なんて素敵に金儲け

アルベリッヒ「おい、もうすぐホワイトデーだぞ。お返しは何か決めたのか。」
ジークフリート「手製の菓子をプレゼントしようかと思ってるんだが。」
アルベリッヒ「いかんいかん、そんな安物。ヒルダ様はお喜びにならないぞ。」
トール「そうか？ヒルダ様なら何でもよろこんでくださるんじゃないのか？」
アルベリッヒ「お前らは貧乏に輪をかけた貧乏だろ。そもそも期待なんぞしとらんわ。ジークフリート、お前は成金だろ。少しは見栄を張って金のネックレスでも贈ればどうだ。」
ジークフリート「お前に指図を受ける覚えはない。」
アルベリッヒ「ジークフリート！お前ヒルダ様に振り向いてもらいたいと思わないのか！」
ジークフリート「う・・・・・」
アルベリッヒ「今日まで振り向くどころか、友達にも劣る関係にしかなってないだろ。ここらで一丁決めて進展しないと永遠の独身貴族だぞ。ご両親だって悲しむだろう？たとえ成金とはいえ血筋が途絶えるのはうれしくないはずだ。」
ジークフリート「・・・かもしれん。」
アルベリッヒ「だろ！金は天下のまわりもの！自分の気持ちを表すにはちょうどいい！1つ豪華なものをお贈りしてお心を掴むんだ！」
ジークフリート「そうだな、ヒルダ様にお似合いのネックレスでもプレゼントするか。」
アルベリッヒ「それだったら俺が目をつけていた高級ネックレスを譲ってやろう。かなり高いがその分キラキラと輝きヒルダ様の胸を飾るにはもってこいだ！絶対女性には気にいられる！それにしろ！それに！」
ハーゲン「お前、ずいぶんジークフリートに優しいんだな。」
アルベリッヒ「当り前だろ！これでも大事な友人なんだからな。それよりハーゲン、お前こそフレア様に何をあげるつもりなんだ？」
ハーゲン「そりゃもちろんマシュマロ・・・・」
アルベリッヒ「ダメダダメダダメダ！何考えてる！フレア様は立派な女性だぞ。」
ハーゲン「・・・・だから？」
アルベリッヒ「マシュマロだのクッキーだの幼女がよろこびそうなものだろうが！熟した女性にプレゼントする代物ではない！」
ハーゲン「だったらぬいぐるみとか・・・」
アルベリッヒ「一遍死ね！それこそ金にもならないクズではないか！花開く乙女にそんな子供っぽいもの！フレア様はもう大人も同然！貴金属1つ持たずどうする！」
ハーゲン「でも、あまり欲しがらないみたいだし・・・・」
アルベリッヒ「ウスラトンチキ！！興味がないのなら、興味をひきだせばよいだろうが！女は貴金属が大好き！初めての貴金属をお前がプレゼントしろ！それは永遠の思い出だぞ！ずーーーっとフレア様が身につけている姿を想像してみろ！どうだ？」
ハーゲン「・・・・いいな。」
アルベリッヒ「ぬいぐるみなんぞ所詮タンスの肥やしにしかならんわ！それに引き換え貴金属ならば末代までつけてくださる可能性すらある！お前とフレア様がどうなるかはわからんが、ここらでフレア様を女性として接した方が進展の望みはあるんじゃないのか？」
ハーゲン「確かにそうだな・・・・」
アルベリッヒ「貴金属だったらフレア様にはイヤリングがお勧めだ！特にアスガルドジュエリーのイヤリングはいいぞ！見事にカットされたダイヤ！これはかなりの値打ちもんだ！給料一年分くらい叩けばラクに買える！それにしろ！」
ハーゲン「いや、でもそれは金が・・・・」
アルベリッヒ「素敵よ！ありがとうハーゲン！一生大切にするわ！と言われたくないのか！」
ハーゲン「ぐっ・・・わかった。がんばってみる。」
アルベリッヒ「シド！お前はどうするつもりなんだ？」
シド「うーん、決めてなかったけどジークフリートより豪華にするのは気がひけるし・・・・」
アルベリッヒ「何を言うか！忠誠を誓う証拠として奴より豪華なのを贈って何が悪い！それでジークフリートの恋が成就しなかったところでジークフリートに意気地がなかっただけのこと。本気で成就させたいなら既成事実で結婚してる！お前が気兼ねをする必要などない！」
シド「本人がいる前でよくもそう言えるもんだな・・・しかしまあ、一理あるといえばあるな。」
アルベリッヒ「そこでだ。お前はいっそ自宅にある宝物をプレゼントするといい。家宝だったらランクが違いすぎてジークフリートとは比較にならない。宝物だから忠誠の意味になる！」
シド「うちの家宝といったら・・・・」
アルベリッヒ「最高級のルビーをはめこんだ王冠！あれがいい！」
シド「え！あれ！？あれはちょっと・・・・」
アルベリッヒ「お前は一生神闘士なんだろう？だったら家などお取り潰しでいいじゃないか。」
シド「ジークフリートに言ってたこととまるで逆では？」
