コマッタなユタカな十二宮戦！ 前編
星矢「・・・・・・・なんなんだ、こりゃ」
瞬「暑さで頭ゆだってんじゃないの？」
呆然と白羊宮の横断幕を見上げる。そこにはこう書いてあった。
『納涼、夏祭り風十二宮戦』
紫龍「一体、何をどう繋いでぶった切ればこんなものが開かれるんだ？」
氷河「なんでも、お嬢さんの差し金らしい」
星矢「お嬢さんの！？どう言うことだ？」
氷河「我が師曰く、夏の暑さで青銅の修行のモチベーションが下がってるからどうにかしたい。それと、グラード財団総帥としての仕事が忙しくて、遊びらしい遊びができないから、どうせだから、合体させてしまえ！ってことらしい」
星矢「世間知らずのお嬢さんらしい発想だな！！十二宮戦と納涼ってまるで正反対じゃんか！」
瞬「つっこむところが間違ってるよ。モチベーション下がってるからって、その当事者に話しないで、黄金に話通してどうするの。普通に話してくれれば、ジョギングの１００キロくらい平気でやったよ」
紫龍「当事者に話さないのは、初めてじゃないだろ。他人には抹殺命令出しておいて、俺たちには全く知らせないような人なんだから」
星矢「本当にな。一言言ってくれれば、俺、ムウと衝突しなくて済んだんだぞ」
氷河「で、どうする？行くか戻るか」
瞬「行くしかないでしょう。のこのこうかうか来ちゃった僕達にも問題あるし」
白羊宮
ムウ「よく来ましたね」
星矢「おぉ、ムウ！」
ムウ「あなた方も災難ですね」
瞬「そう思ったなら、止めてくれない？」
ムウ「一応は止めましたよ。けれど、大乗り気のアテナとサガに誰が歯向かえると？」
紫龍「確かに抗えない最強タッグだが・・・あなたなら、できるだろう」
ムウ「ええ、だから言ってやりましたよ。もしもやるなら、私を時給３０００円で雇えと」
瞬「あなた本気で僕達守る気あるの？」
ムウ「ありましたよ。ただ、あっちが条件を飲んだだけです」
星矢「なんだと！じゃあ、ムウは俺たちを痛めつけて、なおかつ金までもらえるのか！？」
ムウ「人聞きの悪いことを言わないで下さい。私以外は無償なんですから」
紫龍「その状況で、辞退を選ばないムウがすごい・・・」
氷河「というか、俺たちが長話すればするほどムウが儲かる。さっさと通って修行を終わらそう！」
星矢「そうだな！修行の課題はなんだ？」
ムウ「ちっ・・・。私からの課題はこれです」
差し出されたのは、浴衣。
ムウ「これを着るだけでOKです」
星矢「・・・・これだけか？」
ムウ「これだけです。楽勝でしょう？」
ムウが青銅聖闘士に浴衣を羽織らせる。
ズシッ！
激しい音と共に、体が地面にめりこむ。
瞬「な、何これ・・・・・」
星矢「お、重い・・・・・！」
ムウ「ふふ、私が開発した浴衣式ウェイトです。全身を包み込むことで、体感重量は１，５倍。小宇宙が弱まるほどにGが強まるという優れものです」
星矢「それ・・・ウェイトの枠越えてるだろ・・・」
氷河「ムウ・・・容赦ないな・・・」
ムウ「協力する以上、手加減はしませんよ。まあ、私としては、このまま寝ていてくださった方が収入になるんで有り難いんですけど」
氷河「そ、そういうわけにいかん。燃やせ！心の小宇宙よ！」
小宇宙をガンガン燃やし、どうにか立ち上がる青銅聖闘士。なんだか見た目がスーパー○イヤ人のようである。
星矢「行くぞ、みんな！！」
ムウ「待ちなさい！」
星矢「なんだ、ムウ。着るだけで通過できるんだろ？」
ムウ「通行料を払ってください。一人千円。合計四千円です」
絶句。
星矢「ちくしょう！金なんかくれてやらあ！俺たちは大金持ちの息子なんだぁ！！」
涙を滲ませて、札を叩きつけ、
星矢「行くぜ！兄弟！」
青銅「おう！！」
バ〜ッと駆け出してしまった。
ムウ「泣かせて悪い事しちゃいましたかね・・・」
と、言いつつ、しっかり札を握り締めて離さないムウだった。
金牛宮
星矢「ううう・・・あれ、ドラクエ買うお金だったのに・・・」
