ハートスカイライン



瞬「兄さんの誕生日会をしたい！！」

真夏の暑い日の第一声。節電・省エネが叫ばれる昨今、家の規模的には一般庶民の３倍はあろうかという城戸邸も節電に協力し、アイスノンや団扇などでしのいでいた。

星矢「一輝〜ィ？」
瞬「なにさ、星矢。不満なわけ？」
星矢「不満じゃないけどさ・・・一輝って暑苦しいじゃん。ただでさえ暑いのに、更に気温あげなくてもいいんじゃん？」
瞬「しょうがないじゃん！兄さんが暑苦しいのは生まれつきで直しようがないんだから！紫龍が星矢に過保護なのと一緒！」
紫龍「おい、どさくさまぎれで酷い事言ってないか？」
瞬「空耳だよ！とにかく、お誕生日会するよ！！」
星矢「まぁ、一輝が熊谷市とかに潜伏されたら、熊谷市民に申し訳がないから、うちで引き取った方がいいかもしんないな。でもさ、１つ問題があるだろ」
瞬「なに？」
星矢「どーやって、一輝に誕生会を伝えて、どーやって連れてくるんだ？」
瞬「う・・・・・」

自覚のある瞬がひるんだ。


フェニックス一輝１５歳。

趣味、放浪（という名の失踪）


星矢「一輝がやってくるのはお前が危険な目にあった時だけど、それじゃあ和やかな誕生日会にならないだろ」
紫龍「確かに。サスペンスになってしまうな。」
瞬「うう、兄さんに家庭的な雰囲気を・・・っていうのがムリなのかな。墓場島サバイバルとか、バトルロワイヤルとかの方がピッタリだもんね！GIジョーがリカちゃんハウスに行くようなものだ！」
星矢「確かに、これ以上ないってくらい一輝を活かせそうな場所だけどな。バトロワだったら、瞬を守るために殺しまくって最後自決っていう、泣けるエピソードぶちかましそうだけど」
紫龍「・・・確かに」
星矢「ちなみに、紫龍は春麗さんと心中で序盤で退場な」
紫龍「・・・確かにやりかねん。お前の場合は、美穂さん、シャイナさん、沙織さんと三角関係でもめて退場だと思うぞ」
星矢「た、確かにーーーーー！！こ、こええ！！美穂ちゃん、シャイナさん、沙織さんが鉢合わせしたら、３人が３人共容赦なく殺しあいしそう！！勝った方が星矢と一緒に行動するのよ！！みたいな感じでさ！」
瞬「もうそろそろバトロワから離れようよ。よーく考えたら僕らの人生自体バトルロワイヤルに近いところあるし、妄想くらい暖かいものにしたいよ」
星矢「そーだな！！忘れよう！！」
瞬「三角関係のとこは、心に刻んでおいた方がいいと思うよ？これ、放っておくと致命傷になりかねないからね？」
星矢「・・・う、気を付ける」
紫龍「で、一輝をどうやって連れてくるかだが・・・老師にお聞きしたが、伝書鳩は知っているか？」
瞬「伝書バト？」
星矢「伝書バトルの略？」
紫龍「違う、鳩だ。簡単に言えば、鳩に手紙をくくりつけて飛ばすと、目的地に向かって飛んで手紙を届けるんだ」
星矢「へえ！！すごいな！！」
瞬「これなら兄さんのところに招待状が届けられそう！」
紫龍「五老峰に何羽かいたから老師にお借りしよう」
瞬「わぁい！！ありがとう紫龍！！」
星矢「ブラジルとかにいないといいけどな。飛行機でも２４時間かかるんだろ？鳩じゃ力尽きて海に落ちちゃうんじゃないか？」
紫龍「うーん・・・まぁ、エベレストまで飛んで頂上の隊長に手紙を届けたとか、シベリアの氷を割ったとか話を聞くから何とかなるだろう」
星矢「すげえ！！氷河、お前聞いたか？シベリアの氷を割れる鳩だってさ！」
氷河「・・・・・・・・・へぇ」
星矢「・・・鳩どころじゃないか、お前は」

星矢が困ったようにポリポリと頬をかく。先ほどからまったく会話に参加していない氷河。
冷凍庫で凍らせたタオルケットを体に巻き、ドライアイスを周囲にしきつめ、冬の女王を地でいっている。タオルから金髪がこぼれてるから尚更だ。

シベリアに帰ればいいのにという意見は、『空港に辿り着くまでに暑さで倒れてしまう』という言葉で一蹴された。

ちなみに、彼は真夏日を記録してから一歩も外にでていない。

瞬「ありがとう、紫龍！！兄さんの誕生日会をどうにか開けそうだよ！」
紫龍「お前が喜んでくれるのが何よりうれしいよ」
星矢「よっしゃ！！じゃあ、誕生日会の準備だな！やる気でてきたぞ！！買物にでも行くか！！」
氷河「・・・・・ムリ」
星矢「お前には聞いてないって。大丈夫、アキバでお前に役立つもの買ってきてやるからさ！」




そうしてそうして、伝書鳩がやってきた。
誕生日パーティのことを手紙にしたため、鳩の足首にくくりつける。

瞬「カメ吉、よろしく頼むよ。これが、兄さんの写真。あとこれが兄さんの匂いのついたタオル。それから、これが兄さんの髪の毛。よーく覚えるんだよ」
星矢「写真とタオルはともかく、髪の毛なんて良く持ってるな。本当に一輝のか？」
紫龍「一輝の部屋を隅々まで掃除してみつけたらしいぞ」
星矢「すげえ執念。てか、鳩に鼻ってあったっけか？おい、氷河、白鳥って匂い分かるのか？」

