ヒ・ミ・ツ
ポセイドン「お歳暮を贈る。」
久し振りに海底に戻ってきて、海将軍を集めて最初に海界の王が言った言葉は、何故ギリシャ人のあんたがそんな慣習を知ってるんだと言わんばかりの言葉だった。
イオ「お歳暮ですか？誰に。」
ポセイドン「勿論、アテナ各位だ。」
アイザック「お歳暮とみせかけた聖域破壊計画ですか？」
バイアン「破壊よりは毒物混入殺害計画の方が確実だろう。ストリキニーネとか用意してさ。」
ポセイドン「いやいや、そんな事をしたら、折角再興した海界がまたガレキとかしてしまう。日頃の感謝を込めて、お歳暮を贈るのだ。」
カーサ「あの・・・・ポセイドン様・・・・」
ポセイドン「何だ？」
カーサ「その台詞、私達は弱い・・・・と言ってるようなものではありませんか？」
ポセイドン「その通りだ。青銅聖闘士如きに敗れたお前らが黄金に敵うわけない。」
イオ「そのへなちょこの青銅に黄金さえも敗れてますけどね。」
ポセイドン「とにかく、私はもうくだらん争いに巻きこまれたくはない。と、いうわけで、アテナにお歳暮を贈り、無意味な争いの種を潰しておくのだ。」
アイザック「なるほど。安全の為の作戦ですか。」
ポセイドン「くれぐれも頼む。相手の好みを良く踏まえて送る様に。ああ、アテナは私が用意するから、黄金の分だけよろしく。ああ、金はお前らがだせ。それじゃ、頼むぞ。私はまた世界一周にでるので。」
確かにポセイドンは貧乏である。が、海闘士も同じようなもんである。が、海皇に逆らえるものは存在しない。ポセイドンは、爽やかな笑顔を見せ、ソレントと共に、世界救済に向ったのだった。
バイアン「なんか、ポセイドン様の言い分もわかるけど、媚びを売ってるみたいでやだなあ。」
イオ「そう言ったって、ボロボロに私らは負けてるのだ。また戦いとなったら、負けるのはウチだ。」
アイザック「なんたって、聖闘士には、一度見た技は通用しないってものがあるからな〜〜」
カーサ「反則だよな。俺らが幾ら鍛えて力をつけたとしても、最後には、一度見た事ある技で勝つんだもんな。」
クリシュナ「グチグチいっても仕方ない。平和を好むポセイドン様らしい言葉じゃないか。人間平和が一番だ。争いなんて誰も好まない。さ、お歳暮を・・・・・・・・」
クリシュナの動きがぴたっと止まった。そして首を捻る。
クリシュナ「なあ、お歳暮って何なんだ？」
イオ「そう言えば。」
バイアン「マリア様か？」
アイザック「さあ・・・・・お母さんの事じゃないだろうし。」
海闘士に、ジャパニーズは誰一人いなかった。
カーサ「ちょっと待ってろ。」
カーサが沙織に変化した。ふむふむと頷いてから、再びカーサに戻る。
カーサ「歳暮ってのは、普段お世話になってる人に贈る贈り物らしい。値段は人によって様々らしいぞ。」
イオ「お前のその技、役に立つな〜広辞苑みたいじゃないか。」
カーサ「歩く図書館と言ってくれ。」
アイザック「別名コバンザメ図書館だな。」
自分に知識はないが、人になればその人のもつ知識が得られる。役に立つが、それはある意味自分が情けない証拠のようでもある。
クリシュナ「ふむ、カーサの能力役に立つな。お歳暮の品、お前の能力で決めよう。」
イオ「お！名案だ！カーサ、頼むぞ。」
カーサ「疲れるんだけどな、結構。」
アイザック「後で栄養ドリンクやるから。頑張ってくれ。」
こうして、カーサの変化による、お歳暮選択を始めるのだった。
カーサ「まず、ムウだな。」
ぶうんとムウに変化する。
イオ「さてと、あんたの一番好きなものは？」
ムウ（カーサ）「金。」
しーんと誰もが沈黙した。
バイアン「金って・・・・幾ら？」
ムウ（カーサ）「くれるなら幾らでも。」
更に沈黙が走った。遠くで響く海底火山の音さえも聞こえたほどだ。
クリシュナ「金・・・・・以外なら？」
ムウ（カーサ）「・・・・・・金。」
