カジだ!!

今、聖域ではある事に大変恐怖している。毎日毎日気が気で無く、一人で聖域消滅させるのではないかというほど。敵では無く同僚が。


その男はムウ。


現在、富士山大爆発寸前、核爆弾投下準備完了、チェルノブイリ再爆発てな感じである。

一体何が原因でそんなにいらついてるのか。

住民に聞いても、別にそこまで気に障るほど怒らせるような事はさせてないと言うし、じめじめの雨だって別に降ってない。経済だって今のところそれなりにあれである。

全員ビクビクした毎日を送っていた。


サガ「・・・・・・・・・帰ってくれ。」
教皇の間には階下の人間が全て揃っていた。いくら広いとはいえ、大の大人を十人も抱えるのは辛い。
デスマスク「今、羊野郎がメチャ機嫌悪いって知ってるだろうが。」
アルデバラン「あの怒りは尋常じゃない。」
アイオリア「恐ろしくて、側にいれなくてな。」
カノン「一番遠い宮はここだから、ここに泊まる事にしてるんだ。皆。」


別にアフロディーテやカミュやシュラまで泊まる事はねえんじゃねえのか？

サガ「それにしても、一体ムウに何が起こったんだ。」
シャカ「株券が紙になったという情報は聞いてないが。」
サガ「それはシャレにならんから止めろ。」
シャカ「大丈夫だ。株券が紙になったら、ヤツは世界を滅ぼす。」
サガ「それはマジで冗談にならん・・・・・・」
シャカ「いやいや、経済が死んだ日には・・・・・・・・」
デスマスク「想像するのすら恐ろしいから止めてくれ。」
無限ループが続きそうなので、デスマスクがストップのかけたのだった。
カノン「どうするんだ？サガ。」
サガ「どうするんだと聞かれても・・・・・・」
カノン「サガは教皇だろうが！自分の部下くらい何とかしろよ！監督不行き届きなんじゃねえの？」
サガ「じゃ、お前と一緒にスニオンにぶち込むか。」
カノン「何故!!!」
そう言い放つと、サガはすっと白い紙を差し出した。そのタイトルは請求書。
サガ「カノン君。君は昨日酔っ払って帰ってきたね。随分景気の良い話ではないか。その金は・・・・・幾らかな？」
トントンと請求書を叩く。
カノン「えっと・・・・・・・・・」
サガ「聖域の金が一気に埋没し、私はアテナに金を借りなければいけなくなった。その惨めさ、分かるかね。」
カノン「いや、非常にすまないことを・・・・・・」
サガ「死ぬか？いっそ。」
カノン「俺の失言でした！サガは教皇の仕事を立派にやってます！部下の監督不行き届きはサガの責任ではありません！」

カノン、藪をつついて蛇をだしたのだった。いや、むしろ鬼か。




ミロ「俺、何とかしてみよーか？」
藪から蛇どころか、自分から爆弾をバイパス着火オンさせたミロであった。

カミュ「ミロ!?」
ミロ「理由が何であれ、あんなに怒ってるんじゃ体に悪いだろ？何か気晴らしに何かしてやろっかと思って。」
カノン「お前の単純バカには目を見張る物があったけど、まさかここまでとはな！」
シャカ「死にたいらしいな、ミロ。」
アフロディーテ「君は本当に聖域で一番のお人よしだ。」
デスマスク「まあ、カミュと親友するくらいのヤツだからな。」
皆遠慮無くひどい事言いまくりである。
カミュ「・・・・・どうするつもりだ？」
ミロ「へっへ、任せておけって！」
カミュ「・・・・・・私には、話せよ。」
非常に乗り気のミロと、どうしようもない不安感が募るカミュ。聖域の明日はミロに委ねられる事になった。



ミロ「ミロのケーキ作り教室〜〜〜!!!」
天蠍宮で、ミロとムウ、そして、計画を聞き、カミュが保険として、青銅にも救助を要請し、適任者として抜擢された瞬が集まった。
ムウ「ほう、ケーキ・・・・・ですか。」
声がバリバリに尖がっている。
ミロ「そうそう!!今日は美味しい美味しいショートケーキを作ります!!」
瞬「へえ、ショートケーキなんてミロ作れるんだ。」
ミロ「勿論だ。なんたって修行時代、氷河にもアイザックにも作ってやった事があるんだゾ！」
瞬「へえ〜〜、そうなんだ。」
そのケーキを食べた二人が翌日、体調不良を訴えた事は、闇の中の秘密である。
ムウ「こんなことして楽しいですか？」
ミロ「楽しいぞ！ほらほら、手を洗って、すぐ始めるぞ！」
瞬「あ、うん。」
エプロンを着て、三角巾をして、手を良く洗って、準備は完了。
ミロ「それではまず〜〜薄力粉をふるっておきま〜す。」
どさっと、粉をふるいに入れる。
瞬「あ、そんなに乱暴にしちゃ・・・・・」

