チュッ！！

チュッ！　～お子様限定のアイ～

貴鬼「ムウ様～、この包みはなんですか～？」

ん？と貴鬼が首をかしげる。乾燥した地肌が覗き、野生の植物が点在するジャミールにはふつりあいなピンクの包装紙でラッピングされた箱。

貴鬼「おいらの誕生日プレゼントですか？」
ムウ「お前の誕生日はとっくに終わりましたよ」
貴鬼「ですよね、終わった事に気がついたのも４月に入ってからでしたし」

真っ赤なリボンが縦横に走り、右上でちょこんと可愛らしく結ばれている。リボンの端がクルンとループしているところが何とも言えずメルヘンチックだ。

貴鬼「これ、誰にあげるんですか？」
ムウ「春麗ですよ。今日は春麗の誕生日ですからね」
貴鬼「おいらの誕生日は忘れて、春麗の誕生日は覚えてるんですか？」

ムウ「誕生日が忘れ去られてたのは、私も同じですよ。師匠とおそろいで何よりじゃないですか」

貴鬼「そんな、おそろいイヤかも・・・」
ムウ「じゃあ、春麗とおそろいにしますか？同じのでよければプレゼントしますよ」
貴鬼「えっ、本当！？ムウ様、春麗に何を贈るの！？」
ムウ「マキシ丈ワンピースです」
貴鬼「・・・それ、おいらにはムリじゃないですか？」
ムウ「ムリじゃありませんよ。体格が違うので貴鬼には大きすぎるかもしれませんが」
貴鬼「いや、そういうムリじゃなくて。女の子用のスカートなんて、おいら着れません」
ムウ「昨今ではスカート男子って言葉もありますし、トレンドですよ。可愛くて、キスしたくなっちゃうかもしれません。春麗にはさすがにもうできませんからね」
貴鬼「おいら、目指すのは可愛いじゃなくて・・・って・・・え！？」
ムウ「なんですか？」
貴鬼「今・・・春麗にはさすがにもうできませんって聞こえたんですけど・・・」
ムウ「そうですよ？それが何か？」
貴鬼「それが何かって、昔、春麗にキスしてたみたいじゃないですか！！」
ムウ「してましたよ、春麗にキス」
貴鬼「何しれっと言ってるんですか！！紫龍が聞いたら怒りますよ！！」
ムウ「別にやましいことでは・・・。春麗が２～３歳の頃ですし、いつもほっぺたですから。確かに回数では今の紫龍より上かもしれませんが」
貴鬼「ちょ、ちょっとお！！シャレになりませんよう！！」
ムウ「２歳頃の可愛さは、本当言葉では言い表せないんですよ。自我が芽生えてきて、他者にも興味が出てくる頃です。言葉や歌も上手になってきますし、懐かれるとたまらなく嬉しいんです。また、肌の張りや艶といったら最高ですからね。無邪気な反応を見るのが楽しくて、あの頃は会うたびにキスしてました」
貴鬼「・・・・・それ、世間ではロリコンって言うんじゃ・・・」
ムウ「ロリコンは違いますよ。私のはスキンシップでそれ以上の感情はありませんから」
貴鬼「そういうものでしょうか・・・なんかデスマスクみたい・・・」
ムウ「大きくなったらやめてるんですから、デスマスクとは違いますよ。やめるのは大変でしたけどね。しちゃいけないと思うとしたくなって」
貴鬼「・・・お願いなので、警察にお世話になるような真似だけはしないでくださいね」
ムウ「ジャミールに警察が機能してるかどうか疑問ですが・・・」
貴鬼「そうじゃなくってぇ！！」
ムウ「大丈夫ですよ。私だって最低限の思慮は持ち合わせています。春麗にはキスはしたいとは思いません。紫龍もいますしね。きちんと大人として接しています」
貴鬼「・・・本当ですか・・・？」
ムウ「本当ですよ。私が春麗を想うのは、親愛の情であって、それ以上のものなど１００％ありません」
貴鬼「・・・・・むぅ・・・」
ムウ「お前も大人になれば分かりますよ。欲とか見返りのない愛情がね」

そう語りかけるムウの瞳は、全てを包みこむ穏やかさと温かみがあった。
今の貴鬼には、この瞳をすることはできない。

貴鬼「わかりました。ムウ様の言葉を信じます」
ムウ「それはよかった。一息ついたら、五老峰に向かいましょうか。誕生日プレゼントを届けに行きましょう」
貴鬼「あ、だったら、ちょっとだけ待ってもらっていいですか？」
ムウ「いいですよ。なんですか？」
貴鬼「おいらも春麗の誕生日プレゼントを探してきます」
ムウ「それはいいですね。きっと喜びますよ」

ぴょーんと跳ねるように、外へとでかけていく。
探してきたのは、可愛いウサギの形をした石英だった。

「ありがとう、貴鬼・・・！」

春麗がパァッと瞳を輝かせて、貴鬼の頬にチュッとキスするのは、もう少し後の話である。

あとがき
春麗がほとんどでてこないけど、春麗誕ですっ！！
ムウ様は誓って変態ではありませんぞ～～。ムウ様の感情はそっくりそのまま私と同じ（笑）
いや～、一時期キス魔になりかけました（笑）
イタリアとかフランスは日常的にしてるんだもんなぁ。イタリア洋画を見たことあるんですが、ケンカをしたカップルが別れ際に「じゃ！」ってキスしてった時には、「お前ら、ケンカ中だろ！」ってツッコミをいれました（笑）アモーレ精神がすごぉいｖｖ
楽しんでもらえれば幸せです★
春麗、ハッピーバースデー！！

ＢＹ　　ＭＵＴＵＭＩ

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