作だ。お正月を楽しめるような写真集を製作するのが義務というものだ」
バイアン「相変わらずのその根性・・・立派だが・・・本来の俺達の仕事は柱を守ることだぞ」
イオ「お正月特大号だから、ソロ雑誌より豪華に行く。うちの専属モデル、全員を使っての大豪華雑誌だ！」
カーサ「げっ！全員っていうと、俺のやってる奴に、海闘士、神闘士、冥闘士ってことか！？」
バイアン「衣装製作が大変だこりゃ・・・・・」
アイザック「セット・・・・どんだけ作ればいいんだ・・・？」

頭を抱える二人。『反対』という単語は思いつかないのだろうか。

イオ「写真だけじゃない。付録はオルフェとテティスの新作CDだ！サービス満点５００％！なんかワクワクしてきたぜ！」
カーサ「撮影場所はどこでやるんだ？」
イオ「海界でいいだろう。冥界だとおどろおどろしいし、アスガルドは今雪で全面閉鎖だ。地上だと聖闘士に気づかれるかもしれないし」
カーサ「海界なら海に飛び込むだけだから旅費も安くていいしな」
イオ「馬鹿者！！モデルに対してなんたる暴言！！モデルがいなけりゃ雑誌は真っ白！モデルに対してきちんとした配慮をしなければ、この先出版業界でやっていけないぞ！！今回はお正月特大号なのだから、モデルはファーストクラスで連れて来い！」
バイアン「わかった。手配しておく。・・・どうでもいいけど、お前、自分の本分忘れてないか？」

彼の今の本分は、間違いなくカメラマンだろう。

撮影当日、写真集部所属のモデルが一斉に海界に赴いた。
フレア「えええ～！聖闘士の方たちに許可とってないの～！」
カーサ「バレたら半殺しですよ、はははは」
フレア「半殺しじゃすまないわよ～。だって、ハーゲンなんて幼馴染の私をたかが氷河をかばっただけでぶっ殺そうとするんだもの。ねえっ！」
ハーゲン「いや・・・・その・・・その節は失礼しました」
バイアン「フレアさん！こっちの服に着替えていただけますか！」
フレア「は～い！」
ハーゲン「おい、お前！服の縫製はきちんとできてるだろうな！もし、ぽろっとかなったりしたらただじゃおかないぞ！」
フレア「ほらね、ハーゲンってこういう人なの。こういう思考回路だと、もしバイアンの服がぽろってとれたら、私がハーゲンを殺しにいかなきゃいけなくなるのよ」
ハーゲン「それは大きく何かが間違っているのでは？」
モデル同士が会話を交わす。初対面だというのに、もうすっかり打ち解けている。アスガルド、冥界を治める彼女達もシンパシーが合うのか語り合っていた。
ヒルダ「まぁ・・・そちらも今経済的に苦しいのですか」
パンドラ「このモデルの仕事のおかげでなんとか持ち直しつつあるけどな」
ヒルダ「それは喜ばしいですね。アスガルドは全然復調の兆しがなくて・・・ダメですねぇ、アルベリッヒ」
アルベリッヒ「勝手に同類項でくくるなーーー！ダメなのはアンタ一人！」
パンドラ「おや、随分と荒々しい男だな。こんな男は冥界にもそうおらぬぞ」
アルベリッヒ「いや、私だってそうなりたくてなったわけじゃ。この天然大バカ女はこれくらい言わないとダメなんです」
パンドラ「天然大バカ女・・・そのような人称代名詞を使うとは。仮にも地上代行者であろう？」
アルベリッヒ「あなたは聡明な方だからわからないのだと思いますよ。大雪でワルハラ宮から丸一週間でられなくて、進言したら、この人何て言ったと思います？『雪が降りたいと言っているのです。降らせてあげないと可哀相でしょう』って言ったんですよ！」
パンドラ「おや・・・それはそれは・・・・」
アルベリッヒ「本気でぶっ殺してやろうかと思いました！誰が雪の都合なんか聞きましたか！！まだフレア様の、雪が綿菓子ならいいのに～の方が夢があってよかった！アンタ！今回のギャラ、帰り際に難民に寄付なんか絶対にしないでくださいね！」
ヒルダ「でも・・・困ってる方に・・・・」

アルベリッヒ「少しは自分の状況をみつめろーーーー！」

パンドラ「アスガルドの事実上のトップがアンタ呼ばわりで怒りもしないとは・・・恐るべし」
ヒルダの器の大きさにごくりを息を飲むのだった。

イオ「じゃあ、撮影始めるぞ。まずはホストクラブ～」
バイアン「どういう呼び方だ！」
ジークフリート「できれば名前で呼んで頂けると・・・・」
イオ「わかってるジャン、自分のこと」

