ウォッカパニック！
イオ「なぁ、カノン、お前、ここに来て本当に大丈夫なのか？」
カノン「大丈夫に決まってるだろ！！！アイザック、もう酒がないぞ〜！！」
顔を真っ赤にして酒瓶を振り回すカノン。
酒宴は大いに盛り上がっているが、一部からは不安げな意見があがっていた。
イオ「今、ギリシャ大変なんだろう？あいつの兄貴が今、死にそうになりながら仕事してるらしいぞ」
バイアン「聞いた。巨蟹宮の死面よりも険しい顔してるらしい」
クリシュナ「他の黄金はアテにはならないのか？」
イオ「一生懸命やってるらしいぞ。アイオリアは毎日１０００キロ走ってるっていうし、ミロはニヤ顔の時間を１時間増加したって」
バイアン「・・・・・何がやりたいんだ？」
イオ「さっぱりだ。自分のできる事ってことじゃないのか？」
クリシュナ「サガの補佐をするとか色々できる事はあるだろうに・・・ギリシャ人の考えは理解しがたい」
イオ「つーか、それを分かりつつ、カノンの誕生日を祝ってるこっちもこっちだよな」
カノン「お前ら！！何を暗くなってるんだ！！もっと楽しくやろうぜ！！」
アイザック「つーか、こいつを止めてくれ。ウォッカを一気飲みするって豪語してるんだ」
テティス「ウォッカ一気飲みしたら死んじゃいますよ〜！！」
カノン「大丈夫だ！死んでも冥闘士になって復活できるから！！」
それは復活じゃない！！
イオ「誕生日に昇天ってないだろ！俺ら、カノン殺害計画企ててるんじゃないんだぞ！」
カノン「だって、酒が飲めるの俺とカーサしかいないんだぞ。こいつと永遠に差し向かいって、酒が不味くなるだろ！！」
カーサ「酷い言われ様だな。顔が嫌なら、お前の好みに変身してやろうか？」
カノン「お、いいな！どんな美人だ！！」
カーサ「お前の心の中の理想は・・・・・・」
カーサが変化を始める。骨格が変わり、瞳の色や髪の色が変わり始める。
絹のようにたおやかな髪、ビスクドールのように白い肌、湖のように透き通った瞳・・・
カーサ「これでどうだ！！」
サガじゃん！！！！
カノン「貴様！！なめてるのか！！」
カーサ「お前の一番心の奥底に眠ってるのを引っ張り出しただけだ！！」
テティス「シードラゴン様は、サガ様のことを大事に思ってるんですね！」
カノン「んなわけあるか！！世界一嫌いだあんな奴は！今日だって、あいつが死ぬほど忙しいのが分かってて、トンズラこいたんだからな！」
イオ「サガが気になってしょうがないって発言にもとれるぞ」
カノン「気になってなどないわ！！『ふふふ・・・深夜手当ては通常の三割増で・・・』とか疲弊しきった顔で笑ってるのを見た時は、『あれ、ヤバい？』とか思ったけど・・・断じて気にしてなど無い！」
アイザック「説得力ねえぞ・・・」
クリシュナ「カノン、今からでも戻った方が・・・」
カノン「そんなことできるか！せっかくお前達が祝ってくれてるっていうのに！まさか・・・お前ら、俺が嫌いになったのか・・・？」
テティス「そ、そんなことはありません！」
カノン「今、間があったーーー！俺のこと嫌いなんだ！！ウッウッウッ」
泣きに入ってしまったカノン。でも、酒瓶は手放さない。
バイアン「こいつ、泣き上戸か？」
クリシュナ「さっきまでラムレーズンをツマミにウォッカ飲んでたからな。多分、相当酔ってるぞ」
テティス「シードラゴン様を嫌いになったことなんか一度もありません！信じてください！」
カノン「何番目だ？」
テティス「え・・・？」
カノン「何番目に好きかと聞いてるんだ」
テティス「もちろん、一番です！」
カノン「嘘だ！！！お前の一番はジュリアンだろう！！」
ウォンウォン泣き出すカノン。なんだか子供を見ているかのようだ。
バイアン「あいつの酒になんか混ぜたか？」
イオ「さぁ？分からん」
アイザック「ていうか、止める努力をしてくれ！傍観してないで！」
