台風がくる前には
年間300日は晴れるというギリシャに突如、大型ハリケーンが襲来するというニュースが入った。
協調性がなく、グループ行動が苦手なギリシャの赴きそのままな黄金聖闘士達は一体どんな対策をとるのだろうか。
サガ「と、いうわけで、我々聖域もハリケーン対策をとることになった。対策本部部長のサガだ。よろしく。」
ねっからトップがお好みらしい。
デスマスク「対策ってなにするんだよ。建物の補強か？それとも浸水対策？避難経路による避難場所の行き方？」
しっかりものがわかっているではないか。
サガ「食料の問題もあるしな。みんなで手分けしていろいろ購入しようかと思う。確か非常時の食料は配っておいたはずだ。それをベースに足りない物をそろえるとしよう。」
ミロ「はい！」
サガ「なんだ？」
ミロ「カンパン食っちまったので俺の宮に食料はありません！」
サガ「はあ？」
デスマスク「バカか！カンパンなんて食ったってまずいだろうが。」
ミロ「んなことねえぞ。ビスコみたいな感じでうまい。」
サガ「・・・・ジャムとかも配ってあっただろ。」
ミロ「それも食っちまった。」
サガ「パンにつけてか？」
ミロ「いや、それだけで。」
サガ「・・・・うまいか？」
ミロ「うまいぞ。」
ジャムのみを平気で食べる男。血糖値が気になるところである。
サガ「じゃあ食料は後回しにして、とりあえず上陸した時の対策として避難があるが・・・・・」
アイオリア「ちょっと待った！」
サガ「・・・・・なんだ？」
アイオリア「逃げるのか。」
サガ「は？」
アイオリア「逃げるのかと聞いているのだ。」
またわけのわからない主義主張が聞けそうである。
アイオリア「聖闘士ともあろうものがハリケーンごときに恐れをなして逃げ出すなど情けない！女子供で十分だそんなこと！我々聖闘士は決死の覚悟を持ってハリケーンに立ち向かうのだ。みんなも同じ気持ちだ。なあ！」
賛同者はいなかった。
アイオリア「どうしてだ。お前らそれでも聖闘士か！」
シャカ「相変わらずイノシシだな君は。だからミミズに負けたのだよ。」
アイオリア「負けてはいない！失礼な！」
シャカ「失礼。ミミズに一発逆転の男だったな。」
そっちもそっちで相変わらずである。
アルデバラン「お前の気持ちもわからないことはないが、自然の力に人がかなうわけはないぞ。」
アイオリア「負けてもいい！死ぬ時は前のめりだ！」
シュラ「よく生きてこれたなお前は・・・・・」
シャカ「もし戦うとしてどんな風に戦うんだ。」
アイオリア「そりゃもちろん台風に向かって必殺技をぶっ放す。」
シュラ「お前の行為は俗に自殺行為というんだ。」
デスマスク「俺だったらサーフィンしに行くけど。」
シュラ「お前の行為はバカな行為というんだ。」
アイオリア「俺は聖闘士として戦士として死にたい。」
シュラ「ドン･キホーテ扱いされるのが関の山だ。やめとけ。」
デスマスク「ところで、さっきのセリフ、まずいと思うぞ。」
アイオリア「どこがだ。一人でも俺は立ち向かう覚悟だ。」
デスマスク「そーじゃなくて、逃げるのは女子供で十分だ、なんてセリフさ、魔鈴が聞いたらぶち切れるぜ。」
アイオリア「う・・・・！」
デスマスク「そーでなくても聖域の女性陣は自主自立をモットーにしてるのが多いからな。意地でも生理休暇とらない面々だよどれも。俺はとれるならとるけど。」
シュラ「一生無理だバカ。」
デスマスク「そんな彼女らに今のセリフはまずいんでない？ただでさえ恋人未満なのにそれ以上下がったらどうすんだよ。」
アイオリア「・・・・・・訂正する。」
デスマスク「どんな風に？」
アイオリア「逃げるのは、魔鈴とシャイナとジュネ以外の女子供だけで十分だ！にする。」
シャカ「ふっ、訂正とは男らしくない。男ならば好きな女に嫌われても持論を通すものではないのかね。」
アイオリア「なんだと！」
シャカ「そうだろう？好きな女の為に自分をまげるなど男のすることかね。」
アイオリア「よく言ったシャカ。」
シャカ「君にほめてもらうほどおちぶれてはいないがね。」
アイオリア「人を好きになったことのないお前に恋愛に関してうんぬん言われたくないわ！」
シャカ「レンアイ・・・・？うむ？話くらいで手をつなぐこともせず、そもそも話といえば星矢のことばかり。かといってデートの誘いをするかと思えば闘技場で修練、キスもなければその先なんか存在することすら知らなそうな関係を恋愛というのかね。」
アイオリア「恋愛のプロセスはなかなか難しいんだ！」
デスマスク「そうか？酒場のお姉さんと恋仲になるのは一日だぞ。」
