カボチャ色な女神旋風
沙織「協力をお願いします」
いきなり来て、アテナは言った。
沙織「昨今の不況により、グラード財団もかなりの打撃を受けています。このままでは冬のボーナスは棒に茄子になります」
星矢「んで、俺たちに棒に茄子を刺す作業をやって欲しいと。そう言うことだな！」
紫龍「待て待て！話を変な方向に持ってくな。ボーナスが茄子になったら、反逆が起きるぞ。ありえない話だ」
瞬「一応、超一流企業の御曹司なのに・・・沙織さん、続きをどうぞ」
沙織「コホン、巷ではハロウィンで盛り上がっています。この経済効果を逃すわけにはいきません。我が、グラード財団も参戦することにしました！」
一輝「参戦すればいいだろう。それと俺たちとどう言う関係があるんだ？」
沙織「ハロウィン限定聖闘士お菓子を作って売るのです！」
氷河「俺たちの菓子！？」
沙織「そうです！ハロウィン×聖闘士のコラボレーション！これに食いつかない女子はいません！」
瞬「女子に限定しなくても・・・」
沙織「聖闘士は顔が命！美形は女子の好物！お菓子はもっと大好物！この三拍子揃っているんです。利用する手はありません！」
一輝「聖闘士の命は顔じゃなくて、コスモじゃないか？」
星矢「そうだよ。顔って言うなら市はどうなんだよ！」
氷河「いや、あいつは自分がイケメンだと思ってるから問題ない」
沙織「まあ、とにかく、限定菓子のキャラクターにあなた達を使わせて頂きます。よろしいですね？」
お願いから、命令に変わっている。流石はハーデスにもケンカを売ったアテナである。
星矢「いいぜ、グラード財団が潰れたら俺たちだって困るしな！」
瞬「そうだね。ギリシャにも一杯養わなきゃいけない人がいるしね」
沙織「では、聖闘士でマーチ、なんてどうでしょう。お菓子になんと聖闘士の顔が！」
星矢「はは、それあからさまにコアラだよね」
瞬「ていうか、僕達の顔をバリバリ噛み砕かれるってどうなの？あまり気分のいいものじゃないよね」
沙織「じゃ、これはどうですか？キット聖闘士！」
紫龍「言いたい事は良くわかるんですが、聖闘士じゃないみたいですよ」
沙織「なら、パッケージをカシオスにしましょうか」
星矢「笑えないぜ！沙織さん！」
氷河「ところで、沙織さん。お菓子を作るとして、どこに発注するんだ？」
一輝「グラード財団に菓子製造会社はなかったと思うが。まさか新しく会社を立ち上げるなんてバカな真似考えてないだろうな！」
沙織「考えませんよ。一応は実業家なんですから。私情で会社作るなんてやったら株主に怒られます」
星矢「へぇ、八百屋って強気なんだな！」
・・・・・・。全員が息を飲んだ。
星矢「うん？なんか俺、変なこと言った？」
紫龍「いや、そのままでいいと俺は思うぞ」
瞬「グラードにないってなると、やっぱり外注だよね。安く作るなら中国？」
沙織「ホホホ、そんなわけないじゃないですか」
氷河「今、消費者の目も厳しいしな。やっぱり国産か」
沙織「まさかまさか！」
一輝「中国でなく、日本でもないとすると、どこだ？アメリカか？」
沙織「アは合ってますね」
星矢「アは合ってるか・・・。分かった！アジア！！！」
・・・・・・。沈黙のち皆が額に手を当てた。
星矢「あれ、変なこと言った？」
瞬「君さ・・・今の発言って、どこの県でしょうって聞かれて、『日本！』って答えてるようなものだよ」
紫龍「大きい範囲では合ってるんだけどな」
沙織「いえ、間違ってますよ。アジアではありませんから」
氷河「アジアじゃないとなると、ヨーロッパってことか？」
沙織「そうですね。ヨーロッパです」
紫龍「ア・・・となると、アイスランドとかアイルランドとか？」
一輝「随分マイナーだな」
沙織「あなた達、アのつく国をそれだけしか思いつかないのですか？あるでしょう、私達に１番身近なアのつく国が」
アスガルドです！！
な、なにぃ！！
一輝「知名度としてマイナーどころか、マイナスなくらいの国じゃないか！」
瞬「何でアスガルド！？」
沙織「まあ、単純に知り合いがいるっていうのと、賃金が安いってことでしょうか」
紫龍「良く引き受けてくれたな！」
沙織「まあ、あちらの経済はこちら以上に逼迫してるってことですよ」
アルベリッヒ「いいですね！！この仕事を完遂しなければ、年末まで食事はパンとミネラル塩のみになりますよ！」
ジークフリート「おい、せめて水はつけてくれ。死んでしまう」
アルベリッヒ「水なんか湖でいくらでも汲んでこい！」
フレア「ていうか、完遂したら、ご飯は何になるの？」
アルベリッヒ「ブドウパンとごま塩になります」
フレア「毎日！？」
アルベリッヒ「毎日です」
フレア「私、一生懸命がんばるわ！ハーゲン、応援して頂戴！」
ハーゲン「もちろんです！フレア様！」
紫龍「アスガルドとなると、クッキーの方が良いかな？あまり凝った物を依頼しても困らせるだけだろうし」
星矢「そうだな！腐りにくそうだしな！」
氷河「じゃあ、プレーンのクッキーに俺たちの星座の焼印をするか」
瞬「シークレットでアテナ像があるといいかも」
一輝「とまあ、そんなところだが、どうだ？」
沙織「ええ、私もその案でいきたいと思います」
