夏だ！海だ！春麗ちゃんのビーチデビュー
星矢「暑い・・・・・死ぬ・・・・氷河は大丈夫か？」
瞬「ダメみたい。猛暑日を記録してから、家から一歩もでてないらしくって、靴って単語を忘れてたよ」
星矢「そりゃ重症だな・・・瞬、お前は平気なのか？」
瞬「アンドロメダ島は砂漠の島だから、気温はこれくらい全然平気なんだけど・・・湿度がキツクって」
アイスノンを額にまきつけ、団扇で仰ぐ。冷房が入ってるにも関わらず、何故こんなに暑いのか。
星矢「新たな聖戦の幕開けなのか？アベルあたり復活したか？」
紫龍「いや、それはないらしいぞ。むしろ、それを望んでたのに・・・って沙織さんがぼやいてた」
瞬「だよね・・・神々の仕業なら、どうとでもできるもんねえ・・・」
氷河「・・・・・どこか行きたい」
星矢「おっ、氷河生きてたのか」
リビングのソファにぐでぇ・・・と力なく寝っころがっているところをみると、昇天寸前のようだが。
紫龍「そうだな・・・いくら暑いとはいえ、１日部屋の中でクーラーをかけているというのは、自然の摂理に反するしな」
瞬「テレビも、最初の頃は『エコ、エコ』って言ってたのに、いつのまにか『クーラーをかけてください』に変わったもんね」
氷河「M・Hさんの話だと、今年は２０度の冷房をかけて、３９，５度まであがったらしいぞ・・・そんな職場耐えられない・・・」
星矢「そうそう。極めつけは、あの南米の落盤事故のニュースでさ『シェルターの中は２９度で・・・』って言う言葉聞いて、『へぇ、結構涼しいんじゃん！』って思っちゃったらしい。彼女曰く、２９度の日は１日快適だったとか」
瞬「常識で考えたら２９度って暑いよね・・・完全に温度の感覚狂ってるよね・・・」
紫龍「明日は少しばかり気温が下がるようだ。どこかに泳ぎに行かないか？」
星矢「いいな！！賛成！！美穂ちゃんとかも誘って行こうぜ！」
瞬「行くなら、やっぱり海だよね！」
氷河「ロシアの海がいい・・・」
星矢「お前、ロシアが寒いってのは昔の常識。今の常識は、今のロシアに行ったら焼け死ぬ！だ」
氷河「・・・・確かに・・・今年のロシアは猛暑だった・・・」
星矢「太陽に負けてられねえ！！よっし！！気合いれて、海の準備するぞ！！紫龍も春麗さん呼べよ！！」
紫龍「ああ、そうだな」
星矢「水着探してこないとな〜！」
瞬「ちょっとだけ、気分上昇したね！」
氷河「俺・・・家からでたくない・・・」
瞬「そんなこと言わないの！とろけたアイスクリームになっちゃうよ！」
星矢「一輝はどうする？誘うか？」
瞬「いいよいいよ。更に暑くなったら困るもん」
星矢「ひでえ〜！一輝が聞いたら泣くぞ！」
瞬「兄さんは、そんなことで泣くほど惰弱じゃないよっ！」
元気になった星矢と瞬が、氷河を引きずって自室へと向かう。
たった一人になったリビングで紫龍はむぅ・・・とうなった。
ある心配が胸を渦巻いているからであった。
星矢「うっひょおおおおお！海だぜ海―――――！！！」
キラキラと太陽に反射して、海がきらめく。
沙織「やっぱり自然はいいですね」
美穂「今年初めての海ねっ！」
春麗「私、海って初めてです」
えっ！！？
星矢「春麗さん、海って初めてなの？」
春麗「ええ・・・五老峰は海が遠いので」
瞬「そっか・・・僕なんかは真水の方が珍しかったからな・・・」
春麗「だから、水着を初めて買いました」
はっ！！！？
美穂「春麗ちゃん、それ、どーゆーこと！！？」
沙織「今まではお手製・・・ってことですか？」
春麗がチラッと紫龍を見る。紫龍も何故か恥ずかしげに額に手を当てた。
春麗「・・・・・誰も来ないところだったので・・・」
恥ずかしげに頬を染める春麗に、その場にいる人が正確に察した。
星矢「紫龍、お前！！人畜無害に見えて、とんでもない狼だろ！！」
紫龍「ち、違う！」
星矢「一緒に泳ぐ時もあっただろ！その時、お前はどうしてたんだよ！」
紫龍「俺は、その時盲目だったから・・・何も見えてなかった」
