真夏の雪合戦
瞬「暑いね〜〜」
氷河「ああ。」
紫龍「死にそうだ。」
星矢「俺もう死ぬかも。」
ラウンジでトドのようにばてている四人。この連日四十度にも達するのにクーラーをつけていないのは何故か。答は簡単。冷房が壊れたからである。
星矢「クーラーがないとこんなに暑い物なんだな。」
紫龍「五老峰なら涼しいのだろうが・・・・」
瞬「アンドロメダ島はこのくらい暑かったけど、湿度が違う。むしむしして気持ち悪い。」
氷河「俺、死にそう。氷・・・・・氷が食べたい。」
マジで死にかけてる四人。そんな中、
ジリリリリ・・・・
と電話が鳴った。
星矢「はい〜。」
？？「あのう、アテナのお宅ですか？」
星矢「え？」
かけてきたのは、女性。しかもアテナと呼んだ。聖闘士関係者以外、沙織をそんな風に呼ぶ人はいない。
星矢「・・・・・えっと、あんたは・・・・・」
フレア「フレアです。」
星矢「ああ！フレアか！久し振り！元気してるか？」
フレア「それが・・・・・・」
星矢「どうかしたのか!?」
皆に聞こえて喋れる様に、スピーカーフォンに切りかえる。
紫龍「アスガルドに異変が起こったのですか？」
瞬「僕達、力になりますよ。」
フレア「ありがとうございます。」
氷河「それで？何が起こったんだ？」
フレア「実は・・・・・・・」
星矢「おおう！正しく雪！」
息を白く吐きながら叫んだ。
瞬「それにしても・・・・・」
紫龍「この夏だというのに、雪が残ってるとは・・・・」
氷河「シベリアの様だな。」
フレア「ひょうが〜〜〜」
フレアが、転ばない様に気を付けながら駆けてくる。
氷河「フレア。」
フレア「氷河、そして聖闘士の皆さん。今日はアスガルドの為にありがとうございます。」
瞬「いえいえ。僕達も暑い日本から脱出できて嬉しく思っています。」
フレア「雪かきの為にアテナに頼るだなんて、情けないですね。」
紫龍「気にしないで下さい。確かに異常ですから。夏になっても雪が解けないなんて。」
フレア「あのクソ爺の所為ですわ。そんなに酒が好きなのなら、酒をかっくらってヘベレケになって、アル中で死ねば良いのに。」
氷河「フレア・・・・・？」
フレア「ほほほ、気のせいです。着いた早々で申し訳ありませんが、始めて頂けませんでしょうか。」
星矢「勿論だぜ。」
フレア「こちらです。」
フレアの言葉の意図がどうもよく分からない青銅達だったが、荷物は、近くにいた雑兵に預け、その雪かきの場所へ歩いていった。
ジークフリート「すまないな。お前ら。」
雪かき場では、神闘士達が既に作業を始めていた。
星矢「なんのなんの。」
ミーメ「今年は雪がなかなか解けなくてね。分担して雪かきをしているんだ。」
瞬「そうらしいね。僕達も手伝うよ。」
フェンリル「・・・・・・感謝する。」
紫龍「友人だ。当たり前だろ。」
星矢「アルベリッヒ、その機械はなんだ？」
アルベリッヒ「これか？あり合わせのガラクタで作った除雪機だ。」
星矢「へえ〜凄いな！」
アルベリッヒ「こんなＣ級品誉められても嬉しくない。もう少し金があれば、もっと効率の良い除雪機が作れるのに。」
シド「お前の兄さんは？」
瞬「ちょっと行方不明で・・・・」
バド「どうせ近くにいるんじゃないのか？」
シド「兄さんもそうでしたからね。」
久し振りの再会に、会話に花が咲く。
フレア「神闘士、聖闘士の皆さん、雪かきなんて、闘士の本分ではありませんし、する義務もありません。嫌になったらすぐ止めても結構です。しかし、あなた達以外に頼れる人がいないのも事実・・・・・すみません・・・・・」
ハーゲン「そんな！フレア様が謝る事なんてありませんよ。」
氷河「そうだ。これくらい、近所づきあいくらいに考えてくれて構わない。」
フレア「ありがとう。」
笑顔を残して、フレアは去っていった。
ジークフリート「さて、日が暮れないうちにやってしまうか。」
星矢「そうだな。道具あるか？」
アルベリッヒ「日本のような先進国に比べたら、カス、スカ、ゴミ同然のスコップだがな。」
瞬「物を大切にする事は良い事だよ。」
スコップを受けとって、しゃくしゃくしゃくと谷に雪を捨て始めた瞬であった。
雪かきを始めて一時間近く経過した時・・・・・
ジークフリート「星矢、腹減らないか？」
星矢「そうだな。ちょっと空いたな。」
ジークフリート「早いが昼飯にしないか？」
星矢「いいな！どんなんがでるんだ？」
ミーメ「雪の所為で、穀物とかの実りが全くないから、とりあえず、その辺の草と動物と魚かな。」
バド「酒なら多分ワルハラ宮裏の酒蔵にあると思う。」
シド「日本人のあなた達には、口に合わないかもしれないけど・・・・・」
紫龍「いや、気にするな。ワイルドな食事だって、珍しいし、楽しいぞ。」
