小さなコロポックル 瞬たんのお帽子

小さなコロポックル瞬たんは今日も元気にお散歩です。イッチニ、イッチニッッと軽やかに歩いています。いつも元気な小さなコロポックル瞬たんですが、今日は別の理由もあるのです。
「わあい。兄たんからお帽子もらっちゃった。」
そうなのです。ちょっと小さなコロポックル一輝兄たんから、お帽子を貰ったのです。小さなコロポックル瞬たんに似合う、薄緑の可愛らしいお帽子です。兄たんから貰ったのが嬉しくて嬉しくて、お花や小鳥にも見せに歩いているのです。
「お帽子お帽子、えへへ。」
兄たんから物を貰うなんて初めてです。瞬たんは本当に嬉しくて、ルンルン気分で森を歩きます。そんな時


ヒュウウウ


と強い風が吹きました。
「あ！」
小さなコロポックル瞬たんは手を伸ばしましたが、時既に遅し。お帽子は風に飛ばされてしまいました。
「僕のお帽子！待って〜〜！」
小さなコロポックル瞬たんは帽子を追いかけます。はあはあ大きく呼吸をしながら必死で帽子を追いかけます。
「あ。」
帽子がみつかりました。でも、木上に引っかかっています。小さなコロポックル瞬たんは小さいから、とても登れそうにありません。
「よおし、僕の魔法で・・・・・」
小さなコロポックル瞬たんは腰に下げている魔法の杖を手に取りました。
「カッピルキッピ・・・・・」
魔法の言葉を唱えかけて、小さなコロポックル瞬たんは不意に口をつぐみました。
「魔法に頼っちゃダメだ。これは僕が兄たんから貰った帽子なんだもの、僕が自分の手で取り戻さなきゃ。」
小さなコロポックル瞬たんはそう決意すると、魔法の杖を腰に下げなおし、帽子の引っかかっている木をよじ登り始めました。
「うんしょ、うんしょ。」
小さなコロポックル瞬たんがゆっくりゆっくり木に登ります。下を見てはいけません。下を見ては恐くて竦んでしまいます。小さなコロポックル瞬たんはとても恐いけれど、上だけを、帽子だけを見て登っていきました。
「つ、ついたぁ。」
帽子のある木の枝まで辿りつきました。今度は水平にうんしょ、うんしょ。芋虫の様に進んでいきます。
「あとちょっとあとちょっと・・・・」
少しずつ少しずつ進んでいきます。
「やったとれたあ！」
帽子が瞬たんの手に届きました。帽子を手に取ります。
「良かったア。僕のお帽子取り戻せて。本当によか・・・・・」
帽子を手に入れたところで、ふっと下を見てしまいました。
「こ・・・恐いよ・・・・・高いよ・・・・」
小さなコロポックル瞬たんの目にはとてつもなく高く見えます。すっかり恐くなってしまった瞬たんはぶるぶると震え出してしまいました。
「ま、魔法の杖・・・・」
震える手で腰に下げてある魔法の杖を掴もうとしました。
「ああ!!」
何と、手ががちがちと震えていた為、魔法の杖は瞬たんの手を滑り落ちて、舌に落っこちてしまったのです。
「・・・・・・ひっく。」
小さなコロポックル瞬たんの目に涙が溢れ、ぽろぽろ零れてきました。小さな小さな雫が、下に落ちていきます。
「ひっくひっく、兄たん！助けて！」
小さなコロポックル瞬たんは思わずそう叫びました。しかしこんな高いところで叫んでも聞こえる筈がありません。お散歩だってどこに行くかは一輝兄たんにいってはないのです。でも、瞬たんは何度も叫びました。
「兄たん!!兄た〜ん!!」
小さなコロポックル瞬たんは今までで一番大きく叫びました。
「瞬!!!」
瞬たんの声が聞こえたのか、願いが通じたのか、一輝兄たんが駆けつけてきました。
「瞬!!!どこにいるんだ!!」
「僕ここーーー！」
一輝兄たんが声のする方向に顔を向けました。
「瞬！」
「兄たん!!」
「どうしてそんなところに向かったんだ。どうして魔法の杖を・・・・落としたのか。こんなところにある。今助けるからな！」
ちょっと小さなコロポックル一輝兄たんは魔法の杖を取り出しました。
「カッピルキッピルコムポップン！」
そう唱えると、瞬たんは光に包まれて、ゆっくりと静かに降りて行きました。

「瞬。」
「兄たん！」
瞬たんが一輝兄たんに抱きつきます。今度は安心の涙がポロポロ零れます。
「どうして木に何か登ったりしたんだ危ないだろう。」
「だってね、僕のお帽子が飛ばされちゃったの。兄たんに貰ったものだから絶対に無くしたくなかったし、魔法に頼りたくなかったの。」
「帽子なんかいくらでもやるさ。世の中に帽子はひとつしかないわけじゃないだろう？だが、お前の命はこの世に一つしか無い。意味わかるな？」
「でも・・・・・」
「分かってるさ。とりあえず、お前が無事だったから許してやろう。あ。」
「兄たんどうしたの？」
「帽子、綻びができてる。」
「・・・・・兄たん。」
「分かってる、俺が縫ってやるさ。瞬疲れてるだろう？おぶされ。」
「うん。」
瞬たんは一輝兄たんに負ぶさりました。兄たんの背中は温かくて、気持ち良いです。
「兄たん、どうして、ここが分かったの？僕の声が聞こえた？」
「声が聞こえる前に胸騒ぎがしたんだ。だから探してたんだ。そしたら、お前の声が聞こえてきた。」
「それは虫の知らせってやつかな？」
「さあな。偶然だろ。」
「偶然だって僕嬉しい。だって・・・・兄たんが来てくれ・・・」
「ん？」
「・・・・・すぅ。」
兄たんの背中は安心するのか眠ってしまいました。
「全く。ほっとくとどんなコトするか分からんな。木上にいるってわかった時、心臓が潰れるかと思ったぜ。」
くーくーと心地良さそうに眠ってる瞬たんを見ながら言いました。無事で良かったなと、瞬たんの体重の重みを感じながら、家に帰っていきました。

後日、瞬たんのお帽子を一輝兄たんが縫いました。綻びのところに、刺繍糸で、葉っぱを縫ってもらいました。
「ほら。ちゃんと縫えたぞ。今度は飛ばされないように紐もつけておいたぞ。」
「ありがとう兄たん！」
直してもらった帽子をぎゅっと被りました。紐も耳にかけます。
「似合う？兄たん。」
「ああ。似合うぞ。」
「僕、お散歩してくる！」
「迷子になるなよ。無理するなよ！」
「はあい！」
小さなコロポックル瞬たんは新しくなったお帽子を見せに飛び出していきました。
「えへへ。新しい僕のお帽子。」
今日も元気に小さなコロポックル瞬たんは歩きます。森は今日もピッカピカの良いお天気です。　　


おしまい。






あとがき
めちゃくちゃ久しぶりな一輝＆瞬ですね。季節ネタではない感じですが、ここ以外に置ける場所が思いつきませんでしたので、ココに。瞬たん、やっぱり可愛い〜ｖｖｖｖキュンッとしますね。突っ込みとかが激しい瞬たんも、らしいな〜と思いますが、ピュアな瞬たんも大好きですｖｖｖ


ＢＹ　　ＭＵＴＵＭＩ