副業の副業

アイザック「お前ら、よっぽど暇なんだな。」
カーサ「まあな。」
バイアン「暇で暇で。」
アイザック「なら少しは手伝ったらどうだ。」
北氷洋では細かな氷コハクチョウを作るアイザックと、明らかに暇そうなバイアン、カーサがいた。
バイアン「そんな芸当は私にはできん。」
カーサ「俺はできるけど面倒だ。」
この場にイオはいない。
アイザック「イオ、やっぱり体に支障がでてたな。」
カーサ「疲れてるだろうにエスメラルダの撮影旅行に出かけて、くそ重い機材抱えて仕事したからな。」
バイアン「そうでなくても、二週間も徹夜したり、極寒のアスガルドに出かけたり、無飲無食で体を非常に酷使して本人無自覚で挙句の果て・・・・」
カーサ「円形脱毛症の上、神経性胃炎、視力障害、頸肩腕障害に陥ってたからな。」
アイザック「病室に縛り付けてきたから大丈夫だろう。」
カーサ「氷でか？」
アイザック「それは流石に。窓を凍らせて、内側のノブを破壊してきたから、外側からしかはいれん。」
バイアン「ん？それじゃトイレはどうするんだ？」
アイザック「・・・・・・なんとかなるだろう。」
カーサ「おい。」
アイザック「それより、お前らイオがいなければ何もできないのか？」
カーサ「できないということが本当に分かった。」
バイアン「本当にな。」
アイザック「お前らも副業で何か始めてみたらどうだ？」
カーサ「悪くねえな。でも、両立させるの大変じゃねえ？」
バイアン「そうだ。もともとこちらが副業となっているのだ。本業になりつつあるけど。副業の副業って大丈夫なんだろうか？」
アイザック「その事なら俺に言わせろ。俺だって本業は北氷洋の海将軍だ。副業で氷工房をやってる。プラスして写真集の小道具大道具まで作ってるのだ。この間はそっち優先して死にかけた。意地で届けたけど。立派に副業の副業だろう？」
カーサ「確かに。今仕事どのくらいあるんだ？」
アイザック「そうだな。一日に小さいの六個くらいだな。大きいのが来た時は困り者だが。」
バイアン「大変だな。」
アイザック「小さいのは楽なんだがな。大きいのが注文された時にお前らの撮影が重なると、漢方薬でも飲んででも頑張らなきゃいかん。あ、この間のマッサージ椅子サンキュな。結構ストレスが解消される。」
カーサ「それはよかった。」
バイアン「アイザックが立派に両立できてるのだから、私達ができないわけないな。」
カーサ「そうだな。モデルも毎日毎日撮るもんでもないし。」
アイザック「じゃ、考えてみるか。」
氷のコハクチョウを脇に寄せる。
アイザック「バイアンは美容院の息子だろ？それ、何か役に立てないか？」
バイアン「とはいっても、開業しても海の底じゃ客が・・・・・」
アイザック「地上で開業するとか。」
バイアン「それじゃ、そっちが副業１になってしまう。ファンの手紙の返事だってださなきゃいけないんだから。」
カーサ「じゃ、アイザックみたいに海底でできる事だな。」
アイザック「他に何かないか？氷をその場で出せるとか、真珠をその場で出せるとか。」
バイアン「そんな技持ってないって。」
アイザック「不都合な体だな。」
バイアン「私から言わせてもらえば、アイザックの体の作りの方が気になる。」
カーサ「海闘士が海闘士の体の不思議を唱えても仕方ないだろう。どちらも五十歩百歩だ。」
アイザック「お前もな。」
カーサ「バイアン、フレア達の以外のモデルで使った服は使い終わったあとどうしてるんだ？」
バイアン「残念ながら捨てる。」
アイザック「勿体無いぞ。貧しい人達に贈るとかって考えなかったのか？」
バイアン「考えついたけど、皆プロポーションいいから、本人しか入らないんだ。」
カーサ「なるほどな。」
アイザック「それはやはりいけないと思う。環境問題が撮り沙汰されてる中、一回着ただけで捨ててしまうのはやはり良くない。」
バイアン「では、どうしたらいいんだろう。」
カーサ「そうだ。モデル達の人形でも作って売るのはどうだろう。」
アイザック「悪くは無いが、この活動、あまり世間に知れ渡りすぎるのは不味い。黄金にバレたらどうなるか・・・・・」
既にスーパーモデル並に世間にでまくっているのは気にしないのだろうか？
バイアン「じゃ、テディベアだな。」
カーサ「そんなの作れるのか？」
バイアン「実は私の姉が人形作りが趣味でな。」
カーサ「お前お姉さんがいたのか。」
バイアン「ああ。こうなってからは一回も会ってないが。」
アイザック「上手いか？お姉さん人形作り。」
バイアン「そりゃもう。十八歳の頃に姉はカナダドールデザイナー大会青年の部で優勝をしている。」
アイザック「凄いな。姉はドールで弟はヘアデザイナーか。」
カーサ「優秀なアドバイザーもいるし、いけるんじゃねえか？」
アイザック「で、それと服がどう言う関係になるんだ？」
カーサ「人形の詰め物にそれを使うんだよ。思いきり解していれればきっとほわほわで可愛い人形になるぜ。」
