思いたったが吉日！
シオン「う〜〜〜む」
サガ「教皇、いかがされたのですか？」
シオン「いや、少し悩み事があってな」
アイオロス「よろしければ、私達にお聞かせください。頭脳関係ならサガに、肉体関係なら私が専門です」
サガ「バカ！！！何、さらっと言ってるんだ！！」
アイオロス「え、何が」
サガ「いつからそんな破廉恥になったんだ！デスマスクの悪影響を受けたな！？」
アイオロス「はっ！？どういうことだ！？」
サガ「アイオロスに限ってはそんなことはないと思っていたのに！今までどんな奴と肉体関係を持ったんだ！」
アイオロス「え・・・・・まあ、そうだな、アイオリアとか・・・・」
サガ「じっ、実の弟とか！？私で言うなら、カノンとか！？あのろくでなしと兄弟であるだけでも苦痛なのに、それ以上の関係を持つなんて考えられん！アイオロス！今日でお前の友達をやめさせてもらう！」
アイオロス「お、おい！なんで友達をやめるんだ！」
サガ「肉体関係を高らかに自慢する奴など人間の風上にも置けんわ！」
アイオロス「しちゃいけないか？サガだってよく訓練生とかに言うだろ。頭はいまいちだが、体を鍛えてもらうなら適任だって」
サガ「・・・・・・・・ん？どういうことだ？」
アイオロス「いや、だから、勉強を教えるのは不得手だけど、身体を鍛えさせたり、修行させたりするのは得意だからってこと」
サガ「肉体関係ってそういう意味・・・か？」
アイオロス「それ以外に何がある？」
はぁ〜〜〜〜！！
あっけらかんとしたアイオロスに、サガとシオンは盛大なため息をついた。
シオン「サガよ、そろそろわしの悩みに言ってもいいか」
サガ「ええ。今、この瞬間私にも悩みが生まれましたけどね」
アイオロス「サガ！どうした！悩みなら俺に話してくれ！」
サガ「いや、もっと混乱しそうだからいい」
アイオロス「俺は消費税計算くらいだったらできる！そこまでバカじゃない！サガ！俺に聞かせてくれ！」
ギャラクシアンアエクスプロージョン！！！
サガ「今、バカを眠らせました。どうぞ、お話を」
シオン「大丈夫か？魂魄が飛んでいるように見えるが・・・」
サガ「アイオロスのバカは筋金入りです。１時間もすれば、死んだことも忘れて舞い戻ってきますから。その間にさあどうぞ」
シオン「そうか・・・・実はムウのことなのだ」
サガ「ムウが何か？」
シオン「もうすぐ誕生日でな、何かやってやろうかと思ってな」
サガ「いいじゃないですか。何を悩んでいるのですか？」
シオン「世間一般の誕生日の過ごし方がわからんのだ。何せ、わしはとっくに２００歳を越えておる。ズレっぷりが半端じゃない。二十四の瞳は、『主人公の名前が瞳で、２４歳』なんだと思っていた」
サガ「それは年齢のズレとは関係ないのではないですかね」
シオン「やかましい。プレゼントもご馳走も、現代では何が流行りなのかがわからん。サガ、そなたはまだピチピチなのだから、当世風がなんなのか分かるだろう。教えてくれ」
サガ「・・・・・・・・・・・」
シオン「・・・・・・何を黙る」
サガ「・・・・私も現代の誕生の祝い方がわかりません」
シオン「なんだと！？そなたには弟がいるだろう。誕生日を祝ったりしないのか！？」
サガ「一度も。何がうれしくて、あの愚弟の誕生を祝わなければいけないんですか」
シオン「誕生日おめでとうの一言くらいないのか？」
サガ「そうですね・・・。起きぬけに出会ったら『今日は何かあったっけか』『知らん』くらいは言葉を交わしますね」
シオン「どこにもめでたさがないぞ！！誕生日くらいは覚えておけ！！とすると、プレゼントは聞くまでもないか」
サガ「いえ、あげてますよ」
シオン「おっ！なんだ、何をあげてるんだ？」
サガ「パンチとキック、それと罵声」
シオン「それのどこがプレゼントだ・・・・ムウにそんなのあげるわけにいかん」
サガ「でしょう？だから、うちは一般とかけ離れてるんですよ。だから、参考になりません」
シオン「かけ離れるどころか、異次元にあるわ。聞く人選を大いに間違えた。アイオロスはどうなんだ？」
サガ「まあ、私よりは幾分かマシな誕生日をしているかもしれません」
シオン「期待しないで聞いてみよう。おい、起きろ！」
起きる気配がない。
シオン「戦場じゃ、トドメ刺されて終わりだぞ！起きぬか！」
まぶたは閉じられたままだ。
シオン「ええい！ここまで軟弱者だと思わなかった。一度、死んで修行してこい！スターライトエクスティンクション！！」
アイオロスの体は光と共に消えた。
サガ「・・・・・・・教皇。アイオロスをどこにやったんですか？」
シオン「ちょっとスターヒルまで。気が付いたら、びっくりすることだろう」
サガ「びっくりじゃすまない気がします。バランス崩して落ちるかもしれませんよ」
シオン「筋金入りのバカなのだろう？死なん死なん」
いや、さすがに死ぬ・・・と思ったが、サガは口にださなかった。