紫龍「それくらい俺が買ってやる。だから、泣くな星矢」
瞬「こら、そこ！！星矢を甘やかさないで！」
紫龍「甘やかしではない。褒美だ」
瞬「何をどうして紫龍が褒美をあげる図式になるの。おかしいでしょ。星矢、お金はちゃんと割り勘で返すからね」
紫龍「瞬は厳しすぎるぞ」
瞬「正当な発言でしょう。別に踏み倒すなんて言ってないんだし」
紫龍「あそこで泣きながらでも金を叩きつけた星矢の心意気を買うべきだ」
瞬「それはわかってるよ。でも、それと金銭は切り離して考えるのが筋でしょ」
氷河「なんというか、教育方針を話し合う親みたいだな・・・」
間違いなく紫龍が父親役で、瞬が母親役だろう。
星矢「ちょ・・・！俺のために喧嘩しないでよ！！」
瞬「星矢は黙ってて！」
紫龍「そうだ。これは俺たちの問題だ」
氷河「・・・・いつのまにか、問題が摩り替わってるのも良く似てるな」
星矢「冷静に分析してないで、氷河止めてくれよ」
氷河「フリジっていいか？」
星矢「ちげえよ！あ〜もう、ちょっとあんた！あんたなら何とかできるだろ！人の良さだけがとりえなんだから！」
アルデバラン「・・・・・・・・・・・・」
星矢「ア！！！アルデバラン！！！！」
アルデバラン「そうだな、俺は人当たりのよさだけでまともに敵を倒せた事ないな」
星矢「ち、違う！そう言うつもりで言ったんじゃない！」
アルデバラン「じゃあ、どういうつもりなんだ？」
星矢「なんか・・・その・・・・魔が差しただけだ！」
氷河「・・・・・何のフォローになってないぞ」
アルデバラン「ははは！魔が差したのか。それでは仕方ないな」
氷河「・・・本気で良い奴だな。アルデバラン・・・」
アルデバラン「俺の課題をやってもらうつもりだったが・・・勝手にやっているようだな」
視線の先では、銀河戦争のごとく、バトルを繰り広げている二人がいた。
アルデバラン「盆踊り風バトルだったんだが・・・とりあえず音楽流しとくぞ」
ポチッとデッキの再生ボタンを流すと盆踊りの曲が流れてきた。
星矢「うわ、オバQ音頭だ」
氷河「これ、どうやったら終わるんだ？」
アルデバラン「一応、曲が終わるまでにギブアップさせたら勝ち・・・だが、まあ、俺が介入しない方が平和に終わるだろうな。決まりは決まりだから、曲が終わるまで我慢してくれ」
星矢「本当、悪いな・・・・・本当はお前と戦う予定だったんだろう？」
アルデバラン「いや、臨機応変ができないと生き残れないからな」
星矢「・・・あまりにヘビーな意見ありがとう」
双児宮
瞬「つ、疲れた・・・・・勝負は引き分けだね」
紫龍「あ、ああ・・・」
星矢「俺は別の意味で疲れたよ。アルデバランにも申し訳ないことしちゃったしさ」
氷河「とりあえず双児宮のことを考えよう。過去を振り返ったら、先へは進めない」
星矢「クールだな・・・」
サガ「やぁ、良く来たな諸君」
カノン「待ちわびていたぞ」
星矢「色々つっこむの疲れた。何やりゃいいんだ」
サガ「何を投げやりになっているんだね。主人公がそんなことでいいのか？」
星矢「脇が暴れすぎて、俺が暴れる気にならないよ。早く言え、課題は何だ？」
サガ「水風船すくいだ」
星矢「ほぅ、涼しげだな。だけど、どこにあるんだ？水風船」
サガ「異次元だ」
はぁっ！！？
サガ「異次元から無事に水風船をとってくること！食らえ！アナザーディメンション！！」
青銅「ぐわぁああああああ！」
そうして、彼らは異次元に消えた。
星矢「どこが水風船『すくい』なんだよ〜！！」
紫龍「上も下もなくて、三半規管がどうかなりそうだ」
瞬「くっ！ネビュラチェーン！！」
パァンパァンパァン！！
氷河「おい！水風船を割ってどうすんだ！」
瞬「しかたないでしょ！ネビュラチェーンは水風船をとるようにはできてないんだから！」
星矢「技作れよ！水風船ネットとかさ！」
瞬「くだらない技を登録するほど、チェーンには容量ないよ！」
紫龍「制限あったのか・・・それ・・・」
