英吉利戦争
ヒルダ「アルベリッヒ・・・もう少し、料理に変化はつけられませんか？」
アルベリッヒ「アスガルドが超ド級に貧乏なのはアンタが1番ご存知でしょう」
ヒルダ「ですが、連日、氷料理では・・・味に変化がないというか・・・」
ここで解説、氷料理とは。
氷を美しくカッティングしたものを食すという、金のかからない画期的な料理である。他にも、水に氷をいれた氷スープなどがある。
アルベリッヒ「今年は猛暑のせいで、農作物の出来もイマイチなんです。今、耐えておかないと、冬を越せませんよ」
ヒルダ「それはそうなんですけど・・・」
ジークフリート「アルベリッヒ、ヒルダ様が困っていらっしゃるのに、そんな物言いはないだろう」
アルベリッヒ「はっ！バカ女しか目に入らない近衛隊長殿は黙っていてもらおうか。俺の発言は、ヒルダのため、ひいてはアスガルドのためだ」
フレア「でも、アルベリッヒ。水ばっかりじゃ、噛む事を忘れてしまうわ！」
ハーゲン「そうだっ！せめて、パンくらいよこせ！でなければ、ギングを食う！」
フェンリル「おいっ！！俺の親友を食うな！！アルベリッヒ！！ギングを食われるくらいなら、お前を食うぞ！！」
トール「フェンリル・・・それは理性を失いすぎだ。落ち着け。こいつを食ったら食中りをおこすぞ」
ミーメ「アルベリッヒ、キミの現実的なところは長所でもあるが、実行し続ければ、冬を迎える前に餓死する」
シド「うちから弁当を持ち込んでもいいだろうか。もしくは、食事の時だけ帰宅していいか。うちの従業員の方が余程いい食事をしている」
バド「はっ、ブルジョワはこれだから。俺なんか、雪のオニギリで１週間過ごしたことだってあるんだぞ。これくらいたいしたことない」
シド「雪のオニギリって・・・兄さんがそんな食糧とも思えない（実際、食糧ではない）ものを食べていた時、米のオニギリを思い切り頬張っていたのですね。ああ、過去に行って兄さんに差しあげたい」
バド「お前に施しなど受けぬわ！お前から米のオニギリをもらうくらいなら、木の樹液を啜る方がまだマシだ！」
シド「私の兄さんへの思いは、カブトムシにも劣ると・・・？」
バド「ふっ、兄弟とはそんなものだろう」
シド「兄さん、酷いです・・・！！」
ハーゲン「バド、さすがに言い過ぎだろ。人とカブトムシを比べて、カブトムシの勝ちだなんて」
フレア「そうよ！せめて、ハーゲンと氷河くらいにしないと」
ハーゲン「・・・フレア様。ちなみに、それの場合、どちらを選ぶのですか？」
フレア「もちろん氷河よ！」
ハーゲン「その心は？」
フレア「私を守ってくれたからよ！」
ハーゲン「私だって、フレア様の事を命をかけてお守りします！」
フレア「あ〜ら！！私に拳をむけた、あなたが言えるセリフじゃないわね！！ふ、待ってなさい。あなたとの結婚式は、卒業みたいに華々しく逃亡してやるから！」
ハーゲン「ちょ、それは・・・・・！！」
フレア「ミーメに、中島みゆきでも弾いてもらうことね！！」
ミーメ「む、中島みゆきとは何ですか？」
フレア「日本が誇る、昭和の歌姫よ！！ミーメ、結婚式までにマスターしておくのよ！」
ミーメ「はっ、かしこまりました」
論点が、めちゃくちゃにズレてきてるのは気のせいだろうか。いや、否。
このまま、煙にまいてもらえるなら、ありがたいが・・・。
ヒルダ「フレア、卒業前提の結婚式って、おかしくはないですか？」
フレア「全然モーマンタイよ。成田離婚だってあるじゃない」
ヒルダ「それとこれは全然別です。残されるハーゲンの気持ちも考えてください」
フレア「ハーゲンも、卒業すればいいことでしょう？」
ジークフリート「それは、婚約する意味がまったくありませんね」
アルベリッヒ「さすがに、ちょっとキてるかな？みんな」
ポリポリと頬をかいた。飢えた野獣たちの思考回路がゼロになる前に、何とかした方がいいかもしれない。
アルベリッヒ「わかりました。恒例の世界各国晩餐会を行います！」
フレア「ほ、本当！！？」
アルベリッヒ「ええ、本当です。世界で知らない者はいない国の料理です」
フレア「やったわ！！やっと、味のある料理が食べられるわ！もうイチゴ味の歯磨き粉を噛み締めなくてもいいのね！！お姉さま、たらふく食べて太りましょうね！」
ヒルダ「そうですね。冬が来る前に、少しでも脂肪を蓄えておかないと寒くて凍えてしまいますものね」
アルベリッヒ「クマかリスみたいな発言ですね・・・。とりあえず、開催は三日後にします！！」
アルベリッヒの提案に、大喜びの神闘士たち。
果たして、晩餐会に出る料理はどの国のものなのだろうか・・・？
当日
フレア「あ〜、今日が楽しみで眠れなかったわ！」
ハーゲン「私もです」
フレア「あ〜ら、ハーゲンが眠れないのは、氷河と電話で喧嘩しまくってるからでしょう？」
ギクゥッ！！！
ハーゲン「フレア様、何故それを・・・」
フレア「夜にあれだけ大声でしゃべってたら、誰でも分かるわよ。ねえ、ミーメ」
ミーメ「ええ。あまりに聞こえるので、楽譜にその内容を書きとめてしまいました」
フェンリル「マジで！！タイトルは？」
ミーメ「『卒業なんかさせないぞ』だ」