ボワン

粉が舞った。そこはホワイトクリスマス。

ミロ「・・・・・・・・おおう。」

ミロは白髪鬼になった。

ムウ「・・・・・・真っ白ですよ。」
ミロ「あははっは、そんなこともあるさ。」
ムウ「・・・・・・あなたらしい。貸してください、静かにもっとやるんですよ。」
半分ひったくるような感じでは有るが、ムウがふるいにかけた。サカサカ綺麗に粉が振るわれる。
瞬「ムウ上手なんだね。」
ムウ「まあ、伊達に弟子をとってはいませんからね。料理くらいはお手の物です。」
瞬「僕と同じだ。星矢達の食事は僕と紫龍で作ってるんだもん。」
ムウ「好き嫌いはないですか？」
瞬「あるよ〜〜〜。星矢は底無し胃袋だから、腐ってなきゃなんでも食べるよ。星矢の頭には好き嫌いじゃなくて好き大好きしかないと思うんだよね。でも、氷河と兄さんが凄い好き嫌いが激しいんだ。特に氷河はシベリア出身で日本料理になれて無くって、山菜料理なんてオールパス！この間なんて、蓬とか土筆とか、コゴミとかゼンマイのヤツ作ったんだけど、箸すらつけなかったもんな〜〜魚もお刺身はダメとか、生卵は気持ちが悪いとか、醤油ばっかは気持ちが悪いとかもう大変！兄さんは洋食があんまり好きじゃないから、三日続けて洋食がでようものなら、夕食中凄く不機嫌なんだ。カレーとシチューとラーメンが重なったって別にいいじゃない。ねえ。」
ムウ「そうですね。」
声の尖りが少しだが和らいだ感じがした。
ミロ「次は卵で〜す。卵白と卵黄に分けます。そりゃ！」
卵を思いきり角にぶつけた。
瞬「・・・・・・お〜い。」
ムウ「・・・・・全部混濁してますよ。」
分けるじゃなくて、割れてしまった。当然、黄味も白味もいっしょくた。
瞬「僕がやってあげるよ。」
パカンパカンと見事に卵白と卵黄に分けていく。
瞬「じゃ、砂糖を入れつつかき混ぜるんだね。」
泡だて器を使ってかき混ぜる。電動の物など使わなくても聖闘士なら手動で一分もすれば見事なメレンゲができあがる。
瞬「石鹸みたいだねえ。」
ムウ「瞬は洗濯などもしているのですか？」
瞬「ああ、うんしてるよ。」
ムウ「干して、用事があって出かけて、それでいて、雨が降ってるから誰か取りこんでいてくれないかな〜と期待して戻ってみると、雨の中野ざらしにされていたということはありませんか？」
瞬「そんなの結構あるよ。」
ムウ「結構です・・・・・か？」
瞬「うん。僕、夕飯のお買物とか、沙織さんに付き合ってお買物とか、気晴らしに外に行ったりして、まあ、紫龍がいてくれるとすぐ気づいてくれるんだけど、兄さんとか氷河だと、部屋に篭って本読んでたり、テレビ見てたりで全然他のことには目をくれないんだ。星矢はいつも外で遊んでるしね。じゃなかったらゲームに夢中で。謝ってはくれるんですけど、自分の物にも無頓着なのかってちょっとがっかりしますよね。」
ムウ「・・・・・・そうですよね。」
声の張り詰めた感じがなくなった感じがした。
ミロ「でもって、メレンゲと、同じく卵黄に砂糖を入れたヤツを混ぜまーす。」
とろりと卵黄を入れる。
瞬「ミロ、顔真っ白のまんまだけどいいの？」
ミロ「いいのいいの。どうせいつも顔も体も服も汚れまくるんだから。」
瞬「・・・・・・なるほどね。」
泡だて器で更に掻きまわす。
ミロ「薄力粉も加えて〜〜」
ドスッと一気に薄力粉をぶちこみ、練りまくる。
ミロ「おりゃおりゃおりゃ〜〜」
ムウ「ちょ、ちょっと。」
瞬「粘り気がでちゃ・・・・・！」
そう言う間もなく、ボールの中は粘り気で一杯になった。
ムウ「粘り気がでたら、ケーキ上手く膨らみませんよ。」
ミロ「それも愛嬌だろ？ケーキ作りは楽しいのが一番！味はその次の次！マイペースが一番なんだって！」
ムウ「そうですね・・・・・」
ミロ「機嫌が悪い時は、思いっきり料理で遊べば元気になるって！」
瞬「ミロでも機嫌悪くなる時あるの？」
ミロ「いや、俺はない！」
瞬「じゃ、なんでケーキ作るの？そりゃ別に理由はなくてもいいんだけどさ。」
ミロ「カミュに作ってやりたくて！」
ムウ「カミュにですか？」
ミロ「なんかさ〜〜カミュって疲れやすいのかな？俺より年下なのにさ。つっても数ヶ月の差だけどさ。な〜んか疲れて目の下に隈があったりで、辛そうだからさ、元気だしてもらいたいな〜と思ってケーキ作るんだよ。」
瞬「・・・・・・・・・う〜ん。」
ムウ「大半の原因はあなたによる物だと思いますけどね。」
二人は目を合わせた。そしてくすっと微笑む。
ミロ「さ、最後の仕上げだ！」
とろ〜と焼き型にいれてオーブンに入れる。