瞬「春麗さんに何かあったらどうするのさ！」
紫龍「その時は王虎が助けた」
星矢「最悪だろ、それ！！！春麗さんの大事な肌を他の男に見せてどうすんだよ！！」
瞬「そうだよ！！目が見えないくらい何！！ムウならきっとサイコキネシスで助けてるよ！！」
氷河「俺なら、五老峰の滝をまるごと凍らせて助けるな」
星矢「それはそれで、助けてるとはいえない気がするけどな」
非難ゴーゴーの青銅ズに紫龍はたじたじである。
美穂「すごい迫力・・・さすがは聖闘士ね」
沙織「彼らはあれでいてフェミニストですからね」
美穂「女への幻想は、沙織さんで打ち砕かれてるのに不思議ね」
沙織「美穂さん・・・結構はっきり言いますね」
美穂「え・・・だって、普通の女の子は、馬になれとか言わないじゃない。あんなこと幼少期に言われたら、女性不信になっても仕方ないと思うもの」
沙織「邪武は、何言っても私に従順でしたよ？」
美穂「邪武さんは最初から馬ですから。馬が馬になるのは至極自然なことでしょう？」
沙織「・・・・・確かに」
美穂「星矢ちゃんが、汚れぬ魂を持っているのは、お師匠の魔鈴さんのおかげね。沙織さんの毒を全て拭ってくれたわ」
沙織「・・・・美穂さん、私に何か恨みでもあるんですか？」
美穂「恨みなんてないわ。嫌いなだけよ★」
春麗「そ、そんなことはっきり言わないで！私は沙織さんのおかげで紫龍に出会えたから感謝してます！」
沙織「いいんですよ、春麗さんフォローしてくださらなくて。ほほほ、勝負は水着で決着つけましょう」
美穂「いいわよっ！！」
そう言うやいなや、ガバッと服を脱ぎだした。
春麗は勿論、星矢たち青銅もぎょっと目を見開く。
星矢「み、美穂ちゃん・・・！！！？」
淡いピンクのワンピースがパサリと砂の上に落ちる。スラッと引き締まったボディが太陽の光にさらされる。
美穂「どう？星矢ちゃん、似合う？」
にっこりと美穂が笑う。髪の青よりも、より深いブルーの水着は白い肌に良く映える。胸元にリボンがついているのが、可愛らしい。
沙織「ほほほほ、そんなスクール水着みたいな水着を着て喜んでいるようじゃ、素敵なレディーにはなれませんよ」
髪を潮風になびかせて、沙織が満面の笑みを浮かべた。スタイルのよさを強調するような悩殺ビキニである。５つは指が折れるであろう魅惑的なバストがこぼれそうだ。
美穂「なによ、それじゃ若者とおりこして、おばさんじゃない！！年齢詐称してるんじゃないの！！」
沙織「その歳でこの顔！？という老け顔、その歳でそのバスト！？っていうのは、車田のお約束です！！」
美穂「知ってるわよ！！けど、それとこれとは話が別よ！！星矢ちゃんにふさわしいのは、小さい頃から一緒にいる、この私よ！！」
沙織「おほほほ、小さい頃からって、せいぜい６歳くらいまでしか一緒にいなかったではないですか」
美穂「６年も一緒にいれば十分よ！星矢ちゃんとは、お風呂も一緒に入った仲なんだから！」
沙織「赤ちゃんの頃の話を持ち出されても！所詮は人から聞いた話でしょう？」
美穂「ふっ・・・車田ワールドの記憶力をなめないでもらいたいわ！言えって言うなら、受精卵の時の記憶も言えるわよ！」
瞬「星矢・・・どうするの？」
氷河「モテて幸せだな。分けてほしくはないけど」
紫龍「どうにかしないと、太陽よりも熱くなって、真っ黒焦げになるぞ」
希望の聖闘士、大ピンチである。
沙織・美穂「さぁ、私と泳ぎましょう！！！」
星矢「よ、ようし！！じゃあ、あのブイまで競争だ！！」
逃げるかのように、海に向かって駆けていく星矢。
美穂「待って！！星矢ちゃん！！」
沙織「置いていかないでください！」
星矢に負けぬスピードで走り出す二人。二人が去った後のビーチは、虫の羽音が聞こえるほど、静寂につつまれていた。
瞬「あのブイ・・・軽く計算しても１０キロはあるけど・・・」
紫龍「とりあえず、嵐は去ったな」
瞬「紫龍たちも泳いできなよ」
紫龍「え・・・お前達は？」
