人間は食糧？

カノン「老師・・・・・」
老師「何じゃ？」
カノン「これのどこが新居なんだ？」
やっと元に戻った家。しかし。本当に元に戻っている。ボロさが変わっていない。
老師「新建材を一切使わなかったからのう。」

それはそれで贅沢な話だ。

カノン「老師！少しはハイテク化しましょうよ！」
老師「何でじゃ？必要ないじゃろうが。」
カノン「俺も、廬山は遅れてると思ってました。しかし！王家のあの気風の良さ。パソコン、クーラーまできちんとついてるんですよ！」
家では重りは軽かったし、王婦人は優しかったし、電子機器は殆ど揃ってたし、とはいっても、ギリシャでも碌な電子機器なんぞなかったので使えたのは四割程度なのだが、家畜扱いのカノンにとっては五老峰に来て本当に初めての衝撃であった。
老師「それは、王家が金持ちじゃから。」
カノン「家が生活水準が低すぎるんだ！」
確かに、今時飯を竃で炊いてる家はない。商店街の皆様ですら、ちゃんと電気。パソコンなど持ってるのもいる。
老師「文句あるのか？ああ？」
老師の小宇宙が脅しをかけている。
カノン「・・・・・・ありません。」
やっと、枷を外されたのに、お仕置きでまたくらっては元も子もない。
春麗「老師、カノンさん、お食事できましたよ〜」
カノン「おう！」
老師「久し振りじゃの。」
春麗がにこにこと鍋を持ってくる。久し振りに、団欒をした老師宅であった。

カノン「老師！ここに置いていいか！」
老師「ああ。」
新居に住んで二週間ほど経った日、カノンは老師に言われ、最後の秋の収穫物、サツマイモを、聖域に送るため、箱に詰めていたのだった。聖域に金の負担をかけたからだ。
カノン「SAGAへ。食糧。よろしくな。KANONっと。」
箱にきゅっとマジックで書いた。
カノン「泥だらけだな。風呂沸かしてはいろっと。めんどいけど。やっぱしユニットバスにした方がいいって。そしたら自動なのに。王家は良かったな。」
ぶつぶついいながら、風呂を沸かしに風呂場へ向かったカノンであった。カノンが消えて少し経った後、ちっちゃな、黒い影が・・・・・
？？「春麗お姉ちゃん、いる？」
白い猫のぬいぐるみを持った女の子だ。ひょこひょこ歩くたびに、オレンジ色の髪が靡く。
？？「お姉ちゃ〜ん。カノンおじちゃんもいないの？」
うろうろと歩く。
？？「あ、何だろ？これ。」
目に止まったのは箱。
？？「何が入ってるのかな？」
箱を開けると、サツマイモがぎっしり。
？？「わあ、サツマイモだ。」
身の乗り出した瞬間
？？「うわ！」
サツマイモ箱の中に落っこちてしまった少女だった。打ち所が悪かったのか、気絶してしまう。
カノン「ったく、やっと風呂沸いたってのに、タオル忘れたぜ。」
カノンがタオルを取りに戻ってきた。
カノン「？誰か来たのかな。」
気配を感じる。
カノン「おい！誰かいるのか？」
返事はない。
老師「荷物！運ぶなら早くするんじゃ！」
カノン「はあい！」
カノンは風呂に入るのを後回しにして、箱を持ち上げた。
カノン「？さっきよりも重くなったような・・・・・風呂沸かしたから疲れたのかな？」
カノンはそのまま、聖域にサツマイモ箱を送ったのだった。

ところ変わって聖域。
サガ「弟からサツマイモが届いた。サツマイモは料理のしがいがあるからな。楽しみだ。さて、開けてみるかな。」
かぱっと箱を開ける。
サガ「・・・・・・・・・」
出てきたのは、オレンジの髪をした少女。猫の人形を抱いて、すーすー眠っている。
サガ「・・・・・・・・・」
ぱたんと箱を閉めた。そして文字を確認する。
サガ「SAGAへ。食糧。・・・・・・食糧!?」
聖域に一波瀾起こりそうなムードである。


あとがき
やっと新居が完成して、春麗も老師も中国に戻ってきました。春麗元気になったみたいで安心ですね。カノンは生活水準が落ちて哀しんでるみたいですけど。王家は金持ちですからね。それを求めちゃ行けませんよ。もっとも、老師の家が古いだけなんですけど。エコロジーでいいと思えばいいじゃないですか。さて、聖域にサツマイモと一緒に少女が送られました。誤解を誤解しているサガは一体どうなるのか？続きます。お楽しみに。

BY　MUTUMI