お願い♪マイバースデー 後編
紫龍「非常事態だから急いできてくれって言われたから来たんだが・・・」
白羊宮で出迎えたのは、アリエスのムウではなく、カプリコーンのシュラだった。
シュラ「本当に良く来てくれた」
氷河「何があったんだ？」
シュラ「俺の手には負えん。頼れるのはお前らしかいない。助けてくれ」
星矢「黄金聖闘士からそんな風に言われると、何かこそばゆい嬉しさがあるな。で、どうしたんだ？」
シュラ「誕生日パーティの準備を手伝ってくれ」
星矢「・・・・俺らってその程度にしか頼れないのか？」
シュラ「いや！違う！この非常事態は、ゼウスが復活することより非常事態なんだ！」
瞬「自分がどんどん情けないこと言ってるって気づいてます？」
シュラ「とっくに。だが、仕方ないんだ。面子がこんなんなのだから」
氷河「面子？」
シュラ「シャカ、ミロ、アイオロス、カミュ、アフロディーテ、と俺」
星矢「うわっ！こりゃまた微妙なメンバー！サガは？ムウは？」
シュラ「祝われる立場だからと手伝う気皆無だ」
星矢「それこそ自殺行為だろ」
シュラ「俺も激しくそう思う。このメンバーでまともな誕生日が祝えるとは到底思えない！１００％保証する！」
瞬「１％でも減らす努力をして欲しいな・・・・」
シュラ「だからお前らを呼んだ。自慢じゃないが、俺達は常識外れだ。まともな誕生日を祝える確率０％だ。情けないことこの上ないが、馬鹿な先輩のフォローをしてくれ」
土下座までして頼みこむシュラの姿に、青銅達は胸を撃たれた。
星矢「任せておけ！シュラの気持ち、俺達が受け継いだ！」
シュラ「本当か！なら、早速来てくれ！もう問題は起こってるんだ！」
瞬「じゃあ、急いでいかなきゃ」
ダダダダと駆け出す青銅達。
シュラ「待ってくれ」
瞬「？」
シュラ「走るなんてまだるっこしい。飛ばすから、ちゃんと受身しろよ」
瞬「え、ちょっとまさか！！」
ジャンピングストーン！！！
青銅「うわぁ――――――！！！」
うろたえるな小僧ばりにふっ飛ばされた青銅達。『あんたも立派な常識外れだ』と思った五人だった。
バコッ！！
教皇の間の天井をぶちぬいて、青銅が転落した。
星矢「いてて・・・・」
アフロディーテ「おいおい、サンタクロースがやってくるには大分早いぞ」
一輝「サンタなわけがないだろ。服を見ろ、服。サンタは赤と白だろ」
紫龍「指摘する所はそこなのか？一輝」
瞬「くんくん・・・なにこれ・・・変な匂いがする・・・お酢？」
氷河「この辺一体はブルガリの匂いがするぞ」
ミロ「あ！それ！うっかり床にお酢こぼしちゃってさ〜、匂いとれなくて何とかしようと思っていろいろ振りまいたんだよ！俺はトイレの消臭剤がいいんじゃないかって言ったんだが、アフロディーテが断固ブルガリだと言ってな」
アフロディーテ「当たり前だろう！トイレの消臭剤なんか振りまいたら、教皇の間全体がトイレみたいになるだろう。その点ブルガリなら優雅な気持ちになることこの上ない！」
一輝「お酢の匂いとまざりあって、気持ち悪いことこの上ないぞ」
アフロディーテ「この匂いがわからないなんて・・・フェニックスは粗野で野蛮だから、仕方ないね」
シャカ「ほら、言ったろう。一輝にはブルガリなどという横文字はわかるはずがないのだ。一輝、ほら、お香を焚いてやった。私の慈悲だ。ありがたく思え」
一輝「ちょっと待て。なんだ、この匂いをわからない奴は非常識だという空気は」
瞬「ずっとここにいるから、完全に鼻がバカになってるんですよ」
青銅達の鼻もいかれてきたようだ。この場が『普通』に思えてきた。だが、そんなはずはない。お酢とブルガリとお香のブレンドで、普通であるはずがない。酸っぱくて甘くて和やかな匂いなはずだ。
氷河「そういえば、カミュの姿が見えないが・・・」
ミロ「ああ、アイツならキッチンにこもって料理作ってるぞ。なんでかわかんないけど、もう２日近くでてこないんだよな〜」
氷河「ちょっと行ってくる」
キッチンではカミュが忙しそうに動き回っていた。
瞬「よかった・・・こっちはまともじゃない」
紫龍「２日っていうから、何やってるかと思ったが、手間のかかる料理を作ってるようだな」
星矢「シベリア仕込みの雪料理！とかやってたらどうしようかと思った」