瞬「僕は荷物番してるよ」
紫龍「え・・・でも・・・」
瞬「大丈夫。たった今、氷河が熱中症で倒れたから。氷河番もしないといけないでしょう？」
紫龍「瞬・・・あっさり言うセリフじゃないぞ」
瞬「これくらい予想して、いろいろ持ってきてるから大丈夫」
ドドォン！！とアンドロメダのパンドラボックスを置いた。中からはさまざまなグッズが飛び出す。
瞬「まず、ひえピタでしょー。それから氷嚢に、スイカサイズの氷。２リットルの『美味しいシベリアの水』を１０本。携帯扇風機も用意したし、極めつけは、キンキンに凍らせたキグナスの聖衣！！」
紫龍「すごい・・・・・！」
瞬「これくらい当然だよ。あと、ついでだからＡＥＤと位牌と遺言書も用意したよ」
紫龍「お前､助けたいのか殺すつもりなのか、どっちだ？」
瞬「もちろん、助けるつもりだよ〜！大丈夫、この海の底には、難破船がゴロゴロしてるんだって」
紫龍「どこが大丈夫か分からないぞ・・・」
瞬「とにかく、準備はバッチリだから心配しないで。僕はここで荷物番してるから、紫龍は春麗さんと泳いでおいでよ」
紫龍「・・・・そうだな。ありがとう」
氷河「マーマ・・・迎えに来てくれたのですか・・・？」
瞬「おっと、お花畑が見えてるみたい。氷河―、スイカだよー。ここに美味しいスイカがあるよーマーマ型のスイカだよー」
氷河「マーマ型のスイカ・・・食べたい・・・」
瞬「よし！！戻ってきた！！」
紫龍「瞬、マーマ型のスイカなんてあるのか？」
瞬「ま、それはそれってことで」
紫龍「・・・・・・」
瞬「とにかく、ここは平気だから。もし、春麗さんが熱中症になって、すぐ来てね」
紫龍「うん、ありがとう。気をつけるよ」
瞬「じゃ、楽しんできてね！！」
ヒラヒラと手を振り、笑顔で見送る瞬。紫龍と春麗の姿が見えなくなった頃、甲斐甲斐しく世話を始めるのだった。
春麗「紫龍、そんなにずっと一緒にいてくれなくていいのに」
紫龍「いや、そういうわけにいかない」
水着に着替え、波打ち際で水と戯れる二人。春麗の水着は、チャイナをイメージした赤いワンピース。風にスカートが揺れるのがなんとも愛らしい。
紫龍「水着に着替えてから落ち合うまで、３歩に１人、男が声をかけてたじゃないか」
春麗「そ、そうだけど・・・全員昇龍覇でぶっ飛ばなさなくても・・・」
紫龍「気分的には百龍覇をお見舞いしてやりたいところだ。俺が離れたら、どれだけ男がやってくることか！」
春麗「全部お断りするから大丈夫よ？」
紫龍「そうでなかったら、俺は泣く！！」
春麗「あ、えと・・・ごめんなさい」
春麗が悪いわけではないが、思わず謝ってしまった。確かに、紫龍が気にするのもわかる。海という環境のせいか、五老峰では見ないような人が多い。チャパツからして、春麗の感覚から外れているし、メッシュに鼻ピアスというのは、地球外の領域だ。
紫龍「海だと気も大きくなるから、君はできるだけ俺の側にいてくれ」
春麗「わかったわ、紫龍」
にっこりと安心の笑みを浮かべた。
春麗「これが海なのね。初めて見たわ。水が押してはひいてくるのね」
紫龍「川は一方通行だからな。不思議な感覚だな」
春麗「水がしょっぱいわ。不思議ね」
紫龍「地球ができた頃から、もうすでにしょっぱかったらしい」
春麗「え、ということは・・・４０億年熟成の塩水！！？」
紫龍「言われてみればそうかもしれないな」
春麗「すごいわ！！老師よりも長生きなんて！！」
紫龍「春麗・・・老師も普通の人間だぞ？」
春麗「普通だったら２６１年も生きられるわけないわ。何か門外不出の秘薬とか飲んでるんじゃないかと思うの！」
ピンポーン！！ほぼ当たり―！！
春麗「私の方が若いけど、へたしたら、私よりも長生きしそうな予感がするの。もちろん、いつまでもお元気で居て欲しいわ。でも、私より長生きするのは・・・逆に親不孝なことだと思うのよ」
紫龍「そうだな、春麗・・・」