文章ではどちらも同じ漢字だが、前者は読み方はカネ。後者はキンである。
アイザック「金って、元素Auの？」
バイアン「ダイヤよりも？」
ムウ（カーサ）「当然。金は価値が下がらない素晴らしい物。持っていて損はありません。」
イオ「それ以外は・・・・・？」
ムウ（カーサ）「無い。」
五分ほど、誰も喋れ無くなった。
イオ「・・・・・・どうする？」
バイアン「純金じゃないと駄目なんだろ？」
アイザック「でも、金無いぞ。」
クリシュナ「お、この間オリビアの泉に投稿したら、金の果実を貰ったぞ。純金だ。ただ、換金できないが。」
イオ「いいじゃん。箱変えて包み紙で包めば。タダだしさ！」
クリシュナ「じゃ、決定な。」
ムウへのお歳暮。オリビアの泉の金の果実。
カーサ「アルデバランに変化するぞ。」
ぶうんとアルデバランに変化する。
アルデバラン（カーサ）「えっと、俺の好きな物は・・・・」
顔、筋肉、雰囲気。じーっと海闘士がアルデバランを見詰める。
アイザック「肉だ。」
イオ「うん、肉だな。」
クリシュナ「牛肉だ。」
バイアン「焼肉用牛肉お徳用で良いな。決定！」
アルデバラン（カーサ）「・・・・・・・・・」
わずか一分のことであった。
アルデバランへのお歳暮。焼肉用牛肉お徳用。
カーサ「じゃ、次サガね。」
ぶうんとサガに変化する。
イオ「げ、カノン！」
サガ（カーサ）「違う。私はカノンの兄だ。双子なのだ。」
アイザック「本当そっくりだな〜〜。本当に自分が自分だって感覚あるか？」
サガ（カーサ）「時々疑問に思うが、まあ、別に。」
クリシュナ「で、歳暮だが、カノンの兄なら、好みは判る。」
バイアン「長い付き合いなんだからな。」
イオ「漫画、酒、食い物三点セットで十分だ。」
サガ（カーサ）「お、おい。ちょっと待て。」
アイザック「なんだ？それだけじゃ不服なのか？」
サガ（カーサ）「似てるのは外見だけで中身は全然違う。それは悪に走ったところはそっくりだが、物の好みは反対だ。」
クリシュナ「そうなのか？お前は何が好みなんだ？」
サガ（カーサ）「私は、万年筆など、実用的でありながら気品のある物が好きだ。」
バイアン「そりゃ反対だ。カノンは、今が良ければそれでよし、毎日楽しく生きようって感じで好きなものも快楽的な物ならなんでも好きだったものな。」
一番の年長者の癖に、酷い言われよう。良く言えば童心を忘れない大人。悪く言えば、何時までも子供。
アイザック「そうか、実用的か・・・・・ふむ、俺、一本万年筆持ってるんだ。モンブランのヤツ。」
イオ「へえ、それ良いのか？あげちゃって。」
アイザック「ああ。かつて万引きしたヤツだから。」
それを聞いた海闘士は一瞬引いた。
クリシュナ「万引きって・・・・・？」
アイザック「その昔、家庭は崩壊しててな、そんで、俺もちょっと心がやさぐれてて。で、つい。」
イオ「ついって、犯罪だぞ。」
アイザック「盗んだ時四歳だったし、誰も気づかなかった。」
さーっと顔が青くなった海闘士達。四歳にして既に前科持ち。マスメディアもびっくり仰天ギョギョてんてんである。
サガ（カーサ）「今からでも遅く無い。謝りに行こう。」
アイザック「もう遅い。その店の店主、女作って借金こしらえて、失踪しちまった。」
クリシュナ「真面目に見えたが、お前も人生いろいろなんだな。」
イオ「まさかその目の傷は、族との抗争の時にできたもの・・・・？」
アイザック「いや、これは、男の勲章だ。」
知らなかったアイザックの秘密を知った海闘士達だった。
サガへのお歳暮。モンブランの万年筆。
カーサ「じゃ、デスマスクね。」
ぶうんとデスマスクに変化する。
イオ「いかにも、遊んでそう。」
バイアン「飲む打つ買うを地でいってそうなタイプだな。」
クリシュナ「いやいや。人は見かけによらないだろう。で、デスマスク。あんたの好きな物は？」