パチリ

イオ「流石色男代表だな。なかなかカッコイイぞ」
カーサ「貴公子っていう表現がぴったりだな」
アイアコス「うーむ、冥界にはこのような男はいないな。いるのはサドとマゾくらいか」
ラダマンティス「冥界をキワモノ集団みたいに言うな」
ミーノス「そうですよ。私とラダ以外は比較的まともです」
アイアコス「それは認めるんだ・・・・」
パンドラ「まともというと、そちらは常識人がそろったと言えるな」
アルベリッヒ「常識！？まさか！！」
ヒルダ「まあまあ、確かに私は大バカ天然あばずれ女ですけど、他の人は違うでしょう？」
アルベリッヒ「さり気にあばずれが含まれてますけど、俺、それは言ったことないですからね。捏造しないでください。まあ、常識人だからこそ、簡単にヒルダ様の言葉を信じたと言えますね」
シド「迷信も簡単に信じるしな」
バド「信じた挙句がこれだぞ。やってられんわ。海界はどうなんだ？」
アイザック「結構まともだぞ。文字通り死ぬまで柱を守り抜いたしな。守る必要すらないくらい固いのに」
カーサ「つか、もともと事の発端は聖闘士の大喧嘩から始まったわけだしな。とばっちり食った被害者的な感じだよな」
トール「一番の被害者はこっちだろう。オーディーンがポセイドンの配下であった為に操られて戦う羽目になったんだから」
カーサ「ということは、全てをひっくるめて考えると、２６１歳とかいう人類の常識ぶっこえた聖域が一番すごいんじゃねえ？」

ある種の緊張が全員に走った。

間違いなく、最強のキワモノ集団だよなぁ・・・・・。

みんなの心は一つだった。

イオ「はい、次、マフィアメンバーズ」
ラダマンティス「おかしな人称で呼ぶな」
ミーメ「ラダマンティスにミーノスにアイアコスに、シュラか・・・言い得て妙だね」
イオ「一応この後デスマスクも別撮りして合成するから五人だ」
フレア「ホストクラブとは両極って感じね」
パンドラ「しかしワイルドだ。これにシビれる女性もいるのだろうな」
イオ「んじゃ、これに加えてフレアさん、お願いします」
フレア「私！？雰囲気的にはパンドラが一番じゃない！！」
イオ「勿論、パンドラさんも撮らせて頂きますが、フレアさんもお願いします」
フレア「何で！？こんなお気楽ご気楽で、お姉さまとは別の意味でアッパラパーの私がマフィアなんて似合わないわよ」
アルベリッヒ「自分の悪口がスラスラでてくるのは血筋なのか・・・？俺でもそんなこと言ったことないぞ」
イオ「蝶よ花よで育てられた雰囲気がいいんですよ。マフィアは義理堅いことで有名ですから、小さな姫君をきっと大切に育てるはずです。強面の男がある女性にだけ見せる笑顔・・・それに客は心惹かれるのです」
フレア「そっか～なるほど！頭いいわね～！」
パンドラ「義理堅いのはマフィアではなくヤクザではないのかな・・・・」
イオ「その辺の細かいことは気にしないで。パンドラさんは着物に着替えてください。イメージは極道の妻って感じで」
パンドラ「完全にまざりあってるぞ。本当に気にしないでいいのだろうか・・・」
Ｂ級ハリウッドのような写真に仕上がりそうだと思うのだった。

イオ「次、クィーン～」

パチリ

フレア「わ！美人～あれは本当の女性？」
パンドラ「いやいや、多分男だ」
フレア「多分って？」
パンドラ「私もよくわからんのだ。ラダマンティス、お前の部下だろう？知っているか？」
ラダマンティス「さあ。男っぽいようであり、女っぽいようであり・・・」
パンドラ「よし、今度着替えを覗け」
ラダマンティス「な、な！！パンドラ様、パンドラ様のご命令でも流石にそれは・・・・」
パンドラ「知りたくないのか？」
ラダマンティス「知りたいと言えば、まあ知ってもいいかな程度です。男ならいいですよ、笑い話ですから。万が一女だったらどうします。俺は一生消えない傷を背負うんですよ！」
ミーノス「傷・・・あなたの方が背負うんですか・・・？」
ミュー「そういえば、私やファラオは女性として売り出してますけど、クィーンはどうなんでしょう。イオ！クィーンは女なんですか、男なんですか？」
イオ「不明で売ってる」
ミュー「不明！？」
イオ「世の中には男なのか女なのかさっぱりわからず、それが魅力になってる奴もいる。スカートは決してはかさず、ナチュラルな雰囲気をかもしだし、そこが客の心をくすぐると。イメージ的にはナチュラルな宝塚男優。クィーンもそれで了承している」
ミュー「おい、クィーン、男なのか、女なのかどっちなんだ？」
クィーン「ヒ、ミ、ツ」

クィーン・・・身内ですら性別のわからない貴重なキャラである。

それからン時間。シルフィード、ミュー、ゴードンなど様々な服、セットで撮り続け、とうとう最後である。
イオ「ラスト、本物の女性陣～」
バイアン「普通は全員本物のはずなんだけどな」
パンドラ「服、これでいいのか？」
着替えていそいそと出てきたパンドラ達に男どもは絶叫した。
ラダマンティス「うわぁあああ！なんですかパンドラ様！その格好は！！」
パンドラ「な、なんだ。へ、変か？」
ラダマンティス「すごくよくお似合いですってそうじゃなくて、その丈の短さは何なんですかーーー！」
ハーゲン「フレア様もです！そ、そんな生足をおだしになるなんて！」
ジークフリート「ヒルダ様！お嫌ならはっきり言ってください」