アイザック「なるほど。しかしバイアン、肝心のお前の人形の腕は？」
バイアン「大丈夫だ。強制的にし込まれたんだ。腕は落ちていないだろう。」
アイザック「じゃ、後でクリシュナに聞いてみよう。」
実は写真集部の最終的実権を握ってるのはクリシュナである。彼に聞いて、より的確で最適なプランを見出すのだ。行動に移すのはそれからである。
アイザック「バイアンはとりあえず、なんとかなりそうだ。カーサ、お前手先は器用か？」
カーサ「頭の回転と手先は器用だ。」
アイザック「実はな、バイアンとイオが北欧に行った時、ポセイドン神殿にファックスが届いたらしくて俺が様子を見に行ったんだ。」
バイアン「ファックスって何の？」
アイザック「クリシュナから、病院の指定だ。どこにすればいいかって聞いてたんだ。」
バイアン「流石クリシュナ。」
アイザック「ファックスを見て、地図に照らし合わせてみようと思って、書庫室に行ったんだが、その時偶然本棚から本が一冊落ちてるのに気付いたんだ。」
ポセイドン神殿には、あの戦った場所以外にもちゃんと部屋がある。書庫室もその中の一つだ。本を友にでもしないと、流石に娯楽のなさ過ぎる海界では耐えられないだろう。
カーサ「それで？」
アイザック「内容がな、何と、『狙った獲物を自分の物にする法2004』だった。」
バイアン「それって・・・・・？女性週刊誌の仲間か何かか？」
アイザック「いや、古めかしい魔法書だった。」
カーサ「2004って何だよ。今年発行じゃないのか？」
アイザック「2004もの魔法が印してあったんだ。」
バイアン「そんなにあるのか？」
アイザック「ああ。その中に、自分の操りたい相手を容易くオトす魔法があった。」
カーサ「完全に呪い（まじない）の部類だな。」
バイアン「魔法をより庶民的に簡単にしたのが呪いだ。間違えるな。」
カーサ「で？」
アイザック「それはオーディーンの地上代行者ヒルダを操った奴のと同じ魔法だった。」
バイアン「ニーベルンゲンの指輪か？」
アイザック「そうだ。指輪は黄金を削り、魔法のエンブレムを彫る。そして、護法星を描き、魔法を唱えるのだ。」
カーサ「悪魔降臨のような儀式だな。」
アイザック「ポセイドン様が手作りしたのかなっと思うと微笑ましいものがあるが、どうだカーサ。その魔法書を使って店を開くのはどうだ。」
カーサ「うむ、悪くない。」
バイアン「しかし、黄金なんて原価が跳ねあがってしまう。売れないかもしれないぞ。」
アイザック「オーディーンの地上代行者ヒルダをも操った超効力のある魔法だ。一般人を操るなど容易い。一度成功すれば口コミで人気ははくする。」
カーサ「一般人が操って得があるか？」
アイザック「まだ2003魔法がある。その中には頭を良くする魔法など、一般人にも役立つ魔法がある。」
カーサ「それなら害はないか。」
バイアン「効力は低めの方が良いな。所詮は呪い程度に留めておかないと、自分で努力しなくなってしまうかもしれない。」
アイザック「そうだな。ヒルダ並になると困るな。影で助けるくらいの強さが良いな。」
バイアン「あの性格破綻は私も驚いた。神闘士も未だに恨んでてさ。」
あの時の神闘士の形相を思い出したのか、はあとため息を吐いた。
アイザック「ご苦労さん。」
カーサ「いいけどよ、もし人気が出て注文が殺到したらどうするんだ？手作りの量産なんて無理だぞ。」
アイザック「なら、クリシュナに頼んで、それを作ってくれる機械を買えばいい。最初は恋愛成就と、学業成就、金運上昇、健康祈願の四つで良いじゃないか？そうすれば後はエンブレムを彫って、魔法を唱えるだけだ。」
カーサ「なるほど。じゃ、俺は魔法ショップでも開くか。」
バイアン「店舗名はMAHO堂。」
カーサ「それはやだ。小学生じゃないんだしよ。」
アイザック「じゃあ、やっぱりリュムナデスだな。」
バイアン「イメージピッタリだな。」
カーサ「じゃ、バイアンはシーホースだな。」
アイザック「生地を新たに買うだけで良いな。基本的にデザイナーパタンナーとそう変わらないな。」
アイザック「じゃ、クリシュナに電話するか。」
カーサ「そうだな。」
バイアン「私は姉さんに人形の型についてちょっと聞いてくるかな。何年ぶりだろうか、人形作るの。」
ピッポッパと地上のクリシュナに電話をかける。一週間後、北太平洋と南氷洋の柱では、忙しそうに準備するバイアンとカーサの姿があったのだった。

あとがき
イオが入院してしまったので、暇になったバイアンとカーサを独立させてみました。またバイアンにオリジナル設定です。お姉さんも存在する事になりました。ドンドン増えるマイ設定。どこまで増えるだろう。お姉さんはカナダドールデザイン大会の優勝者。さぞ良いアドバイスをいただけるでしょう。海闘士の活動は衰える事を知りません。過労で倒れない様にね。
　　　　　　　　　　　　　　　BY　　MUTUMI