春麗「あなたもよ？聖闘士として立派に生きるのと、大事な人を残して死ぬ事は違うのよ？男の人は、勝手にイコールにして満足してしまうけど、無様でも滑稽でもいいから、生き残って欲しいって、私は思うの。だから・・・」
紫龍「わかった、俺は簡単に命を投げ出したりはしない。どんな時も、生き抜くために戦うよ」
春麗「ありがとう・・・紫龍・・・」
死んでたまるか。
少なくとも、この海にいる間はな！！
ナンパ男「へい、彼女〜！弟なんかより、俺と一緒に遊ぼうよ〜！」
廬山百龍覇〜！！
絶対に死んでたまるか！！
四方八方から、あわよくばと狙う視線を感じ、堅く強く誓う紫龍であった。
１２時過ぎ、昼食をとるために、一同、瞬のいるパラソルに戻ってきた。
海の家で食べ物を買い、レジャーシートに円になって座って食事を始める。
星矢「泳いだあとのヤキソバって最高〜〜！！」
瞬「あれから本当にブイまで泳いだの？」
星矢「おう！！ブイを２往復しちゃったぜ！！」
紫龍「２往復って・・・沙織さんと美穂さんは大丈夫なの？」
沙織「ダイエットのために、普段からトレーニングしてますからね！」
美穂「私も、チビッコを毎日追いかけてるもの。軽い軽い！！」
聖闘士顔負けである。鋼鉄聖闘士くらいなら、今すぐにでもなれそうである。
春麗「紫龍、このラーメン美味しいわ。今まで食べた中で１番美味しい」
紫龍「たくさん泳いだからだな。さっき、買いに行った時見たけど、鍋にぶちこんでたソレ、サッ○１番って書いてあったぞ」
氷河「腹・・・減った・・・」
瞬「もう、君はさっきスイカ１０個食べたでしょ。まだ食べたりないの？」
氷河「マーマ型のスイカ・・・・・」
瞬「マーマの顔を書いてあげたでしょ。人型のスイカって、不気味だと思わない？」
氷河「マーマならオッケー」
瞬「もう！マザコンなんだから！！」
紫龍「半分はお前の責任じゃないか・・・？」
和気藹々とした雰囲気で昼食をすごす。空腹が満たされると、休憩だと言って、横になった。泳ぎまくった疲れからか、星矢と美穂、沙織はすぐ眠ってしまい、具合のよくなった氷河と瞬は、ちょっと泳いでくるよと波に消えていった。パラソルにいるのは、紫龍と春麗の二人きりだった。
紫龍「春麗、疲れてないか？」
春麗「大丈夫よ。あまりに楽しくて、眠れそうにないわ」
紫龍「そっか、楽しんでもらえたなら良かった」
春麗「知らないってことを知るのは楽しいわ。水平線を見たのは初めて。空の青と海の青が素晴らしいわ」
紫龍「そうだな」
春麗の住む五老峰では水平線は絶対見られない。海に来ないと見られない風景である。
春麗「紫龍、誘ってくれてありがとう」
紫龍「いや、俺のほうこそ来てくれてありがとう」
春麗「紫龍、顔赤いわよ」
紫龍「春麗、君も」
え・・・っとそっと顔を触った春麗。
イ、 イタ！！
紫龍「しゅ、春麗！！！大丈夫か」
どうしたのかと近寄った時、神のイタズラか、ツルッとレジャーシートに体重をかけていた手がすべった。
春麗「えっ、ちょっと・・・紫龍！？」
紫龍「うわっ・・・・！！」
突然のことに受身もできず、そのまま春麗に倒れこむ。春麗もまた支えることができず、そのまま後ろに倒れこむ。
きゃああああああああああ！！！！！
五老峰にでも届こうかという悲鳴。思わず星矢は跳ね起き、沙織と美穂も眠い目をこすって起き上がった。
・・・・・・・・・え。
そこには、春麗を押し倒している紫龍と、押し倒されている春麗。しかも、こともあろうに『痛い・・・痛い・・・』と言いながら泣いている。
星矢「紫龍・・・お前・・・何やってんだ？」
紫龍「いや、それはその・・・」
星矢「女を泣かせるのは最低だ！！食らえペガサス流星拳――――！！！」
自分のことは棚に上げて、必殺技をかます星矢であった。
星矢「そっかーー！！ホント、ごめん！！春麗さん！！」
紫龍「俺に対する詫びはないのか？」
驚いた戻ってきた瞬と氷河も交えて、ことの真相が判明に、あっはっはと星矢が謝罪する。