デスマスク（カーサ）「色っぽい姉ちゃんかなあ。」
クリシュナ「やっぱり人は見たまんまに見たまんまだな。」
僅かながらに希望を抱いていたクリシュナはがっくりと肩を落とした。
アイザック「色っぽい姉ちゃんってそんなの贈れるかよ。海界に色っぽい女なんていないじゃないか。」
イオ「唯一の女海闘士、テティスも、まだ15歳だしなあ。裸見た事はないが、女はやっぱり20代が華だろう。」
バイアン「いや、女性の華は30代だろう。大人で成熟した魅力があるし、自立してるし、華やかだし。」
アイザック「お前、30代の女性が好みなのか？」
バイアン「悪いかよ。お前はどうなんだ？セーラー服に憧れる方なんじゃないのか？」
アイザック「何だよセーラー服って！俺がロリコンみたいじゃないか！てか、別にセーラー服の子好きだって構わないじゃないか。俺14だぜ。クラスメートが同い年のクラスメートに淡い恋心？な感じだろう！お前こそ10以上も年上好きでどうすんだよ！シスコンじゃないのか!?」
バイアン「私はただ、自立して思考もしっかりして、自分を持ってる人が好きなだけだ。え〜、マジ？料理なんてできないしぃとか言う10代のバカ女共は本気で好きになれないだけだ！」
イオ「ま、まあまあ。別に良いだろう。歳なんて幾つだって。産まれてきたのがちょっと早いか遅いかの違いなんだから。歳が離れてたって近くたって、結ばれればそれが運命なんだよ。」
デスマスク（カーサ）「で、女談義はそこまでにしといて、俺のプレゼントの内容は？」
クリシュナ「地上で有名なクラブの割引チケットってのはどうだ？」
海闘士「え？」
クリシュナ「あるんだ。そこなら、シスコンもロリコンも十分に楽しめると思うが。」
別にクラブの割引チケットを持ってても構わない。ただ、それを持ってるのがクリシュナでなければ。真面目で実直。ホステスって言葉すら知らないようなクリシュナが何故そのようなお水チケットを持ってるのか。
アイザック「もしかして・・・・・・通ってるのか？」
クリシュナ「ああ。悪いか？」
別に悪い事ではない。あんたが持ってる事にカルチャーショックを覚えるだけだ。
イオ「人って・・・・・・・本当見かけによらない。」
バイアン「てか・・・・年齢は良いのか？」
アイザック「ほらそこはさ、顔が老けてるから・・・・・・」
同僚の知らない側面をまた知った海闘士だった。
デスマスクへのお歳暮。有名クラブの割引券。
カーサ「じゃ、アイオリア。」
ぶうんとアイオリアに変化する。
イオ「で、欲しいのは？」
アイオリア（カーサ）「愛。」
海闘士「は？」
アイオリア（カーサ）「愛が欲しい。」
バイアン「お前は虐待された幼児か。」
イオ「二十歳にもなってそんな事。そんなに恵まれない環境だったのか？」
確かに愛と優しさにそっぽむかれた環境ではあった。
アイオリア（カーサ）「魔鈴の愛が欲しい。」
アイザック「何だ、好きな人か。嫌われてるのか？」
アイオリア（カーサ）「そうではない。聖域では一番の仲だ。」
イオ「なら、なんで進展しないんだ？」
アイオリア（カーサ）「一つは、サガの乱で、深くにも操られてたとは言え、魔鈴を裏切り教皇側についてしまったこと。そして、あともう一つは魔鈴はとんでもなく鈍感だって事だな。」
クリシュナ「それは哀れなもんだ。」
アイオリア（カーサ）「良いさ。気長に待つさ。耐える事は慣れてる。」
バイアン「耐えすぎて、爆発しないようにな。」
アイザック「じゃ、しないように、魔鈴の写真でも送るか。ポートレートにでもして。」
クリシュナ「どうやって？」
アイザック「そりゃカーサの能力でさ。できるだろ？」
アイオリア（カーサ）「まあな。」
イオ「じゃ、決定な。」
アイオリアへのお歳暮。魔鈴のポートレート。
カーサ「シャカな。」
ぶうんとシャカに変化する。
イオ「あんたは・・・・・仏教徒だな？」