アルベリッヒ「ふぁっくしょい！」
ヒルダ「どうしました？アルベリッヒ」
アルベリッヒ「いえ、何でもありません。今日のお食事はアスガルド名物、氷料理です。美しくカッティングされた氷の数々をどうぞご堪能ください」
氷河「カミュ！手伝います！」
カミュ「おお、氷河。来てくれたのか。すまない、迷惑をかけてしまって」
氷河「そんな！師匠のためなら例え火の中水の中、どこまでもついていきます」
カミュ「では、命じる。ミロを入室させるな。抵抗したら殺してもいい」
星矢「おいおい！殺してもいいって！」
カミュ「大丈夫。後悔しない」
星矢「いや、それはどうかと。友達だろ！？」
カミュ「全ては胃袋のためだ」
星矢「なんでそこで胃袋がでてくるんだ？」
ミロ「おっ！美味そうじゃん！ちょっと味見！う〜ん、ちょっと味薄いな！個性も出してほしい。これ、いれようぜ！」
あっという間に、醤油、わさび、ガムシロップ、マ○レモンをいれるミロ。
ミロ「うんっ！なかなかいい感じ！じゃ、カミュ、がんばれよ！」
・・・・・。
カミュ「・・・・食べてみるか？」
青銅「いえ！結構です！」
洗剤の入った飯など食えるかっ！！彼らの心は一つだった。
カミュ「また作り直しだ・・・」
瞬「カミュ！僕もここで手伝いますよ。だからそんなに気を落とさないでください」
紫龍「俺も腕には自信がありますから。だから、そんなに自殺しそうな顔しないでください」
カミュ「ありがとう・・・・氷河、最後の頼みだ。この部屋からでたら、部屋ごとカリツォーしてくれ」
氷河「そんなっ、トイレはどうするんですか！」
カミュ「そのような甘い考えを起こすようでは死ぬぞ・・・・食中毒で」
うっ！！
氷河「カミュ・・・！あなたのその気持ち、しっかと受け止めました。最高のカリツォーかけてみせます！」
星矢「瞬！紫龍！料理のことよろしく頼むぞ！」
一輝「生きろ・・・・！」
３人は今生の別れがごとく滂沱と涙しながら、キッチンの扉にカリツォーをかけたのだった。
星矢「さて、食事はオッケー。次は装飾か。アフロディーテ、何の花を飾るんだ？」
アフロディーテ「それがまだ決まっていないんだ」
星矢「へ？薔薇じゃないのか？」
アフロディーテ「私は薔薇をおすんだが、他の奴らが別のものをおして譲らなくてな」
一輝「別のものっていうのは？」
アフロディーテ「シャカが沙羅双樹、そして、ミロが白菊」
氷河「死を思い浮かばせる花だな」
一輝「じゃあ、薔薇にすればいいだろう」
アフロディーテ「う〜ん、飾るのはロイヤルデモンローズだからな・・・」
星矢「死ぬぞ！！！」
アフロディーテ「だろう？死を象徴させるものと死に追いやるものしか候補がないんだ。菊の色を黄色にすればＯＫかな？」
一輝「そういう問題じゃないだろ。祝の席に菊なんて、どこぞの葬式と思われるぞ」
氷河「シュラは何の花が良いって言ってるんだ？」
アフロディーテ「シュラか？シュラは、お前らが良いと思うものなら、俺はそれに従うって」
星矢「それもどうかと！」
氷河「どうする？このままじゃ、埒があかない」
一輝「コスモスでいいんじゃないか？秋らしくて」
星矢「だな！コスモスにしよう！アフロディーテ、花屋に行って買ってきてくれ」
アフロディーテ「む、上位聖闘士に命令か？」
星矢「今日は頼まれて来てやったんだから俺らの方が上！文句はシュラに言ってくれ！」
アフロディーテ「・・・・分かった。シュラにだな」
星矢「・・・・・お、おう」
コスモスを買いにアフロディーテは教皇の間からでていった。
氷河「心に暗雲がたちこめるが、ひとまず忘れよう。後は・・・プレゼントか」
一輝「プレゼントでも一悶着ありそうだな」
シャカ「無礼なことを言わないでもらえるか」
星矢「シャカ！誕生日プレゼントってどうなってるんだ？」
シャカ「完璧だ。用意してある。ほら見ろ」
ずら〜っと並べられるプレゼント達。
星矢「ラッピングは普通だ・・・・中身は？」
シャカ「中身を聞くとは、なんて非常識な」
一輝「中身が非常識な可能性がある。聞かせろ」
シャカ「仕方がないな。ムウに戒名、アルデバランに卒塔婆・・・・」
星矢「待ちやがれ！！なんだ、そのプレゼントラインナップ！」
