それだけは御免だっ！


アイオロス「なあ、アイオリア。お前、誕生日プレゼント決めたか？」
アイオリア「誕生日って・・・誰の？」
アイオロス「シュラだよ、シュラ。決まってんだろ」
アイオリア「あ、ああ、もうすぐだったな。大体決めたけど・・・？」
アイオロス「俺、まだ決まってないんだよな・・・何にしよう」
アイオリア「タバコかライターでいいんじゃないか？」
アイオロス「それはデスマスクあたりがプレゼントするだろう・・・つーか、盗み聞きしたし。アフロディーテはワインって言ってたな〜」
アイオリア「自分がもらって嬉しいものをプレゼントしたらどうだ？」
アイオロス「自分がもらって嬉しいものか・・・。ちなみにお前はなんだ？」
アイオリア「内緒だ。兄さんに喋ったら、プレゼントする前にわかっちゃうから」
アイオロス「信用ないんだな〜。まあいい。俺も自分流のプレゼントを渡そう。ありがとな、アイオリア」

にこやかな笑顔で獅子宮を去っていくアイオロス。この後、アイオリアはこの時した助言を激しく後悔することになるのだが、今はまだ知るよしもなかった。


サガ「誕生日おめでとうシュラ！」
シュラ「ありがとう」
誕生日パーティは教皇の間で行われた。
シュラ「俺のためにパーティを開いてくれてありがとう」
ムウ「いえいえ、礼には及びません。新年会みたいなものですから」
サガ「ムウ、この御節はなんだ？」
ムウ「ああ、家から出た余りものです。せっかくですから今日消化しようと思いまして」
ミロ「やった！栗金団も〜らい！！」

かぱっ。

ミロ「・・・・・・・」
カミュ「どうした、食べないのか？」
ミロ「栗金団がない・・・・」
カミュ「え？」
ミロ「ていうか、黒豆は！？カマボコは！？数の子は！？俺が大好きなの一個もないんだけど！！」
ムウ「それは我が家で美味しく頂きましたよ」
ミロ「全然御節じゃないじゃないか！」
ムウ「余りものって言ったじゃないですか。嘘は言っていませんよ。あけたからには責任とってくださいね」


にっこり♪


ミロ「カミュ〜〜〜」
カミュ「分かった。手伝う」

新年早々悪徳商法に引っかかったような気がする二人であった。


ムウ「というわけで、私からあなたに誕生日プレゼントです」
シュラ「・・・・余りものか？」
ムウ「そんなわけないでしょうっ！友人の誕生日に余りものだなんて失礼すぎやしませんか？」
シュラ「そうだよな。俺が悪かった」

ムウが渡したのは、割と大きめな箱。両手で持って丁度くらいか。

シュラ「あ、ハムだ・・・・！」
ムウ「気に入っていただけるといいんですけど」
シュラ「いや、嬉しいよ。夜のつまみにさせてもらう」
ムウ「それは良かった」

サガ「・・・・・・・・・・・」
アフロディーテ「どうかした？サガ」
サガ「いや、あのハム・・・・」
アフロディーテ「ハムがどうかした？」
サガ「あれとまったく同じの・・・見た事がある気がするんだ」
アフロディーテ「そりゃ店で売ってるんだから、同じものくらいどこにでもあるでしょ」
サガ「いや、つい最近ココで見た気がするんだが・・・・・」


あっ！！！


アフロディーテ「ど、どうしたの！？急に大声なんか出して」
サガ「い、いや・・・・何でもない」


サガは気付いてしまった。あれは、年末に届いたお歳暮だと言うことに。
確かに余りものではない。ないが・・・・

アフロディーテ「大丈夫？顔色悪いよ」
サガ「いや、いいんだ。ところでハムの賞味期限ってどのくらいだ？」
アフロディーテ「は？」

いつどうやってくすねたのか、いろいろ聞きたいことは山ほどあったが、シュラのことを思いやり、暗闇に葬るサガであった。


デスマスク「よっ、また一つオジサンになったな！おめでとう！」
シュラ「貴様も同い年だろうが。しかも俺より数ヶ月オジサンだろう？」
デスマスク「俺は毎日、改造されてるからピチピチのガラスの十代だぜ」