フェンリル「俺はそれを十何年もしてきたんだが・・・・・」
紫龍「あ、いや・・・・俺の五老峰でも、原始的な生活だったし、恵まれてはないぞ。」
瞬「そうだよ。アンドロメダ島だって、食べ物碌になかったもん。」
ミーメ「幸せのボンボンだと思っていたが、意外とそうではないのだな。」
トール「食い物熊でいいか？」
星矢「熊なんてしとめるの大変だろう？俺も付き合うよ。」
フェンリル「じゃ、俺は飲み水でも汲んできてやるよ。」
紫龍「俺も付き合う。持つ人間は多いほうが良いだろう。」
バド「俺はワイン。やっぱ酒だよな。」
ミーメ「私も付き合おう。一人ではそう多くは持てまい。」
シド「ジークフリート、熊と水とワインじゃ栄養がちとたらんだろう。木の実でも探しに行かないか。」
ジークフリート「そうだな。緑黄食とまではいかなくても何か欲しいな。」
アルベリッヒ「俺はちょっとワルハラ宮に戻って、こいつの点検をしてくる。ちょいと動きが悪い。油でもいれて磨いてみるさ。」
瞬「僕、見てみたいな。迷惑にならない様にするから見ても良い？」
アルベリッヒ「感電しないようにしろよ。俺は責任もたんからな。」
こうして、皆ではらい、残ったのは、犬猿の仲、ハーゲンと氷河だった。
ハーゲン「氷河。」
氷河「何だ？」
ハーゲン「どうしてお前が来るんだ。」
氷河「どうしてって・・・・フレアが頼んできたから・・・・」
ハーゲン「フレア様を呼び捨てするな！」
氷河「別にしたっていいだろう。友達なんだから。」
ハーゲン「フレア様は氷河のことを友達などとは思っていない！勝手に思いこむな！」
氷河「友人だと思ってくれてるから、こうして頼ってくるんだろ？お前とフレアは何なんだ？」
ハーゲン「俺とフレア様は、地上代行者の妹と近衛って関係だ。」
自分の立場を分かって、謙虚に答えるハーゲン。
氷河「幼なじみじゃないのか？」
ハーゲン「幼なじみでもあるが・・・・・」
氷河「友達にもなりたくないのか？」
良く言って鈍感。悪く言って無神経。
ハーゲン「そんなわけ無いだろうが!!!!」
氷河の発言に怒り出すのも当たり前である。
氷河「だって、そうだろう？友達にもならないなんて、嫌ってるとしか思えないだろう。」
察知能力の無い氷河は馬鹿である。
ハーゲン「何で嫌わなきゃいかんのだ！」
氷河「・・・・・・緑の瞳だから。」
ハーゲン「理由にもなってないわ!!!第一俺はフレア様の緑の瞳は綺麗で澄んでて好きだ！馬鹿言ってるんじゃない！」
氷河「・・・・・・不可解なヤツだ。友達ではないのに、好きだなんてな。
・・・・・・・・・・・・・・一度医者に見てもらったらどうだ？」
ブチッ
ハーゲンの堪忍袋の尾が切れた音である。
ハーゲン「貴様〜〜〜！俺を気狂いにするつもりか！絶対に許さん！」
ぎゅっと雪を握って雪玉を作り氷河にぶつける。
氷河「何するんだ！」
氷河も雪玉を作ってハーゲンに投げつける。ひゅんひゅん雪玉が宙を舞う。
ハーゲン「避けるんじゃない！」
氷河「そっちこそ！」
結構目が血走り、マジでやってる二人。そんな中
星矢「ただいま〜〜」
ジークフリート「お待たせ。」
そこかしこにでかけていた青銅と神闘士が戻ってきた。
星矢「お！雪合戦か！楽しそう！俺も混ぜろよ！ジークフリートもやろうぜ。トールも。」
事情を全く知らない星矢が屈託の無い笑顔を向ける。
ジークフリート「食事の前に少しくらい遊んでも悪くは無いな。」
トール「よし、やるか。」
瞬「僕も混ぜて。」
シド「じゃあ、少々不公平かもしれないが、神闘士ＶＳ青銅ってことにしないか？」
フェンリル「それは不公平過ぎるだろ。俺とバドとミーメとアルベリッヒは青銅がわにつけばいいんじゃないか？」
バド「何をいう。雪合戦にルールは不用だ。組もいらん。己の小宇宙を雪玉に込めて、相手が雪につっぷし、霜焼ができるほどにノックアウトさせるまで、続けるんだ。勝者は全員を雪に沈ませた者。」
ミーメ「いいな。分かりやすい。いいだしっぺなんだから、集中攻撃でも文句は言うなよ。」
こうして、無差別な雪合戦が始まった。
『いてえ！やったなトール！』
『お互い様だろ！』
『ぷは！つめて！』
『顔が雪まみれだぞ、君』
『氷の弾丸受けてみろ』
『反則だぞアルベリッヒ！』
『勝負に反則も正攻法もない！』
『ほら、ここに木の板が。これで守れるよ』
楽しんでいる神闘士と青銅。二人除いては。勿論ハの人とヒの人である。
ごろんごろん氷河はどでかい雪玉を作っていた。雪達磨並に大きい。
氷河「ハーゲン！これでもくらえ！」
下手したらぎっくり腰になりそうなくらいの大きな雪玉をハーゲンに向かって投げた。
ハーゲン「これくらいの雪、俺の技で溶かし尽くしてやるわ！グレート・アーデント・プレッシャー!!!!!」
ゴオオオオオオ!!!
