あなたも一緒じゃないと
星矢「すっげ〜〜！雪原だ〜〜！」
紫龍「トンネルを抜けるとそこは雪国だった。まさに川端の世界だな」
デスマスク「温泉に入って、雪見酒ってのもオツだよな。付き合えよ、シュラ」
シュラ「ああ、いいぞ」
デスマスク「うっわ〜！やらしい！！おい！シュラの奴、女風呂覗き見するって！！」
シュラ「はっ！いきなり何言ってやがる！」
デスマスク「え〜、だって、今の意味、女湯覗くのに付き合えよって意味だもん。シュラったらむっつりスケベ〜！」
シュラ「今すぐたたっきる！！」
ドタバタと車両内を走り回るデスマスクとシュラ。他の人たちはというと、駅弁を食べていたり、眠っていたり、本を読んでいたりと様々である。
沙織「ふふ、皆、楽しんでいるようですね」
サガ「ですが、アテナ。よろしいのですか？スキー旅行に連れて行ってくださるなんて・・・」
沙織「ほほほ、いつも私の為にがんばってくれているんですもの。これくらいはさせてもらわないと」
サガ「なんと優しいお言葉。このサガ、一生あなたについていきます」
沙織「まぁ、うれしい」
サガ「それから・・・あのことについてなのですが・・・」
沙織「勿論、抜かりはありませんよ。ケーキにシャンパン、ワイン、全て頼んであります」
サガ「ありがとうございます。きっと喜ぶでしょう。ところで・・・」
沙織「はい？」
サガ「あの者も同行させたのは何か意味があるのでしょうか。仏頂面で楽しくなさそうなのですが・・・」
沙織「彼は私が誘ったのです。ある意味このスキー旅行の主役です」
サガ「そうですか・・・・」
沙織「さぁさぁ、あなたも楽しみなさい。学級委員みたいなことをしてないで、ハメを外すのです。ほら、あれを御覧なさい。アイオリアなんて、シラフであんな馬鹿な真似をしているのですよ」
指差したその先に、サガはぎょっとした。窓の外に黄金聖闘士がいる。
ミロ「がんばれ〜！現代のエイトマン！！」
アイオリア「なかなか手ごわい相手だ。俺と違って、コイツは疲れないからな！しかし倒しがいがある！」
カノン「俺、新幹線が勝つに千円」
アイオロス「ふ、俺の弟が屈するはずがない。アイオリアに十万」
沙織「ほら、ハメを外しているでしょう？」
サガ「外しすぎです。というか、アイオリアは、いつから走ってるんですか？」
沙織「出発した時からですよ。男として新幹線に乗って楽をするなんて許せんって言って」
サガ「理解不能だ・・・」
沙織「というわけなので、あなたもどうぞハメを外しなさい。全裸になって新幹線の運転席に突入しても私は驚きませんから」
サガ「絶対なりません・・・」
氷河「どうした、つまらなそうだな」
アイザック「いや、つまんないことはない」
氷河「そうか？ならいいんだが」
アイザック「なぁ、俺が参加して本当にいいのか？」
氷河「もう、二十四回目だぞ。良いに決まってるだろ。沙織さんが良いって言ってんだから」
アイザック「だけど・・・俺は海闘士だぞ」
氷河「だからなんだ？それをいうならカノンだって同じだろ」
アイザック「しかし・・・」
氷河「どうこう言ったってお前、帰りの電車賃だって持ってないだろ？行くしかないんだから、それだったら楽しめよ。他の連中だって、楽しんでるじゃん」
アイザック「・・・・・まあ、確かに」
星矢「お、俺が王様か！！やった！！じゃあね〜、３番が一輝のところに言って瞬の悪口を言ってくる！」
シャカ「む・・・私だ。私が星矢に従うのも不本意だが、ゲームというのなら仕方ない。一世一代の大ゼリフを言うとしよう」
星矢「シャ、シャカお前かよ！！！アルデバランあたりを狙ってたのに！！あんたじゃ千日戦争必至！！やばい！！今のナシ！！」
シャカ「ふ・・・ナシにするとは惰弱な。恨むなら、自分の発言を恨むのだな」
星矢「止めてくれ〜！！」
アイザック「聖闘士の楽しみ方はなかなかに痛快だな」
氷河「・・・あれが標準だと思われては困る」
アイザック「とりあえず、逃げていいか？」
とてつもないコスモのぶつかり合いに、戦ったことのないアイザックも逃げ出すくらいであった。わずか十分後、その車両の天井はまるで始めからなかったかのようにポッカリとなくなるのだった。
瞬「もう！兄さん！旅行なんだから、もう少し自重してよ！」
一輝「しかし・・・お前の悪口を言われて黙っていられるものか」