シュラ「どう軽く見積もってもお前はプラスチック製だ」

デスマスク「中にはヘリウムが入ってます〜ってか。まあいい、今年もよろしくってことで、プレゼントだ」
シュラ「あ、タバコとライターのセットだ」
デスマスク「お前御用達の店の限定品だぜ。手に入れるのすっげ〜苦労したんだからな」
シュラ「ああ、そうだろうな。ありがとう、大切に使わせてもらうよ」
デスマスク「使いにくかったら言ってくれ。いつでも俺のと交換するから」
シュラ「心配するな、思い切り使ってやるから」
デスマスク「わぉ！サンキュ！」
アフロディーテ「私からはワインだ。赤と白とロゼを１本ずつ」
シュラ「美味しそうだな」
アフロディーテ「なんたって、去年ワインコンテストのグランプリに輝いた奴だからね」
シュラ「あ、さっきのハムが合いそうだ」
アフロディーテ「でしょでしょっ。お相伴だったら喜んでさせてもらうから誘ってくれ！」
デスマスク「ずりぃ！アフロディーテを招待するんだったら俺も！！でないと、宮をこんがりウェルダンにする！」


アルデバラン「もしかして・・・ハムもワインもシュラの口には一口も入らないんじゃないか？」
アイオリア「その可能性がでてきたな」


アルデバラン「俺からは、スケジュール帳だ」
シュラ「ありがとう。もうすぐ今使ってるのが切れるから新しいのが欲しかったんだ」
サガ「あ・・・・・・・」
シュラ「どうした？」
サガ「私もスケジュール帳なんだ。すまない、ダブってしまったな」
シュラ「いや、気にするな。今年はプライベートと仕事と２つに分けてみたいと思ってたから。それにしてもアルデバランのは可愛いな。牛模様か」
アルデバラン「丑年なだけに今年は牛模様だらけでな。山羊模様がよかったんだが、生憎なくて」

ムウ「山羊に模様なんてそもそもないじゃないですか」

シュラ「サガはサガで重厚そうだな」
サガ「本皮製で鍵付き。秘密もがっちりガードだ」
デスマスク「鍵をなくしたら、エクスカリバーで一刀両断ってか！」
カノン「ははっ！紙までバラバラで強制シュレッダーなんてなっ！俺は兄貴とは違うぜ！ほら！」
シュラ「これは・・・・？」

カノン「宝の地図」

シュラ「・・・・・・は？」
カノン「ほら、海の底には、金塊を積んだ船が眠ってるって言うだろ。海底神殿を大掃除した時発見して！もし金塊がみつかったら、億万長者だ！ぜひ頑張ってくれ！」

サガ「馬鹿か！お前は！お前と私が同じＤＮＡだなんて考えられんわ！」

カノン「何が馬鹿だ！お前なんて楽しくも何ともない実用性しかないプレゼントじゃないか！俺なんて、ロマンと夢のプレゼントだぞ！」


サガ「それを別名、どうすることもできないゴミ！というんだ。プレゼントしたいなら、その地図で宝をみつけてからプレゼントしろ！」
カノン「嫌だ！それじゃみつからなかった時大損するじゃん！！」




サガ「そんなものを人に押し付けるなーーー！」




もれなくアナザーディメンションでスニオン岬に吹っ飛ばされるカノンであった。

ミロ「俺はカミュと合同で服！黒いスーツにしてみた！」
シュラ「ありがとう、１本欲しいと思っていたからうれしい」
カミュ「後は・・・・これは私が選んだんだが・・・」
シュラ「ありがとう・・・・これは・・・

レッグウォーマー？

カミュ「ほら、シベリアでは足が冷えるのを防ぐ為に使うから」
シュラ「そうか、なかなか良い色合いだ。どの服に合わせるかな」
ミロ「大丈夫！そのスーツに合わせられるから！」
シュラ「は・・・・・・・？」
カミュ「・・・・・・・・・・・え？」
シュラ「スーツの丈じゃあ、レッグウォーマーは履きにくいと思うんだが」
ミロ「そっ！だから、合わせられるように、パンツを切っといた！」
カミュ「何ぃ！！」