瞬「そっか、海は初めてだもんね。こんなに日焼けするなんて思ってなかったよね」
春麗「もう・・・痛くて痛くて・・・気がついたら背中も真っ赤でした」
瞬「大丈夫。数日したら痛みはひくから」
星矢「いや〜！！でも、びっくりしちゃった！紫龍が春麗さんを押し倒してるようにしか見えなくてさ！」
美穂「星矢ちゃん、私、星矢ちゃんになら押し倒されてもいいわよっ！」
沙織「私もです。むしろ、望むところですよ」
星矢「あ、あはは。俺、そんなケダモノみたいなことしないぜ。な、紫龍」
紫龍「・・・・・悪かったな」
瞬「日焼け対策もしてあるから。このクスリ効くから使ってね」
春麗「ありがとうございます」
星矢「瞬は準備がいいなあ。春麗さん、瞬に乗り換えちまえば？」
春麗「え、えええ！？」
星矢「名前も似てるしさ、どう？」
紫龍「どうって俺が許すわけないだろうが！！」
星矢「許すって、春麗さんはお前の所有物じゃないだろ」
紫龍「いや、そうかもしれないけど・・・！」
春麗「えっと・・・私は・・・」
口を引き結んで、ちらっと紫龍を見る春麗。その頬は、けして日焼けによるものではなく。
瞬「星矢、ヘンな事言って春麗さん困らせちゃダメでしょ。自分自身の身辺整理だってまともにできてないのに。春麗さん、こんな話、間に受けないでくださいね」
にっこりと微笑む。
春麗「ありがとうございます」
美穂「瞬くんって、結構掘り出し物よね〜！！世の女の子は何してるのかしら」
氷河「大丈夫。瞬はもてるから」
沙織「あら、そうなのですね！さすがおじい様の子供！」
氷河「さっき、海で泳いでる時、３歩に１回ナンパされてたからな。男に」
え・・・・・・？
瞬「ひょ〜が〜？」
星矢「うわっ！！ピンク色の風が！！」
紫龍「おい！！落ち着け！！」
瞬「命いらないみたいだね、君。シベリアまで吹っ飛ぶといいよ！！」
ネビュラストーム！！！！
氷河「うわあああああ！！」
ネビュラストームを直で受けた氷河は、きらりん・・・と空の彼方に飛んでいった。呆然としている彼らを尻目に、瞬はパンドラボックスから位牌をとりだした。
瞬「君のこと、けっして忘れないよ」
美穂「やっぱり・・・ちょっと恐いかも・・・」
沙織「さすが、おじい様の子供です・・・」
春麗「紫龍、私を守ってね」
紫龍「ああ、もちろんだ・・・！」
夏の太陽にきらめく瞬のこぼれる笑顔に、鳥肌がたった星矢たちご一行だった。
ちなみに、日が落ちても氷河が戻ってくることはなかった。
春麗「紫龍、それじゃあ」
紫龍「うん、またそっちに帰るよ」
日没・・・空港での一コマ。気を利かせてか、星矢たちは先に帰っていった。
春麗「本当に今日はありがとう」
紫龍「ああ、俺も、本当にありがとう」
少しずつ二人の距離が近づく。そっと、二人の手が背中にまわされる・・・
痛いっ！！
思わずパッと離れる。
紫龍「あははは、今日はちょっと無理みたいだね」
春麗「紫龍も。平気な振りして結構痛いんでしょ」
図星である。肩も背中もヒリヒリして痛い。
春麗「じゃあ、またってことで。帰ってこないと許さないからね」
紫龍「約束するよ。すぐまた帰るって」
春麗「約束だからね」
にっこりと笑うと、春麗は身を翻して、搭乗口へと向かっていった。
きっと帰る。この日焼けの痛みが消えた頃に―――。
あとがき
160000番のゲッターさんは、暁人さんでした！！夏ごろ頂いたリクエストだったのに、気がつけば・・・。でも、まだ暑いもん！イケるだろ（おいっ！）て感じで書かせて頂きました★リクエストは、タイトル通り『夏だ!海だ!春麗ちゃんのビーチデビュー』でした♪オールキャストですが、どうでしょう。戯曲形式なので、今回はラブコメな感じｖｖ
いや、久しぶりに美穂ちゃんたちを書いたので、口調とかがスコーンと抜けてました。恐ろしいですね〜！！書かないと忘れちゃうんだ〜！！
氷河はどこへ飛んでいってしまったのかなあ？
楽しんで頂ければ幸いです★
ＢＹ ＭＵＴＵＭＩ