星矢「じゃあ、アスガルドの連中に伝えなきゃ！メール？手紙？」
沙織「いえいえ」
沙織は窓を開けると、ピーッと指笛を吹いた。するとやってきたのは
青銅「鳩！？」
沙織「ええ」
沙織は紙に先ほどの内容を書き記すと、鳩の足にくくりつけた。
沙織「アスガルドに携帯なんてないし、手紙なんて、届くまで二ヶ月かかります。伝書鳩が一番です！」
自信たっぷりに言って、鳩を空に放した。
星矢「でもさ〜。ここからアスガルドって距離あるじゃんか。結構時間かかるんじゃないの？」
沙織「ふふ、そうですか？」
なにぃ！！
ほんの数秒前、離した鳩の姿はもう見えなかった。
瞬「うそ・・・羽音が聞こえないくらい速かったんですけど」
沙織「人が光速を身につけられるなら、鳩にだって身に付けられます。あれは、数々の試練を乗り越えて光速を身に付けたエリートなのですよ」
紫龍「鳥に光速を身につけられるとは・・・」
氷河「てか、どうやって教えこんだんだ？」
誇らしげな沙織を尻目に情けない気分になる青銅五人なのだった。
さてさて、鳩がアスガルドに届き、脱不況のためのクッキー作りが開始された。
アルベリッヒ「ヒルダ様！卵一個割るごとにお祈りを捧げないでください！」
ヒルダ「命を頂くのですから、きちんと感謝しなくてはいけません」
アルベリッヒ「全部に祈りを込めたら卵が腐るわ！全部でいくつあると思ってるんですか！３０００個はあるんですよ！」
フレア「ねえ、この卵の殻はどうするの？捨てるところがなくなってきたわ！」
アルベリッヒ「トールのミョルニルハンマーで砕いてもらってください！」
ハーゲン「おい！焼印はどうすればいいんだ？」
アルベリッヒ「お前の技で熱しておけ！」
ハーゲン「任せろ！俺の技にかかれば、鉄を溶かすなんて造作も無い！」
アルベリッヒ「溶かしてどうする！！加減しろ！！」
ジークフリート「クッキー焼きあがったぞ！！」
アルベリッヒ「ご苦労・・・って、お前ら食べるな！！！」
フェンリル「だってほら、美味しそうだったし・・・」
バド「クッキーなんて食べた事無いし・・・」
アルベリッヒ「商品を食うな！！！ジークフリート！！お前の監督責任だぞ！」
ジークフリート「どうして俺の責任になるんだ！」
アルベリッヒ「オーブン前を任されたのはお前だろ！」
ジークフリート「なら、総括はお前だろ！！」
アルベリッヒ「だからなんだ！文句があるならかかってこい！！アメジストシールド！」
ジークフリート「よし、良く言った！！ドラゴン・ブレーヴェスト・ブリザード！！」
それは待ってっ！！！
四方八方から駆けより、二人をひっぺがすヒルダ＋フレア＋神闘士。
ワルハラ宮から、香ばしい匂いと騒がしい声が消えるのはまだ当分先になるのだった。
沙織「アスガルドから限定クッキーが届きましたよ〜！！」
ホクホク顔で沙織が青銅にクッキーをお披露目する。
星矢「お！！ちゃんと日本語パッケージだ！」
瞬「クッキーもキチンとできてるじゃない！」
紫龍「人手も機械もなかっただろうに、大変だったんだろうな。後で労いの手紙を出しておこう」
沙織「味見で１つ食べてみましょうか」
１人１つずつクッキーを手に取り、口に頬張る。クッキーならではの軽い音が―――
ガキンッ
しなかった。むしろ、ガラスでも噛んだような音だ。
星矢「いてえ！何か固いものが入ってるぞ！」
そう言って口から取り出したものは―――
アメジスト！！！
瞬「うわっ！これアメジストだよ！！」
星矢「なんで、こんなの入ってるんだ！？」
紫龍「まさか！もしかして！！」
紫龍が他のクッキーも割ってみる。すると、どのクッキーからも紫色のカケラがこぼれ出た。
星矢「アメジストって言ったら・・・アイツしかいないよな・・・」
紫龍「というか、沙織さん、アメジスト入りのクッキーを依頼したのですか？」
沙織「そんなはずないでしょう！！」
星矢「となると・・・何かあったんだろうな、ワルハラ宮で」
一輝「聖闘士に近い存在ほど、常識が通用しないのは知っていたはずだろう。お嬢の計算ミスだな。どうするんだ。異物混入のクッキーなんて売れやしない」
沙織「ふふ、そうでしょうか？」
沙織は不敵な笑みを浮かべた。
沙織「宝石入りのクッキーだなんて、最高じゃないですか！！おまけに！！こっちの懐はまったく傷まない！！太っ腹だとアピールするには最適です！これで一歩、世間に差をつけました！ホホホホホ！」
血が繋がっていなくても、彼女は城戸光政の孫娘である。大きく高笑いをする沙織に畏敬の念を覚える、青銅五人なのだった。
そして、ハロウィン。
グラード財団の冬のボーナスが棒に茄子かどうかは、今はまだ秘密である――――
あとがき
ハロウィンに間に合ったぞ〜〜！！最近ギャグが書けなくて書けなくて、スランプ状態でした〜。アスガルドメインで行こうと思ったのですが、サイドで登場になりました。でも、ちょこっとの登場でも書けて幸せ★今、大きなコ○ラのマーチがあって（パーパからのお土産♪）、それからヒントを得て今回のストーリーになりました！青銅だけのギャグってもしかして凄く久しぶりかもしれない。
BY MUTUMI