暑気払手打ちうどんパーティ

星矢「暑い。」
日本は夏真っ只中。星の子学園に限らずどこでも暑い。山の手のお嬢様は暑いとも感じてないだろうけど、星の子学園は、クーラーなんて物はついていない。夏を満喫できることでは幸せだ。
星矢「姉さん、何で夏は暑いんだろう。」
星華「夏だからよ。」
すっぱりと言う。星矢はトドのように床に寝っころがっていた。暑くて何もやる気を起こさない。
星華「夏は暑い。冬は寒い。これが日本というものなのよ？星矢。」
星矢「何で日本は暑かったり寒かったりするんだろう。」
星華「日本には四つの気団というものがあってね、それがやってくることによって寒くなったり暑くなったりするの。」
星矢「そんなの無くなっちゃえば良いのに。」
星華「あら、そうしたら、美味しい果物やお魚が食べられなくなっちゃうわよ？」
星矢「それは嫌だ。」
星華「でしょう？」
ニッコリと星華が笑う。星華は読書をしていた。内容はミステリーホラー。心頭を滅却すれば火もまた涼しを活用している。
星矢「でも姉さん、ここ最近暑すぎるよ。美穂ちゃんだってネッシャビョー起こして寝てるじゃん。」
星華「そうね、ここ最近凄く暑いわね。皆も覇気が無いし。」
星矢「食欲もあまりないし。」
星華「ここのとこあまり食べないわね。」
あまり食べないというのは、星華の分まで欲しがらないと言う事であり、食べ残すという事ではない。
星矢「姉さんはこの暑さ平気なの？」
星華「まあなんとか我慢できるけれど。」
我慢できるのは知恵のおかげ。星華は日陰になっているところを選んで読書したりするので、直射日光を回避しているのであった。
星矢「姉さん、涼しくなる方法って無いかな。」
星華「夜になれば涼しいだろうけどね。」
星矢「夜は眠くなるから起きていられないよ。」
星華「そうよね。せめて、元気が出る方法が必要ね。」
星矢「早く秋来い秋来い秋来い。」
呪詛の様に呟く星矢。そんな星矢をみて、星華は暑気払になる物は無いかと考え始めるのであった。

星華「こんな感じでどうでしょう。」
神父「そうですね、皆も元気が無い事ですし、何かイベントをするのもいいかもしれませんね。」
星華「それではよろしいですか？」
神父「いいでしょう。」
星華「ありがとうございます。」
神父「星華さんは星矢思いの良い子ですね。」
星華「そんな。」
神父「その気持ち大切にしてくださいね。」
星華「はい。それから、私の計画っていうのは内緒にしていただきたいのですが・・・・・」
神父「どうしてですか？」
星華「何となく、秘密にしておきたいんです。」
神父「いいでしょう。私が皆のために考えたという事にしましょう。」
星華「ありがとうございます。」
神父「では、準備をしなくては。私に任せてくださいね。」
星華「はい。宜しくお願いします。」
星華と神父は互いに笑いあった。

星矢「手打ちうどんパーティ!?」
星華「そうよ。神父様がね、皆が元気になるようにって計画してくださったのよ？」
星矢「うどんってチュルチュルしてムチムチのうどんの事？」
星華「そうよ。」
星矢「うどんって自分達で作れるんだ。」
星華「勿論よ。皆で作ったのをその場で茹でて、水で冷やして、おつゆにつけて食べるの。星矢、うどん好きでしょ。」
星矢「好き！」
星華「頑張りましょうね。神父様がエプロンだけ用意してきなさいって言ってたから持って行きましょう。」
星矢「楽しみだな、うどん。」
ウキウキしながら星矢が話す。夏の暑さを忘れ始めた瞬間だった。

