！！！

アイオロス「サガ・・・・・」

ある日の深夜、沈痛な面持ちで双児宮にやってきた。フラフラと足元がおぼつかない。沈着冷静と名高いさすがのサガも顔色を変えた。

サガ「どうしたんだ、アイオロス」
アイオロス「忙しいのは分かってるが、ちょっと聞いてもらえるか？」
サガ「仕事なんて、どうにでもなる。どうした。何があったんだ？」
アイオロス「実はな・・・・」
サガ「実は・・・・？」
アイオロス「アイオリアが・・・・」
サガ「アイオリアがどうした？」
アイオロス「誕生日パーティ、俺と一緒に祝うの嫌だって！！」





ギャラクシアンエクスプロージョン！！！


アイオロス「な、何をする！サガ！！」
サガ「本気で心配した十分間を返せ！そんな沈痛な顔で、実に馬鹿馬鹿しいことを言い出すとは思わなかったぞ！」
アイオロス「どこが馬鹿馬鹿しい！実に真剣で切実な悩みなんだ！」
サガ「真剣ならシュラにエクスカリバーで切り刻んでもらえ。私は仕事で忙しい。さっさと帰れ」
アイオロス「こんなこと相談できるの、サガしかいないんだよ」
サガ「そうだな。私以外にこんな兄馬鹿フルモード聞かせられないな」
アイオロス「だろう？俺のスキャンダルを人に知られたくなかったら、俺の相談に乗れ」
サガ「なんだと！？」
アイオロス「いいんだぞ。年少組に俺の情けない姿さらしても。サガの兄馬鹿っぷりも織り交ぜながら最終的には城戸邸に行く」
サガ「・・・・・・・分かったよ・・・椅子に座れ」
アイオロス「やった！！！」



自分のスキャンダルを脅迫に使うか・・・？と頭の痛くなるサガだった。



サガ「で、最初からきちんと話せ。アイオリアと喧嘩でもしたのか？」
アイオロス「いや、まったく」
サガ「じゃあ、どうして誕生日パーティ祝うのヤダなんていうんだ？」
アイオロス「兄ちゃんより、魔鈴の方がいいんだってさ！」
サガ「・・・・・・・・それは当然だろ。どこの世界に好きな女と兄を比べて兄を選ぶ男がいる」
アイオロス「俺」
サガ「もういっぺん死んでみるか？」
アイオロス「だって、俺が大事に大事に育てた弟だぞ。よく考えて、これから出会う女よりアイオリアと過ごしていく時間の方が長いんだぞ。彼女より弟というのが自然な流れだろ」
サガ「それが自然だと言うのならば、地球はショッカーに支配されているわ」
アイオロス「はは、古いな！ショッカーなんて！」
サガ「馬鹿者！今とってもトレンディだ！」

確かに最新の仮面ライダーが放映されているが、トレンディと言う言葉はトレンディではない。

サガ「ショッカーだの、ロッカーだのどうでもいい。アイオロス、私にも弟がいるが、弟と誕生日を過ごしたいと思った事など一度も無いぞ」
アイオロス「そりゃあ、お前ら仲が悪いから」
サガ「いや、仲が悪いわけじゃない。時々、本気で殺したくなるけど」



どっちだよ。



サガ「私と弟の関係はともかく、やっぱり、普通の男なら、好きな女性と共に過ごしたいと思うだろう」
アイオロス「兄さんよりいいのか・・・？」
サガ「１００％」
アイオロス「それは、何％中？」
サガ「１００％中１００％だ！パーセントは１００％がマックスに決まってるだろう」
アイオロス「いや・・・だって、テストだと○○点満点とかっていうだろ。サガ言わなかったから、何％満％か分かんなくて」
サガ「パーセンテージにはそんなものつけんわ！」
アイオロス「就職率１０５％っていうのは・・・」
サガ「水増ししてるだけだ！打撃率１４割とか言わないだろ！」
アイオロス「それはそれだけ打てる選手がいないから・・・」
サガ「ええい、屁理屈はどうでもいいわ！！とにかく！！アイオリアのことは諦めろ！！！」
アイオロス「諦めるだと・・・？」
サガ「ああ、いい加減弟離れしろ」
アイオロス「諦めろというのか・・・ハッピーバースデーアイオリア♪と書いた横断幕も、１メートルのバースデーケーキも、２０本＋車田星矢連載終了年数分の薔薇・・・」
サガ「お前、結婚披露宴か何かやるつもりか？なんだそのラインナップ」
アイオロス「俺が１年前から温めていたバースデープランだ」
サガ「１年前から考えてた割には、しょぼいな。私だったら、獅子を掘り込んだゴンドラを注文しておく」
アイオロス「おお！それは良いな！来年のために今からデザインを考えよう」
サガ「だったら、知り合いのデザイナーを紹介しよう。良心的な料金で作って・・・・ってちっが――――う！！」