シュラから奪い取るようにスーツを手に取ると、パンツを広げた。

カミュ「なっ・・・・・・！！」

そのパンツの膝から下は、ザックリとなかった。ハサミで切ったのだろう、意糸がほつれているところが何とも哀しい。

カミュ「ミ〜ロ〜！！」

ミロ「ちょ、何で両腕を上にかざすんだ！！？」
カミュ「それは、あの世で聞け！オーロラエクスキューション！！」

シャカ「まるで私のようなことを言うんだな。おとなしいのを怒らせると恐いとはこのことか」

南無阿弥陀仏とわざとらしく手を合わせるシャカ。その目の前には、ピキーンと凍りついた蠍座のオブジェがあるのだった。

シャカ「まったく、誕生日だというのに、この連中ときたら騒々しいことこの上ない。こいつらと付き合うと真っ当な人生を送れんぞ」
ムウ「あなたも騒々しい人の一員なことをお忘れなく。あなたは何を持ってきたんですか？どうせ、数珠や戒名や骨壷でしょう？」
シャカ「失敬な。そんな普通のものを送るはずがないだろう」
ムウ「どちらも普通じゃありませんけどね」

シャカ「ティッシュペーパー一年分だ。腹が減ったら食うがいいだろう」

シュラ「・・・・・・山羊なだけにか？」

嫌がらせにも見えるが、よく考えると放置しても腐らない且つ消耗品である。



少なくとも宝の地図や強制ハーフパンツよりは良い。



アイオロス「最後は俺達だなっ！」

アテナもビックリなプレゼントラインナップも、とうとうオシマイである。
ホッとするような寂しいような。

アイオリア「兄さん、先渡せよ」
アイオロス「いやいや、俺のは特別だから」
アイオリア「そうか。俺からは万年筆だ。男なら万年筆の一つも持つべきだろう」
シュラ「へぇ、使い心地が良さそうだな」
アイオリア「丈夫さには自信がある。十万回試し書きをしたが、ビクともしない」
シュラ「・・・・・十万一回目に壊れないといいけどな」
アイオリア「大丈夫だ！俺のライトニングボルトにも耐えたソルジャーだぞ！」

光速拳に耐える万年筆・・・

一体何でできているのだろう。

湧き上がる疑問である。


アイオロス「ようっし！最後は俺だな」
サガ「あれ、アイオロス、プレゼントはどうした？」
アイオロス「ふ、俺のは金でなんか買えないさ」
サガ「へえ、それはすごいな。一体なんなんだ？」





『高い高い』だ！！





シュラ「・・・・・・・・え？」
今までの非常識プレゼントがぶっ飛ぶくらいの衝撃だった。
アイオロス「いや〜、俺、よ〜く考えるとシュラを高い高いした覚えないんだよね〜。いっつも逃げられてばっかでさ〜！」
サガ「この大馬鹿が！！どこの世界に高い高いされて喜ぶ二十三歳がいる！！」

アイオロス「俺」

サガ「馬鹿！お前は二十八だろうが！」

デスマスク「突っ込むところソコじゃないと思うんですけど」
アイオロス「二十三歳だって心配ない。俺の腕力なら成層圏まで飛ばせる」
サガ「シュラを殺す気か――――――！」
アイオロス「さあ、シュラ！思う存分高い高いさせてくれ！」
サガ「お前やっぱり、自分がしたいだけじゃないか！」

ん・・・？

さっきまでいたはずのシュラがいない。

アイオロス「アレ・・・・・？」
ムウ「シュラならとっくに逃げましたよ」
アイオロス「何！俺のプレゼントを受け取らないで逃げるなんて！よし！魂の果てまでも追いかけてやる！」

そう言い放ったかと思うと、光速で走り出したアイオロス。残されたのは、シュラへのプレゼントと、パーティの客のみ。


デスマスク「どうすんよ、サガ」
サガ「知らん・・・・・・とりあえず、ハムとワインを冷蔵庫にいれておく」


シュラとアイオロスがいつ帰って来るかは、ここにいる誰にも分からない。
お屠蘇気分も吹っ飛んだ、１月１２日の出来事であった。




あとがき
シュラ誕生日おめでと〜〜！！！今年は単独バースデーですよ！！去年はカミュと合同だった。
ギャグとしか言えないくらいにギャグってます。実は、この間のロス誕をベースにしてたりします。
え、どこが・・・って？ラストシーンの頭なでなでシーンからですよ（笑）ロスはサガ以外（老師・シオン除く）を可愛い弟みたいなもんと思ってますので。二十三歳になってもそれは同じっ！
ロスが最大ですが、他の黄金もプレゼントがぶっ飛んでます。シャカが霞むくらいです。書いててとっても楽しかった〜〜！！

ＢＹ　　ＭＵＴＵＭＩ