原始人は発狂する
キャンプのモニター！？
沙織「そうです。」
星矢「モニターってどういうことだよ沙織さん。」
沙織「深窓のお嬢様の中にはキャンプをしたことがない人がいるのです。一人娘の方も多いですから、危険だからという理由で親御さんが許可しない場合もありますし。なので、グラード財団が安全なキャンプ場をと思い作ったのです。それを、原始人代表のあなたたちに体験してもらい評価を頂こうかと。」
瞬「それは構わないけど、原始人代表って酷すぎやしませんか？」
沙織「じゃあ、ネアンデルタール人代表ってことで。」
瞬「現代人はネアンデルタール人と血のつながりないんですけど。」
沙織「ネアンデルタールだろうが、クロマニョンだろうが、アウストラロピテクスだろうが、人間には違いないんですからいいんですよ！さ、行きなさい！無知無学のターザンたちよ！」
お嬢さんは俺達のことを一体なんだと・・・・？
しかし口答えする間もなく、彼らはキャンプ場へ連れて行かれたのだった。
沙織「それじゃ、よろしくお願いしますね。」
星矢「・・・・。」
沙織「返事ははいと元気よく！」
星矢「返事はうんと元気なく。」
沙織「星矢！！！」
星矢「はいはいはい！元気にキャンプしますよ！」
その言葉を聞くと満足そうに沙織は微笑みキャンプ場を後にした。
紫龍「なんか幸先悪いスタートだったな。」
氷河「ああ。運ばれてきた車がまさか護送車とは。」
一輝「霊柩車じゃないだけマシだと思えばいいだろう。車はあれだがここは悪くない。」
瞬「涼しいですよね。汗もでませんよ。」
紫龍「太陽はガンガンに照ってるのに変だな。」
ゴォーーーーーーーー
氷河「何の音だ？」
星矢「上だ上！」
びしっと星矢が指を指す。太陽の光で邪魔されて直視できないが、空の青の中にぽっかりと浮かぶ黒と白のボーダーライン。あれは・・・
クーラー
星矢「クーラーが入ってるのか！どおりで涼しいと思った！」
瞬「って納得！？」
氷河「自然真っ直中でなんでクーラーなんてものが存在するんだ？」
紫龍「よく見るとここを基点に円形の透明なボードが覆っているようだが。」
一輝「もしかして、全天候型キャンプ場・・・・」
瞬「そんな馬鹿な！」
星矢「そうだぜ！全天候型じゃあれ一台じゃこのキャンプ場冷えないって！」
氷河「お前の視点は話が無茶苦茶になるからひっこんでろ。全天候型なんて今まで聞いたことがない。ゴルフ場だってまだなんだぞ。」
一輝「世間知らずのお嬢さん用キャンプ場だからな。グラード財団ほどの財力があれば可能かもしれん。」
瞬「なんかスケールのでかい箱庭って感じ。」
星矢「まあ、クーラーで涼しいのはいいことじゃん。テント張って飯作ろうぜ。」
さすがは野育ちの聖闘士達。テントを張るのは朝飯前。食事は修行時代の土地柄で得た経験を元に山の幸班と川の幸班に分かれた。
山の幸班
瞬「僕の場合、山の幸というか、砂漠の幸って感じだけどね。というか、幸というのもおこがましい。」
紫龍「アンドロメダ島は砂漠の島だからな。川班に行った方がよかったんじゃないか？」
瞬「土の中から蛇をひっぱりだす芸当は僕くらいしかできないでしょ。」
一輝「それはお前にしかできないだろうけど、サバイバルじゃないんだからわびしいのはやめよう。そんなことしなくても果実が一杯なっている。よく熟れてうまそうだ。ほら。」
瞬「ありがとう兄さん。うん、おいしい。」
紫龍「でもそれ、バナナだよな。」
瞬「・・・・・確かに。日本でバナナの木って野生でありえないよね。」
一輝「ありえないというなら、農園のごとく綺麗に配置されている果樹が信じられんぞ。マンゴーに、スイカ、パパイヤ・・・・」
紫龍「スイカが木に生ってる時点で沙織さんの策謀っていうのがわかるな。」
瞬「ただの木に瞬間接着剤ではっつけてるよ・・・きっとスイカの木がみつからなかったんだね。」
一輝「みつけられたら学会を震撼させると思うぞ。」
紫龍「果物には苦労しなさそうだ。野菜はどうするかな。」
瞬「紫龍、あそこにセロリとほうれん草が植わってるよ。」
一輝「向こう側は野菜コーナーらしいな。」
紫龍「ここには食べられる野草とかはないのか？」
瞬「ないでしょ。雑草と食べられる野草の区別がつくならこんなことしないよ。整地するために全部引っこ抜いたんじゃないかな。」