星矢「ちっくしょ〜〜！燃えろ！俺の小宇宙よ！俺に力を貸してくれ！世界の北島！！！」
光速でクロールを披露すると、異次元空間を漂う水風船を掴んだ。
星矢「やったーーーーーー！！」
紫龍「よくやった星矢！今の気持ちは？」
星矢「何も言えねえ！！」
その瞬間、異次元の扉が開いた。
サガ「・・・私の技を破るとは、さすがだな」
星矢「はは、本気で喜べない俺がいるよ」
サガ「次の宮からはもっと手ごわい。心してかかれよ」
巨蟹宮
デスマスク「よっ！！大変だな！お前ら！！」
瞬「大変だって知っててやるなんて、本当極悪だね、あなた」
デスマスク「俺だって命惜しいもん」
瞬「まあ、理由としては真っ当な方かな」
星矢「とんでもないのが一番最初にいたからな・・・」
氷河「で、ここでは何すればいいんだ？」
デスマスク「俺だって鬼じゃねえ。これ飲めば勘弁してやるよ」
そう言って出してきたのは、ジョッキサイズの赤黒い液体。
星矢「・・・・・なあ、一応聞いておくけど、これ何？」
デスマスク「ん？これか？亡者どもの血かな？」
鬼だーーーーーーー！！
瞬「こんなもの飲めるわけないでしょ！！僕達は吸血鬼じゃないんだよ！！」
デスマスク「まあまあ、飲んだら何かが目覚めるかもしれねえだろ」
星矢「そんなん目覚めたくねえ！！」
デスマスク「好き嫌いしたら大きくなれないぞ〜！」
星矢「なんだ、そのお母さん発言は！！悪いのは俺か！？俺たちなのか！？」
紫龍「・・・・・・これは、一人一杯じゃなきゃいけないのか？」
デスマスク「いや、全部飲み干せば別に誰がどう飲んでも構わないぞ」
紫龍「そうか・・・・・・・」
瞬「そうかってまさか！飲むつもりじゃないだろうね！君が！！」
紫龍「ここで留まっては、ムウに得をさせるだけだ。となれば、死んででも進まねばならない。誰か一人でいいなら、俺が飲もうと思っただけだ」
瞬「紫龍・・・・・それは僕の役目じゃないかな？かな？」
紫龍「え？」
瞬「自己犠牲、身代わりだったら僕の専売特許でしょ。紫龍に出番を奪われるわけにはいかないよ」
紫龍「いや、俺が言い出したんだし・・・亡者の血なんか飲みたくないだろう」
瞬「さっきの金牛宮での決着をつける時が来たようだね」
星矢「ちょっと待て！なんだそのファイティングポーズは！！本物の血の惨劇を起こすつもりか！俺、飲むから！全員で一杯ずつ平等に！氷河もそれでいいだろ！？」
氷河「あ、ああ・・・・・・」
星矢「だから！！お願いだから、戦いをやめてくれよ〜！」
紫龍「・・・・・星矢」
瞬「星矢・・・・・僕は何か悪い病気にかかってたようだね。うん、そうだね。一人一杯平等に行こうか」
星矢「よ、よかった〜！！」
かくして、一人一杯飲むことになった青銅達。ジョッキを手にし、つばを飲みこむと、一気に飲み干した。
・・・・・・・・・・あれ？
星矢「・・・・・・・美味しい」
瞬「っていうか・・・トマト味？」
氷河「亡者の血ってトマト味だったのか」
デスマスク「んなわけないだろ！！それはトマトジュースだよ！！」
なにぃ！！！？
デスマスク「ははは！騙されたな！亡者だからそもそも血なんか無いし！！」
紫龍「ちょっと黒いのはなんだ？」
デスマスク「ああ、それ？ウスターソース。ブラッドマリーの酒なしバージョンって感じ？いやあ、そんなにも騙せるなんて、さすがアカデミー級の演技だ！いいもの見させてもらった。先に通っていいぞ」
その前に、ちょっと寄り道してもいい？
デスマスク「・・・・・・え？」
ぎゃぴりーん！！！！
星矢「ったく！！本気で死ぬかと思ったんだからな！」
瞬「本当に余計なことばっかり、頭働くんだから！」
紫龍「全然進歩のない男だ・・・」
氷河「クール＆ドライ」
パンパンと手をはたくと、巨蟹宮を後にした。誰もいなくなったそこには、トマトジュースをぶちまけたように床に転がるデスマスクの姿があるのだった。
星矢「やっと３分の１か・・・思いやられるぜ・・・」
続く！！