アルベリッヒ「まあ、忘れろ。だったらバドと連名のプレゼントにしろ！バドはどうせ金がないからろくなものがプレゼントできない！血の繋がった弟ならここらで兄孝行してやってもいいんじゃないか？」
シド「・・・確かに兄さんの株をあげるならそれもいいかもしれない。わかった。あの王冠、ヒルダ様に献上しよう。」
バド「お前ら、そろって俺のこと見下しただろう。」
シド「そんな！もともと万が一のことを考えてあの王冠は兄さんのために残しておこうと考えておいたものですよ。」
バド「貧乏で悪かったな！」
シド「そんな！貧乏が悪いなんて一度も思ったことはありません！ただ、さぞかし大変だろうと思って・・・・」
バド「ああ！大変さ！そこまでいうなら、お前の望む通り雪国のターザンになってやる！そんで雪の下で哀れ凍死してやる！負の遺産を全部押し付けてくれるわ！あばよ！」
シド「待ってください！兄さん！」
ドカドカと雪国の双子は部屋をでていった。
ハーゲン「アルベリッヒ、お前のせいだぞ。」
アルベリッヒ「兄弟仲については俺の知るとこじゃない。それにバドが死んだところで国庫がどうなるわけじゃない。つか死んだ方が食費とかが浮くからいい。」
ミーメ「ドライすぎるぞ。」
アルベリッヒ「ミーメは曲でもプレゼントするのか？」
ミーメ「ああ、今日のために作りあげた新曲だ。」
アルベリッヒ「音楽一筋もいいけど、ヘタするとそれしかできない阿呆だ。そろそろ男性としてけじめをつけた方がいいんじゃないか？」
ミーメ「琴も弾けない君に言われたくはないな。」
アルベリッヒ「お前のやってることは、AV女優が誕生日プレゼントに生演技するようなものだぞ。」
ミーメ「そんな下世話なものと比べないでくれ。」
アルベリッヒ「AVはだめで琴ならオッケーという価値基準は改めろ。琴がオッケーならAVもオッケー。そう神経でなくっちゃ祝われる方の気持ちはわからんぞ。」
ジークフリート「無茶苦茶だぞお前。」
アルベリッヒ「じゃあお前、フェンリルが狼一匹とかプレゼントしてきたらどうするよ。正直迷惑だろ？」
ジークフリート「・・・・確かに。」
アルベリッヒ「自分の特技をプレゼントにすると、自分は気持ちいいかもしれんが、相手にとってはとてつもなく迷惑になる。曲なんて金にならんしな。コンサートをやった方がよっぽど儲かる。ホワイトデーは一般的なものをさしあげてとっつきにくい人というイメージを返上するんだ。」
ミーメ「・・・微妙に納得できない部分はあるがとっつきにくいというのは当たってるかもしれない。」
アルベリッヒ「フツーに宝飾品を送ってみろ！いつものイメージが外れて心がちょっとキュンとなるぞ！いつもと違うことを見せつけられると人はドキリとするもんだ。シャワー浴びてバスローブで登場してみろ！絶対ドッキリ行くぞ！」
ミーメ「いや、私は恋心を抱かせたい気持ちは微塵もないのでそれはやめておく。余計な血を見ることにもなりそうだし。何をプレゼントするといいだろうか。」
アルベリッヒ「確かお前のうちにはすばらしい馬があっただろ。確か血統書つきで競馬では無敗の帝王だとか。」
ミーメ「確かにうちには馬がいるが・・・何故裏の稼業を知ってるんだ。」
アルベリッヒ「あれだけ書類に目を通せば興信所真っ青の情報屋になるわ。馬ならヒルダ様も乗っていただけるぞ。」
ミーメ「ふむ、確かに。あれ以外にも稼ぎになる馬はいっぱいいるし・・・」
アルベリッヒ「よし！決まりだ！」
フェンリル「・・・・狼ってだめか？」
アルベリッヒ「だめだ。」
フェンリル「くそっ！生まれたての狼がいるからぜひさしあげようと思ってたのに！」
ハーゲン「本気でやるつもりだったのか・・・・」
アルベリッヒ「しょうがない。トールと手を組んで何かプレゼントしろ。木彫りの狼でもなんでもいい。心をこめれば気持ちは伝わるさ。」
ジークフリート「お前、今までの全てを否定してないか？」
アルベリッヒ「貧乏人に高い理想を求めやしない！税金をおさめてくれさえすれば当面のところ問題はないんだ！」
ミーメ「身も蓋もないことを平気で言うね。」
アルベリッヒ「まあいいだろう。で、3月14日だが、その日は俺とヒルダ様は隣国に出向かなくてはいけなくて当日渡せそうにない。だから、俺が預かって渡しておく。」
ジークフリート「いい。自分で渡す。」
アルベリッヒ「当日に渡さないプレゼントなど価値はない。同じ品物でもワゴンセールのチョコレート並に評価が落ちる。」
ジークフリート「むう・・・・ならしかたない。」
アルベリッヒ「みんな、プレゼント期待してるぜ！」