美穂「星矢ちゃん！」
星矢「美穂ちゃん。」
星矢達が最後に来た者らしい。皆エプロンを着て準備していた。美穂もピンクのエプロンをしている。
美穂「今日は頑張ろうね。美味しいおうどん作ろうね。」
星華「一緒に頑張りましょう。美穂ちゃん可愛いエプロンね。」
美穂「エヘヘ。」
星華「身体の調子は良くなった？」
美穂「大分良くなったよ。」
星矢「良かった。」
美穂「心配かけて御免ね星矢ちゃん。」
神父「皆さん、手は洗いましたか？それでは、暑気払手打ちうどんパーティを始めたいと思います。皆さん協力してやりましょう。特に大きい方は小さい方と一緒にやってあげてください。」
全員「はーい。」
美穂「星矢ちゃん達手は洗った？」
星矢「まだだ。」
星華「急いで洗いましょう。」
星華が星矢を促して手洗いをさせる。星矢の濡れた手を星華のハンカチで拭いてやった。
神父「では、粉に塩水を加え、良く混ぜ合わせてください。耳朶くらいの硬さになるくらいまで混ぜてください。」
星矢「はいはいはい！俺がやる。」
星華「順番よ？」
美穂「星矢ちゃんの次美穂ね。」
中力粉に塩水をいれ混ぜる。
星矢「ニチャニチャする！」
美穂「本当におうどんになるのかな。」
星華「もっと沢山沢山混ぜて。」
星矢「沢山ってどのくらい？」
星華「耳朶くらいの硬さになるまでよ。頑張って。」
美穂「疲れたら美穂が交代するわ。」
星矢がうどんのタネを混ぜる。手で顔をこするので顔が白くなっている。
星矢「疲れた。美穂ちゃん交代して。」
美穂「うん。」
美穂がバトンタッチ。大分まとまってきたタネを美穂が混ぜる。
美穂「ペトンペトンしてきた。星矢ちゃんが頑張ったおかげね。」
星矢「結構力が要る。美穂ちゃん大丈夫？」
美穂「大丈夫よ。」
全身の力をこめて、美穂がタネをこねる。だんだん一まとまりになってきた。
美穂「星華さん、これでどうですか？」
星華「どれどれ？」
星華がタネを指で軽く押す。
星華「良いと思うわ。」
星矢「やった！次は何をするんだ？」
神父「次はタネを寝かせます。」
美穂「うどんもお昼寝するの？」
星華「そうじゃないかしら。二人に混ぜられて、きっと疲れたのよ。」
タネを濡れた布巾に包み、涼しいところに置く。
神父「その間につゆを作ろうと思います。」
美穂「つゆも自分達で作るんだね。」
神父「鍋にお水を入れて、グラグラ煮立ったら鰹節をいれてください。鰹節が沈んだら鍋の火をとめて、鰹節を取り除いてください。」
星矢「これが鰹節・・・・」
美穂「鉛筆削りの削りカスみたいね。」
星矢「パクッ。美味いぞ結構。」
星華「駄目よ食べちゃ。」
鍋に水を注いで火にかける。
美穂「いつグラグラするのかな。」
楽しそうにジーッとみつめる美穂。しばらくすると、プツプツを泡がでてきた。
星矢「プツプツ何か出てきて、何かあったかいぞ。」
星華「触ったら火傷しちゃうから触っちゃ駄目よ。」
触らないようにさりげなく二人を鍋から遠ざける。グラグラと沸騰したら鰹節を盛大にいれた。
美穂「鰹節がグラグラ回ってる！」
星矢「洗濯機みたいだ。目、回らないのかな。」
美穂「鰹節が沈んでいくわ。」
星矢「目、回ったんだ。」
ほほえましい会話に星華は微笑むと、火を止め、鰹節をとりだした。
神父「それでつゆの完成です。もうそろそろタネを起こさせましょう。タネを麺棒で伸ばしてください。その前に俎板に小麦粉を薄くふっておく事。それとくれぐれもチャンバラごっこをしないように。」
星矢「ちぇ、やろうと思ったのに。」
星華「やっては駄目よ。」
星矢「分かったよ姉さん。」
美穂「美穂、麺伸ばすね。」
俎板に小麦粉をふりかけ、麺棒を使って麺を伸ばす。力の配分が均等じゃないからまっすぐ伸びない。
星矢「美穂ちゃん、それじゃお化けだよ。」
美穂「じゃあ星矢ちゃんやってよ。難しいのよ、これ。」
星矢が美穂から麺棒を受け取る。力いっぱい麺棒を使ったので、麺はますますアメーバのようになってしまった。
美穂「何よ、星矢ちゃんの方がへたくそじゃない。」
星矢「美味しければいいじゃん。」
美穂「話を誤魔化さないで！」
星華「喧嘩しないで。大丈夫よ、アメーバの様になっても。私が麺になるように切ってあげるから。」
星矢「お願い姉さん。」
神父「それでは切っていってください。危険ですから大きい方がやってくださいね。」
美穂「頑張ってくださいね。」
星華「大丈夫よ。美味しい麺になるように切るから。」
星華が包丁を握る。トントントンとアメーバを麺にしていく。
星矢「わあ、本当にうどんだ。」
美穂「本当だ。うどんだね。」
星華「こんなものでどうかしら。」
美穂「上手です。」
星矢「美味そう！」
星華「まだ生だから食べちゃ駄目よ。」
神父「それでは茹でましょう。私が茹でますので、皆前にもって来てください。」
星華「それじゃ少し待っててね。」
星華が神父の所に打ち立てのうどんを持っていった。
美穂「美味しいと良いね。」
星矢「美味しいさ。俺と美穂ちゃんと姉さんで作ったんだから。」
美穂「そうだよね。」
すっかり暑さを忘れて、二人は出来あがるうどんを楽しみに待っていた。