テティス「シードラゴン様！た、確かに私はジュリアン様を好きですけど、シードラゴン様のことは別次元で一番好きです！」
アイザック「そうだ！！俺もカミュのことは尊敬してるけど、カノンのことは別次元で好きだぞ！」
カノン「別次元で・・・？」
アイザック・テティス「そう！別次元で！！」
ピタッと動きが止まったカノン。
次の瞬間、背をそらせて高笑いをし始めた。
カノン「そうか！！別次元で好きか！！だてに異次元を操っていないな！三次元はおろか別次元で好きを勝ち取るとは、さすがシードラゴンだ！ウワーーハッハッハ！！」
イオ「本当、おめでたい頭をしてるな・・・」
バイアン「カーサ、お前、今のうちに変化といとけ。また何か変な問題が起きると困る」
カーサ「りょーかい」
クリシュナ「カノン、俺達はお前のことを好いている。少なくとも、お前の誕生日を祝うくらいにはな。もし、俺達を疑う事があった時は、今日のことを思い出してくれ」
カノン「ありがとう、クリシュナ。相変わらず、最後の最後で良いトコ持ってくな。アイザックとテティスに恨まれないようにしろよ」
アイザック「そんなんしねえよ！クリシュナはカノンよりよっぽど頼りになるし」
テティス「沈着冷静で、モヒカンも素敵ですから！」
イオ「あ、ヤバい・・・・！！」
バイアン「お、俺達はカノンを一番信頼してるぞ！！」
フォローをいれたが、時、既に遅し。
カノンの表情は見る見るうちに、歪み――――
カノン「お前ら―――！！俺よりクリシュナの方がリーダーにふさわしいと思ってるんだろ――――！！」
号泣し始めた。
イオ「確かに事実ではあるけど、一番強いのはお前だから、リーダーだって！！」
カーサ「そう！！クリシュナだと正攻法で、俺のことを認めてくれないから、悪知恵が働くお前の方が助かるって！！」
バイアン「そう！！別次元！！別次元でカノンを信頼してるって！！」
カノン「信頼は同次元の方がいーいー！！！」
おいおい泣き始めたカノン。
なんか、平和な誕生日パーティとは無縁になってしまっている。
バイアン「おい、あそこに封があいてないウォッカがあるぞ」
イオ「よし、１つずつコップ配るぞ」
テティス「何をするつもりですか？」
イオ「全員、酒を飲んで酔っ払う」
アイザック「え！！？」
バイアン「あいつだけ酔ってるから、話がうまくいかないんだ。みんな、酔っ払えば、話がかみ合うはずだ」
クリシュナ「そういうものか・・・？」
イオ「少なくとも、異次元同士の会話になる！ほら、みんな、一気に飲めよ！！」
並々と注がれたウォッカが海闘士に手渡される。
イオ「カノン、ハッピーバースデー！！！」
海闘士「ハッピーバースデー！！」
紙コップを高く掲げると、ロシア産ウォッカを一気にあおる海闘士なのだった。
翌日―――――
全員、石畳の上で目が覚めた。どうやら、パーティをお開きにしないまま眠ってしまったらしい。
イオ「・・・・いつぅ」
バイアン「完全な二日酔いだな」
アイザック「なんか、体傷だらけだけど、俺なんかしたっけ・・・？」
テティス「よく覚えてないんですが、シードラゴン様と技のかけあいをしたような・・・」
クリシュナ「なんか、腹筋が痛いが・・・俺は何をしたんだろう」
カーサ「あ、お前、ずっと笑いっぱなしだったぞ。モヒカンが爆発するくらい」
バイアン「俺、肘が痛いんだが・・・」
カーサ「それ、お前が俺に肘鉄くらわせたからだろ。そのせいで俺、気を失って、記憶ねえから」
イオ「ウォッカ飲んでから、まったく記憶にないが、いろいろあったんだろうな・・・。そう言えばカノンは？」
辺りを見回すとカノンの姿はない。
テティス「帰ってしまわれたんでしょうか」
イオ「まあ、アテナの聖闘士だからな」
アイザック「あんな祝い方で良かっただろうか。なんか、暴れまくって終わったような・・・」
カノン「楽しかったぞ」