シャカ（カーサ）「いかにもその通りだ。何故判った。」
クリシュナ「チャクラしてるし、雰囲気が仏教な感じがする。」
シャカ（カーサ）「そうか。判ったなら頭を摩り付けて私を拝め！」
アイザック「そういう性格なのか。相当捻じ曲がった性格だな。」
シャカが本人で無い為さららと六甲の水が如く毒を吐けるが、もし本人だった場合、自己の喪失は間違い無いだろう。
バイアン「で、シャカの好きな物は？」
シャカ（カーサ）「生きとし生けるものは全て平等に愛するべきだと思う。よって皆好きだ。」
アイザック「自分以外の者を土下座させようとした人間がこの言い種。どこか間違ってるぞ。」
シャカ（カーサ）「別に良いでは無いか。矛盾はどこにでも付きものだ。」
クリシュナ「う〜ん、こういうタイプってもしかして、自然が好きなのでは無いか？」
シャカ（カーサ）「お、なかなか鋭いところをつくではないか。私は草花が好きだ。沙羅双樹の園も管理している。血肉に飢えた修羅達は全く気づかないところを私は一人で育てた。天塩にかけて育てたのを、あのバカ共は、何も知らずに破壊しおって・・・・・」
小宇宙が燃えあがって来ている。
アイザック「どうどう。とにかく、自然が好きなわけだ。」
シャカ（カーサ）「そういうことになるだろうな。」
バイアン「じゃあ、造園セットなんか良いだろうな。」
イオ「そうだな。草花の種一杯詰めてさ。」
クリシュナ「どこか地上で購入して来ないとな。」
シャカへのお歳暮。造園セット草花の種。
カーサ「じゃ、童虎ね。」
ぶうんと童虎に変化する。
アイザック「随分爺だな〜〜死にそうじゃん。幾つなんだよ。」
童虎（カーサ）「261じゃ。」
イオ「261歳かよ！どういう生活送ればそうなるんだ？」
クリシュナ「爺になっても引退できんとは哀れな。その名の通り死ぬまで現役か・・・・・プレゼント何が良い？」
童虎（カーサ）「そうじゃのう。別に無いな。」
クリシュナ「ほう、流石。無欲だ。」
バイアン「私的には、墓をプレゼントしたいがな。」
イオ「それじゃ、意地悪嫁のイビリみたいじゃん。誰が生前に墓贈って喜ぶよ。」
アイザック「無欲なのは結構だが、しかし、何か贈らないといけないからな。おい、爺。欲しい物、何か考えてみろ。」
童虎（カーサ）「ふむ・・・・・・・・」
童虎が腕を組んで考え始めた。海闘士は何を欲しいと言い出すのか待つ。
十分たっても、童虎は微動だにしなかった。気楽に待っていた海闘士が心配をし始めた。
イオ「お、おい。さっきから全然動かないぞ。」
アイザック「もしかして、死んでるんじゃなかろうな。」
バイアン「まさか！中身はカーサなんだぞ。」
クリシュナ「いや、あいつは内面までも完全に同化する事が可能だそうだ。なりきるあまり、呼吸を停止させるかもしれんぞ。」
イオ「おい！カーサ!?」
イオが思わず童虎を揺さぶる。
童虎（カーサ）「お・・・・・・・・なんじゃ。」
イオ「おい！生きてるな？死んでないな？」
童虎（カーサ）「当然じゃよ。ちょっと深く考え事をしていただけじゃ。なんじゃ、不安そうな顔をして。」
深い考え事が、永久の眠りになってる可能性も否定できないと強く心で思う海闘士だった。
クリシュナ「で、欲しい物はあったか？」
童虎（カーサ）「そろそろ孫が欲しいなあと思った。」
イオ「は？孫？あんた息子か娘いるのか？聖闘士の癖に？」
童虎（カーサ）「養女じゃがな。まあ、まだ結婚にも早いし、子供なんてまだまだまだ先だとは判っておるが、この老いぼれの命ももう何年もあるまい。一刻でも早く孫を見て、それから死んでいきたいのじゃ。」
アイザック「・・・・・・・・あんたはまだまだまだまだ生きると思う。」
クリシュナ「て、いうか、261生きたなら300もいけるだろって感じだが？」
イオ「つーか、どうすんだ？孫って無茶苦茶な願い事叶えられるわけないじゃん。」