ハーゲンの怒りの熱拳は、雪玉どころか、周りの雪まで盛大に溶かし始めた。まるで春の訪れの様に。
星矢「おお！凄いぞハーゲン。ジークフリート、ハーゲン一体どんな修行を積んだんだ？」
ジークフリート「いや・・・・・いつもはこれほどまでは強くないのだが・・・・」
アルベリッヒ「そうだよな。そうでなければ、フレア様がお前らに頼み事をするわけが無い。」
瞬「一体何が起きたのかな？」
シド「さあな。」
何が何だかさっぱり分からない青銅＆神闘士。だが、雪かきはハーゲンのおかげでなんとか片付いたのだった。すっかり地面の見える土地で、美味しい昼食を取る神闘士と青銅だった。
フレア「皆さん、今日は本当にありがとうございました。」
ワルハラ宮で、侍女のいれたお茶を飲みながらティータイムである。
ヒルダ「フレアが無茶な頼みをしまして申し訳ありません。」
瞬「いえ、こちらこそ楽しかったですよ。」
紫龍「そうですよ。避暑地に来たと思えば気にもなりません。」
フレア「ハーゲン。」
ハーゲン「は、はい！フレア様。」
フレア「ハーゲン、氷河とは仲良くしましたか？」
ハーゲン「・・・・・は・・・い。」
フレア「そうですか。ハーゲンは氷河とどこか敵対心があるようですから、心配だったのです。聖闘士と神闘士だからといって、敵対する理由は無いのです。先入観はやめて、ちゃんと氷河本人を見てあげるのですよ。」
ハーゲン「・・・・・・・・はい。」
フレアも結構鈍感・・・というか、かなり考えが食い違っている。
星矢「ところでヒルダ。」
ヒルダ「何ですか？」
星矢「フレアが言ってたんだけど、オーディーンのヘベレケって何なんだ？」
ヒルダ「まあ、フレアそんな事を言ったのですか？」
フレア「ごめんなさい、お姉様。」
ヒルダ「まあいいでしょう。少々腹に据えかねていましたし。」
星矢「で、何なんだ？」
ヒルダ「実はですね、私は、この雪が解けない理由を聞こうと祭壇で祈りを捧げていました。」
瞬「それで？」
ヒルダ「そして、ある日私が祈りを捧げ様と祭壇まで行くと、一枚の古めかしい紙が置いてありました。」
紫龍「オーディーンからですか？何て書いてありました？」
ヒルダ「これを見てください。」
ヒルダが、破れそうなほどボロボロな紙をテーブルにさしだす。
Atukann ha hubuki no huku samui toki ni kagiru。 O-dhi-nn。
瞬「何て読むのですか？」
ヒルダ「アスガルド語で、熱燗は吹雪の吹く寒い時に限る。オーディーン。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
星矢「かえろっかな。」
瞬「そうだね、僕達の役目は済んだし。」
ジークフリート「今度は観光できてくれ。こんなんじゃなくて。」
ミーメ「次はきちんと客として出迎え様。」
双方達成感が急に失われていった。茶と菓子を食べ終わると、いそいそと席を立ち始め、ワルハラ宮で神闘士たちと別れ、まるで何も無かったかのように飛行機に乗り、日本の城戸邸に戻った青銅達だった。
あとがき
25000を踏んでくださったのは有閑様でした。お題は青銅達の雪合戦。一輝はいれても入れなくても構わない。でした。随分と遅くなってしまいました。ごめんなさい。一輝をだそうかと思ってたのに、どういうわけかアスガルドになってしまいました。今回氷河は鈍感さんで、ハーゲンは遠慮がちです。フレアも鈍感だし。こういう作品がかけるのもパラレルならではです。楽しんでいただけるととても嬉しいです。
ＢＹ ＭＵＴＵＭＩ