アフロディーテ「それは百戦錬磨の君と百戦錬磨の酒場のお姉さんだからできることだろ。甘い言葉をかけることなどできやしないアイオリアには無理な話だ。」
アイオリア「そんなことない！俺だって言える！」
アフロディーテ「ほう。なら言ってみなよ。」
アイオリア「素敵なレッグウォーマーだな。」
アフロディーテ「なかなかいいじゃないか。」
アイオリア「綿100％で保温性に優れている。持ってみるとふわりと軽く、つけていることを忘れそうな機能性。値段も安く、丈夫で長持ちだ。そんなすばらしいものをよくみつけたな！」
アフロディーテ「何をほめたんだ君は・・・・・・」
そらもう確実にレッグウォーマーだろう。
ムウ「はい、サガ。」
サガ「なんだ？」
ムウ「補修用の石材などは？」
サガ「それならもう注文して用意してある。」
ムウ「どこの石材ですか？」
サガ「いつも私が愛用している石材店だが。」
やっとまともな意見がでて安堵した矢先―――――――
ムウ「全部返品してください。」
サガ「なにぃ！？」
ムウ「ハリケーンごときに金を流出する必要はありません。」
サガ「だ、だが、それで宮が壊れたらそれこそ大損害だろ。」
ムウ「それは正論ですが、なら、私が仕入れにいきます。」
サガ「何故だ。」
ムウ「あなたは高級志向が強すぎるんです。あなたの好む店はどれも標準よりも高い店ばかり！」
アルデバラン「そうだったのか。それは知らなかった。ちなみに何をどんな値段で購入してるんだ？」
ムウ「聞いてくださいよ。サガは、聖闘士候補生の修練着に五万円もかけてるんです！」
アルデバラン「それは高いな。」
サガ「高いというな！綿100％で保温性抜群！おまけに一日に十着しか作らないボッ・タクリさんの作品だ！」
デスマスク「さして目立つ機能性じゃねえな。」
サガ「それに！オプションとして羊皮の靴！シルクの靴下！麻の布袋！そして
純銀製の薬箱がついてるのだ！」
シュラ「無駄にすごいな。」
アルデバラン「累計すると五万じゃきかない気がするが？」
シャカ「確かにな。聖闘士になれるかもわからない奴に金をかけてどうするのだ。」
アイオリア「それは失礼だ。俺たちも昔は聖闘士候補生だったじゃないか。」
ムウ「で、私は常々こう忠告してるんですけど、サガがきいてくれないんです。」
アフロディーテ「若いつばめを大事にすることはいいことだが、限度があるぞ。もっと用途にあった購入をしないと。シルクが哀れだろ。」
ムウ「いえ、そうではないんです。」
アフロディーテ「じゃあなんだ？」
ムウ「聖闘士候補生にそうやってお金をかけるなら、生命保険もかけなさい！と。」
沈黙。
ムウ「おや、どうしました。」
アルデバラン「いや、お前らしいよ。」
ムウ「憧れませんか？保険金生活。保険金だけで食べていくんです。根性なしが多ければ多いほど生活が潤うんですよ。一人1000万として月に一人死ねば月1000万の収入、年12億の収入。殺人を犯したわけでも虐待で死なせたわけでもない。てっとりばやくて安全な金儲けだと思いませんか？」
全員「思わねえよ。」
ゴーンゴーン
午後六時の鐘が鳴った。
ミロ「お！テレビの時間だ！んじゃ俺先帰るわ！」
サガ「お、おい！」
ミロ「どーしても見たい番組があるんだ。」
デスマスク「俺も帰るわ。シュラ、飲みいかねえ？」
シュラ「飲みすぎるんじゃないぞ。」
サガ「ちょっと待て！話し合いがまだ終わってないぞ！」
アフロディーテ「適当にやっておいてくれ。連絡すれば対応するよ。」
シャカ「私もこれ以上無駄な時間をすごしたくないのでね。」
ムウ「そろそろ株の終値がわかる頃ですし。こんなことに時間を費やすなんてバカバカしいですから。」
アイオリア「夜のトレーニングの時間があるからこれで。」
カミュ「私も失礼するよ。サガ、おつかれさま。」
アルデバラン「何かあったら連絡してくれ。」
川の流れのように上から下に帰っていった。
今日の結論は「するだけムダ」であろう。
今日の内容は、
ミロのジャム食い
リアの恋愛論争
ムウの金儲け論 のみであった。
何故失敗したか。それはギリシャ人特有の性格と、黄金聖闘士の人格のせいだろう。
そして、最大のミスは
あんなメンバーで話してまともな会議になるわけないと思わなかったサガの誤算である。
あとがき
台風２２号襲撃を記念して作ってみました。あいかわらずお金に貪欲なムウ様です。意外とデスマスクがまともかな。言い争いが多いな。リアシャカとかムウシャカとかムウリアとか・・・・とにかく台風で被害が出ないよう祈るばかり。
BY MUTUMI