バイアン「じゃ、こういうのはどうだ。孫が見たいってのは長寿を願ってるって事だろ？長寿薬とかそういう詰め合わせ。」
クリシュナ「妥当だな。でもそういうのって高く無いか？」
イオ「海の中で捕れる長寿の生物を捕えればタダだろ。後で雑兵に頼もう。」
童虎へのお歳暮。長寿薬詰め合わせ。
カーサ「ミロに変化するな。」
ぶうんとミロに変化する。
イオ「なんか、軽そう。」
バイアン「すぐ人に騙されそう。」
クリシュナ「良く言えば、人が良いか。」
一見ですぐにミロの性格が判るとは。ミロが単純なんだろうか。
アイザック「ミロは何が欲しい？」
ミロ「えっと・・・・・・まずプレステの新機種だろ？あれ、すっげー高いんだよな！あとはX−BOXも欲しいし、ゲームキューブもコネクターとか今発売されてるだろ？欲しいんだよ。そんでもってゲームソフトも欲しいしさ。知ってるか？テイルズオブシンフォニア！あれさ〜〜俺ファンタジアの頃からずっと持っててさ、ずっとファンなんだよ。だから、今回も絶対欲しいんだよね！漫画も欲しいんだ！サザエさんフルセット！サザエさんって世紀の傑作だよね〜〜他の漫画みたいに血みどろになったり、戦闘したりそんなんじゃなくて、日頃のちょっとした事を楽しく書いてるってところが何とも言えずGOOD！是非全巻読みたくて！食い物も欲しい！美味い肉食いたいし、美味い酒が飲みたい。」
イオ「・・・・・・・・こいつ・・・・幾つ？」
ミロ（カーサ）「二十歳。」
海闘士「二十歳!?」
遠い彼方マゼラン星雲まで届きそうな驚きの声であった。
クリシュナ「こいつ、既に成人？あんなガキっぽいのに？」
イオ「いや、カノンもガキだと思ったが、もっと上がいたか。」
バイアン「ガキ・オブ・ザ・イヤーはこいつに決定だな。」
アイザック「しかしこんなに欲しい物あって、どれに絞れば良いんだ？」
イオ「しかも高価だしな。どうする？」
クリシュナ「・・・・・・・・ふむ、ミロ、ケーキは好きか？」
ミロ（カーサ）「おう！大好きだぜ！」
クリシュナ「皆、料理くらいは出来るな？」
アイザック「まあな。簡単な物なら。」
クリシュナ「こいつには、超特大のケーキが良いと思う。ぱっと見豪華な感じがするし、ガキはケーキが好きなものだ。」
イオ「なるほど！でも、結構値段しないか？」
クリシュナ「手作りすれば良いだろう。幾らでもコスト落として。バターの代わりにマーガリン。生クリームの代わりに卵白。卵は最低限。」
アイザック「不味そうだな。ヘビーローコストケーキじゃん。」
クリシュナ「アラザン、チョコスプレー、ミモザを多めに乗せておけば誤魔化せる。見た目一発で結構騙されるものだ。」
バイアン「そういうものかね。ま、別に反論する内容もないし、それでいっか。」
皆・・・・・・ミロよりも年下・・・・・なんだけどね。
ミロへのお歳暮。特大ケーキ。
カーサ「シュラだな、次は。」
ぶうんとシュラに変化する。最初にシュラを見た感想は
海闘士「コワ!!」
であった。
シュラ（カーサ）「そういうな。慣れてはいるが、結構傷つく。」
イオ「いや、百戦錬磨の戦士っつーか、組の幹部っていう感じがビンビンに感じたもんで。」
バイアン「良く言えば大人っぽいって感じだよな。」
アイザック「欲しい物はあるか？」
シュラ（カーサ）「別に特にない。」
クリシュナ「無いっていうのも困るがな。何か困ってる事とか無いか？」
シュラ（カーサ）「ふむ・・・・・」
シュラが海底を仰いで考え始めた。一分後、海闘士達への言葉は大変謙虚であった。
シュラ（カーサ）「ライターが無くなったから新しいのが欲しい。」
アイザック「へえ、ライター。純金とかの？」
シュラ（カーサ）「いや、百円で買える安いやつ。」
イオ「そんなんで良いのか？」
シュラ（カーサ）「ああ。俺は別に不相応な物を欲しいとは思わない。ライターだって、高価な物を使う必要もないだろう。だから百円ので十分。」