瞬「黙らなくていいから、手を出すのはやめようよ。流石に沙織さん、顔ひきつってたじゃない」
星矢「新幹線の修理代、どれくらいかかるんだろうな・・・？」
紫龍「正社員もリストラされる時代だ。お前、覚悟した方がいいんじゃないか？」
星矢「覚悟ってなんだよ！！？」
ムウ「ペガサスの聖衣を下ろし金で削れば、一両分くらい弁償できますよ」
星矢「ぬああああ！！沙織さん！！俺、まだ聖闘士やめたくないよぅ！！」
沙織「大丈夫ですよ。やめたくてもやめられない仕組ですから」
星矢「本当か！良かった！」
瞬「・・・本当に良い事かな？」
紫龍「微妙だな」
沙織「さあ、皆さん、荷物を置いたらスキーをしますよ！外はパウダースノーで絶好の滑り具合です！お客さんは私たちだけですから、思い切り楽しみましょう！！」
ミロ「俺、スキーって初めてなんだ！！教えてくれ！！」
カミュ「・・・・・・・無理だ」
ミロ「ひでぇ！！俺の運動能力を馬鹿にしてるのか！？」
カミュ「いや、そうじゃない。私もスキーは初めてなんだ」
ミロ「・・・・・・・はぁ！！？まさか、嘘だろ！？」
カミュ「私が嘘をつく性格に見えるか？」
ミロ「いや・・・・え、どういうことだ？ずっとシベリアにいたんだろ？」
カミュ「それはそうなんだが・・・東シベリアはスキーには向いてないんだ。基本氷原だから犬ゾリの方が向いてる」
ミロ「おいっ！チビ！！お前らもそうなのか？」
アイザック「チビって言うな。もうでかいわ！」
ミロ「俺から見れば今でもチビには変わらん！お前らもダメなのか？」
アイザック「ダメじゃねえ！やったことないだけだ！」
ミロ「同じだろ！」
アイザック「やってみたら、できる！なあ、氷河！」
氷河「ああ。ミロには負けん」
ミロ「よし、良く言ったガキども！リフトに乗りやがれ！」
アイザック「解った！」
ズンズンとリフトに向かっていくミロ、アイザック、氷河の三人。
カミュ「お、おい・・・・！」
ムウ「おや、カミュ。心配そうな顔をしてどうしたんですか？」
カミュ「いや、馬鹿と愛弟子がリフトに乗っていってな」
ムウ「いいじゃありませんか。おや、三人はかなりの腕前なんですね」
カミュ「え・・・・いや・・・・？」
ムウ「え、だって、直滑降コースを上っていきますよ」
カミュ「∨〃קΘΞ！！！」
ムウ「あ、ストックを落としましたよ。自信があるんですねえ」
カミュ「アイザック！！氷河―――――！！」
なれないスキー板を履きながら追いかけるカミュ。哀しいかな。ミロの心配はされないのだった。
星矢「よ〜し、スキーも滑ったし、今日のメインイベントだなっ！」
瞬「星矢、バラしたりしてないだろうね？」
星矢「当たり前だ！俺がそんな男に見えるか？」
瞬「見えないけど、うっかりボロがでそうなんだもん」
星矢「あいつらじゃあるまいし！なんでだか知らないけど、あたふたしてんじゃん。あれじゃバレちゃうぜ」
紫龍「いや、アレは違う」
星矢「ん？なんなんだ？」
紫龍「どうやら、アルデバランの頭にストックが刺さったらしい」
星矢「ストックが！？大丈夫なのか！！？」
紫龍「老師がおっしゃるには、頭蓋骨が頑丈ならば大丈夫だろうって」
星矢「大丈夫、大丈夫じゃないのレベル超えてるだろ！」
瞬「なら、僕達はちゃっちゃと準備しちゃおう！あれのおかげで色々誤魔化せそうだから」
一輝「すっかり強くなって・・」
氷河「本当にすまない、アルデバラン」
アルデバラン「大丈夫だ。これくらい聖闘士ならばよくあることだ」
アイザック「ストックが刺さることってあまりないと思うが・・・」
カミュ「弟子の不始末は、師匠である私の責任。思う存分私の頭をストックで刺してくれ」
アイザック「落としたのは俺だ！俺の責任だ！やるなら俺を！」
氷河「いや、バランスを崩してアイザックに倒れかかったのは俺だ。俺のせいだ」
アルデバラン「いやいや、わざとやったわけじゃないだろう。俺がこの中の誰を指したとしても誰も喜ばない。気持ちだけで十分だ」
カミュ「アルデバラン・・・・なんて心の優しい奴だ」
ミロ「本当だ。チビを恐がらせようとリフトを揺らした自分が情けない！」
カミュ「・・・・・・・・・ちょっと待て」
ミロ「ん？」
カミュ「・・・・今のは真実か？」
ミロ「真実っつーか、事実？」
カミュ「今すぐお前をストックで串刺しにしてやるわっ！！！」
ミロ「ちょ、カ、カミュ！！！」