紫龍「なあ・・・・・」
一輝「言うな。それは皆とっくに感じていることだ。」
瞬「野菜と果実は手に入ったけど、お肉がないよね。ま、星矢達が魚をとってきてくれるだろうけどお肉もあると華やかになっていいかも。熊とかはいないだろうけど兎くらいいないかな〜。」
ピョンピョン
こそっと可愛らしく耳をもたげながら兎が草陰から飛び出した。それを逃す聖闘士ではない。素手で捕まえると、一度合掌し、手にかけた。
ガキッ
肉体構造ではありえない金属質の音がすると共に、オイルが零れだした。
瞬「これ・・・・まさか・・・・」
紫龍「ロボットだな。」
一輝「お嬢さんは狩りなんてしないからってことか？」
瞬「ということは、山の中に生きている動物はいないってこと？」
紫龍「そういう結論になるな。星矢達は大丈夫だろうか。」
川の班
星矢「おお！冷てえ！」
当初の目的を忘れてはしゃぐ。
星矢「ここの水すごくうまいぞ！さすが大自然ってやつだな！」
氷河「多分ミネラルウォーターだ。全天候型で外界と遮断されてるのにこれだけ天然なんてありえん。」
星矢「わからないじゃんか。」
氷河「川上から水道の蛇口が流れてきた。」
星矢「じゃあやっぱ人口・・・って氷河蛇口って！？」
ゴォーーーーーー
蛇口がなくなり制御されなくなった水が怒涛の勢いでおしよせる。
星矢「うわっ！どうするんだ！？」
ダイヤモンドダストー！！
氷の壁で水をせきとめる。
氷河「ふう、これで大丈夫だ。」
星矢「大丈夫か！？更に状況やばくしたんじゃないか！！これが決壊したらそれこそ鉄砲水が押し寄せるぞ！」
氷河「大丈夫だ。これしきのことでダイヤモンドダストは敗れん。流木でもなんでも来てみろ。」
ドガッシャーーーン！！
流木の代わりに家が突き破ってきた。
星矢「なんで家が流れて来るんだよ！！」
氷河「大方お嬢さんが作った宿泊用のコテージだろう。」
星矢「川の近くに立てないのは常識だろ！！」
氷河「水の側に別荘を建てるのはブルジョワの常識らしいぞ。」
星矢「んな悠長なこと言ってる場合か！逃げるぞ！巻きこまれたらマジ死ぬ！！」
２人は水が押し寄せるより早くその場を去るのであった。
瞬「へえ、それは大変だったね。」
星矢「ごめん、魚とってこれなかった。」
瞬「平気だよ。どうせロボットだろうから。」
紫龍「そろそろいいぞ、ホットパイン。」
星矢「うん、ホットパインはいける。」
紫龍「そのみかん鍋も美味いぞ。」
瞬「それにしてもわびしい食事。」
一輝「果物と野菜だけだからな。あるだけマシと言えるかもしれんが。」
瞬「夜まともに寝られるのかなあ。」
紫龍「予想だと嫌になるくらい虫の音色のテープが流れ出すと思うんだけど。」
星矢「フクロウの声と狼の遠吠えもあるような気がするけど。」
瞬「そこまでベタなこと流石にやらないよ。」
やったよ。
一輝「虫の音がやかましくて寝れやしない！」
瞬「天然ならいくらでも我慢できるのに何でこう人口だとイライラするんだろう。」
星矢「一体どんだけテープばらまいてるんだろう。」
氷河「瞬、ネビュラチェーンでテントの周囲の音を遮断するんだ。ソレントの戦いでやったからにはできるだろう。」
瞬「そうだね。やってみるよ。」
ネビュラチェーン！！
瞬「これで大丈夫・・・・じゃない！！」
紫龍「虫の音が聞こえる！！」
星矢「もしかしてこの音って脳に直接響くのか！？」
一輝「俺達を殺す気か？お嬢は・・・・・」
瞬「・・・・・・」
星矢「おい、おい、瞬、正気か！？」
瞬「もう限界だ！ネビュラストーム！！」
沙織「みなさんおはようございます。」
サワヤカに登場した沙織の前に青銅５人は満身創痍であった。
沙織「どうしました？随分疲れてそうですけど。」
星矢「ま、いろいろあってさ。」
沙織「そうですか。それで、この感想はどうです？」
評価をだそうにも、あまりに非常識すぎて、純粋なサバイバル少年の彼らにはだすことができなかった。唯一言えたのは
これはキャンプ場じゃない。
であった。
あとがき
85000を突破しましたがゲッターさんが現れませんでしたのでしたのでニアミス賞として羽鳥様にリクエストをいただきました！青銅達のキャンプです！珍しく青銅でギャグです。黄金とは違ったボケツッコミで書いてて楽しかったです。羽鳥様にも楽しんでいただけたら幸いです★
BY MUTUMI