よく知っている声に振りむくと、そこにはシャワーを浴びた後らしいカノンの姿があった。
カノン「悪い。酒と汗臭かったから、先にシャワーを浴びさせてもらった」
クリシュナ「いや、それは構わないが・・・」
カノン「昨日は楽しかったな！！思いっきりストレス発散できた」
バイアン「そ、そうか・・・」
カノン「やっぱり気心知れた仲はいいな。遠慮しないでいいもんな」
カーサ「昨日、どんなことがあったか覚えてるか？」
カノン「実はそんなに覚えてないんだ。でも、誕生日祝ってもらったことは覚えてる。ほら」
腕に光る、ピカピカの腕時計。
カノン「防水性だから、いつどこで飛び込んでも安心だ。テティスのケーキも美味しかったぞ。俺のためにパーティ開いてくれてありがとな」
散らかっている床の上には、元は箱だった白い厚紙があり、生クリームが飛び散っている。カノンは石段に置いてあったスーツを羽織った。いつものズダ袋みたいなスニオン服ではなく、ビジネスマンといった風情だった。
アイザック「カノン、スーツなんか着てどっか行くのか？」
カノン「アテナに呼ばれててな」
テティス「ギリシャですね。送っていきます」
カノン「いや、ギリシャじゃなくて・・・」
テティス「日本ですね！わかりました！」
カノン「いや、ハワイに・・・」
ハワイ？
イオ「ハワイに聖闘士支部なんてあったっけ？」
カノン「なんか、ハワイに来てくれってお達しなんだよな。俺もハワイには縁が無いから、仕事かなって思って」
クリシュナ「サガはギリシャで仕事詰だから、お前を補佐に連れて行くんじゃないか？」
カノン「ま、そーかもな。兄貴は今、離れられないし、アイオロスはヨーロッパに派遣されてるみたいだから、俺しかいないよな」
テティス「頑張ってください！シードラゴン様！」
カノン「任せろ！俺だってギリシャ人のはしくれ。ポセイドンの存在意義のためにも働いてみせるさ」
あ、そっか・・・。
イオ「ギリシャ沈没したら、ポセイドンＶＳアテナが成り立たなくなるからな」
バイアン「なんせ、奪うべきギリシャがなくなるわけだからな」
カーサ「ポセイドン、一生、アテナの壷から出てこらんねえな」
カノン「というわけで、ハワイに行ってくる。すまない、ここからハワイは行った事無いから、案内頼む」
テティス「かしこまりましたっ！！」
カノン「こんなトッ散らかったままで悪いけど、本当ありがとな！！また来るからな！！」
テティスと共に、ハワイへと向かうため、北太平洋の方向へと歩いていった。
イオ「とりあえず、喜んでもらえたのかな？」
アイザック「多分・・・覚えてないけど・・・」
クリシュナ「とりあえず、俺達もシャワー浴びるか。酒臭い」
バイアン「そうだな・・・。掃除は後で考えよう」
あくびをしながら、ポセイドン神殿の風呂場へと消えていく五人。
５月３１日がこうして始まるのだった―――。
あとがき
カノン、誕生日おめでと！！！！久しぶりの海闘士ですよ！！！！
一応、サガ誕のサイドストーリーになります。アテナがハワイに呼びつけてるのは、ハワイ時刻では５月３０日だからなのです♪
仕事じゃなくて、サプライズバースデーというのは、ここだけの秘密♪
アテナとカノンがどういうバースデーをしたかは、ご想像にお任せします★
やっぱり海闘士はいいですね。そして、海闘士ネタを書くのはとても久しぶりです。海闘士ののんびりしたところがとても好きです。海っ子ラブ★
飲み物がウォッカなのは、アイザックが用意したからです。シベリアンにウォッカ！これは定説でしょう★
ソレントは今回欠席です。ジュリアンについていってるので、残念ながら行けず・・・。
私は、あまりお酒を飲まないので（飲んでないのに、酔ってる？と聞かれることはままある）、記憶がなくなったことはないのですが、どんな気分なのでしょう？大体、理性が勝って、飲むのを抑えてしまうので、一度味わってみたいな〜。
ＢＹ ＭＵＴＵＭＩ