十五分後、

ミロ「おお！綺麗だな！」
見事・・・の一歩手前くらいのケーキが焼きあがった。
瞬「やっぱりあまり膨らみませんでしたね。」
ムウ「仕方ないでしょう。」
ミロ「さあ、飾り付けだ！」
スポンジを切り、ホイップクリームで豪勢にゴテゴテに塗り、苺のスライスを一杯貼りつける。苺のクリームも作り、ピンクとホワイトのコントラストが美しい。
ミロ「おお！完成だ！」
見た目美しいショートケーキが完成した。ちょっと形が悪いところは見事に誤魔化されている。


ミロ「これ、カミュと俺の分だけで充分だから、後はムウと瞬で分けろよ。」
瞬「ムウは貴鬼の分ですよね。」
ムウ「ええ・・・・・でも・・・・・」
瞬「どうかしたの？」
ムウ「今、ちょっと喧嘩をしてしまいましてね。」
瞬「喧嘩？」
ムウ「この間、所用があって、ジャミールに向ったんです。私、夕食の時間までに帰ってくるのは無理そうなんで、カレーを作って置いておいたんです。洗濯物も干しておいたんですよ。で、ジャミールで所用を済ませたら、聖域では雨が降ってたんですよね。私、貴鬼のことだから、洗濯物くらい取りこんでいるだろうなと期待してたんですよ。そしたら、洗濯物は手付かずで貴鬼はテレビ見てましてね。しかも、ちゃんと用意してあったカレーを食べずに、お菓子を食べてたんですよ。あまりの理不尽さにキレましてね。で、ずっと機嫌悪かったんです。」
ミロ「なるほど！」
ムウ「皆さん私の逆鱗にこれ以上触れないようにしてたのは知ってます。すみませんでした。皆さん不快な思いをさせて。」
瞬「いいんだよ。僕もその気持ち良く分かるもん。」
ムウ「ええ、私だけじゃないと良く分かりました。嬉しかったですよ。」
瞬「僕もストレス溜まるんですよね。一所懸命してるのにさ。」
ムウ「そうですよ。時間さいてまで夕食作ったりとかね。」
瞬「是非電話させてください今度。思いきり言い合いましょう。」
ムウ「喜んで。」
ミロ「俺には分かりにくいけどさ、仲直りはした方がいいって！仲が悪いより良い方が絶対良いしな。」
瞬「そうだよ。このケーキで仲直りしようよ。」
ムウ「・・・・・・そうですね。」
ミロ「じゃ、切り分けるか。」
さくさくとケーキを切る。貴鬼とカミュと星矢達の分を含めて切る。
ミロ「箱もあるから入れるぞ。」
どこかのケーキ屋の箱に入れる。