ノリノリだったのは、あなたですよ。



サガ「だから！弟の誕生日に横断幕も、まして薔薇の花なんかいらん！どこの紫の薔薇の人だ！普通でいいんだ、普通で」
アイオロス「え、普通じゃアイツを驚かせないだろ」
サガ「驚きすぎて昇天するわ！」
アイオロス「あんなに可愛がってこの仕打ちか・・・兄貴って寂しいな・・・」
サガ「お前だけだろ。私なんて、いつもどこかに出かけっぱなしで最近挨拶すらせんぞ」
アイオロス「ふ・・・俺もそういう環境に慣れなくてはいけないのだな」
サガ「そうだ。兄とは弟が困った時にサポートする存在であればいいんだ」
アイオロス「困った時にサポート・・・」
サガ「そうだ。さて、相談は終わりだろ。私もそろそろ書類を整理したい」
アイオロス「ああ、ありがとな！サガ！俺がんばるよ！」
サガ「がんばる？まあ、がんばれ」

朗らかな顔をして立ち去るアイオロスに首を傾げるサガだった。
自分のさりげない発言が更なるトラブルを呼ぶとは、その時は知る由もないのだった。


８月１６日の夜８時。アイオリアが帰ってきた。誕生日だと言うのに酒気を帯びておらず、表情は暗い。
アイオリア「・・・・・・・お盆で日本に帰っているとはな。時差の関係で帰ってくるのは明日・・・だってさ」

誰のことを言っているのかは最早明白だろう。

アイオリア「腹筋１００００回やって寝ようかな・・・」

ふと、テーブルに置いてある手紙が目に止まった。四つ折りにしている手紙を開くと、自分の良く知る筆跡が並んでいた。

アイオリア「これを読んで、時間があったら人馬宮に来い・・・か」

どうせ、もう予定はない。手紙を手にして人馬宮に向かった。

アイオリア「兄さん、来たよ」
アイオロス「誕生日おめでとう！アイオリア！！」

パァンというクラッカーの音と共に、かすかな火薬の匂いと色とりどりのテープが放たれる。

アイオロス「８時でここに来たって事は、予定はないってことだろ？良かったら、兄さんと一緒に飯でもしよう」

見てみると、１メートルのケーキや数えられないくらいの薔薇、天井には横断幕と、クス球があった。

アイオリア「兄さん、わざわざ俺のために？」
アイオロス「アイオリアは俺の大事な弟だからな」
アイオリア「俺に予定があったらどうするんだ。全部ムダになるじゃないか」
アイオロス「ムダになったっていいさ。弟が幸せなら」

胸がじぃんとなった。

アイオリア「ありがとう、兄さん。兄さんの気持ち嬉しいよ」
アイオロス「よし！今日は飲んで食おう！」

アイオロスがそっと、クス球の紐を握った。

アイオリア「兄さん？」
アイオロス「パーティを始めるなら、まずお祝いの気分が必要だろ」

鏡開きみたいなものだろうか。笑みを浮かべながら、アイオリアはクス球が開かれるのを待った。

アイオロス「では、引くぞ！！」

グイッと紐を引く！パァンという音と、ハラハラと舞い散る色とりどりの紙、そして現れる・・・・



祝！！玉砕！！！



アイオリア「え・・・・・・？」

本気で一瞬、目を疑った。

アイオロス「いやあ、魔鈴も間抜けだよな〜。アイオリアを袖にするなんて。でもまあ、そのおかげで一緒に祝えるんだから感謝しないとな」
アイオリア「・・・・・・・・・」
アイオロス「ん、どうした？うれしくて声も出ないか？」



ライトニングプラズマ！！！


アイオロス「ぐわぁ！！」
アイオリア「兄さんの馬鹿！！兄さんなんて嫌いだ！！！」

そう言い放つと光速で去っていったアイオリアだった。ぐいっと目をこするような仕草をしたのは、幻ではないだろう。残されたのは、不意うちを食らって目を回してるアイオロスと最早置物となったクス球たちなのだった。



アイオロス「サガ〜！サガ〜！助けてくれ〜！」
サガ「ええい、なんだ、面倒臭い」
アイオロス「アイオリアが口聞いてくれない！！」
本気の兄弟喧嘩に突入し、振り回される哀れなサガだった。結局、騒ぎが収束するまで仕事が進まず、せっかくとっておいたお盆休みは露と消えたのだった。




あとがき
はじめまして！柊むつみと申します！半分以上がロスとサガで占めておりますが、気持ち的にはギュウギュウにアイオリア愛をこめております！ロスのリアを想う気持ちは、山より高く、海より深いことでしょう！笑っていただければ幸いです！

タイトルの！！！はスリーエクスクラメーションと読んで頂けると良いかと。
サガの！、アイオロスの！、アイオリアの！という意味をこめております★