アイスホテルを作ろう

異常気象で世界が困惑している現在である。日本ではカンカン照りの水不足と思いきやざんざんぶりの水害だ。諸外国でも熱波や乾燥など起こっている。例え世界地図や地球儀に載っていないことはおろか、車田コミックスにも載っていないのだとしてもアスガルドも例外ではないのであった。
アルベリッヒ「俺・・・・死にたい。」
悲壮な顔をしながら、窓を見つめる。八月某日。天気・・・・雪。
アルベリッヒ「なあ、俺たち何か悪いことしたか？」
ジークフリート「何を今更。世界征服しようとしたじゃないか。」
アルベリッヒ「んなもんとっくに時効だ！！てか黒幕はポセイドンだろうが。俺たちはいいように使われた挙句捨てられた。いわば被害者だ。」
ミーメ「まるで殺人幇助した情婦のセリフだな。」
ジークフリート「お前だったら何ていう？」
ミーメ「理性が残っていそうで完全に洗脳されていた悪質な新興宗教にひっかかった人達。」

リアルすぎて否定できない。

シド「う〜、寒い。」
頭や肩に雪をのせながら外の勤務を終えて帰ってきた。体を暖めるために暖炉に陣取る。
シド「これじゃ暖まらない。もっと薪くれ。」
アルベリッヒ「ない。」
シド「またまた。」
アルベリッヒ「本当なんだ！薪はもうない！！」
涙目を浮かべながら答えるアルベリッヒにシドはあっけにとられた。
アルベリッヒ「国庫はとっくのとうにすっからかん。毎日毎日徹夜続きでどうにかクビを繋いで春がやってくれば少しは持ち直すかと思いきや、いつまで経っても春が来ない！待ちつづけてもう暦は八月！これから収穫だってのに収穫はおろか芽もでない！税収予想は驚きの０％だ！今年の冬を乗越える自信なんてないよ〜〜うっうっうっ。」
自信家で意外とお人好しのアルベリッヒが泣いている。

これは非常事態だ！

どこまでも天然な彼らの判断基準だった。
ハーゲン「泣くなアルベリッヒ。俺達が悪かった。みんなで考えよう。そうすれば活路が見えてくるさ。」
ミーメ「そうとも。アスガルドの未来は私達で作らなくては。君1人に押し付けやしない。」
ジークフリート「お前は頼らなすぎる。」
トール「俺達に何かできることはあるか？」
アルベリッヒは不敵な笑みを浮かべるとパラリと紙を広げる。
アルベリッヒ「これを見てくれ。」


アイスホテル建設計画！？


アルベリッヒ「そうだ。夏になっても雪がふりまくっているの地に避暑に来たがる輩は大勢いる。そいつらの為のホテルだ。」
ジークフリート「建てる金があるのか？」
アルベリッヒ「だから全部氷で建てる。氷ならそこら中にあるし、なきゃハーゲンが作ればいい。切り出しはジークフリートでいいし、仕上げはミーメが適切。トールは組み立てに役立つし、フェンリルは狼を使ってソリで運んだりできる。シドとバドは海外遠征の経験を踏まえて情報宣伝だ。」
ミーメ「すごい。私達だけで何もかもやる計画だ。」
アルベリッヒ「金がないんだから身内使うしかないだろ。本当だったら専門家を使いたいわい。」
フェンリル「作るのはいいとして、従業員はどうするんだ？」
アルベリッヒ「当然俺達だ。衣装も用意してある。」


・・・・・バニーボーイ？

ジークフリート「冗談だよな？」
アルベリッヒ「きわめてマジだ。」
ジークフリート「女ならまだしも男がバニーの格好をして何がおもしろいんだ！しかも網タイツって！」
アルベリッヒ「白いストッキングにするか迷ったんだけど、協議の結果網タイツになった。」
ハーゲン「協議って誰だよ！」
アルベリッヒ「フレア様は網タイツじゃないと許さないわよと強くつよ〜〜〜くおっしゃった。」
ハーゲン「フレア様一押しならそれでもいいかな・・・・」
ミーメ「プライドがないのか君は。胸はない、スネ毛はある、ついでにおまけにもっこりで気持ち悪いっていう３Kだというのにそれでいいのか。」
アルベリッヒ「いいのだ。」
ミーメ「君には聞いてない！」
アルベリッヒ「仕方ない。わかった。もっこりに関してはスカートを穿かせる事で解決と。」
ミーメ「そういう意味じゃない！！」
バド「男のバニーで訪れる輩の接待なんで死んでも嫌だぞ。」
シド「顔に関してはめでたいことにどれもこれも水準よりいいけど、男として生まれたなら騎士の格好をするのが普通だろう。白馬に乗るのは王子様と相場が決まっている。」
バド「それは俺に対するあてつけか？」
シド「滅相もない。一般事例をあてはめただけで。」
アルベリッヒ「シドとバドの意見を統合した結果、メイド服ということになった。」

