アナタを思う心、決して恋ではなく

アルベリッヒ「は・・・・？言っている意味がわかんないんですけど」
ヒルダ「ですから、あなたのお誕生日パーティをしたいと言っているのです」
アルベリッヒ「・・・何でですか？」
ヒルダ「大切な人の誕生日を祝いたいという気持ちに、理由が必要ですか？」
アルベリッヒ「お説はごもっともなんですけれど、俺の誕生日をやりたいっていうのを何で俺に言うんですか」
ヒルダ「だって・・・この間、税金が返ってくるっていう電話が来て、言われた通りのことをしようとしたら、アメジストシールドで電話とＡＴＭを水晶漬けにしたじゃないですか」
アルベリッヒ「あったりまえでしょうが！！」
ヒルダ「税金が返ってきたらアルベリッヒよろこぶだろうな〜って思ったんですよ？」
アルベリッヒ「確かに税金が返ってきたらよろこびますけど、税を徴収してるの、俺ですからね？俺が回収したものを俺に返還するって何かがおかしいと思いませんか？」
ヒルダ「言われてみればそうですね」
アルベリッヒ「あんたを騙すなんて赤子の手をひねるくらい簡単なんですから、勝手なことしないでくださいよ」
ヒルダ「だから・・・きちんと相談しにきたのですよ。今度こそアルベリッヒに怒られないように」
アルベリッヒ「うっ・・・・・」
ヒルダ「アルベリッヒの誕生日パーティを開きたいのです。よろしいですか？」

うまく説得してるつもりが、逆に隙をつかれてしまった。
なんとなく、ダメといえない雰囲気になってしまった。

アルベリッヒ「・・・・・わかりました。いいですよ」
ヒルダ「本当ですか！よかった！！」
アルベリッヒ「会場と日取りはどうするつもりですか」
ヒルダ「場所はワルハラ宮の中央広間にしたいなと思ってます。日取りはアルベリッヒに任せます」
アルベリッヒ「・・・・じゃあ、来月の第３日曜日がいいですかね。大安ですし」
ヒルダ「料理は最高級のものを用意します」
アルベリッヒ「はいはい、料理は最高級ですね。わかり・・・・ちょっと待った！」
ヒルダ「はい？」
アルベリッヒ「今回の誕生日パーティ、金はどこからでるんです？」
ヒルダ「私が主催なんですから、当然私が払います」
アルベリッヒ「・・・・今回の誕生日パーティはやっぱりなかったことにしてください」
ヒルダ「何故ですか。さっきは良いって言ったじゃないですか。」
アルベリッヒ「そりゃ言いましたけど、出所が国庫となったら話は別です。俺の誕生日に国庫を使うなんて正気の沙汰じゃない！最高級なんてとんでもない！！食べ物は氷料理！飲み物は氷だし水で十分！」



氷料理とは氷を美しくカッティングした料理のこと。
氷だし水とは、水を氷で抽出したもの。


どちらもアスガルドに伝わる名物料理。
ま、つまるところ、水オンリーということである。

ヒルダ「そんなの寂しすぎます。無色透明だなんて」
アルベリッヒ「食紅で染めてもいいですけど」
ヒルダ「わびしすぎます。誕生日くらい、美味しい食材で笑顔がこぼれるような料理にしたいじゃないですか」
アルベリッヒ「主賓は俺ですから。俺は気にしません。これ以上国庫がなくなったら、逆に俺の笑顔は永久封印です」

厳しい言葉にヒルダはしゅんとしてしまった。その姿を見るのは気持ち良いものではないが、私情を優先させるわけにいかない。アスガルドの国庫が火の車なのは誰が見るより明らかなのである。

アルベリッヒ「百歩譲って、誕生日パーティをやることは許可してもいいですから、タダでやってください」
ヒルダ「・・・・・・い」
アルベリッヒ「え、今なんていいました？」
ヒルダ「私を雇ってください」
アルベリッヒ「はっ！？」
ヒルダ「国庫を使わなければいいのでしょう？だったら、私が稼いだ自分のお金でお祝いします。アルベリッヒ、私をあなたの下官にしてください」
アルベリッヒ「そんなことできるわけないでしょうが！」
ヒルダ「どうしてですか？」
アルベリッヒ「ヒルダ様に仕える俺が、ヒルダ様を雇うなんてできないからですよ！」
ヒルダ「私が雇えと言ってるのですよ？私が良いと言ってるのですから、良いのです」
アルベリッヒ「ジークフリートやシドが黙っていませんよ」
ヒルダ「内緒にすればいいのです。私は絶対に他言しません。あなたも他言しなければ、ジークフリートもシドも黙ったままです」
アルベリッヒ「いや、そう言っても・・・・」
ヒルダ「もう決めました」

何を言っても折れそうに無い。というか、ダイヤ並に強固になってしまった。こうなったら、諦めさせるのは無理そうだ。

アルベリッヒ「・・・・・・負けましたよ」
ヒルダ「ええっ！それじゃ！」
アルベリッヒ「雇うとなったら、思い切りこきつかいますから覚悟してくださいよ？」
ヒルダ「もちろんです！ちなみに時給いくらくれるのですか？」
アルベリッヒ「時給９００ガルドってところですかね」
ヒルダ「感謝します、アルベリッヒ」


アルベリッヒ（俺の徹夜記録は更新するだろうな・・・・）

誕生日まで自分が苦労するだろうということは、想像できる。
ヒルダはとろくて、要領が悪いから。でも、国庫を使われるよりはマシだ。

アルベリッヒ（俺の誕生日を祝うために、ヒルダ様が働いて、その金を俺がだすって・・・結局、俺が自腹切ってるのと変わらないんじゃないか？）

激しく本末転倒な気がもするが、まあいいかと思う。
頬を紅潮させて喜ぶヒルダの姿は決して嫌いじゃないから。



あとがき
アルベリッヒのお誕生日ストーリーです。実は、一昨年のアスガルド祭りに出品したものなんですが、ここでアップするチャンスを逃してしまってズルズルと・・・。ここで発表しないと、もう発表できなさそうなので、アップさせて頂きました♪アルベリッヒアンソロには新作を書き下ろすので、しばらくはこの子で目の保養をしてくださいませｖｖｖ

ＢＹ　　ＭＵＴＵＭＩ