メロメロパンチっ！

サガ「ふんふんふん・・・」

鼻歌を歌いながらペンを走らせるサガ。表情はとても柔らかで充実しているのが目に見えてわかる。

アイオロス「良い事でもあったのか？」
サガ「え・・・いや、別に・・・」
アイオロス「最近、すごく機嫌が良さそうだから」
サガ「いや、それは・・・まあ・・・」
麗花「おじちゃ〜〜〜ん！！」

とてとてという音とともに、麗花が駆け寄ってくる。小さな体には教皇の間は広く、執務机までやってくるのにも時間がかかってしまうが、その一生懸命さがいじらしい。

麗花「おじちゃん！麗花、お花摘んできたよ！おじちゃんにあげようと思って。はい！！」
サガ「ありがとう。どんな黄金や財宝より嬉しいぞ」
麗花「えへへへ〜♪麗花、これからアルデバランおじちゃんと一緒に遊びに行くの！」
サガ「気をつけて行ってくるんだぞ」
麗花「うん！！」

朗らかな笑顔をみせて、麗花は踵を返していった。

アイオロス「あれか・・・」
サガ「そうだ。もう、正直に言って、あまりにも可愛すぎる！！カノンのDNAが入ってるなんて信じられないくらいだ」

カノンのDNAは微塵も入っていない。

アイオロス「アイオリアの小さい頃に似ているよ。食べちゃいたいと思うようなくらい可愛かった」


兄の欲目は今も健在だ。


サガ「毎度毎度、お前のリア馬鹿ぶりに頭のネジがいかれた大馬鹿野郎だと思っていたが・・・麗花と接することによって、意見が変わった。はっきり言って、ネジはずれるな！！」

アイオロス「だろ！！超可愛いだろ！！振る舞いから、笑顔、ぷにぷにのほっぺから、アンパンマンを心から愛するところなど、本当、死にそうなほどメロメロになる！！」
サガ「アンパンマンか・・・。麗花がいなければ、触れ合う機会がなかったな」
アイオロス「麗花もアンパンマンが好きなのか？」
サガ「ああ、好きだ。ギリシャにはなかったから、日本から直輸入した。第一声が『このアンパンマン、ちょっと違う〜』だったが、それは多分、『こっちの方が本家だ！』と思う」
アイオロス「ああ〜、なるほどな。中国だもんな」
サガ「ああ。麗花いわく、アンパンマンの眉毛が繋がってて、顔の中身が肉まんだったらしいし」
アイオロス「それ、アンパンマンって定義から外れてるだろ・・・；；」
サガ「ドキンちゃんが青いらしいし！」
アイオロス「それは、コキンちゃんの間違いじゃないかな？」
サガ「とにかくもう、パンツからシャツからアンパンマンが好きでな。アンパンマンでトータルコーディネートの日もある」
アイオロス「すごいな、それ。パリコレか何かか？」
サガ「いっそ、パリコレに出てもいいと思っている。やなせたかし・・・あなどれん」
アイオロス「さすが、幼児界の尾田栄一郎だな・・・」
ムウ「サガ、ちょっといいですか？」

ギィッとドアを開けて、ムウがやってきた。

サガ「ああ、サガ、どうしたんだ」
ムウ「今、麗花がアルデバランと外に遊びに行ったようですが・・・」
サガ「ああ、そのようだな」
ムウ「今日のお勉強がまだ終ってないんですよ！それなのに、遊びに行かせるなんてどういうことですか！」
アイオロス「いいじゃないか。帰ってからすれば」
ムウ「あの子の性格上、帰ってきたら１時間はお昼寝します。それからおやつを食べたら、ダンスのレッスンと英会話ですよ。お風呂にも入らなければいけませんし、睡眠時間を削るわけにはいきません！」
サガ「なら、今日の勉強はなしで明日にすればいいんじゃないか？」
ムウ「馬鹿な！！明日は明日ですることがあるんです！！礼儀作法に華道をしなければいけません！！」
サガ「・・・お前、母親みたいだな」

ムウ「母ではありません。兄です」

アイオロス「・・・お前も、麗花の魅力にやられたな。貴鬼がいるからそうはならないかと思っていたが」
ムウ「あれは男の子ですから。そうそう、女の子にアンパンマンはどうかと思うんです」
サガ「そうか？お前なら何がいいんだ？」

ムウ「サンリオですよ、サンリオ。女の子ならやっぱりサンリオです！」

サガ「サンリオって・・・キティーとかマイメロか？」
ムウ「この時代ならジュエルペットですよ」
アイオロス「戦うペットか？」
ムウ「それは、デュエルペットです。あの可愛さなら芸能界入りも狙えます！ポスト芦田愛菜ちゃんですよ！」
シャカ「待ちたまえ！！」

バンッと扉を開けてカツカツと入室してきたのはバルゴのシャカである。

シャカ「芸能界入りは断固として反対だ！！あんな汚れた世界になど、置くわけにはいかん！！」
ムウ「テレビであの子の可愛さが放映されるんですよ！！」
シャカ「君、金を稼ぎたいからって非道な真似に走るつもりか。子役はたいてい大成しない！！大人の道具にされて、使い捨てられる！！」
ミロ「芸能界を悪く言うな！」