なってない！！

トール「なんでさっきからおかしな服ばかり持ち出すんだ。どこをどう考えても似合うと思えないだろう。」
ハーゲン「来る客も絶対に来ない！勧める理由はなんだ！」
アルベリッヒ「それは言えん。」
ジークフリート「言え。これは俺らの死活問題だ。」
アルベリッヒ「仕方ない。どんなことであっても怒るなよ？」
ハーゲン「勿論だ。」
アルベリッヒ「じゃあ言うぞ。」

ごくり。

アルベリッヒ「俺の嫌がらせだ。」




どこぼこばき！

アルベリッヒ「いてえ！嘘つき！怒らないって言っただろうが！」
ジークフリート「そんな約束忘れた！深刻かと思いきや単なる嫌がらせだと！冗談じゃないわ！」
アルベリッヒ「だって！俺ばっかり働かせてずるいじゃないか。毎日毎日徹夜徹夜で国を支えて！こんな国なんて欲しい人間いやしないんだから近衛なんて昼行灯！それなのに政務してるのは俺１人！少しぐらいの嫌がらせやったっていいだろう。」
ジークフリート「やっていいことと悪いことがあるだろうが！」
ミーメ「そうだ。君の行為はそしらぬ顔で少女に麻薬を売る売人と一緒だ！」

そこまで悪いことではないと思うが。

アルベリッヒ「はいはい、すいませんでした。」
バド「謝罪より服！服はメイドとか絶対やだぞ！」
アルベリッヒ「わかってるって。あんな不気味な格好させたら客がショック死して新聞沙汰になるからな。最初からやるつもりなんてない。」

なら、最初から言うな。

アルベリッヒ「服は神闘衣ならいいだろ。」
ハーゲン「それならまあいいか。」
シド「コスプレとか思われそうだけどな。」
アルベリッヒ「というわけで、話がついたな。明日から着工する。みんなよろしく頼むぞ。」
ミーメ「それはかまわないが、肝心のヒルダ様はこのことをご存知なのか？」
アルベリッヒ「作ってから話を切り出す。」
トール「卑怯って言わないか？」
アルベリッヒ「天然バカ女にはそれくらいしないとだめだ！国のことをな〜〜んも考えてないこの状況でものほほん女なんだから！」
ジークフリート「いいすぎだぞ！」
アルベリッヒ「本当のことだ。もしふざけた理由で反対しても、押し切る自信は絶対にある。年商１０億を目指す。アスガルドに春を！」



アルベリッヒ「どーーーーーいうことだーーー！」

一夜明けてみると、アスガルドは緑の世界に変貌していた。花が咲き乱れ、昨日の冬が嘘のようだ。当然、この状況を聞くにはヒルダに限る。ズダダダと足音を立てながらヒルダの元に訪れる。
アルベリッヒ「ヒルダ様！これはどういうことなのですか！」
ヒルダ「アルベリッヒも見てくださいましたか。」
アルベリッヒ「なんで一夜にして春になってるんですか！」
ヒルダ「この季節に雪がふるなんてさすがにおかしい。アルベリッヒに毎日のごとく、天然女だバカだ無能だ、あばずれだと散々罵られる私でも気づきました。」
アルベリッヒ「俺、天然女とバカしか言ってないと思うんですけど・・・・」
ヒルダ「太陽を知らずに1年を過ごすなんてとんでもないことです。ですから、オーディーンに願い奉りました。私達に春をくださいと。きっと私の願いが届いたのでしょうね。一夜で春がやってきたのですよ。よかったですね、アルベリッヒ。」

やれるならもっと早くやれーーーーーーー！！！

その日のアルベリッヒの怒りは富士山噴火よりも激しかったという。勿論アイスホテル計画は破約となり、今しばらく徹夜からは逃れられないのだった。アスガルドの経済に春が来ることはまだまだ遠い。



あとがき
季節ネタアスガルドです。勿論主役はアルベリッヒです。他の人達は本当に天然で困っちゃいますね。アイスホテルは実際にあって、とても素敵らしいです。ベッドとかも氷で寝袋に入って寝るとか。アルベリッヒお疲れ様です。アスガルドの為にがんばってくださいな★がんばる限りあなたは主役です♪

BY　MUTUMI