男気溢れる台詞である。先ほどのことも合間ってか、海闘士は感涙したのだった。
イオ「凄いカッコ良いぜあんた！惚れたぜ！」
バイアン「初めて本気で物を送りたくなった！」
アイザック「あんたみたいな男が百円ライターなんて寂しいぜ！高価なライターを贈らせてもらう！」
クリシュナ「ちゃんと使い古しでなく、高価な新品をな！」
今まで、できるだけ金をかけないように努めてきた海闘士が、初めて採算度外視で物を贈りたいと思った瞬間だった。
シュラへのお歳暮。高級ライター。
カーサ「じゃ、次カミュね。」
アイザック「ちょっと待て。」
カーサ「何だ？」
アイザックに止められ、カーサは変化を止めた。
アイザック「カミュはやらなくても分かる。」
イオ「あ、そーか。カミュはお前の師匠だったんだもんな。」
アイザック「ああ。氷河よりも長い付き合いでもあるんだ。我が師の事くらい分かるさ。」
バイアン「ほう、大した自信だな。じゃ、カミュの好きな物は？」
アイザック「フラッペ。」
海闘士「はい？」
アイザック「カミュは、フラッペが好きなんだよ。そりゃ一年中。くそ暑い夏のみならず、凍えるほど寒い冬でさえフラッペを食べるんだ。勿論暖炉をガンガンに利かせて食うんだけどな。」
イオ「へえ、じゃあ、プレゼントはシロップだな。」
アイザック「そうだな、カミュも喜ぶだろう。」
バイアン「じゃあ、何にする？」
アイザック「そうだな・・・・・・マヨネーズ。」
海闘士「はい？」
あまりに予想しなかった言葉に耳を疑った。
バイアン「サラダのつけ合わせじゃないぞ？」
アイザック「分かってる。マヨネーズ、ウスターソース、ケチャップ、ソイソースが良いかな。」
イオ「どこがどう分かってるんだ？フラッペといったら、イチゴ、レモン、ブルーハワイが定番ではないのか？」
アイザック「そりゃ世間ではそうかもしれんが、カミュの好きなシロップといえばその四つなのだ。」
クリシュナ「美味いのか？」
アイザック「美味いぞ。いや、冗談で無く。マヨネーズをちょっと水に溶かしてだな、そして、氷の上にかけるんだ。スプーンでちょっとこねくりまわして掬って食べると、最初に甘い味。そして、シャクシャクと食べると酢のすっぱい味がして何とも言えん。」
カーサ「不味そう。甘いってなんで甘いんだよ。マヨネーズは甘く無いだろ。」
アイザック「不思議な事に、氷の上に乗せて食べると、何故か、甘味を感じるのだ。ほら、マヨネーズの原料は酢と卵と油。なんか甘味ある成分の感じするだろ？」
クリシュナ「せんわ！」
アイザック「本当に美味いんだよ、マヨネーズシロップは！一度タメしてみろよ！絶対人生観変わるから！」
海闘士「絶対やらん！」
カミュのプレゼント論議から、マヨネーズシロップ論争へと切り替わってしまったが、とりあえず、アイザックの強い希望で、その案が通った。
カミュへのお歳暮。シロップ四点。
カーサ「・・・・・じゃ、最後アフロディーテ。」
ぶうんとアフロディーテに変化する。
イオ「うわあ！美人！」
バイアン「ホステスにいそ〜〜」
クリシュナ「うむ。どのホステスもこいつには敵わないな。」
アイザック「・・・・・力強く納得しないでくれ。」
クラブ通いが発覚したクリシュナがそう言うと、まさにその通りのような気がして寒気がしたアイザックだった。
イオ「でも、こいつ男なんだろ？」
バイアン「欲しい物はなんだ？」
アフロディーテ（カーサ）「美。」
こいつが言うと、もっともらしく思うのだった。
アイザック「名は体を表すって本当だな。」
イオ「本当だよな。もしもこいつの名前がブスって名前だったら、一体どうなってたんだか。」
バイアン「美を欲しいって事は、なんだろうな。何が美に通じるんだ？」
アイザック「さあな〜〜俺はそういう事に興味が無いから。」
イオ「薔薇の香水なんてどうだ？」