シャカ「失礼だな、まだ全員分言ってないのに」
星矢「聞かんでもわかるわ！！誕生日プレゼントに葬式グッズだなんてどういう神経してるんだ！！」
シャカ「門松は冥土の旅の一里塚と言うだろう。誕生日を迎えるたびに人は死へ近づいていくのだ」
星矢「そんな真理いらねえ！！誕生日くらいそんなこと忘れたいわ！！」
シャカ「星矢、死から眼を背けてはいけない。人は必ず死ぬのだ」
星矢「青銅は絶対死なないから大丈夫！！」
氷河「確かにな・・・一輝に殺されたはずなのに生きてるし」
シャカ「ふ・・・なんと言われても私は自論を変える事はない。どうしても文句があるというのなら、君達でどうにかしたまえ」
一輝「ありがたく、させてもらう」
シャカ「ただし！奴らは好みにとっても煩い！絶対にハズレなプレゼントを贈る方が、反応が簡単で楽だ」
星矢「・・・・シャカ、もしかして・・・わざと？」
それから数時間、奔走した青銅達のおかげで、どうにか誕生日パーティの準備は完成した。そして、今日、誕生日パーティが開かれた。
沙織「まあ、素敵！キレイなコスモスね！」
ムウ「料理も美味しいですよ。カミュのことだから、ボルシチとピロシキかと思いきや、本格フレンチとは。流石本場フランス生まれ」
デスマスク「プレゼント、高級ライターだぜっ！男のステイタス！センスいいじゃん！」
招待客はどれも喜んでくれているようだ。
瞬「よかった〜沙織さんたち喜んでくれているみたい」
星矢「あ、そうだ。瞬、バースデーケーキは？」
瞬「え？」
氷河「やっぱり、あった方がいいだろ」
紫龍「それ、そっちの担当じゃないのか？」
星矢「い！？俺ら知らないぜ！！」
瞬「僕達だって！」
一輝「このままじゃ、ケーキがないまま終っちまうな」
氷河「ひとっ走り買ってくるか？」
そんなこんなで相談していた時
アイオロス「お〜〜〜〜い！！」
アイオロスとシュラがやってきた。
アイオロス「予約してたケーキ、持ってきたぞ！」
星矢「アイオロス！そっか〜、アイオロスが準備してくれたのか〜！よかった〜！」
紫龍「ところで、シュラ、顔が猫にひっかかれたみたいに傷だらけだがどうかしたのか？」
シュラ「ああ、でっかいでっかい黒猫にひっかかれてな」
星矢「・・・・・・・・・」
事情を察した星矢達はそのことにつっこまなかった。
アイオロス「さ、ケーキの披露といこう」
ででんと皆の視界が集まる教皇の間の中央へおっきいケーキをどかんと置いた。
アイオロス「アテナ、黄金聖闘士のみんな、誕生日おめでとうございます！！私達から、バースデーケーキです！どうぞ！！！」
でででんっ！！
でてきたのは、巨大な墓石だった。
アイオロス「・・・・・・・・おや？」
星矢「おや？・・・っじゃな〜い！！なんで、墓石がでてくるんだ！？」
アイオロス「いや、墓石そのものじゃあない。墓石型の生地にゴマのクリームが塗ってあるケーキだ。ご丁寧にチョコレートで『南無阿弥陀仏』って書いてある」
星矢「いや、そういう問題じゃあないし！頼んだのアイオロスか！？」
アイオロス「いや？俺は巨大なアテナ像をケーキにしてくれって言ったんだが・・・ケーキ屋の手違いだ、きっと！」
星矢「誰がこんな不吉なケーキ注文すんだよ―――――！！」
シャカ「注文しちゃいけないのかね」
星矢「シャカ！！？」
シャカ「誕生日ごときで浮かれないために毎年こういう注文をしているんだ。そういえば、この間注文したケーキを取りに来た時、でっかいアテナ像の形のケーキが手渡されたんだが・・・・」
アイオロス「おお！それが俺の頼んだケーキだ！シャカ、そのケーキ食べてないか！？」
シャカ「食べていない」
アイオロス「じゃあ、今すぐ持ってきてくれ」
シャカ「・・・・冷蔵庫に入らなくて、常温で保管した為、カビだらけだがそれでもいいか？」
いいわけねえだろ――――――っ！！！
最後の最後でこんなどんでん返しがあるとは。血の涙を流す青銅達なのだった。
あとがき
お願い♪マイバースデー後編でございます！これで４〜８月までの誕生日は消化したっと★今年はやりたくても時間が全然なくてできなくて・・・・。シュラも意外と非常識さんです。悪目立ちしないから一見フツーに見えますけどね♪
ＢＹ ＭＵＴＵＭＩ