パン　フレ　ヒル「たったの膝上１０センチがそんなに気になる？」

ラダ　ハー　ジーク「気になります！！」

ラダマンティス「バイアン！！何て破廉恥な！！」
バイアン「破廉恥って、彼女らの膝下３０センチの方が世間一般では異常なんだぞ」
ジークフリート「異常とはなんだ異常とは！ヒルダ様を侮辱する気か！」
バイアン「そんなつもりは全然ない。ファッションは人それぞれだからな。けど、せっかく綺麗な足なんだからみせなきゃ損だろう」
ハーゲン「これに乗じてパンツでも見るつもりなんだろう！変態！」
ミーノス「パンチラは男のロマンですよ。ね、バイアン」
バイアン「ね、じゃない。俺はいたってまともだ。ハーゲン、そっちに真性の変態がいるぞ。殴るならそっちにしておけ」
ハーゲン「おう！ミーノス！悪いが撮影の間眠っておいてもらおう！！」
ミーノス「ふ、できますか、あなたに」
バチバチッと火花が散る二人。これから死闘が始まる・・・・

バイアン「あ、ごめん。悪いけど、衣装汚して欲しくないから、やるなら脱いでくれ」

と思ったら、とんだ横槍が入った。
ミーノス「は？衣装って今日全身あなたの衣装ですよ。脱いだらフンドシ一枚ですよ？」
ハーゲン「フンドシ党だったのか貴様・・・・」
バイアン「衣装は布一切れだって大切ですからね。ましてやあなた方はきっと原形を留めなくしてくれるでしょうし。だから、脱いでください」
ミーノス「脱げと言われても・・・・」
ハーゲン「俺はフレア様を汚さないためならどんなことも厭わん！」

がばっと光速で脱ぐハーゲン。あっちゅーまにパンツ一丁。

ハーゲン「脱がないのか？とんだ腰抜けだな」
ミーノス「言いましたね。私に喧嘩売ったこと後悔させてあげましょう」

がばっと光速で脱ぐミーノス。あっちゅーまにフンドシ一丁。そして始まる二人の死闘。

ジークフリート「見ちゃダメですヒルダ様。汚れます」
ラダマンティス「お前らの方がよっぽど破廉恥だ」
ヒルダとパンドラを自分の手で目隠しをしながら呟く、しつけの厳しいお父さんなのだった。

こうして、撮影が終わり、モデルは全員帰っていった。
イオ「いや～～撮った撮った。どれもこれも良い写真ばっかりだ」
撮影がうまくいってホクホク顔である。
バイアン「お前、ハーゲンとミーノスの写真も撮ってなかったか？」
イオ「鍛えぬかれた男の肉体美にクラクラする女性もいるだろう？ちょっとインパクトが強いから袋とじにする」
バイアン「本当、使える被写体は全部使うのな。脱帽だ」

プルルルル

電話のベルが鳴った。アイザックが受話器をとる。二言三言しゃべり、がちゃりと切った。
アイザック「テティスとオルフェのＣＤできたってさ」
イオ「本当か！」
アイザック「かなり良い出来らしいぞ。スタジオの人が絶賛してたって」
イオ「そうか、オリコン狙えるといいな」
バイアン「・・・付録だからオリコンには入れないぞ」
イオ「そうか。それは残念だな。そういえば雑誌のオリコンって聞かないな。あればいいのにな」
残念そうにイオが言う。イオを除く海闘士は思った。

もしも雑誌のオリコンなんかがあったら、こいつは間違いなく１位を狙う。

イオ「ようし！これからお正月特大号入稿まで頑張るぞ！さて、リポＤ買ってこようかな！」

徹夜して１位を狙う。

イオ「どうした、心配そうな顔をして。大丈夫だ。今から作業すると思うとテンションがあがってくるんだ」

ああ、どうか、永遠に雑誌のオリコンなんかありませんように・・・・！

師走も終わる頃、世間を悩殺する写真集が発売される。ファン必見のお正月特大号は税込み７５００円。除夜の鐘で取り除けないくらいの煩悩が生まれること請け合いです。

あとがき
112233のキリ番はあきら様が踏んでくださいました～！ありがとうございます～！テーマは、『世界平和維持シリーズで、海界・冥界・アスガルドの合同写真撮影』です。ご期待に添えられましたでしょうか。登場人物が多いので、多少でてこれなかった方々もいらっしゃるんですが・・・申し訳ありません。書いててむちゃくちゃ楽しかったです。ギャグはいいですね！！写真集って買ったことがないのでわからないのですが７５００円は高すぎかなあ。でも、全てのモデルが載ってる夢のコラボ写真集だから少し値がはっててもいいですよね。このシリーズ、一切本物の聖闘士がでてこないんですよね。でてきたら八つ裂きじゃすまないんですけど（笑）これ、シリーズとキリリク両方にリンク張ってあります。リクエストありがとうございました！！

ＢＹ　　ＭＵＴＵＭＩ