瞬「ありがとうミロ。」
ムウ「私の為に本当にありがとうございました。」
ミロ「いいって！俺も充分楽しめたし！さ、カミュと一緒に食べよ〜っと。」
キッチンをほったらかしにして、汚れたまんまで宝瓶宮に向ったミロであった。
ムウ「瞬もありがとうございました。」
瞬「いいえ。ムウの気持ちよくわかりますから。僕達は同志ですね。」
ムウ「ええ、そうですね。」
瞬「愚痴は僕が引き受けますから、遠慮なくしてくださいね。」
ムウ「ありがとうございます。」
ムウは白羊宮に、瞬は白羊宮をでて、日本の城戸邸に帰って行ったのだった。



ミロ「カミュ〜〜〜、できたぞ、ケーキ。」
カミュ「お疲れ様。・・・・・どうだった？」
ミロ「ああ、ムウもう機嫌結構良いぜ！」
カミュ「そうか。良かった。お前は空気の読めない単純バカだから、いつムウの逆鱗に触れるか心配で心配で。」
ミロ「心配性だな〜カミュは。」
カミュ「お前の所為だお前の。」
ミロ「そうか？ケーキ作ったから食べよ。結構美味しいと思うぜ。」
カミュ「その前に体洗って来い。まるで化けもんだ。」
ミロ「そうか？」
カミュ「ああ。私の服を貸してやるからシャワー浴びて来い。」
ミロ「分かった。」
ミロはカミュの服を借りるとシャワールームに消えていった。
カミュ「アイツのケーキなんぞ食ったら三日は苦しむぞ。」
カミュは予め買ってあったショートケーキを冷蔵庫から取り出すと、摩り替えた。ミロ特製ケーキは、すぐさまゴミ箱いきとなったのだった。


ミロ「いっただっきま〜す。」
カミュ「いただきます。」
ミロ「うっわ、すっげ〜〜美味い！最高だ。俺がこんなん作るなんて！」
カミュ「うん、凄い凄い。」
それに気づかないミロであった。




貴鬼「ムウ様・・・・・あの・・・・・・」
ムウ「貴鬼、私も大人げありませんでしたね。いつまでも怒っていてすみませんでした。」
貴鬼「おいらが悪いんだ。ごめんなさいムウ様。ごめんなさい！」
ムウ「もういいですよ。次からはちゃんとしましょうね。」
貴鬼「はい！ムウ様。」
ムウ「ケーキ作ったんです。食べましょう。」
貴鬼「おいら、皿の用意してきます。」
戸棚から、ケーキ用の皿とフォークを持ってくる。ムウはケーキを皿に乗せた。
ムウ「いただきます。」
貴鬼「いただきます。」
ぱくんとケーキを食べる。
貴鬼「・・・・・・・・・美味しいよムウ様。」
ムウ「我慢しなくていいです。不味いですこれ。はっきりいって。」
貴鬼「・・・・・確かにゴワゴワで美味しくはないな。」
ムウ「残して良いですよ。というか、むしろ残しなさい。これ食べるとお腹壊します。」
やっぱり、楽しさも大事だが、味も充分大事だなと思ったムウであった。



星矢「お疲れ様！」
紫龍「どうだった。ムウの調子は。」
氷河「悪いな、カミュがかけてきたのに。」
皆が瞬を労う。
瞬「皆もね、少しは家事のこと考えてくれないと、僕も怒っちゃうよ。僕が怒ったらどのくらい恐いか知ってるよね。」
ニッコリ笑った。その笑みが恐い。
瞬「僕のいない間、ちゃ〜んとしてた？お料理とか。東京雨降ってるみたいだけど、洗濯物は・・・・」
一輝「お前は座って待ってろ。」
氷河「ちょ、ちょと待ってろ。キッチンとか今片付けてくるから。」
紫龍「今、茶を入れてやるよ。」
星矢「俺も洗濯物取りこんでくる！」
皆わらわらと散っていったのだった。一見、コマ使い扱いでありそうな瞬であったが、一番の権力者なのであった。




あとがき
36000は後藤晶さんが踏んでくださいました。テーマは怒り狂ってるムウさまと、ミロと瞬。怒り狂ってるムウ様をベースに話を作ってみました。ケーキ作りを今回は行ってみました。結構作り方を端折ってしまいましたけれども。怒ってる理由が何だか庶民的でございました。瞬とムウはその後、互いの悪口を言いまくる良い同志になるんでしょうか。そしてカミュはミロに降りまわされつづけるんでしょうか。ギャグとほのぼの二つ盛り込んでみましたが、いかがでしたでしょうか。楽しんでいただけると幸いですｖ

BY　　MUTUMI