真打登場とでも言うように堂々と教皇の間のカーペットを歩いてきたのはミロだった。

ミロ「芸能界は夢を叶えるのに一番近い場所だぜ！現に、星矢たちなんて、テレビを使って聖闘士をアピールしてたじゃないか」
シャカ「それが何かね。テレビ放映という手段を使っても、星矢の姉はみつからなかったではないか」
ミロ「それは、放映が２〜３回で終わったからだろ。ぶっちゃけ、銀河戦争って決勝までやらないで終了しちゃっただろ。よくファンは許したよな。俺なら許さないな」
ムウ「アスリートというよりはアイドル売りでしたからね、全員。特に瞬は」
ミロ「はは、女の子の歓声がすごかったよな」
ムウ「むぅ・・・アイドルというのも良いかもしれませんね」
ミロ「俺、麗花はAKBでやっていけると思う！」
ムウ「ダメです。あの子は可愛すぎます。AKBのコンセプトは、クラスで１０番くらいの女の子です」
ミロ「ダメなとこがちゃんとあるから大丈夫だ！」
ムウ「どこですか？」

ミロ「カノンがパパなとこ！！」

ムウ「・・・・・そ、それは相当のダメダメ具合ですね・・・。これを覆すダメは他には・・・」
ミロ「だろ！！夢が世界征服だった伯父さんもいるし、なんたって、俺ら聖闘士は世界の常識外れだぜ！！そんな人間に育てられた子の感性が普通のはずがない！！」
サガ「自分で言い切っちゃうところが情けないな・・・。そして、反論できない自分も哀しい・・・」
ミロ「もうトークの挨拶も決めてるんだ。

『あなたの心を世界征服。見た目は聖女、中身は魔王。麗花でっすｖｖ』

でみんなのハートをわしづかみだ」
シャカ「むぅ・・・そのワードは人の煩悩をくすぐりそうだな。呼び名は・・・『レイちゃん』でいいだろうか」
ミロ「センスねえな〜、シャカ。他のヤツラと被りそうじゃん。ここはやっぱり、ファーファだろ」
ムウ「それ、洗剤の名前では？」
ミロ「じゃ、アリエールにする？それともハイター？」
ムウ「そう言う問題では・・・」
ミロ「問題は麗花がちっちゃいことだよな〜。AKB研究生の規定に満たないんだよな。ムウ、成長促進剤って作れないか？」
ムウ「それは流石に無理です」
ミロ「チベットの幻の薬草とかないのか？」
ムウ「秘境なら何でもアリっていう発想はやめてもらえます？摂理に反することはできませんよ」
ミロ「ちっ、そうか・・・。じゃあ、麗花が年頃になるまで待つしかないな」
シャカ「だったら、聖闘士にでもした方がいいだろう。あの子には聖闘士の才能もある！！」
ムウ「何を根拠に言うんですか？」
シャカ「石を壊すとはどういうことだ？と問うたら、『原子を砕く事だ』とすんなり答えた」
ムウ「女聖闘士になったら、仮面をつけなくてはいけないんですよ！まして、顔を見られたら最後、殺すか愛するかですよ！」
シャカ「愛される分には問題ない！！」
ムウ「殺される分には問題大有りですよ！！」
シャカ「殺されてやったらいいだろう！」
ムウ「そんなわけにはいきませんよ！」
シャカ「君の麗花への想いはその程度なのかね。あの子のためなら死ぬくらい言ったらどうだ。私はアテナと共に死んだぞ！」
ムウ「私だって、生きながらコキュートス体験してきましたよ！！」
シャカ「だから、なんだ！」
ムウ「あなたこそ何です！！」

ギャアギャア言い争いをしている二人。どことなく論点がズレてきている気がする。

サガ「もしかして、私がアテナを殺害しようとせず、普通に育っていたら・・・こんな風景が日常茶飯事だったのだろうか」
アイオロス「はは、そうかもしれないな。まぁ、幸せな構図じゃないか」
サガ「・・・そうかもな」

ついには技の応酬まで始めた彼らを尻目に、サガはもらった花束を花瓶に差すのだった。１人の幼女にメロメロな黄金達の明日はどうなる！！



あとがき
五老峰シリーズいかがでしたでしょうか〜？楽しんで頂けましたでしょうか〜？はぅ〜〜一番ドキドキしてるのは私だったりします。こ、これからどうなっちゃうのか・・・。つか、シリアス路線にはならんようにしたいな。ホームシックになったり、中国で大パニックで・・・っていうのは避けたい。アホ道を貫きたいね。
やっぱり１０年は大きいですね。１０年の間に、オリキャラはほとんど姿を消してしまいましたもんね・・・。麗花のイメージはずっと変わりませんが、私自身のチビ姫に対する思いが変わった気がします。自身の経験が黄金へ投影されてますね。本当、子供の心をわしづかみにする、やなせたかし先生はすごいと思いますっ！

BY　　MUTUMI