バド「・・・氷河側からしたら、『は？』って感じだよな」
ミーメ「まず、サビからだな。『お前！俺に内緒でフレア様と連絡とりあってんじゃないだろうな！』そして、多分、氷河は、『俺とフレアがどうしようと、お前には関係ないだろう。お前はフレアの母親か？』というような内容を返したはず。そして、次の歌詞が『母親！？ふざけるな！！俺は恋人になりたいんだ！！』と続く」
トール「うーむ、片恋の歌だな。情熱的でストレートだ」
バド「俺はゴメンだぞ、こんな男。自分の許す行動でないとかんしゃくを起こす男などろくなもんじゃない。今のうちに縁切りした方がいいな」
フェンリル「人を裏切るよりはマシじゃないかな。このＡメロの最後『俺はアスガルド中、いや、宇宙中で１番フレア様を愛してる』なんて、なかなかいえるもんじゃないし」
トール「俺はここの、『様を取れだと！？貴様正気か！！』の方が、言葉で言い表せない感情があって好きだな」
シド「とにかく、人の心を惹きつける歌には違いない。代表曲になることだろう。発売日はいつだ？」
ハーゲン片恋の歌『卒業なんかさせないぞ！』
アスガルドレコードより、発売・・・したらイイな★（させるわけないだろうが！！Ｂｙハーゲン）
アルベリッヒ「さて、席につかれましたか？今宵の晩餐を始めたいと思います。今回は、世界でも５本の指に入る経済大国、英国の料理です。どうぞ、心ゆくまでご堪能ください」
扉がギギッと開かれ、給仕が料理を運んでくる。
フレア「アルベリッヒ、これは？」
アルベリッヒ「前菜は、キュウリとダイコンのサラダです」
シド「・・・サラダ？これが？」
アルベリッヒ「何か？」
シド「くったくたに原形を留めないほど煮ているように見えるが・・・」
アルベリッヒ「それがイギリス料理の真髄だ。美味いか不味いかではなく、それが常識なのだ」
シド「・・・しかしだな・・・」
アルベリッヒ「あいつらは嬉々として食べているぞ」
フレア「お、美味しい―――！！」
ハーゲン「本当ですね！！歯ごたえはないけれど、この噛めるっていうことが何より幸せです！」
ヒルダ「温かい・・・料理が温かいです・・・！！」
ジークフリート「口の中が凍傷になるかと思うような料理ばかりでしたからね」
フェンリル「ギングに残してやろう！キュウリにこんな食べ方があったなんて！これなら腐ったキュウリでも食べられそうだな！」
トール「今まで野菜を分ける時、どうしたら多くの人に分けられるか悩んでたんだが、こうやって原形を留めないほどにすると、より多くの人に切り分けられるな。勉強になった」
バド「こういう料理なら、その都度、水でかさ増しすれば、半永久的に食べられるな。うーん、さすが大英帝国だ」
シド「・・・・・・・・・・みんな、これ・・・本気で美味しいと思ってるのか・・・。俺がおかしいのか？」
アルベリッヒ「正しいのはお前だ。イギリス人もこの光景を見たら、さぞ驚くだろうよ」
シド「こういう料理が続くのか？」
アルベリッヒ「真っ黒焦げになるまで揚げたポテトに、フィッシュアンドチップス、牛肉を火に放り込んだだけで何も手を加えていない、味付けゼロのローストビーフだ」
シド「・・・・・・・；；（頭を抱えている）」
アルベリッヒ「俺も、ここまでウケるとは思ってなかった。いい加減うざったいから、ちょっと嫌味のつもりでイギリス料理をセレクトしたんだけど、我が国の食糧事情は、イギリスより遥かに下だった・・・」
シド「・・・・・本気で帰ってもいいか。頭が痛くなってきた」
アルベリッヒ「デザートまで待て。イギリスの紅茶とスコーンは絶品だから」
シド「・・・・・ＭＩＦで頼む・・・」
ＭＩＦとは、Ｍｉｌｋ ＩＮ Ｆｉｒｓｔの略。これとは逆に、ＭＩＡ（Ｍｉｌｋ ＩＮ Ａｆｔｅｒがある）。ミルクが後か先かで、ものすっごい大論争している。（が、近年、科学的に証明されたらしい。ま、科学より好みが大事って時あるよネ★）
アルベリッヒ「へぇ、お前、ミルクが先派なのか」
シド「兄さんに話したら、『馬鹿野郎！紅茶にミルクをいれるなんて勿体無い！ミルクはバターにするに決まってるだろ！』って言われたよ」
アルベリッヒ「議論にすらならんな・・・；；」
呆然としながら、晩餐会を見守るブルジョア２人。
結局、その日はタッパーを持ち出してくるほど大盛況で、
企画したアルベリッヒの株は、（本人の予想に反して）急上昇したのだった。
あとがき
アスガルド戦争シリーズ、イギリス編でした〜〜！書いてて楽しかったです！
実は、これ、前半のアルベリッヒが晩餐会を提案する直前までは、２０１０年９月に書いてたんです。書いてたことすらすっかり忘れてて（笑）ファイルを開いたら途中まで書いてあって、読んだら結構面白かったからネタ続行★多分、その当時は、これ以上面白くなれる自信がなかったんだろうな。ギャグはメンタルが強く影響しますからね〜。心に余裕ない時に書くとメチャクチャですよ（涙）
アスガルドゲームで、アスガルドへの愛+キャラの個性も再確認したからなのか、書きやすかったです。ええ、シドとバドは書いてて本当おもしろいですよｖｖ
楽しんで頂ければ幸いです★
ＢＹ ＭＵＴＵＭＩ