カミュ「逃げるな！！お前の得意技、スカーレットニードルのようなものだ！！」
ミロ「似て非なるだろ！お前、弟子には甘いのに、この差はなんなんだ！」
カミュ「愛だ！！」
ストックをぶんぶん振り回しながら追いかけるカミュ。腐っても黄金聖闘士、渾身の突きをかわしながら逃げるミロ。
アルデバラン「あいつらのことなら気にするな。カミュが本当にミロのことを刺すはずがない。俺は本当に大丈夫だから、宴会場へ行こう」
アイザック「・・・なんでそんなに優しいんだ？」
アルデバラン「仲間だからかな。はは、ちょっとクサイか」
テレながら歩き出すアルデバラン。
氷河「良かったな」
アイザック「今のはお前に向けてだ」
氷河「素直じゃないな」
沙織「アルデバラン大丈夫ですか？」
アルデバラン「アテナ、おかげさまで大丈夫です」
沙織「それはよかったこと・・・・ってミロ！！大丈夫ですか！！」
ミロ「・・・なんとか、生きてます」
ダラダラと額から血を垂らしながら答えるミロ。手にはなんとか奪い取れたストックが握られている。
カミュ「この愚か者には慈悲など必要ありません。どうぞお気になさらず」
沙織「そ、そうですか・・・とりあえず、今日の主役が無事ならいいでしょう」
カミュ「主役？」
沙織がニコッと笑うと、パンパンと手を打った。同じく青銅がニコリとクス球の紐に手をかける。
『お誕生日おめでとう！！』
氷河「な、これは・・・・」
カミュ「誕生日だと・・・・」
沙織「ふふふ、水瓶座の聖闘士を祝おうと企画していたのですよ。スキーをやったことがないというのはかなりイレギュラーでしたけれども」
アフロディーテ「私がワインを選ばせて貰った。きっと君も喜んでくれると思う。青銅達は未成年だからグレープジュースな」
星矢「プレゼントは俺達が買ったんだ！一緒に遊ぼうぜ！」
カミュ「アテナ・・・みんな・・・ありがとう」
氷河「俺たちの為に・・・・。感謝している」
名物車田泣きを披露するカミュと氷河。その姿を見て、感動でミロも涙を流している。血でダラダラのせいか、血の涙のようだが。アイザックもまた微笑ましい瞳をしながら、本と氷河の肩を叩いた。
アイザック「よかったな、氷河」
沙織「あら、何を言ってるのですか？」
アイザック「え？」
沙織「あなたも水瓶座じゃありませんか」
アイザック「俺はみんなに祝ってもらえるような人間じゃ・・・」
沙織「何を言ってるんですか」
優しいまなざしを向けると、そっとアイザックの手を握った。
沙織「今回、スキー旅行に呼んだのは、あなたの誕生日を祝う為なのですよ」
アイザック「どうして・・・俺はポセイドン配下の海闘士ですよ」
沙織「確かに今は海闘士ですけど、昔は聖闘士を志していて、今でもカミュの弟子でしょう？」
アイザック「・・・・・」
沙織「海闘士を捨てろという意味ではありません。氷河もカミュも私の大事な人。その２人の大事な仲間なら、私にとって大事な人。氷河とカミュの誕生日を祝うなら、あなたも一緒じゃないとと思ったのです」
すっと小さな小箱を差し出す。
沙織「私からの誕生日プレゼントです。今まで祝えなかった分だけの気持ちをこめました。受け取って頂けますか」
アイザック「ありがとうございます。頂きます」
沙織「それで・・・もしよろしければ、これからも一緒に旅行などに行って頂けませんか」
アイザック「寝首をかくかもしれませんけど、それでもよろしいのなら」
沙織「寝首をかかれることは経験済みですから。モーマンタイです」
アイザック「・・・・・なら、安心ですね」
沙織「さぁ、三人を大いに祝いますよ！クラッカーはいいですか！！」
全員「おう！！」
誕生日おめでとう〜〜〜！！！氷河、カミュ、アイザック！！！
パァンという音が会場に響き渡る。まだまだ宵の口。パーティはこれからが本番。夜明けを迎える頃には、アイザックの元気な声が混じりあっているのである。水瓶座に幸あれ。
あとがき
水瓶座バースデー小説です！ギャグとほんのりシリアスが入り乱れた感じです。水瓶座バースデーなら、アイザックも祝わなくっちゃ！というコンセプトで黄金＋青銅で描いてみました。アイザックはいつも海闘士と出演しているので、黄金たちとは初共演です。なかなか新鮮。そしてやっぱりツッコミ役（笑）ザッ君大好きだ〜〜！！あ、氷河もカミュも好き好きよ★
BY MUTUMI