神父「それでは皆さんいただきます。」
全員「いただきます！」
神父が茹でた麺が出来あがった。素人なので長さや太さがまちまちだが、それは愛嬌だ。
星矢「チュルッ。美味しい！」
美穂「美味しい美味しい。」
星華「良い出来ね。冷たくて美味しいわ。」
美穂「おうどんってこんな風に作るんだね。」
星矢「俺、すっごく楽しかった。」
美穂「私も。」
星華「私もよ。」
星矢「食欲でてきたぞ。」
星矢が肉にも手を出す。うどんだけでは栄養素的に足りないので、神父が用意したものだった。
美穂「私も食欲でた。」
星華「良かったわ。」
星華が微笑む。
星華（元気でたみたい。良かったわ）
チュルチュルと麺を啜る。
星矢「姉さん。」
星華「何？星矢。」
星矢「おかわりないかな。俺、まだ食べたい。」
星華「もうおうどんないから、私のお肉食べるといいわ。」
星矢「ありがとう！姉さん。」
星華の皿を自分の方に寄せると、あっという間に平らげてしまった。
星矢「美味かった。ありがとう姉さん。」
星華「どういたしまして。」
星華（元気になって本当に良かった。星矢が元気じゃないなんて星矢じゃないわ）
暑気払うどん手打ちパーティで星矢が元気になったのをみて嬉しい気持ちが溢れてくる。自分の分を欲しがる星矢を見て、いつもどおりになったと安心するのだった。夏もそろそろ折り返し地点を迎える。星矢が好きな秋がやってくるのももうすぐである。


あとがき
どうま様がキリ番を踏んでくださいました。テーマは星矢と星華と星の子学園。百番のキリ番者が現れなかったので、どうま様が初めてのキリリク者です。星矢と星華が主役ならやはり舞台は昔の思いでという感じで、星華が十歳くらい、星矢、美穂が七歳くらいの時の話です。ちょっと星華が大人っぽいかとも思いましたが、聖闘士星矢の精神年齢は、実年齢に対して三つか四つくらい違うと思っているので許してください。（その割に美穂と星矢が幼かったような気がするが・・・・）星の子学園には美穂がつきものなので、美穂がプラスしてしまいました。ちなみに暑さを知らないお嬢様は当然の事ながら沙織お嬢さんです。書いてて楽しかったです。どうま様楽しいリクエストありがとうございました。