星矢が振り向き、リビングの冷蔵庫に声をかける。すると、ギギギと冷蔵庫が独りでに開き・・・

氷河「さあ、知らん」



氷河が現れた。


星矢「どーだ？人間冷蔵庫の具合は」
氷河「最高だ。入ると真っ暗になるのが難点だが」
紫龍「まるでアイアンメイデンだな」
氷河「なんだそれ」
紫龍「中世の拷問道具さ」
氷河「俺にとって天国なんだから、拷問道具じゃない。俺に言わせれば、この環境の方が拷問だ」
星矢「それは言える。ファイヤーメイデンって感じだよな・・・」

今日もギラギラと太陽が照り付けている。花も草もくたっと下を向いてしまっている。瞬は窓を開けた。体温を超えた風が吹き込んでくる。

氷河「じゃ、俺はこれで」

氷河は冷蔵庫の扉をつかむと、また中にこもっていった。

瞬「カメ吉！！兄さんに届けてね！！」
ハト「クックーーー！！」

ハトのカメ吉は大空へと高く飛んでいった。

瞬「カメ吉・・・頑張るんだよ・・・！」
星矢「どーでもいいけど、ハトでカメ吉ってどーいうことなんだ？」
紫龍「カメハメハが打てるくらい強いハトになれますようにってことらしいぞ」
星矢「カメハメハ打てるハトってヤバイだろ」
紫龍「まぁ、願いはでっかい方がいいだろう」
瞬「よっし！！後は兄さんが来るだけだ！！」




そしてそして、日が過ぎて誕生日パーティ当日。
終戦記念日のニュースが流れる今日この日。

星矢「ど、どーする。もし来なかったら。瞬の怒り大爆発で第３次世界大戦おきかねないぞ」
紫龍「確かにそっちをおさめる方が大変だろうな。しかし、俺らにできる事は信じる事だけだ」
星矢「そうだよな！カメ吉も帰ってきたし、届いたって思っていいんだよな！」

ドキドキしながら見守る星矢と紫龍と冷蔵庫。

瞬「・・・・・・・」

時計だけがカチコチを動く。料理も少しずつ冷えていく。

開始時間から１時間ほど経った時。


ピンポーン！！


瞬「兄さん・・・！！」

光速で玄関へと駆けていく瞬。

星矢「沙織さんとかじゃないといいな」
紫龍「ああ、そのオチだけは嫌だ。宅急便屋とかな」

ハラハラしながら審判を待つと、ウキウキした声と２人分の声がこっちに向かってやってきた。

瞬「みんな〜！！兄さんだよ〜〜！！」

満面の笑顔を浮かべて瞬がやってきた。ぎゅうっと腕をつかまれて照れ臭そうにしている一輝とともに。

星矢「い・・・・一輝ィ・・・・！！」
紫龍「良かった・・・本当に良かった・・・！！」
一輝「お、おい泣くことないだろ」
星矢「お前にわかるもんか。この解放された感じは・・・！」

緊張から解き放たれて、ダーーーッと涙する２人であった。

氷河「意外に早かったな」
一輝「・・・お前、どこから出てきてるんだ」
氷河「これは今や俺の服も同然だ」
一輝「大体の想像はつくが・・・瞬が泣いたりするのは勘弁願いたいんでな」
氷河「甘いな」
一輝「お前らで瞬をなだめることができるとは思えん」
氷河「しょってるな」
一輝「事実だからな」

瞬「兄さん兄さん、乾杯しましょう！オレンジジュース買ってあります！」
一輝「オレンジジュースか、あの時みたいだな」
星矢「俺的には平和に乾杯って感じだよ」
紫龍「それは言える。氷河、お前も来い」
氷河「言われないでもいくさ」


瞬の幸せそうな笑顔、料理は文句なく美味しく一輝も珍しく頬をゆるめる。
星矢は解放感からかオレンジジュースを一気のみし、まるで酔っ払いのように明るくハイテンションになる。
酒を用意してなくてよかった・・・と紫龍は内心胸をなでおろしていた。
氷河もこのときばかりは、楽しげに料理をつついていた。
プレゼントは、一輝の腕にぴったり合う革ベルトの腕時計。
一緒にいないときも、一緒にいられるようにと瞬は笑った。

やがて、この宴のことを聞きつけて沙織が向日葵の花束をかかえてやってくる。
今日ばかりは戦いも何もかも忘れて、幸せと平和に酔いしれるのだった。

幸福なパーティに乾杯！！



あとがき
久しぶりです！！兄さん！！
兄さんが登場するのは本当に久しぶりですね。日常の微熱以来燃えつきちゃって、なかなか書けなかったんですが、モチベーションがあがってきました。うんうん、充電したからかな？まぁ、ほとんど出番は青銅ばっかなんですが・・・。ちょっとでも兄さん書けて楽しかったなっｖ
しかし、冷蔵庫に入ったら凍え死んじゃうゾッ。氷河だからできる技ですね（笑）皆様も熱中症にはどうぞお気をつけてッ！
ちなみに、タイトルのハートスカイラインは、ハートと鳩をひっかけてたりします（笑）

BY　　MUTUMI