シオン「ふう・・・・愚か者と馬鹿者に聞いたわしが間抜けだった。人に頼らず、自力で祝うとしよう」
次期教皇候補の２人に最低の評価をくだし、シオンはゆっくりと教皇の間を後にした。見事、愚か者の称号を得たサガは黙って見送るしかなかったのだった。
それから数日後。ムウは独りで白羊宮にいた。
ムウ「遅いなあ・・・・」
雑兵によると、シオンは街へ降りたらしい。教皇の仕事には、村々の視察もあるから、長引いてるのかもしれない。
現在の時刻、午後１１時。
少々、長引きすぎのような気もするが。
ムウ「どこかで倒れてないといいけど。油をさされなくなって幾年の、ポンコツブリキのオモチャみたいに、ガタガタの体だから・・・」
労わっているようで、さらりと残酷な言葉を吐いている。
シオン「今、帰ってきたぞ〜」
ムウ「シオン！お帰りなさい！」
シオン「おお〜、まだ起きていたのか。すまぬの、遅くなって」
ムウ「いいえ！！無事でよかった！！てっきり、どこかで行き倒れてるんじゃないかって心配しました！」
シオン「ふ・・・あの馬鹿者は今頃行き倒れてるかもしれんな」
ムウ「・・・・・・？」
シオン「まあ、よい。ムウ、腹は減ってないか？」
ムウ「空いてます」
シオン「よしよし、テーブルにつけ」
ムウ「はい」
素直にテーブルにつく。シオンは何やらニコニコしている。
ムウ「シオン？どうしたんですか？」
シオン「誕生日おめでとう、ムウ」
ドドンと箱が目の前に差し出された。
ムウ「わ・・・・大きい」
シオン「誕生日にはケーキがつきものと聞いてな。店で一番大きなものにしてみた」
大きな、とっても大きな・・・・・ちょっと大きすぎやしないか？軽く１メートルはある。
ムウ「開けてみても良いですか？」
シオン「もちろんだ」
ドキドキしながら箱をあける。ちなみにドキドキの内訳は、嬉しさ４割、心配６割である。
ムウ「・・・・・・・・・これは」
波型やハート型のクリームがこれでもかと言うほどスポンジの上を駆け巡り、ピンクのバラが可愛らしく鎮座している。頂上には、男と女が腕を組み、しゃれめかした格好で立っている。
ムウ「・・・・・・ウェディングケーキじゃありませんか？」
シオン「うぇでぃんぐけーきとは何だ？」
ムウ「独身ギネス記録を持つシオンにはわからないかもしれません。これは、結婚式の時に使うケーキですよ」
シオン「それは知らなかった。店で一番の大きさだったから買ったのだが・・・・まあいい。誕生日に使えば、誕生日ケーキだ」
ムウ「そう言えば、そうかもしれませんね」
チョコプレートにHappyWedingと書いてあるが、せっかくのシオンの気持ちを踏みにじりたくなかったので、素直に気持ちを受け取ることにした。
シオン「さ、食べてみろ」
ムウ「はい」
フォークで大きなバースデーケーキを削り取り、口に運ぶ。
ムウ「美味しい！」
シオン「そうか、それは良かった」
自分のことのように微笑む。
ムウ「シオン、私の為にありがとうございました」
シオン「良い誕生日になったか？」
ムウ「モチロンです！すごくうれしいです！」
そう言うと、もっととろけるような笑みを浮かべた。
月が天をまたいだ頃、ムウはスースーと寝息をたて眠っていた。
『カチャリ』
遠慮がちに扉がひらく。わずかな衣擦れの音と共に入室してきたのは、シオン
だった。ムウが目覚めないように、抜き足、差し足、忍び足で近寄っていく。ムウの寝顔は安らかで愛らしかった。いい夢を見ているのだろう。ふっと微笑むと中くらいの箱を置いた。
シオン「誕生日の夜には、プレゼントを置くらしいな。わしは知らなかったぞ」
ムウ「む・・・・・」
身じろぎをした。ヤバシ！とばかりに光速で退散する。幸いムウは起きなかった。寝返りを打つと、深い眠りに落ちていく。
シオン「夢よりも、もっともっと良い現実が待っておるぞ」
扉の向こうでポツリと呟く。都合の良い夢になぞ負けてたまるか。ふっと笑うとシオンも自室へひっこんでいった。寝ている間にプレゼントを置く。その演出は素晴らしい。しかし、
誕生日の夜にプレゼントを置く風習とは、クリスマスのことである。
確かに、クリスマスはキリストの誕生日であるから、その情報は間違いではない。しかし、正しくもない。齢２００を越えたシオンのズレっぷりはこれからも存分に発揮できそうである。
そして、アイオロスは生きているだろうか。安否が気遣われる。
あとがき
ムウ様ハッピーバースデー！！今年は、シオンにスポットをあててみました！シオン現役時代です！！なので、シオンは２００オーバーでサガ＆ロスは今よりもずっとピチピチの１０代です。シオンのボケっぷりが書いてて楽しかったです。シオンがプレゼントに何を送ったか・・・それは、皆様のご想像にお任せしますｖｖｖ
今回のタイトルは、有言実行三姉妹シュシュトリアンからとりました。最初はシュシュトリアンを絡ませた感じだったんですが、紆余曲折いろいろあって、タイトルだけが残りました（笑）
BY MUTUMI