アフロディーテ（カーサ）「お！それ良い！凄い気に入る！私好みだ！」
イオ「やっぱりな。美といったら薔薇。薔薇がきっと好きだろうと思って。」
アイザック「良いけど、誰が買うんだ？俺、ブランドとか詳しく無いぞ。」
バイアン「私もだ。」
イオ「私が良く知ってるから買ってくるよ。」
海闘士「何故!?」
声が見事にハモった。素晴らしきカルテット。
イオ「いや、私には、姉が三人、妹が二人いてな。女だらけの環境だったし、姉にいろいろ細細とした物を頼まれて、香水やら化粧品やらを良く買いに出かけたのだ。おかげさま、大部分メーカーは分かる。」
バイアン「六人姉妹なのか〜〜そりゃ凄いな。」
イオ「小さい頃は、お飯事に付き合わされたし、洋服は姉達のお下がり。近所から評判の娘さん達ねえと、男しての俺はある意味抹消されていた。」
クリシュナ「哀れだな〜〜〜」
イオ「今も、時たま電話が入る。」
アイザック「良い姉ちゃん達じゃん。」
イオ「・・・・・・・・電話の内容が、『早く帰ってきてよ。姉ちゃん達、イオがいないと不味い飯しか食べられないんだから〜洗濯物もあんたがいないとすぐ溜まるのよ〜〜』でもか？」
海闘士「う・・・・・・・」
イオ「私は・・・・・・家政夫くらいの存在・・・なのだよ。あの家の中では。」
そんな事ないよと言ってあげたいが、他の者は全員一人っ子。兄弟の実態がどうなのかイオだけでの例では分からない為、何の慰めもできないのであった。
アフロディーテへのお歳暮。薔薇の香水。
イオ「さて！全部終ったな！」
カーサ「疲れた〜〜！」
アイザック「お疲れ様。さて、荷物を歳暮として聖域に送りつけたら完璧だな。そういう面倒な事は雑兵に任せよう。それにしても・・・・・・」
イオ「それにしても？」
アイザック「俺、こんなことをして皆の過去や秘密を知る事ができたなんて何か複雑な気分だよ。」
カーサ「確かに。私生活の事、全然知らないもんな。」
バイアン「でも、何か今日の事でお互い良く知ったような気がする。絆もより深まったって感じ。」
クリシュナ「そうだな。人を知って初めて見えてくる面もある。」
イオ「そういえば、カーサの今を知らないな。何か無いか？秘密。別に話したくないなら別に良いけど。」
カーサ「俺の秘密ねえ・・・・」
腕を組んで考えるカーサ。他の海闘士は、どこか、胸にワクワクした気持ちを抱える。
アイザック「もう滅多な事じゃ驚かないぜ。」
イオ「沢山意外な事聞いたからな！お前がもてた〜とかそういうのはぜ〜んぜん驚かないぜ！」
クリシュナ「このカオ整形だ〜ってのもナシだぞ。」
バイアン「ロリコンだ〜〜ってのはコワイから止めてくれよ。」
どこか大変失礼な台詞をバンバン言ってるような気がする。いや、間違い無く言ってる。考え出して30秒後、カーサはふと思い出した様に言った。
カーサ「俺、結婚してるっていうのは知ってる？」
海闘士「うっそう!?」
その事は、何よりもどれよりも驚愕した事実だった。
あとがき
50000番はSNOW様が踏んでくださいました！題は、カーサ＆黄金聖闘士で実は、何を大切に思っているのか？ギャグ。ヒルダ＆ジークフリート＆アルベリッヒの三角関係でもギャグ。の二つでした。どちらか書き易い方とおっしゃったので、アスガルドはクリスマスに一本アップなので、今回は前者を取らせて頂きました。いかがでしたでしょう。私の海闘士がこんなになってしまった！世界平和活動シリーズと彼らは別人でございます。忘れてくれ〜〜〜！ギャグを追究した結果、こんなに海闘士が崩れてしまいました〜〜書いててとても面白かったですけど。カミュのあれ、マヨネーズは実話ですよ。美味しいのですよ。私は好きで父と食べました。美味しいのです、本当に。騙されたと思って食べてみてください。本当に甘いのです。甘いけど、微かに酸っぱいのです。驚きです！
BY MUTUMI