3月14日、各々が買ってきたプレゼントをアルベリッヒに託した。

そして二週間後・・・・
ジークフリート「妙じゃないか？」
ハーゲン「妙だな。」
ミーメ「プレゼントしたはずの馬に乗ってくださらないぞ。」
シド「お礼1つないしな。」
ジークフリート「よろこんでくだされば何も要らないのだが、本当に何もないと不安になる。これは俺がワガママなんだろうか。」
トール「いや、人として当り前だろう。なんだろう、この何もなかったという空気は。」
フェンリル「何もないってのも妙じゃないか？バレンタインデーのお返しくらい期待するものだろ。」
バド「だよな。だって俺達もらったもんな。ちびっこいチョコだけど。」
ハーゲン「ちょっと聞いてこようか。」
ジークフリート「おい！」
ハーゲン「だって、このままじゃ気になって夜も眠れないし。」
夜も眠れない７人はフレアの下に駆ける。ちょうどよくそこにヒルダもいた。
ヒルダ「あら、何か用ですか？」
フレア「ハーゲン！どうしたの？もしかして遠乗りの誘い？」
ハーゲン「いえ、そうではなく。あの、フレア様、イヤリングはお気に召しませんでしたか？」
フレア「・・・何のこと？」
ハーゲン「ですから、ホワイトデーのプレゼントですよ。」
フレア「え、そんなのもらってないけど・・・」

なにぃ！？

ミーメ「じゃあ、私のプレゼントした馬は？」
ジークフリート「ネックレスは？」
シド「王冠は？」
ヒルダ「私は何も知りませんが・・・・」

アルベリッヒーーーー！！

ジークフリート「申し訳ありませんヒルダ様！アルベリッヒに預けたのですが、何かの手違いで渡し損ねてしまったようです。」
ハーゲン「すぐにアルベリッヒから奪い返してプレゼントしますのでお怒りをお鎮めください。」
フレア「鎮めるっていうか・・・・」
ヒルダ「あの、そもそも私達バレンタインデーにプレゼントをしていないのですよ。」

なにぃ！！？

ミーメ「それはどういう？」
ヒルダ「ですから、今年はあなたがたにはさしあげてないのですよ。申し訳ないと思ったのですが・・・」
トール「頂いてますよ、私達。お小さくも愛に溢れたチョコレートを。」
ヒルダ「いいえ、そんなはずはありません。私達はアルベリッヒに止められて断念したのです。」
フレア「そう！金がないんだから我慢してください！ってね。」
ジークフリート「そんなはずは・・・・だって私達はアルベリッヒから・・・」



アルベリッヒ〜〜〜！！！







ズダダダダダ、バタン！
ジークフリート「これはどういうことだ！」
ヒルダ「どういうことなのです。説明してください。」
来訪者に臆せずにやりとアルベリッヒは笑った。
アルベリッヒ「どうもこうも、バレンタインデーを利用して金を稼がせて頂いただけですよ。」
シド「なに！じゃあ王冠は！」
アルベリッヒ「高額で取引させていただいた。」
ミーメ「馬もか？」
アルベリッヒ「ああ。」
ジークフリート「しきりに貴金属やら金のかかるものを勧めていたのはそのためか！見損なったぞ！稼いだ金でどうするつもりだったんだ！研究か！ヒルダ様殺害計画か！」












アルベリッヒ「国庫にあてた！！」



なにぃ！

アルベリッヒ「赤字だらけの国を救うために身内を使って何が悪い！文句があるなら聞こう！！」


しーん。

しばらくの沈黙のあと、取り繕うように喋りだした。
ヒルダ「そ・・・・それは大変ですね。お疲れ様です。」
ハーゲン「きちんと最初から話してくれたらよろこんで協力したのに水臭いぞ。」
フレア「そうよそうよ！姑息な手を使わなくても私達は協力的よ！」
ジークフリート「そうそう。次からは俺達に話してくれよな。」
ミーメ「邪魔になるようだから私達は退室するよ。がんばってな。」
みな、ご機嫌をうかがうような笑みを浮かべながら去っていった。
アルベリッヒ「ったく、最初から言ってなんとかなるならとっくにどうにかなっとるわ。それにしてもやってしまった俺が言うのもなんだが意外と騙され易いな。アスガルドオレオレ詐欺には注意するようにしないと・・・念のため電話線切断しておくか。」
小悪人の文官、アルベリッヒの戦いはこれからも続く。



あとがき
ホワイトデーアスガルド小説です。黄金青銅をお望みの皆様方申し訳ありませんでした。黄金青銅も大好きですけど、神闘士だって大好きなんですよぅ！すっかり苦労人になってしまったアルベリッヒ。アスガルドは頭にてふてふが飛んでるから大変。書いててものすっごく楽しいです。黄金とは全然違うギャグで飽きませんね！タイトルは某漫画とはまったく関係ないですよ。なんとなくつけただけですので。

BY　　MUTUMI